第43話「伝説の勇者に」

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 ハカセ編後編です。

 大方の予想通りというか、まぁ展開自体はどうという事もないのですが、「出来る事を一生懸命やれば良い」という理念の再確認は、なかなか熱かったですね。ついでに、ハカセが「純粋な戦力」としては、やっぱりあんまり有効ではないと言う事も再確認されました(笑)。直截的な言い方をするならば、ハカセがメンバーに居る「利点」は、その「家」を守る能力と、巧くはないがトリッキーな戦術にあり、メンタリティの話で行くならば、ハカセはアイムと並ぶムードメーカーだという事です。

 ずっと引っ張ってきたハカセの過去が、それ程魅力的ではなく、むしろハカセは現在進行しているキャラクター性の完成度が高い為、あまり深みのあるエピソードであるとは言えませんでしたが、年末商戦に向けてのアピール度はバッチリでしたね。

 というわけで、全体的にハカセをフィーチュアしつつも、ハカセ成分よりむしろ、細かい部分で今後の展開に関わるトピックが散りばめられている方が印象に残ります。それは主に敵側なんですけどね。


 まずダマラス、あの扱いで良かったのかなぁ...としみじみしてしまいました。

 良かったと思うのが半分、悪かったと思うのが半分。そして、両方が合わさっても、決して中途半端ではなく、喝采と切なさの間で揺れる感覚。

 「悪かった方」は、インサーン以外のザンギャック・レギュラーが、これで全滅状態になった事。そして、本来ワルズ・ギルの弔いの意味を掲げていたにも関わらず、物凄く希薄になってしまった事。この二点です。

 ちょっとした味付けに過ぎない事だったかも知れませんが、一度はワルズ・ギルを死に追いやった張本人と誤解されて投獄されているわけですよ、ダマラスは。牢から「自力で」出て、仇討ちに燃えるという、文字通り「燃える」展開を期待させたのに、前回の早い段階からフェードアウト。引き合いに出すのは変かも知れませんが、「ダイナマン」最終編での、カー将軍の「忠義」の重さに比べると、妙に薄っぺらに感じられてしまいます。最終的には、「宇宙最強の男」のプライドを懸けて散ったように見えましたもんねぇ。結局エゴイストだったのかよと...。

 実際、ダマラスは、キャラクターとしては殆ど空気扱いだったにも関わらず、そのデザインの秀逸さ、スーツアクターさんの的確な動作、石井康嗣さんの素晴らしい演技により、存在感は充分にあったわけで、逆に空気扱いな分だけミステリアスだったとも言えます。それが、「宇宙最強の男」という、ある意味チープな肩書きを突如与えられ、慢心からバスコに隙を突かれ、年末商戦ボンバーにメッタ打ちにされて堕ちるという、何とも哀れな結末を迎えてしまいました。私としては、ワルズ・ギルに父親のような思いを抱く、「ザンギャックの人格者」として目立って欲しかったなぁ...と思うわけです。

 逆に「良かった方」は、主にゴーカイジャーとの対比の部分においてです。

 ここでゴーカイジャーはダマラスに勝利したわけですが、その勝利は偶然の上に成立したものに近い。つまり、ダマラスを倒すには、ある程度運が必要だったという事。その意味で、「宇宙最強の男」の面目は保たれた事になります。「宇宙最強の男」をも易々と倒す程、ゴーカイジャーの戦力はアップしているという展開でもいいのですが、それだと単なるチート合戦に陥ってしまうので、常にギリギリの線で拮抗している方が面白いのは間違いないです。

 そういった面で、バスコの奸計と不意討ち、ハカセの攻撃を避けないダマラスの慢心といった、高度な展開をさりげなく散りばめつつ、ダマラスとゴーカイジャー双方の絶妙な戦力のバランスを描いたのは、素晴らしかったと思います。新必殺技を編み出すのではなく、正面から攻撃し続けて倒すという展開も良い感じでした(巨大戦の場合は、ある意味新必殺技になってましたが)。

 この「良かった方」はバスコの謎めいた行動を引き立てるという面でも、好影響を及ぼしていると思います。戦力的には「ダマラス未満」とされたバスコですが、それでもゴーカイジャーを軽く手玉に取れるくらいの強さは保っています。ゴーカイジャーには「バスコを超える」という命題が突き付けられたままなわけですが、バスコは、大いなる力をコンプリートする為に、どうしてもマーベラスを生かしておく必要があるらしく、簡単にゴーカイジャーとバスコを戦わせない為のクサビが打ち込まれました。これで、バスコは純粋に第三勢力として行動出来るようになり、新体制ザンギャックを交えての、緊迫の三つ巴戦が期待出来るわけです。

 ちなみにバスコと言えば、今回サンバルカンとファイブマンの大いなる力を手に入れたと言っておりましたが、これって、やはり「先輩ゲストを望めない戦隊」という事なんですかねぇ?

 さて、ハカセ編ですから、ハカセについて言及しておきませんと。

 放送当初から、その独特のキャラクター性がクローズアップされ、当然の如く、その過去が興味の的となったハカセ。ある時期はザンギャックのスパイじゃないかと噂されたり、実はアカレッドその人なのではないかと言われたり、話題は尽きませんでしたが、実際にはそんなサプライズじみた展開は用意されず、ハカセはハカセでした。そして、前回より引っ張られた「伝説の勇者」は、ハカセの嘘だったわけです。

 この「ハカセの正体」については、拍子抜けしたという感じ方と、それで良かったという感じ方、それぞれがあると思いますが、私は後者の方が強かったです。今回再確認されるまでもなく、ハカセが自分に出来る事を精一杯やってきたのは、シリーズ当初から実感として感じとれるものであり、ここでハカセの素性について大どんでん返しがあったとした場合、到底納得出来るものではないと思います。かつて、「ウルトラマンネクサス」で防衛チーム内に最終ボスが紛れ込んでいたという展開が用意されましたが、各隊員の描写が割と丁寧なシリーズだった為、唐突過ぎて納得するのに時間がかかりました(放映期間短縮のデメリットが表出したという見方も出来ますが)。今回決着を付けられたと言って良いハカセの設定は、これで大正解だと思います。

 そして、今回のハカセの活躍は、明確になったハカセのキャラクター設定を受けて、さらに深化しているのではないでしょうか。

 アクション面では、素面でもトリッキーなアクションに挑戦していて、素晴らしい出来栄え。細かいながらも身体全体の動きが必要なアクションであり、かなり難易度が高く、並外れた努力の跡が伺えます。勿論、変身後は通常の二倍増しくらいの充実度で、ハカセ主役回を彩ってくれました。

 ザンギャックからあまり注目されていない事を逆手に取った、見せかけ正面突破作戦に加え、まさかの「7番目のゴーカイジャー」=ナビィの活躍など、展開自体もトリッキーで、ハカセならではの見せ方が常に意識されていたように思います。バスコまでトリック使ってましたからねー(笑)。

 マーベラスの発言、アイムや鎧の発言含め、徹頭徹尾ハカセが「必要な人材」とされる作劇も爽やかで、エピローグにて、「単なる食事担当」に貶められている処さえも爽やか! 二話分使ってじっくりと描写されただけの事はありますね。

 ところで、今回の豪快チェンジは、かなり変則的。

 まずはハカセ単独でのマーベラス救出シーンで、ギンガグリーンとマジグリーンにチェンジ。特にマジグリーンへのチェンジでは、魔法でゴーミンの足止めを行うなど、効果的な描写が光っていました。

 六人勢揃いでのチェンジは、「オールグリーン」という非常に珍しいものに。「オールグリーン」には、Goサインの意味もあり、巧いダブルミーニングが冴えています。マーベラスはデンジグリーンに。アイムのグリーンフラッシュと共に、デンジパンチ&プリズムカイザーのパンチを叩き込むという演出が冴えます。ジョーはシンケングリーンに。鎧のシュリケンジャーと共に、冴える剣技を炸裂させます。このシュリケンジャー、モードチェンジまでしており、追加戦士に多く見られるモードチェンジが、豪快チェンジでも実現可能である事を示しました。ルカはシシレンジャー、ハカセはミドレンジャーにチェンジ。大輪剣とミドメランの飛び道具攻撃を見せてくれます。それぞれの戦術を生かしたタッグ攻撃は新鮮でしたね。よく選抜したものです。

 そういえば、名乗りシーンが新撮でしたね。ダイナマンのようなバックの爆発がフィーチュアされていました。一気に「スーパー戦隊」の雰囲気になりますよね。

 そして、エンディングの映像が「VS ギャバン」に! 録画を見た際、思わず3回繰り返して見てしまいました(笑)。バトルケニアが飛び掛ってくるアクションに、地味に感動してしまいましたねぇ...。

 来週は何となくほのぼのした感じなのでしょうか。パンダの隣に立っているサンタクロースが気になって仕方ありませんね(笑)。