第30話「友の魂だけでも」

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 いやはや、「先輩ゲスト編」のお手本のようなエピソードでしたね。

 確かに、「本物の変身後のイエローライオン」が出たわけではないし、クライマックスのバトルが始まってからは、一切大原丈が姿を見せない等、8〜9月期のド派手な先輩ゲスト編に比べると、若干ヤキモキしてしまうような感じはありましたが、「大先輩の奥ゆかしさ」が色濃く醸し出されていたのではないでしょうか。

 私自身は、丁度学校での活動が忙しかった上に、当時は録画してまで見ようとする程、戦隊に熱を上げていなかったので(逆に「仮面ライダーBLACK」と「RX」には熱を上げてましたが)、「ライブマン」を殆ど視聴しておらず、かなり曖昧かつ一般的に眺められる情報しか知識として持ち合わせていません。しかし、少年王ビアスが登場した辺りから最終回は何となく見た覚えがあり、骨太なドラマに驚いた記憶があります。

 「ライブマン」は、記念作品として鳴り物入りで登場し、途中からのチーム増員、スーパー合体の始祖等、大変トピックの豊富な戦隊であり、一定以上の成功を収めた作品だと認識していますが、何故か、ローカルな再放送にもソフト化にも恵まれず、長らく不遇の戦隊でした。嶋大輔さんや今回登場した西村和彦さん、そしてタレントを引退された森恵さんも、それぞれ、タレント、歌手、俳優としてメジャーな地位を確立したにも関わらず、長らくビデオソフトの話も、LD化、DVD化の話もなく、作品自体のネームバリューとの乖離が激しかったように思います。

 その為、「ライブマン」は、見たくても見られない戦隊の最右翼となり(スカパー契約すれば見られましたが...)、ようやく最近になってDVDが発売されたのでした。しかし、まだ私は見ておりません...。見たい。

 というわけで、「ライブマン」に対する渇望感が募るわけですが、幸い、今回は良質かつ的確なキャラクターの捉え方により、その渇望感を潤してくれたように思います。

 いかに的確であったか、それを続きの方にまとめてみました。


 ゴーカイジャー側で言えば、今回はジョーがメイン。大原丈も「ジョウ」であり、同じ呼び名を持つ二人をめぐり合わせる作劇が面白いです。

 これは、「ジェットマン編」で「ガイは二人も要らねぇ」とばかりに鎧を蚊帳の外に追いやったのとは、対照的。同じ名前だという事で丈にジョーへのシンパシィを抱かせ(ているように見え)、境遇を重ねあわせてみせる等、とにかく話の運び具合が巧いんですよね。

 まずはジョーの方に目を向けてみると、バリゾーグとなったシド先輩に対し、諦念を抱くに似た決別をしていた事が明らかになります。以前、シドを失った絶望感を振り払う傑作話がありましたけど、強い意志で振り払っていたように見えて、実はある部分で諦めを伴っていた事が今回暴露され、クールなジョーのメンタルな部分が浮き彫りにされました。

 ジョーは割りと感情移入を拒むタイプのキャラクターですが、こういう要素が導入されると、一気に感情移入を許容するキャラクターに化けます。今回が、特にジョーへの感情移入をディレクションしているわけではないと思いますが、感情移入が許容される事によって、深み、厚みが増すのは確か。シリーズ後半に入り、キャラクターをある程度整理していくには(バリゾーグとの因縁決着への伏線としても)、必要な事なので、ここで巧みに、しかもサラリと描かれたのは収穫だったのではないかと思います。

 クライマックスのバトルでは、ジョーがシドの剣技を完全に会得し、それを以てザイエンにとどめを刺しており、筋が通っていていい感じでしたね。バリゾーグが全く戦闘に参加しない辺り、テーマの貫徹を欠いているように見受けられますが、逆に本人を目の前にしなかったからこそ、「もう少し足掻いてみる」という方向性がジョーの中に芽生えたような気もするので、良かったのではないでしょうか。丈が救いたい「魂」も、既に目にも見えず、手も届かないですから...。

 とりあえず、バリゾーグの秘めたる心境に変化があるかのようなカットが、二度挿入されていたのは、色々と示唆に富んでおり、今後ジョーの「足掻き」も報われるかも知れません。

 さて、大原丈です。

 戦隊出身俳優の中でも、その知名度と露出度は群を抜いていると言っても過言ではない、西村和彦さん。「ライブマン」当時は、既にネームバリューのあった嶋大輔さんと森恵さんに挟まれた、ルーキーといった感じ(あくまで個人的感想)でしたが、今となっては演技力に定評のある大物ですからね〜。画面に登場するだけで、「ゴーカイジャー」が二時間ドラマのような雰囲気に彩られ、ビシッと締まります。

 私、「ライブマン」の凄い処は、あのリーゼント頭のチンピラ風情二人(あくまで個人的印象)が、科学者の端くれという設定だと思うわけです。戦隊史上というより、特撮全般を見渡しても、あれ程科学者という肩書きと見た目のギャップがあるキャラクターはいないでしょう。

 一応、科学アカデミアでは、レッドファルコン=天宮勇介とイエローライオン=大原丈とで、成績のビリ争いをしていたという設定が付いてます。「落ちこぼれ」という設定が、見た目の雰囲気を補強している(多分、本来の企画意図は逆)ものの、そもそも科学アカデミアに入学出来る事自体が「優秀な頭脳の持ち主」であり、現在に至っても、ある種の違和感と共に、相当なインパクトのある設定だと思います。

 「優秀な頭脳の持ち主」だからといって、見た目が大人しいという事は絶対に言い切れません。これは、あくまでテレビ番組内のキャラクターの成立過程では、あまり用いられない方向性という意味で述べています。やはり見た目と設定内容のシンクロ具合は、動かしやすさという面で重要ですからね。

 「ライブマン」は科学をテーマとするより、むしろ等身大の若者の個性のぶつかり合いをテーマとしていたようです。その意味で、いかにも秀才、才媛な敵側の見た目と、いかにも落ちこぼれな正義側の見た目(岬めぐみは普通の女子大生といった雰囲気)の対比は、非常にステロタイプな効果を期待されたが故であり、実際にそういった効果を上げ、正解だったようです。この辺り、追加戦士加入によってかなり崩れてしまったようですが...。

 このように特異な性格を持つ「ライブマン」のキャラクターですが、今回はそれを非常に巧く踏まえているようです。

 「ライブマン」初期編で壊滅してしまった科学アカデミアは再建されており、多くの学生や研究者が在籍。大原丈はそこに戻って研究を続けているという設定。当時よりグンと科学者らしくなった丈の出で立ちは、やはり西村和彦さん自身が培ってきた深みから出るのだと納得出来るものです。しかしながら、ゴーミンを華麗なアクション(ホントに華麗なアクション!)でなぎ倒し、クールを装っていても煮えたぎる情熱を隠し切れないその言動は、大原丈の「その後」そのもの。

 そんなオリジナルとの強い連続性(そして丈の成長)を感じさせる的確な演技・演出により、サブタイトルの「友の魂だけでも」救ってやりたいという、丈の気持ちが、視聴者の眼前に迫るかの如く強力なパワーで表現されています。勿論、「ライブマン」を視聴していない(が、少々の知識は持ち合わせる)私でも、ここは感動しましたし、当時夢中になったファンならば、言わずもがなでしょう。

 今回が「先輩ゲスト編」として完成度が高いのは、戦いそのもの自体に先輩が関わらずとも、そのポリシーがゴーカイジャーのメンバーに継承されるというパターンに沿っているからでしょう。しかし、今回の場合はポリシーが非常にネガティヴで重々しく、特殊な雰囲気を湛えています。この辺りが非常に素晴らしいのです。

 大原丈は胸を張って「俺達は◯◯したから、お前達も◯◯しろ」とは言えない男であり、「俺達が回避出来なかった悲劇を繰り返すな」としか「言えない」のです。これは、「大いなる力」というポジティヴな「お宝」とは相反するイメージであり、敢えて丈がライブマンであった事に触れない、あるいははぐらかす等の行動から分かるように、丈自身が未だに親友の為に足掻いている事を印象づけているわけです。

 なお、科学アカデミアの研究者が、輝く蝶を放すシーンがありましたが、あのシーンは「ライブマン」のOPで撃ち落とされる蝶への「返歌」になっており、丈の「足掻き」が少し報われている事を表現しているようです。

 ちなみに、イエローライオンがダブるカットで、西村さんは実際にイエローライオンのスーツを着たそうですよ。西村さんの愛が伝わるエピソードです。

 いやぁ、西村さん、カッコいいですね! 憧れます。鎧が生まれる前にスーパー戦隊やってた人ですよ...(笑)。

 ここらで豪快チェンジについてまとめます。

 今回は、ジョーとアイムがデンジブルーとデンジピンクにチェンジ。ペッタンコのスーツが飛び出す変身エフェクト、やっぱりいいですねぇ。あれを見ると、「デンジマン」を物凄く見たくなるんですよ。バトルでは、デンジパンチを効果的に活用していて、打ち合わせる度に火花が散る描写がいいですね。現在でこそ美麗な合成で表現されていますが、当時はバッテリーを両腕につないで、実際にスパークさせて火花を出していたんですよ...。

 真打はやはりライブマン。話の流れからして、ブルードルフィンとイエローライオンが入れ替わって戦うのかなぁ...と思っていたのですが、通常通り各カラーに準拠。主題歌インストに乗って目まぐるしくも勇壮なアクションが展開されます。

 特に素晴らしかったのは、個人武器の描写がしっかり盛り込まれていた事。とかく「持っているだけ」の状態になりがちな個人武器ですが、ちゃんと各々の攻撃方法を再現しており、最後にファルコンブレイクまで飛び出しました。これは満足度の高いアクションです。

 他のアクション面では、ジョーの素面アクションが、トランポリンや高度な剣技を伴うもので構成され、こちらも満足度は非常に高いものとなっています。また、変身後のジョーが単独でザイエンに向かっていくシーンでは、他のメンバーが(納得ずくで)傍観する中、火炎弾を薙ぎ払って進むのがカッコ良すぎます! 溜めを伴うシド先輩の必殺技に繋がる、スローモーションの妙技が光っていましたね。

 そうそう、ザイエンの声は中田譲治さんで、「ライブマン」の大教授ビアスを演じた方です。現在では、声優さんとして著名ですよね。ギロロ伍長とか。「たちの悪い天才」繋がりという事で、実に深みのある演技でした。

 巨大戦では、「ライブマンの大いなる力」としてスーパーライブロボがまさかの登場。これまでは、合体前がちょっと出てきたり、剣だけが出てきたりといった具合でしたが、スーツの保存状態が良かったのか(?)、ホントにまさかの登場でした。スーパーライブロボは、現在のように当初からスーパー合体を盛り込む設計にはなっておらず、トイ開発陣が非常に苦労したという逸話が残っています。それだけに、いかにもパワーアップしたという感じの独特なシルエットが秀逸です。

 そして、夕陽をバックに決着をつける巨大戦という、「帰マン」のような美しい映像が見られました。こういう巨大特撮の充実は、特撮に対する渇望感を癒してくれますよね〜。

 次回は、星野吾郎と丸尾桃...ではなく、現在のさとう珠緒さんが登場するのか(笑)?

 先輩ゲストラッシュ、楽しんでます!


 ライブマンのDVDリリース、始まっています!

超獣戦隊ライブマン Vol.1
超獣戦隊ライブマン Vol.2