第38話「夢を掴む力」

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 前回は「ワルズ・ギル編」とも言うべき物語でしたが、今回はゴーカイジャー自体の大いなる力も登場し、正統に「ゴーカイジャー編」でした。

 ラストのマーベラスのセリフにもあるように、「ゴーカイジャーが真に(スーパー戦隊としての)ゴーカイジャーとなった」転機となるエピソードであり、カンゼンゴーカイオーの登場にも象徴されるように、ラストスパートに向けての「整理」がなされたという感があります。

 今回の整理は3点。

 ジョーとバリゾーグの決着、ワルズ・ギル退場、海賊戦隊(特にマーベラス)のポリシーの最終確認です。前回が、その前段階として舞台装置の段取りを付けたとすれば、前回の中途半端な構成も納得出来るというもの。

 でもねぇ...。3点を一気に「整理」するには尺が短すぎるというか。やっぱり駆け足になってしまい、掘り下げられるべき部分がかなりサラッと流されてしまった感じがしてしまいました。

 では、続きの方で1点ずつ。


 まずは、海賊戦隊のポリシーの最終確認について。

 この点は、やや分かり難い処がありますね。マーベラスはアカレッドのように、「仲間を守る」行動をしたわけですが、夢の中に現れたアカレッドの言葉によって、マーベラスは「本当に守るべきは、仲間との絆」であると気付くという展開。しかし、これまでの展開でそういったポリシーが重視された事はなく、海賊戦隊のカッコ良さは、意識せずとも仲間との絆が強固であるという点にあったのですが。

 今回のこれは、スーパー戦隊シリーズの醍醐味である「チームで一丸となって戦う」という点を、ゴーカイジャーに適用するにはどうすれば良いかという考察から、逆算した展開っぽいんですよね。動機付けとして、前回のマーベラスの自己犠牲的行動があったのは良いですが、肝心の「再確認」が、アカレッドとの対面における延々たる会話のみでの描写というのは、少々弱い気がします。

 一歩進んで、ようやくマーベラスがアカレッドの呪縛から解かれ、真に赤き海賊団の頭領としての資格を得たという雰囲気が欲しかった処ですね。ただ、マーベラス率いる一団は、「赤き海賊団」ではなく、あくまで「ゴーカイジャー」だというロジック自体は、良かったと思います。

 続いて、ジョーとバリゾーグの決着。

 こちらも、敵味方の因縁話としては、最もドラマ的に掘り下げられるポテンシャルがあり、一度は先輩ゲストにアドバイスを受ける程の扱いだったわけですが、その先輩ゲスト編を最後に、大したドラマも展開されず、大いに消化不良。

 回数自体はごく少ないながらも、ジョーとバリゾーグの対決は、剣術アクションとしては最高水準の殺陣を展開して、毎回楽しませてくれました。それ故に、「剣と剣で語り合う」という部分では説得力もあったと言えるでしょう。バリゾーグの中に存在する筈のシドが、ほぼ完全に失われているという設定にした為に、バリゾーグの葛藤が一切期待出来ないのを逆手に取り、ジョーを葛藤させる事で盛り上げたのは、良い選択でした。しかし、ジョーが葛藤したのは、前述の大原丈のゲスト編まで。しかも、「足掻いてみる」と言った割には、バリゾーグという存在を消滅させる事でシドの魂を開放するという結論に、かなり早く到達してしまったのは、少々興醒めな感も。

 とりあえず、何らかの奇跡が起こり、シド先輩が元の姿に戻ってメデタシメデタシにならなかったのは良かったですね(笑)。私がこの対決で最も感心したのは、互いの剣を打ち付ける衝撃で、ゴーカイブルーのスーツが粒子状に砕け、ジョーが露わになるというシーン。大ダメージを受けて変身解除されるという黄金パターンでなく、対決のテンションを完全に持続しつつ、ジョーが素顔で決着を付けるという、燃える展開に繋いでいるのが凄いです。ここでの芝居のテンションは正に最高潮。何だかジョーの物語がここで終わってしまったかのような、凄味がありましたね。

 3点目は、ワルズ・ギル退場。

 私が思うに、これぞ最も中途半端なポイント。シリーズ随一の「バカボス」が、いきなり最強兵器を手に入れて、バカにしてきた奴等の鼻を明かすと意気が上がり、そして大したドラマも生み出さずに散っていく...。哀れ。いと哀れ。

 前回、私がちょっとだけ予想した、ダマラスの「親心」的なものが垣間見られたのは、かなり嬉しいポイントではありますが、それにしても哀れ。もっと哀れなのは、前回で見せたグレートワルズの圧倒的な強さが、今回殆ど描かれなかった事。カンゼンゴーカイオーに敗北するのは展開上良いとしても、それに至るまでに善戦が殆ど見られないのは痛い処です。前回は、派手にピカピカ光りまくって、完膚無きまでに...といった趣でしたが、今回はいつもの行動隊長の攻撃並みという...。やはり尺不足の感は否めませんねぇ。

 「整理」がついた処で、これからどのような展開になるのか、まだ予想は付きませんが、より「地球を守る戦い」にシフトしていく可能性は、あまりないのではないかと思います。「仲間との絆を守る」という事が、地球人である鎧との絆を内包している事は自明なのですが、それを一歩進めて、鎧がこれまで故郷を守ってこれなかったメンバーの二の舞にならないよう、地球を守るという論理的展開は、感じられません。むしろ、そういう展開に行き着く事で、魅力が半減してしまう恐れがあり、これからは、かなり慎重な展開が試みられるのではないでしょうか。次回に、軽めのキャラクターである伊達健太を登場させる先輩ゲスト編を持って来る辺り、その辺のバランスを考慮しているように思います。

 今回は、豪快チェンジが登場しませんでした。徹頭徹尾、ゴーカイジャーの物語だったと言えるわけですが、中盤までに見られた、「通常編の神憑った完成度」がやや低迷しているのが気になりますねぇ。相変わらず、ビジュアル面には一切の妥協がなく、特撮と芝居の融和度も非常に高くなっていて素晴らしいのですが。やはり3クール目は「起承転結」の転に当たる部分であり、制作の難しさも相当なものなのかも知れません。

 次回はメガレンジャー編。「メガレンジャー」、エンディングが超名曲でしたよね。青春と友情、最近ではやや照れを含むキーワードですが、エンディングに象徴されるように、それらのキーワードに真っ向から挑んだシリーズでした。健太の「その後」が楽しみです。

 そういえば、巨大戦で宙明節が聴こえてきたような...。何だか興奮してきましたぞ!!