第44話「素敵な聖夜」

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 恒例のクリスマス編。しかも、ビックリの「先輩ゲスト編」。しかし、先輩ゲスト編の体裁による展開はほぼ皆無であり、ラストでのまさかの曙四郎の登場は、親世代へのクリスマスプレゼントといった雰囲気でした。

 ストーリー構成としては、ルカ編になっていて、ゴーカイジャーきっての「悪い子」であるルカが、「いい子」である事を確認する...といったテーマになっています。

 勿論、ルカは「悪い子」でもなんでもなく、「ちょっとヒネた信念の人」なのは、ご覧のとおりなのですが、一番「賊」っぽいのも確かな処。バトルケニアこと曙四郎が、ルカを本気で「悪い子」だと思っていないのは当然ですが、ある意味ルカに、クリスマスというイベントにおける「優しさ」の確認をさせようという意図があったようにも解釈できます。

 全体的ににぎやかで、鎧に対するジョーの「何でもアリだな」という感想に象徴されるように、ホントに何でもアリな状態なのですが、それぞれに説得力があっていい感じ。


 今回最大のトピックは、弟を助ける為に小夜という少女がゴーカイイエローにチェンジするというもの。シリーズ開始当初、少年がシンケンレッドにチェンジするというシチュエーションがあり、度肝を抜かれましたが、この「誰でもモバイレーツとレンジャーキーさえあれば」という設定は、今回も大きな効果を上げています。この設定が頻繁に使われなかったのは正解で、ここぞという時の使用が冴えていますよね。単に制作陣が失念していた可能性も否定は出来ませんが(笑)。

 言うまでもありませんが、この小夜の豪快チェンジに関する一連のシーンは、非常に良く出来ています。

 まず、ダブルトラップになっていて、ルカのサバイバル術の片鱗が見える事。ルカの人形で欺き、それが見破られる事を見越した上で、小夜のチェンジしたゴーカイイエローを登場させて敵の隙を突く。この作戦、実はルカ自ら敵の手に掛かるという事に加え、小夜にかなりの危難を負わせる作戦なのですが、鎧を助けたい、弟を助けたいというメンタル要素に支えられており、ギリギリに近い賭けになっている辺りがいいですね。そして、いつも賭けに勝算のあるルカらしい作戦だと思います。

 そして、小夜のゴーカイイエローが、いかにも戦いの素人っぽい動きを見せる事。さすがです。アクションがドラマを見せるという、いいお手本です。こういうメリハリが、確実な痛快さを実現していますよね。

 さて、今回の豪快チェンジは、前回の「オールグリーン」に続くイエロー祭りでした。マーベラスはガオイエロー、ジョーはタイガーレンジャー、ルカはボウケンイエロー、ハカセはハリケンイエロー、アイムはゴセイイエロー、鎧はキリンレンジャーに。それぞれの得意技がちゃんと描写されていて、満足度はかなり高めでした。

 他にも、カクレンジャー(これは次回への引きでしょう)や、バトルフィーバーにもチェンジ。特にバトルフィーバーは、今回先輩ゲストが曙四郎という事もあって、充実度たっぷり。ペンタフォースのバズーカバージョンが、TVシリーズで初披露されたのも嬉しい処ですね。それにしても、バトルフィーバーにはやはり突出した魅力があります。明らかに雰囲気が戦隊よりも「ビビューン」寄りですからね。それもその筈で、制作陣が明らかに「ゴレンジャー風味」を意識したのは、その次の「デンジマン」からなのです。

 「バトルフィーバー」についての話は後にまわすとして、鎧はレッドとグリーンのハイブリッドであるゴーカイクリスマスにチェンジ。ここでジョーが「何でもアリだな」発言をしており、笑わせてくれます。これって商品化されるんですかね(笑)。

 ラストでは、ルカがマジマザーに。氷のエレメントを使うマジマザーならではの能力で、ホワイトクリスマスを演出するという、粋な使われ方をしました。こういうちょっとしたアイディアが光っているんですよね。

 というわけで、本編に関する言及は終了。ここからはバトルフィーバーワールドにご招待。

 私の一番好きな戦隊は、「バトルフィーバーJ」です。どれくらい好きかというと、LD買って、DVD買い直すくらい好きです。小学生の頃、隣の県の放送局で再放送があったのですが、辛うじてそれが映る高台の友達の家に、毎日お邪魔して見た程に好きです(笑)。

 「バトルフィーバー」の魅力は、他の戦隊にない有機的で派手なマスクのデザイン、スーツ配色の統一感の乏しさ、鉄山将軍とバトルフィーバーロボに見られる和のテイスト、プライベートと仕事にケジメがついている大人の戦隊、敵エゴスのカルトっぽさ、怪人の地位が幹部より上という組織構成、エゴス怪人の正に「何でもアリ」状態。その他、枚挙に暇がありませんが、上記の部分だけでもいかに特殊かが分かります。

 現在の目で見ると、相当急場作りのシリーズだった処が見え隠れしており、途中でヒーローの秘密主義が瓦解する前で既に面が割れていたり、必殺技が何の脈絡もなく変わったりと、「やれる事は突然でもやっておこう」的な気合が溢れています。それは、緻密なシリーズ構成を美点としていた「ゴレンジャー」と「ジャッカー」からは、やや後退している感もあるのですが、高久進、上原正三両先生の打ち立てた「人情刑事モノ」のテイストが最も色濃いのが「バトルフィーバー」であり、その意味で、オムニバス的なバラエティさが横溢するシリーズであったと断言出来ます。

 人員が二度も交代しているのも特徴。どちらも制作面では急場しのぎが否めなかったようですが、投入されたキャラクターに明らかな差異を付ける辺り、刑事モノのノウハウが遺憾なく発揮されていたのではないでしょうか。

 極端に言えば、「月光仮面」から続く「大人であるヒーロー」は、この「バトルフィーバー」までだと言えるかも知れません。それは、「キーハンター」に象徴されるような、大人向けドラマと子供向けドラマが未分化だった時代が、この「バトルフィーバー」で終わったとも換言出来ます。次の「デンジマン」は、ヒーローの年齢こそ高めですが、ヒーローの存在意義は「子供を守ってくれるおじさん」というより、「頼りになるお兄さん」に接近していますし、全体的に刑事モノのテイストは薄れています。「デンジマン」と同時期の「スカイライダー」も、途中で賑やかなテイストへと大きく路線変更しており、80年代初頭こそ、現在の特撮ヒーロードラマの萌芽なのです。

 だからこそ、70年代最後の「バトルフィーバー」は、時代を読む上で非常に貴重なドキュメントだと言えます。私が抗しがたい魅力を感じるのも、その辺りに原因がありそうです。

 そして、今回ゲストで登場したバトルケニアこと曙四郎を演じたのが、大葉健二さん。

 大葉さんは本名の「高橋健二」として、アカレンジャーの後期スーツアクターを務められていたのは有名ですが、「大葉健二」としてのデビューが、正にこのバトルケニアでした。顔出しもスーツアクターも出来るという、オールマイティなアクション俳優として、その存在感は抜群。本編ではコミカルな演技も評価され、次作のデンジブルー役にも続投。そして、その1年後、「ギャバン」に抜擢されるわけです。

 数多いJACスターの中でも、真田広之さんや春田純一さんと並んで、大葉さんの人気は突出していますが、やはりそれはヒーロー番組での個性溢れる演技と、50歳を超えた現在でも現役アクションマンとして活躍する等、「大葉健二ならでは」が多数挙げられるからだと思います。

 そんな大葉さん、遂に「ゴーカイジャー VS ギャバン」に出演され、ギャバン、バトルケニア、デンジブルーの三役を演じられるとの事。あまりにも凄いのでクラクラしてしまいますが、これは絶対に見に行かなくては!

 今年のこのブログはこの辺りでお開き。来年もよろしくお願いいたします。