何だか、真の意味での「通常編」は久しぶり。しかも、完成度が異様に高い。
ストーリー自体は、定番の「男女入れ替わりパターン」に即しており、特に目新しい部分はないのですが、フェイクをふんだんに含んだ仕掛けの効き具合とか、ルカとハカセの入れ替わり演技が、素面キャスト、スーツアクター共々素晴らしすぎるとか、画面全体の完成度が高いです。
論考とかレビューとかいったものを拒むような、ビジュアルの面白さに徹したエピソードなので、あまり書く事はないですが、軽めに書いていますので、続きの方をどうぞ。
ストーリーの細部に目を向けてみると、まず、今回のザンギャックの作戦が、平和会議へ参加する各国首脳陣をスゴーミンと入れ替えるといったものになっているのが、やや目新しいものとして映ります。
というのも、ザンギャックの作戦にしては結構地味な感覚になっている上、割と手間がかかる作戦なのです。
「ゴーカイジャー」は、ゴーカイジャーそのものが、基本的にザンギャックに追われる立場であり、ザンギャック自体、地球制圧を進めているというより、賞金首のゴーカイジャーを何とか追い詰めてやろうとしている印象があります。勿論、地球制圧に関する作戦は何度も出ており、その度にゴーカイジャーに阻止されているのですが、基本的に作戦そのものが印象として残る事はあまりないと言えます。それは、何度も言及している「ショートカットの巧さ」が効いており、ゴーカイジャー自身の見所を描く部分へと素早く展開していくという構造ならではなんですよね。
で、今回の作戦は、かなり懐かしい感覚があるのです。70年代ヒーローや初期戦隊を振り返ると、幼稚園バスを襲ったり、一つの学校の給食をすり替えたり、街宣車で地道に噂を広めたり、最先端テクノロジーを手売りしたり...ご町内にしか波及しない作戦を、全世界規模の征服作戦の一貫として展開するものが多かったですね。今回は、その感覚を踏襲している感があるのです。
勿論、平和会議の混乱といったテーマは、世界規模を思わせるものなのですが、首脳一人一人を待ち構えてスゴーミンと入れ替えるという作業を想像すると、やっぱりチマチマしてて微笑ましい。近年の特撮TVドラマで意図的に避けられているように見える、こういった地道な作業を伴う作戦は、やっぱり見ていて楽しいですよね〜。しかも、事件が身近になるので、一般人ゲストの感情がリアルに描写されたりして、ドラマ自体も重厚になるんですよ。まぁ、今回はそういった効果が全く期待される方向性ではないのですが。
続いて、ルカとハカセのビジュアル的な面白さを最大限に狙っていつつも、そこにちゃんとテーマが盛り込まれていた事。これは良いポイントでした。
今回のテーマは、入れ替わってみなければ分からない相手の良さ。言い換えれば、相手の立場に立ってみて、初めて分かる相手の良さという処でしょうか。
当然、もう折り返し点を過ぎたので、ゴーカイジャーのメンバーは、それぞれが他のメンバーについてよく分かっている状態なのですが、細かい部分では、まだよく知らない部分があるという事でしょう。今回の、ルカのハカセに対する理解がいい例。基本的にルカは、ハカセを表面的には「情けない男」という視点で見ていたのですが、今回の事件で、他人を大事にするハカセの深い思いやりの精神に気付かされました。以前にも、食事を作る際に各メンバーのコンディションを細かくチェックしていたりと、ハカセの心配り、気配りの徹底振りが描かれましたが、今回はそれを補強する展開だったわけです。
一方、ハカセからすると、ルカ(になった自分)が追いかけられている理由が分からず、一瞬ルカの「素行不良」を疑ったわけですが、それは誤解と分かり、ルカは表面的にキツい性格ではあるものの、実際に悪い事をしているわけでもないと理解するのでした。
こうした、ステロタイプなイメージを捉える視点を、ちょっとずらしてみるという手法は、キャラクターの深度を高めるのにもってこいの手法です。実際、その手法は見事図に当たったと言えそうです。
さて、ビジュアル面では、もう語るよりは見た方がいいという感じなのですが、とにかく入れ替わった後の演技が素晴らしい。
こういったお話では、ちょっとだけセクシャルな部分にスポットを当てて(要は胸にタッチするとか...)、視聴者をドキリとさせたりするのですが、それもサラリと盛り込まれており、セオリー通りの演出もバッチリ。互いの演技を熱心に研究した結果であろう二人の「演技対決」は、表情から仕草、言動のらしさに至るまで見事でした。
ハカセの外見が、実はモテまくりのポテンシャルを秘めているとか(当然ですけどね・笑)、ヘタレなルカが異様に表情豊かで可愛いとか、色々な発見もあり、とにかく楽しませて頂きました。そういえば、ルカを追いかけていた二人組、「新堀宝石店」の店員を名乗っていましたね。「新堀」と言えば、言わずと知れた伝説のレッド・スーツアクター、新堀和男さんがネーミングソースである事は明らかでしょう。あと、私は気付きませんでしたが、ルカやハカセの持っていた紙袋は、歴代の敵女性幹部の名前を盛り込んでいたそうですね。通常回では、小ネタに注視しておかなければなりません(笑)。
アクション面でも、スーツアクターの両名が互いを研究し尽くして生み出した「物真似アクション」が秀逸でした。ハカセのコミカルアクションをゴーカイイエローが見せ、ルカの余裕と挑発をゴーカイグリーンが見せるという面白さ。アフレコも完璧過ぎる程完璧で、ハカセが戦闘中にいちいち挟む細かい掛け声も、ルカ声だと異様に可愛いという...。
とにかく変身前後で途切れなく楽しませて頂きましたよ。
今回の豪快チェンジはフラッシュマン。それぞれの個人武器、プリズム聖剣、プリズムカイザー、プリズムボール(オリジナルのバンクフィルム一辺倒を打ち破った、CGでの再現が嬉しい!)、プリズムバトン、プリズムブーツ(アクションを妨げないCGによる表現)が登場し、満足度は高くなっています。
それと、今回特に印象に残ったのは、平和会議場にゴーカイジャーが乗り込んで、ザンギャックを排除するシーン。効果的かつ印象的にスローモーションを多用した、ハリウッド風の画面作りが鮮烈でした。アクション大作映画を思わせるカット割りに息を飲んだ後、突如屋外にすっ飛ばされるスゴーミン達の画が繋がり、いつもの戦隊バトルに切り替わっていく辺り、斬新でした。
という感じで、実に楽しいエピソードでした。しかし、ですね...。
あの予告は反則だろ!
あの予告だけ、10回以上リピートしてしまいましたよ。何と言っても、「ジェットマン」は私を戦隊マニアにしてしまった作品ですからね。しかも、井上敏樹さんがホンを書かれたそうではないですか。言うなれば、その精神的には「ジェットマン」の正統続編となる次回。
「空が目に染みやがる、きれいな空だ...」
ハリケンジャー編を超える伝説編となるか...!?
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