第3話「勇気を魔法に変えて〜マージ・マジ・ゴー・ゴーカイ〜」

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 スーパー戦隊シリーズの歴史は長い。しかし、過去のヒーローがゲストとして登場するというエピソードは、これまで皆無でした。勿論、VSシリーズ等は除いての話ですよ。

 今回、禁を破って(?)、遂に「魔法戦隊マジレンジャー」のマジレッドである小津魁本人が登場。しかも、パラレルワールドが云々といった理屈を吹き飛ばすかのように、「マジレンジャー」の最終話に直結する要素を携えての登場です。

 過去ヒーローのゲスト編が早くも第3話に登場する意義は、一体何なのかと疑問でしたが、これからのストーリーのきっかけとしても、ゲスト編のパイロットとしても一級の処理でした。

 まぁ、些細な点を挙げれば、フレイジェルが登場しても初見の人は???な状態だろうし、マージフォンを武器の一種として元々使いこなせない理由が乏しい等、色々あるとは思いますが、過去作の再見意欲を喚起するパワーは充分あったと思います。それでいて、あくまでメインは海賊戦隊なのがいいですね。

 では、続きの方では、ごく私的な「マジレンジャー」の思い出語りを(笑)。


 いや、いきなり思い出語りもマズいので、今回のストーリーやテーマに関して言及しておきましょう。

 今回は、非常に重要な三つのポイントが盛り込まれていました。

 一つ目としては、ゴーカイチェンジはまだ、スーパー戦隊の能力を表面上トレスしているだけで、それぞれの戦隊チームの精神性を全く無視しているということ。

 今回は「勇気が魔法に変わる」という、マジレンジャーのポリシーをゴーカイジャー(特にハカセ)が身につける事により、それに言及したわけです。要するに、「マジレンジャー」に限って言えば、ゴーカイチェンジによって魔法戦隊の戦力を使う事は出来るものの、最大の特徴である「魔法」を使っている事にはなっていないという事なのです。

 この辺り、非常に線引きが難しいのですが、「マジレンジャー」を視聴すれば分かる通り、「マジレンジャー」は乱暴な言い方をすれば、小さな勇気を見つけていき、魔法が開花していく物語でした。つまり、「勇気由来の魔法」は基礎戦力とは別にあり、ゴーカイチェンジは、あくまで「基礎戦力」を身につける手段だという事ですね。そして、「勇気由来の魔法」をゴーカイジャーが会得する為には、マジレンジャー本人と出会い、勇気にコンプレックスを持つハカセが試されなければならなかったというわけです。

 ちなみに、ハカセメイン編としても成立させている辺りも、見事ですね。

 二つ目は、ゲストがヒーロー本人でありながら、一切変身しないということ。

 これは様々な良い効果をもたらす要素です。まず、ご本人ゲストの登場を必然にします。そして、変身後が登場しない事により、安易に過去ヒーローに助けられるという展開をなくす事が出来ます。

 この点に関しては、設定的なバックボーンがしっかりしてます。過去のスーパー戦隊は力を失っており、変身出来ないのは周知のとおり。そして今回、力を失うという事は、その本人が消滅している事を示しているわけではなく、力を失った本人が存在しており、何らかの形でゴーカイジャーに関わってくるという意味が付け加えられています。

 その意味で、「魔法を忘れた小津魁」の姿は象徴的で、自分が魔法を取り戻すのではなく、ゴーカイジャーに「魔法を託す」という行動自体も実に象徴的です。

 また、「仮面ライダーディケイド」のジレンマだった、共闘による「どっちのライダーが強いのか」という問題もスッキリ解消されます。何と言っても、戦闘に参加するヒーローとしては、ゴーカイジャーだけが登場出来るんですから(笑)。あくまでゴーカイジャーが主役であり続けられるわけです。

 それにしても、橋本淳さん、メッチャクチャ大人になりましたね。当たり前と言えば当たり前ですが、やっぱり当時、いかに「少年レッド」だったかを思い知らされました。先輩レッドの風格が感じられました。

 三つ目は、34戦隊の真の力を集める物語が展開されるということ。

 私、この大風呂敷は大丈夫なのか非常に疑問で、「仮面ライダーV3」の26の秘密みたいにフェイドアウトするんじゃないかと、内心ヒヤヒヤしているのですが(笑)。まぁ、近年のシリーズ構成でそのような事態にはならないと思いますけど、バタバタとまとめてしまったり、イヤな予定調和だけは勘弁して欲しい処です。

 現実的には、近年の戦隊に限ってゲストを登場させるものと思いますし、バトルフィーバーロボをゴーカイオーにくっつけるわけにもいかないので(笑)、全話のうち34話をこの展開の為に消費するわけではないでしょう。いずれにせよ、ゲストを出せる戦隊を絞るからには、それなりに魅力が凝縮された展開を期待出来るのではないでしょうか。

 さて、今回のゴーカイチェンジは、黒縛りと白縛りが登場。黒縛りでは、アバレブラック、ゴーオンブラック、ニンジャブラックと、いずれもひとクセあるブラック達が集結。ゴーオンブラックとニンジャブラックは、女性仕様で雰囲気が随分オリジナルと違います。白縛りでは、ビッグワン、ホワイトスワン、ガオホワイトが登場。それぞれ、特徴的な必殺技を当時のままのエフェクトを携えて再現しており、特にホワイトスワンのスワニーアタックには感激しました。ちなみに、「ビッグワン・フィニッシュ」なる技はオリジナルにはなく(元々、ビッグワンはあまり戦線に参加しない)、「ガオレンジャー VS スーパー戦隊」が初出。この作品での宮内洋さん、カッコ良かったですねぇ。

 あとはマジレンジャー関連のネタ多数。サブタイトルがオリジナルのパターンを踏襲していたり(「ディケイド」の一部サブタイトルと同手法)、マジレンジャーにゴーカイチェンジした際の、画面効果やBGMがオリジナルだったり、マージフォンの新録呪文が、オリジナル通り玄田哲章さんによるもの(!)だったり、フレイジェルが超美麗なCGで登場したり。小津魁の出で立ちも、「マジレンジャー」最終話でのスタイルそのままでした。初回のスナックサファリもそうでしたが、オリジナル再現へのこだわりの深さは、尋常ではないですね。拍手です。

 そうそう、私的思い出語りを忘れてました(笑)。

 「マジレンジャー」は、「アバレンジャー」で失速していた私の戦隊熱を取り戻させてくれた作品でした。最初の取っ掛かりは、マジキングの機構とデザイン。久々にギミックの複雑さに驚かされ、また人型ロボの合体なのに、それぞれの大きさが全然違うという意外性にも惹かれました。

 蓋を開けてみると、兄弟戦隊という肩書きにも関わらず、結構ドライで楽しい作風。いきなり初回で母親が変身してしまうというギミックも良かったですね。終盤になると、途端にハードな作風にシフトしていき、遂には父親役の磯部勉さんまで素面で登場し、追加戦士はヒロインの一人と結婚、「魔法家族」として大団円という、自分としては大盛り上がりな作品でした。

 そして、何と言っても曽我町子さんの登板。

 私は、ヘドリアン女王時代から曽我町子さんの大ファンで、社会人になってから出張に便乗して、国立にあった曽我さんのお店「ステラ」にお邪魔したり、年賀状を頂いたりと、少ないながらご本人との交流がありました。曽我さんにお聞きした撮影裏話を語り始めるとキリがありませんが、とにかく仕事に対する姿勢が凄まじく、それでいてファンに対する愛情ももの凄く深い。最初にステラにお邪魔した際は、開店直後から閉店間近までお話をさせて頂き、そのサービス精神の高さは、正に超一級でした。

 最後にステラにお邪魔した時は、丁度マジレンジャーの劇場版が公開された直後。パンフレットにサインを頂き、今でも大事に保管してあります。白インクのペンでサインして頂いたのですが、インクの出が悪く、「二度書きしちゃっていいかしら」とおっしゃった事を、昨日の事のように覚えています。

 この劇場版への出演が、私にとっては非常に嬉しい出来事で、いつもは洋画とウルトラ以外の映画は行かないのですが、この年だけは公開直後に急いで行ったくらいです(笑)。

 そうそう、ステラでは、当時まだ発表されていなかった「最終話への出演」を囁いて頂きましたっけ。曽我さんの演じたマジエルは、フェイクながら一度悪ボスに消滅させられる展開だったのですが、これについて、「東映は散々あたしを殺しといて、また殺すのよ」と冗談めかして仰ってました。最終話でもさすがの存在感で、私は視聴当時舞い上がってましたね。

 その後、イベントやゲームへの出演はありましたが、残念ながら、「マジレンジャー」終了の数ヵ月後に急逝。私、ごく身近な人の死以外で泣くような事は絶対にないですが、曽我さんの時だけは別でした。何といっても、ステラで買った商品は手元にあるし、お会いした時は非常に楽しかったし...。「曽我町女王」は私にとって特撮TVドラマのアイコンでしたからね。当分ショックから立ち直れませんでした。

 というわけで、「マジレンジャー」は私にとって、作品自体も勿論の事、周辺での出来事も含めて忘れられないものとなりました。

 思えば、田舎者の私がステラに立ち寄るには、相当な勇気が必要でした。あの時勇気を出してステラに入った事で、忘れられない、得難い思い出を得る事が出来ました。正に、「勇気が魔法に変わった」わけでして。

 ...と、こんな感じで綺麗にまとめましたよ。お後がよろしいようで。

 これは、ステラで頂いたマジエル仕様のサイン入りブロマイドです。

マジエル様