第40話「未来は過去に」

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 タイムイエロー=ドモンこと和泉宗兵さんをゲストに迎えた、変則的な先輩ゲスト編。

 私は「ゴセイジャーVSシンケンジャー」を未見なのですが、何故かゴーカイジャーが出てきて「海賊版ってやつ」と言い、骨のシタリをやっつけるという展開は知っていました。骨のシタリは「シンケンジャー」における「外道衆の深み」の一端を担うキャラクターだったので、この扱いは酷いよな...などと思っていたのですが、今回の「再放送」で、その酷さを確認いたしました(笑)。

 私は、前述の劇場版にゴーカイジャーが出てきて豪快チェンジする展開を、「顔見せ」を目的とした「例外的措置」だと思っていて、レジェンド大戦との整合性といったものは無視出来るものと考えていたのですが、まさか整合性を確保する話が出て来るとは、思いもよりませんでしたね。何ともマニアックな。

 マニアックと言えば、「タイムレンジャー」は非常に人気の高いスーパー戦隊でありながら、万人受けしている印象に乏しいのは、その少々マニアックな作風にあると思います。今回が「置いてけぼり感」を強めているのは、正にそのマニアックさを継承しているからであって...。

 続きではその辺りについてツラツラと。


 「タイムレンジャー」。実は、全部通してちゃんと見ると、決して難解な話ではなく、「ジェットマン」程モヤモヤして視聴にパワーを要するシリーズでもありません。永井大さんのアクションはキレがありつつ爽やかにまとめられているし、女性リーダーを務めた勝村美香さんは戦隊初のツンデレを魅力たっぷりに演じていました。各キャラは、ある程度重いものを背負っているけれども、仲間の友情でそれらを乗り越えていく様が描かれ、それは正にスーパー戦隊シリーズそのものだったわけです。

 ただ、あまりにアバンギャルドなプログレ風主題歌(私はプログレファンなので、今でも聞く度に鳥肌が立つほど好きですが)は、作品をマニアックな印象に彩り、基本的に私利私欲の為に動く追加戦士・タイムファイヤーは、元々「タイムレンジャー」が持っていた爽やかさを、ややスポイルする結果となりました。また、タイムロボやタイムシャドウの、ハードSFを意識したデザインは、当時のニーズを微妙に外していたようにも見受けられます。

 未来から来た戦隊という設定は、終盤に近づくにつれてやや難解となり、一話たりとも見逃せない構成へと加速して行きますが、この辺りの盛り上がりとマニアックな印象のエスカレートは比例していたように思います。エピローグは去る者と残される者の悲哀が、子供向け番組を逸脱しており、大人にとっては非常に見応えあるものに仕上がっていましたが、メインターゲットである子供達にとっては、やや最終回としてのカタルシスに欠く感は否めなかったのではないでしょうか。

 実は、今回のお話は、そういった要素が見事に当てはまってしまうのです。

 まず、全体的な雰囲気は、「ゴセイジャーVSシンケンジャー」の豪華な絵面をフィーチュアしているだけあって、派手で爽快。マーベラス達五人の活躍と、鎧の話が分離しているのも、ヘンに「ゴセイジャーVSシンケンジャー」にゴーカイシルバーが登場していない事の言い訳を埋め込むより、潔くて分かりやすいです。地球人の子供(実はドモンの息子)との交流も、鎧ならではでしたし。

 この点は、「タイムレンジャー」全体のビジュアルの豪華さ(大ヒット映画「マトリックス」シリーズを踏襲)に通ずる処、大です。

 問題は、「ゴセイジャーVSシンケンジャー」未見の視聴者に向けての、あるいは「ゴセイジャー」の構造を知らない視聴者に向けての、ひいては「タイムレンジャー」を知らない視聴者にむけての、説明を要する部分が殆ど抜け落ちてしまっている事。

 この辺りは、一話たりとも見逃せない「タイムレンジャー」本編に通じているような気がします。こういった幼児向けコンテンツは、話を分かりやすくすべく、何度か(というより執拗に)回想シーンを交えたりするものですが、「タイムレンジャー」はあまりそういった意識がなく、怒涛のように突っ走っていく印象すらありました。その疾走感は、今回のエピソードにも感じられる処でしょう。

 「ゴセイジャーVSシンケンジャー」未見の視聴者にとっては、骨のシタリやナナシ連中といった外道衆相手に、何故ゴセイジャーとシンケンジャーが手を取り合って戦っているのかが、ちょっと理解不能だと思います。

 あ、今気付いたんですが、「ゴーカイジャー」の世界の時系列では、この「VSシリーズ」が「正史」扱いなんですね。サラッと流されてますが、テレビ版の一つのエピソードに複数の戦隊が登場するのは、今回が初なんですよ。第1話のレジェンド大戦は例外として。

 で、「ゴセイジャー」未見の視聴者にとっては、メタルAが何者かさっぱり分からない。シリーズとしては直近の戦隊なので、特に説明する必要もなかろうとの判断だとは思いますが、絶対にこの先「ゴーカイジャー」のストーリー構成に関わるキャラクターではない上、データ収集するという思わせ振りな行動は、何らかの伏線に勘違いされてしまうのではないでしょうか(笑)。

 そして、「タイムレンジャー」未見の視聴者にとっては、森山ホナミとその息子の登場に感慨を得る事もなく、突如のドモンの涙に戸惑いを覚えたのではないでしょうか。和泉さんの的確な演技に深みがあり、あの涙とセリフで状況を何となく飲み込めるように組み立てられてはいるのですが、「匂わせる」という方向性には勝ち過ぎているし、「分からせる」という方向性には不足しています。制作陣もギリギリまで迷ったそうですが...。

 もう一つ、ドモンが何故あの神社の焼失を防ぎたかったのかが、よく分かりません。思わせ振りな壷がクローズアップされましたが、伏線を張るにしては印象が薄過ぎるので、「投げっぱなし」な印象が否めない処です。まぁ、何らかの前振りである事は間違いなさそうですが。

 こんな感じで、単体のエピソードとしては、あまりにも「不親切」。「タイムレンジャー」や「ゴセイジャー」を知っていて、思わず感動してしまった私ですら、どこか「アレっ?」と思ってしまったくらいですから。

 しかしながら、知っていれば終始「オオっ!」と唸らざるを得ないのも本エピソードの特徴。ファン(それもマニア寄り)向けだと割り切っている作風だと理解すれば、これ程面白いエピソードもないわけです。骨のシタリやメタルAといった「二番手」を連続で登場させるマニアックさには、思わずクスっと笑ってしまう事でしょう。そして、去る者にならざるを得なかったドモンと、残された者にならざるを得なかったホナミが、偶然性という糸を、時空を超えて結び合ったという事実が、胸を熱くしてくれます。ドモンの人選は、正に正解だったわけです。

 なお、全国のあちこちを転々としたという、鎧の生い立ちも判明し、「ゴーカイジャー」の物語としても、少しだけ前進しているのは、良いことですね。

 さて、豪快チェンジは、結構目まぐるしいです。

 鎧はシンケンゴールドで「防」のモヂカラを駆使。サカナマル連続斬り等、オリジナルを継承・発展させたスタイルが良い感じでした。キングレンジャーにもチェンジし、パワーファイトを繰り広げてシンケンゴールドとのコントラストを作ってくれました。

 マーベラス達五人は、レッド揃い踏みで。ゴーオンレッド、デカレッド、マジレッド、ゲキレッド、ボウケンレッドというセレクトにより、骨のシタリを撃破します。このシーンは、「ゴセイジャーVSシンケンジャー」のシーンの流用と思われるのですが、違和感がありませんでしたね。

 トリは当然の如くタイムレンジャーで。タイムファイヤー入れての六人編成は目新しい感じです。「マトリックス」を意識しまくった変身シーンが再現されており、BGMも例のプログレ主題歌のインストとあっては、興奮必至。ダブルベクターを使用しての様々な技も多数繰り出され、タイムレンジャーの戦闘シーンとしても高い完成度を誇っていました。

 巨大戦では、黒騎士ヒュウガの大いなる力が初登場。ギンガマン編から随分と経っているので、すっかり忘れてました(笑)。

 次回は、いよいよ皇帝が登場。「風雲急を告げる」となりそうですねー。