第45話「慌てん坊忍者」

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 遅ればせながら、本年もよろしくお願いいたします。といっても、ゴーカイジャーは2月19日にて最終回を迎えますので、あとわずかのお付き合いということになります。

 次の戦隊「ゴーバスターズ」も発表され、今回予告編も放映されました。この時期になると、興味は俄然新戦隊の方に移ってしまい、モチベーションの維持も大変なのですが、肩の力を抜いて「ゴーカイジャー」を見届けていく所存でございます。

 さて、新年第一回目のエピソードは、「最後の砦」である「カクレンジャー」に関するお話。変則的な先輩ゲスト編という事になりますが、実際は戦隊シリーズ恒例の「総集編」を兼ねています。

 戦隊シリーズがはっきりと総集編の体裁を導入したのは、「バトルフィーバー」のゴースト怪人の回だったと記憶してますが、誤っていたら申し訳ございません。「バトルフィーバー」でのそれは、あまり使われなかった数々の挿入歌をバックに、各メンバーの代表的な活躍回が振り返られるという構成でした。その後も半数くらいのシリーズで総集編となるエピソードが作られましたが、共通しているのは、何か事態が進行する中でこれまでの足跡が振り返られるという構成。ただし近年は、商品展開とのリンクが濃密なのを受けて、ほぼ全ての武装や巨大ロボ等のアイテムを網羅する構成が強くなっています。

 今回のトピックは3つ。ニンジャマン、総集編、そして鶴姫。それぞれについて、軽く言及してみます。


 まずニンジャマンですが、タイムレンジャー編でドモンが守るよう指示した神社に、ニンジャマンが封印された壷が安置されていた、という展開。あの壷については、「分かり難い」という印象しかなく、あまり好意的に受け取れませんでした。しかも、あのエピソードからは放映期間で言う処の1ヶ月以上の時間が経過しており、こうしてニンジャマンが登場した今も、やっぱり前振りとしてはどうかと思ってしまいます。

 そのニンジャマン、声はオリジナル通り矢尾一樹さんで、キャラクター性は当時のまま。基本的に経年による外見の変化がない「スーツのキャラクター」なので、当時のままのキャラクターが出てくるというのは、この種のキャラクターの醍醐味です。

 また、様々な方面で上がっていた、「何故、追加戦士に近いニンジャマンはレジェンド大戦に参戦していなかったのか?」といった疑問が、土壇場になって解決されるなど、トピック的にも注目すべきものがありました。その理由を説明する際、「カクレンジャー」前半で見られた講談風の紙芝居を用いる等、趣向が凝らされていて良い感じでした。

 今ひとつ不徹底だと感じたのは、壷を割る際にアイムがその金槌を手に取った事。元来、鶴姫の血脈にある者のみが封印を解く事を許されており、その設定を遵守するならば、アイムに封印を解くのは不可能です。まぁ、この辺りは「海賊版」と割り切ってもいいのですが、他のエピソードでの(思い入れたっぷりの)徹底振りを見るにつけ、何かしらの理由が欲しかった処ですね。今回、鶴姫もゲスト出演しているので、彼女が忍術で何らかの手助けをしたのかも知れませんが...。

 それにしてもニンジャマン、ハカセと鎧、そしてジョー渾身の(笑)茶菓子を、どうやって食べるつもりだったのか。是非食べるシーンが見たかったですね〜。

 なお、ニンジャマンが「カクレンジャーの大いなる力」を渡すという事になりそうですが、この事は、ニンジャマンが「6人目のカクレンジャー」だとされている有効な証左となるのではないでしょうか。それだけに、レジェンド大戦不在という状況が、どれだけ特殊で尚且つ「狙っていた」かが分かります。

 続いては、総集編。

 この総集編を見れば、「ゴーカイジャー」のこれまでの流れが俯瞰出来ると言えるくらい、良く出来ていました。実質15分くらいの総集編なのに、ここまでテンポ良く流れをまとめ、しかも全戦隊への豪快チェンジを見せ、全ての先輩ゲストを網羅してみせた手腕には、大拍手です。また、大いなる力についても、映像と補足説明のセリフで巧くまとめており、カクレンジャーが誰にも入手されていない最後の大いなる力である事を端的に示しています。

 この総集編を見ると、豪快チェンジにおける演出が、毎回オリジナルの戦隊の特徴を生かしつつ、様々な工夫が凝らされていたのだと再認識させられましたね。そして、先輩ゲストの網羅は、やはり感涙モノでした。惜しむらくは、海城剛を始めとする劇場版の面々が登場しなかった事ですが、これはテレビ版限定という意味で仕方ないのではないかと思います。

 面白いのは、この総集編が「ゴーカイジャー」という作品の構造を見事に縮図として反映している事でした。何を言いたいかというと、ザンギャックが殆どフィーチュアされていないんですよ(笑)。殆どゴーカイジャー VS バスコという構図で動いているかのようで。これには苦笑してしまいました。

 そして、鶴姫。

 広瀬仁美さんといえば、「ゴセイジャー」に、突如ニンジャレッド&ヒュウガこと小川輝晃さんと共にゲスト出演され、ファンを驚かせたのが記憶に新しい処。今回、満を持して鶴姫としての登場となり、正に「ゴーカイジャー」ならではの幸福を堪能出来たわけです。衣装も当時の忍者装束のまま。当時14歳の最年少ヒロインとして鮮烈な登場を果たした鶴姫が、こうして15年以上の時を経て帰ってきたわけですが、ホント、変わってない事に驚き。勿論、年齢相応の大人な雰囲気といったものも感じられますが、それはむしろ鶴姫というキャラクターにとってプラスに働いており、エピローグのみの出演が勿体無いと思わされました。

 広瀬さんご自身の都合(実質、俳優業は引退されている)を考えると、グリーンバックのあるスタジオでの数時間の撮影が限度であろう事は容易に想像出来ますから、この短いシーンでの出演であっても、諸手を上げて喜ばなければなりません。

 先輩ゲスト編恒例の、豪快チェンジによるアクションシーンに、オリジナル戦隊の主題歌インストが流れるといった趣向は、この鶴姫のシーンに転用されました。カクレンジャー編が次回に引っ張られる為に、カクレンジャーにチェンジしてのアクションがなかったのも理由の一つですが、この処理は非常に巧かったですね。

 私にとっての「カクレンジャー」といえば、泥臭い「ダイレンジャー」の異様に高いテンションの後の、「(ネガティヴな意味での)オシャレな戦隊」というイメージがあり、司令官(マスコット的後見人含む)不在のロードムービー、ネコマル、妖怪の人間態の新劇色の強さ等が、少し受け入れ辛い印象でした。一方で、最年少ヒロインがリーダーだというパターン破壊、5大ロボットの合体、5大ロボットの軽装バージョンの登場、ポップな忍術等、あまりに新鮮な魅力も多く、今日まで根強いファンが居るのも頷けます。後半からややシリアスな大河構成になりますが、それでも当初のポップな魅力は失われず、逆に「ダイレンジャー」で好評だった要素を取り入れたような感覚になった為、ドラマの完成度も飛躍的に高まり、見応えのあるシリーズとなりました。

 俳優陣も非常に個性的で、特にニンジャブラック・ジライヤにケイン・コスギさんがキャスティングされる等、野心に溢れる制作姿勢でした。広瀬さんにしても、前年は「シュシュトリアン」で主演の一人だったわけで、マニアックな「シュシュトリアン」人気をも取り込もうとする貪欲さが素晴らしかったです(劇中で「シュシュトリアン」三人娘が一同に介すというサービスエピソードあり!)。

 また、バブル景気の象徴である「ジュリアナ東京」のパロディなんかもあり、時代性も色濃く反映されていましたね。丁度、バブル景気末期の花火が上がっていた時期なので、番組の中身もそれに合わせて推移したかのように見える側面もありました。

 バブルといえば、「巨大戦バブル」とも形容すべき凄まじさが、この「カクレンジャー」と次作の「オーレンジャー」にはあります。「カクレンジャー」には、人型の巨大メカが実に変形前後で述べ15体以上も登場しており、次作の「オーレンジャー」にもその傾向が受け継がれます。現在は、巨大戦に限っては、いわゆるゾロメカを増やしていく方向で、マーチャンダイジングの流れを作っていく手法がとられていますが、「カクレンジャー」の頃は、ロボット至上主義とも言うべき商品構成になっていたわけですね。しかしながら、これだけ多くの「ロボット」が登場したにも関わらず、それぞれが個性的なキャラクター性を維持していたのは、特筆すべき点でしょう。

 最後に今回の豪快チェンジについて。今回は、ニンジャマンの機嫌を取る為に披露したものです。

 まずはオールブルー。マーベラスはゴセイブルー、ジョーはシンケンブルー、ルカはブルードルフィン、ハカセはタイムブルー、アイムはマジブルー、そして鎧はアオレンジャーにチェンジ。どうやら、アオレンジャー以外のスーツアクター諸氏が、それぞれ自らオリジナルにて演じていたキャラクターで揃えられているらしく、裏側のマニアック振りが際立っております。

 続いてモチーフクイズという趣向でチェンジ。答えはライオンで、マーベラスはガオレッド、ジョーはゴーオンブルー、ルカはイエローライオン、ハカセはシシレンジャー、アイムはギンガレッド、そして鎧はゴセイナイトにチェンジしました。これはなかなかトリッキーでしたね。

 さて、ニンジャマンがどうマーベラス達と関わりを持つのか、そしてニンジャマンのレンジャーキーは存在するのか。色々と気になる次回ですね。