第24話「愚かな地球人」

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 まさかまさかの「カーレンジャー」編。しかも、カーレンジャー当人は不在な上、カーレンジャーに豪快チェンジすらしないという、アンビバレンツでナンセンスでスラップスティックな、「不思議コメディシリーズ」の大いなる力発動編。

 まぁ、要するに浦沢脚本炸裂というわけですよ。

 今回のキーパーソンであるジェラシットが初登場した「カーレンジャー」編は、陣内恭介をメインに据えるという要請が基盤にあってのエピソードでしたが、今回は完全にそのタガが外れて、登場人物が自在にコメディを演じるという、ある意味今回こそが「真のカーレンジャー編」ではないかと思われる節がありました。

 論じる事を拒否しているかのような、練られた構成に絶句しつつも、何とか続きの方で文章をひねり出します。


 個人的に大きくツボにハマったのは、大島蓉子さんの存在。この方、超がつく名バイプレーヤーであり、2時間ドラマ等を見ているとかなりの頻度でそのお姿を拝見することとなります。

 今回は、この大島蓉子さんが完全に画面を食っている状態なので、ゴーカイジャーのアクションがなければ、ホントにこれがニチアサなのかと思わせるような状態でした。私、このように個性的な女優さんをフィーチュアする作風に、懐かしさを感じるんですよね。「バトルフィーバー」や「デンジマン」に、船場牡丹さんという女優さんが時々登場していましたけど、この船場さんが恰幅のよい強烈な下町のオバちゃんといった雰囲気で、今回の大島さんの快演に通ずる処があるんです。

 戦隊シリーズは、基本的に軍事的なバックボーンがあったり、宇宙規模での話が時折展開されるなど、スケールも結構大きいのですが、特に初期作に感じられる「地に足が着いた」感覚は、こういった庶民派名バイプレーヤーの存在に負う処が大きいような気がします。今回、ジェラシットにセンデンといった、ザンギャックの訳のわからない宇宙人達が登場してきても、やっぱり庶民レベルで話が展開されていき、しかもそれに違和感がない(!)のは、大島さん、そして宮崎吐夢さんが確かな演技力で固めていたからでしょう。

 実は「不思議コメディシリーズ」も同種の構造を持っていて、(人間の)主役は大体子役か新人。しかし、周囲を固める俳優陣に、知る人ぞ知る名優が集められているんですよね。しかも、大抵が超個性派。私が特に印象に残っているのは、佐渡稔さんや斎藤晴彦さん(バラバラマン!)。ぶっ飛んだギャグセンスでありながら理知的な、浦沢脚本の上で踊るキャスト陣を、舞台にしっかり繋ぎ止めているのは、こうしたバイプレーヤーの存在です。

 というわけで、今回は戦隊というより「不思議コメディ」の一エピソードに認定。シュシュトリアンの大いなる力が今にも発動しそうでしたが、そこは理知的な浦沢義雄先生、ちゃんと「ゴーカイジャー」の枠内に収めています。

 ジェラシットその人の個性というかキャラクターがぶっ飛んで描かれていたのは、むしろ前回登場編の方だと思いますが、今回は周囲の人々との交流模様がぶっ飛んでいる為、ジェラシットが浮いてしまう事もなく、全体が笑いの奔流に包まれた幸せ空間だったような気がします。マーベラス達の関わらせ方も、「巻き込まれ型ヒーロー」の典型として処理されており、とても自然でした。

 で、逆に不自然を自然に変える浦沢マジックは、まず、ジェラシットを生ゴミ化する冒頭から始まり、ペットとして順応するジェラシットを描く序盤、和室で正座するジェラシットを描く中盤、そして、「おばちゃん」自ら「愚かな地球人」を自覚し、「宇宙から見れば地球人も宇宙人」という、「ウルトラマン80」での名台詞を彷彿させる名台詞を、ジェラシットに吐かせる終盤に至るまで、随所に炸裂。

 この手法は、明らかに人ではない者を、人と等価に扱い、それを笑いで混ぜこぜにするというもので、浦沢先生が関わっていないシリーズでも、戦隊ではたまに登場します。「ジェットマン」のドライヤージゲンの話や、「アバレンジャー」のヤツデンワニとか(どっちも荒川さんだ・笑)。初期シリーズではもっと冷静で、その違和感から生まれるギャップ自体が敵の作戦だったり、悲劇を生むきっかけだったりして、子供心にピリリと穴を穿つ感じでしたが、やはり「不思議コメディシリーズ」が登場してからは、その辺りの作風が許容されるようになったのかも知れませんね。

 私が今回感心したのは、オチの部分。「母親」という役名のおばちゃんと、ジェラシットは駆け落ちしてしまうわけですが、たこ焼き屋の店主の落胆ぶりと、無言で去って行くゴーカイジャーのクールさが、相当なインパクトを与えていました。

 宇宙人、しかも地球人から見れば割と醜悪な宇宙人と、おばちゃんが駆け落ちするという、本家「不思議コメディシリーズ」でもあまり到達していない、壮絶なオチ。実際、「カーレンジャー」では敵味方の色恋沙汰が面白おかしく描かれたりしていたわけで、その発展型とも捉える事ができるかもしれません。が、ここでは、駆け落ちという、子どもにはちょっと理解し難いネタを持ってきた事が問題です。

 旅館で二人して働いているというビジュアルのインパクトで笑いに包まれてしまう為、本質が見えにくいのですが、これは夏休みという視聴率の苦戦する期間における、一つの実験精神ではないかと思える節があります。丁度劇場版も公開されており、劇場版を「正統派ゴーカイジャー」とするなら、こちらは堂々と本流で「裏ゴーカイジャー」をやってしまおうというわけ。何故か宇宙人の立場でジェラシットを擁護するも、駆け落ちしたと聞いて店主を慰める事もなく、冷たく去って行くゴーカイジャー。何となくアバンギャルドではありませんか(笑)。改めて宇宙人であるゴーカイジャーの立場を明確にした点は意外でしたが。

 さて、他にはどうにも語れそうにないので、豪快チェンジについてまとめておきましょう。

 まずはメガレンジャー。メガシルバーまで揃うと壮観で、それぞれの個人武器も完璧にフィーチュアされていて、充実度はかなり高かったですね。ちなみに、チェンジ前のゴーカイグリーンのアクションは、もはやキレンジャー級のギャグセンスでまとめられていましたね。

 続いて、ハリケンジャーにチェンジしたものの、肝心のセンデンは逃走。ハリケンジャーは次回に本家が登場するので、その顔見せ的な登場だったのかも知れません。

 クライマックスのバトルでは、タイムレンジャーにチェンジ。タイムレンジャーは、タイムレッドとタイムファイアーという「ダブルレッド編成」なので、並んだ時に一際異彩を放っていますね。こちらはスピーディーなアクションを矢継ぎ早に見せるという構成で、今回の他の豪快チェンジと差別化していました。話の内容に反して、異様にアクション面でカッコ良さを意識していた(ハカセは別・笑)のが印象的です。

 さぁ、次回は何とハリケンジャー揃い踏みという、奇跡的なエピソードになります。しかも、サタラクラとサンダールのJrが登場するとか。当時もシロッコとシャアが云々と、個人的に盛り上がっていた記憶がありますが、今や島田敏さんは友蔵爺さんですからねぇ!池田秀一さんの、シャアを意識した名調子も復活するようで。楽しみです。