第31話「衝撃!!秘密作戦」

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 「オーレンジャー」から二人の先輩ゲストが登場するという、大サービス編。さらに、バスコの驚愕の正体が明かされるというイベント編でもあります。

 正直、バスコのイベントにオーレンジャー編を組み入れて欲しくはなかったのですが、駆け引きを含んだ筋運びがそれなりに面白く、「オーレンジャー」の軍事戦隊としてのエッセンスが、巧く取り入れられていたと思います。

 ただ、ちょっと「うーむ」と考えてしまう面も。

 バスコの正体がエラく強いという部分、そして、「オーレンジャー」という作品そのものに由来する部分。この二つが今回の出来を今ひとつな雰囲気にしているように思います。

 続きでは、その辺を。シルバーウイークでクタクタになったので(笑)、今回はかなり軽めです...。

 オーレンジャー関係は後述するとして、まずバスコについて言及します。

 恐ろしく、そして強力なパワーを持っていたという、バスコの正体。その変身シーンは、美麗な赤いオーラのエフェクトと、顔面にオーバーラップする醜怪なマスクが、強いインパクトを残します。「ゴーカイジャー」では、随一の怖いシーンだったのではないでしょうか。いつもニヤニヤしているバスコが、怪物化するインパクトは、かなりのものがあったと思います。

 しかし、一応、ただの厨房担当(?)だったバスコに、何故か多額の賞金が賭けられているという伏線があったようですが、正直、私は完全に頭にありませんでした。あまり効果的なエクスキューズではなかったような気がしますねぇ。その点も含めて、今回の「バスコの正体」はやや唐突な印象がありました。

 あくまで私見ですが、バスコの魅力は、ヘラヘラしていて、相手を食ったような言動をとり、サリーや巨大戦力、そして追加戦士のレンジャーキーで自らの戦力の弱さを補っている(ただ、素面での格闘能力はマーベラスと拮抗している)卑怯者。こんな感じだったと思います。元々、自力でゴーカイジャーを完膚なきまでに叩きのめせるという実力を持っているとされても、ちょっと納得出来かねるわけです。

 確かに、ザンギャック勢はワルズ・ギルのヘタレっぷりに牽引されるように、弱体化の一途を辿っており、急に新しく恐ろしい敵が登場しても、それはそれで急場作りな匂いがプンプンしてしまうわけで、バスコという序盤からのキャラを活かす方向性は良いと思います。ただねぇ、やっぱりちょっと唐突過ぎるんですよねぇ。全然卑怯な手を使う必要ないじゃん、ていう。

 マーベラスを弄んでいて、それを存分に楽しんでいるという事で、とりあえず納得する事にしましたが、それでも、ちょっとバスコの魅力半減って感じは否めませんな...。

 さて、その辺りを度外視すると、バスコとオーレンジャー陣営の駆け引きは、かなり見応えがありました。

 その前哨として、チェンジマン、フラッシュマン、マスクマンの大いなる力が奪われるというシーンがあります。と言っても、具体的なシーンが登場したのは、チェンジマンだけでしたが、これが当時のファンならば涙モノのシーンでした。地球守備隊という単語、その制服は「チェンジマン」の世界そのもの。あの男性隊員は、剣飛竜、疾風翔、大空勇馬のうちの誰かであり、現在も地球守備隊の一員、あるいは高官として活躍している事が示されたわけです。

 その地球守備隊とは別に、防衛組織としてのU.A.O.H.が存在(ちなみに、ナビィの言っていた「ウアオー」は、「カーレンジャー VS オーレンジャー」でも誤読として登場)し、星野吾郎=オーレッドが高官として勤務しているという、そのミリタリズムに富むカッコ良さ! 久しく軍事戦隊は登場していませんが、独特のカッコ良さはやはり捨て難い魅力がありますよね。

 その星野吾郎が、オーピンクの丸尾桃と共に、バスコを罠にかけてこれを討伐する作戦を立案した...というのが今回の本筋。ある意味、ゴーカイジャー置いてけぼりの展開なのですが、星野吾郎という類稀なる典型的なレッドヒーローを動かすには、このくらいが丁度いいのではないかと。

 一方で、丸尾桃はゴーカイジャーを足止めする役割を担っていたわけですが、その言動は当時の桃というより、むしろ現在のさとう珠緒さんそのものといった感じで、かなり笑えます。「オーレンジャー」当時から、既に15年の歳月が流れたわけですが、年を重ねたとは言え、当時よりも可愛らしさが増している気もしますな...。

 ただ、桃が軍人の顔にキリッと切り替わる辺り、なかなか素晴らしい演出&演技でした。桃は天然系というキャラクターでは特になかったので、あくまで作戦の一貫として、ああいうキャラを演じて見せていたというのが、いいですね。素のさとう珠緒さん的には、完全に逆なのかもしれませんが(笑)。

 そして、軍の正装ではなく、当時の制服に身を包んだ星野吾郎が、またカッコいいんです(正装も異様な迫力でカッコ良かったですよ)。当時、結構話題になった、立ち回り時の「ォワッターー!」という気合も披露され、私にとってはもう鳥肌モノでした。ややアクションのキレに難のあるカットもあったように見えましたが、長身に抜群のスタイルは当時のまま、そして力強いリーダーである吾郎の姿は概ね再現されており、満足の行くものとなっていましたね。

 バスコとの駆け引きは、さすが軍事系戦隊といった感じで、両者が一手先を出し合いながら、徐々にバスコが有利になっていく展開は、「ゴーカイジャー」単独では困難な展開だったと思います。ただ、この駆け引きを思わせる作戦、「オーレンジャー」本編ではあんまり披露されなかったような...。とかく、「オーレンジャー」は兵器開発競争という側面が強いイメージがあるので、こういったスパイアクション的なエピソードは、むしろ「ゴレンジャー」に近い印象がありますね。

 星野吾郎役の宍戸勝さんは、「オーレンジャー」当時のままのイメージ、いや、イメージどころか、ホントに全く変わっていないのには驚かされました。数年前、突如テレビで見かけた際、「敏いとうとハッピー&ブルー」のリードボーカルになっていて、度肝を抜かれた覚えがあります。厳密に言えば、私は「ハッピー&ブルー」の世代ではないですが、ムードコーラスというジャンル自体かなり好きなので(笑)、「オーレッドがムード歌謡の歌手に!」というトピックは、私を興奮させるに充分でした。現在は、グループを脱退してお一人で活躍されているようですね。

 このように、オーレンジャー陣営の再現度、そしてオリジナルからの連続性の高さは非常に良いのです。しかし、何かが物足りないのは何故かという事を考えた時、オリジナルの「オーレンジャー」という作品と、この「ゴーカイジャー」の相性が今ひとつなのではないか、という論が成り立つのではないでしょうか。

 相性云々と言っても、あくまで「先輩ゲスト編」には使いにくいという意味です。

 これまで、先輩ゲスト編はその戦隊のポリシーを継承するというテーマで、大体一貫していたと思います。その点で行くと、「オーレンジャー」にポリシーを求めるのはとても難しいのです。軍事系の戦隊は地球平和の為の活動に疑念もないし、特に「オーレンジャー」に関しては、超古代文明を現代の科学で蘇らせて、機械の敵と戦うという構図だった為、それまでの戦隊の要素をごった煮にして、ロボットや新兵器をこれでもかと投入し、絢爛豪華に戦う戦隊と言えるものでした。

 一応、地球が制圧されてゲリラ戦にまで移行しても、諦めずに戦い抜いたという、「オーレンジャー」ならではの展開もありましたが、それを「ゴーカイジャー」に持ち込むのは、困難なのかな...と。

 よって、テーマ性の希薄な先輩ゲストでは、単に「ゴーカイジャー」のポリシーを確認する話にするしかない...というわけで、今回のようなエピソードになったのではないでしょうか。今回、「総体としてバスコを討伐出来るというベネフィットが得られるなら、海賊に大いなる力を提供しても構わない」とするオーレンジャーに対し、「大いなる力は自分達の手で手に入れてこそ意味がある」とするゴーカイジャーのポリシーが確認されました。継承するポリシーが無い場合は、元々持ち合わせているポリシーを再確認するという展開になって、当然だと思います。

 問題は、大いなる力が漠然としていて、バスコのように力づくで奪う方法を採らない限り、それはやっぱり先輩から「与えられる」という受身の存在を逸脱しないという事。今回の説得力のなさは、「結局星野吾郎からもらってるじゃん」という、やや本末転倒な筋運びにあると思います。吾郎は元々、八割方、大いなる力を手渡すつもりだったわけで、印象的に、海賊達を認めたから与えたという感じではなくなってしまいました。

 それから、ラストも先輩ゲスト編の割には、あまりに後味が悪い。巨敵であるバスコの強さを描く為には仕方ありませんでしたが、もうちょっとオーレンジャーを立てても良かったのではないかなぁ、と思います。

 では、豪快チェンジをまとめる前に、バスコの繰り出したレンジャーキーを列挙しておきましょう。

 今回登場したのは、シグナルマン、デカマスター、デカスワン、マジマザー、ウルザードファイヤー、ズバーン、黒獅子リオ、メレ獣人態、姫シンケンレッド。スタンダードな追加戦士ではない、いわゆる異色の面々が集合です。

 このレンジャーキー達との大乱戦は、かなり世紀末的というか、地獄絵図。様々なアクションの組み立てがなされており、充実度は高く、またかなり長い! 戦隊スーツならではのアクション性の高さも相まって、劇場版もかくやといったシーンに仕上がっています。

 そして、豪快チェンジは真打のオーレンジャー。何と、鎧をキングレンジャーにチェンジさせず、五人での豪快チェンジになりました。各個人武器も登場し、個人の印象的な必殺技もそれぞれ披露。この大充実振りには目を見張ります。超力ダイナマイトアタックも登場し、さらに大いなる力の発現として、オーレバズーカがまさかの登場! ハイパーストレージクリスタルの装填から発射まで、再現度は完璧でした。これは嬉しいですね。

 ここでの最重要トピックは、BGMが主題歌インストではなく、挿入歌の「虹色クリスタルスカイ」だった事。劇中で頻繁に使用され、数ある戦隊挿入歌の中でも、屈指の人気と完成度を誇る同曲が用いられたのは、正に当時のファンへのサービスでしょう。私も涙が出そうになりました。

 そんなわけで、怒涛の先輩ゲスト連続月間は終了という事になりました。今後も、あっと驚くようなゲストが予定されているとの噂。期待しましょう!