何となく、久々に普通の話だったような気がします。
これまで何度も言及してきたように、「先輩ゲスト編」でないエピソード(「通常編」)は切り札(先輩ゲスト)が使えない為に制作ハードルが高く、全体的に傑作と評価出来るエピソードが殆ど。
で、今回もその「通常編」であり、しかも鎧が登場してから初めて「通常編」の体裁をとったものとなります。鎧の登場以降、先輩ゲストが出演しない回もありましたが、鎧の登場から数話かけて、鎧の登場そのものをイベントとして扱ったものになっている為、純粋な「通常編」は今回が初めてということになります。
今回の面白い処は、これまでの通常編と比べて、ちょっと趣が異なるというか、新たな一面を見せたなと思わせる処です。逆にそれは、「アレッ?」と思わせる部分でもあるのですが...。
では、その辺りを、続きの方で軽く紐解いてみようと思います。
今回は、ジョーと鎧を組ませるという、ちょっと組み合わせを想像し辛いメンバー構成で進行します。
想像し辛い組み合わせだけに、ストーリーの中でもこの組み合わせによる「化学反応」はあまり感じられず、意外な組み合わせによる面白味は、あまり感じられなかったような気がします。実際、「ゴーカイジャー」の通常編のレベルからいうと、それほど突出して面白いエピソードでもなかったわけで。
ただ、ちょっと視点を変えてみると、これは単なる通常編ではなく、「ゴーカイジャー」というシリーズの方向性を模索するかのような実験精神の元で制作されたのではないか、と思わされるのです。鎧を中心に見てみると、結構それが分かりやすいのではないでしょうか。
今回の鎧は、海賊達の意識を変える役割ではありません。これまでは、マーベラスに面白いヤツだと思わせ、ハカセの自信を喚起し、ゴーカイジャーを代表してギンガマンの大いなる力を受け取る等、ゴーカイジャーの在り方を少しずつ変える立場で立ち回ってきました。ところが今回は、ジョーのポリシーに鎧自身が「気付き」を感じるという構造です。
スーパー戦隊のマニアックな権化である鎧は、ザンギャックがうろつく危険な地帯を一人行く将太という少年に対し、すぐにこの場から立ち去るように言います。長年のファンならば、枚挙に暇がない程似たようなシチュエーションを洗い出す事が出来ると思いますが、いわば鎧のとった行動は「スーパー戦隊的に、圧倒的に、正しい」わけで、それを「約束ならば守るべき」という理由ですぐに否定したジョーは、「スーパー戦隊的に、正しくない」行動をとっているわけです。
当然、将太が負うリスクは飛躍的に高まる事は必至であり、人類を守るというスーパー戦隊の大命題からすれば、ジョーの言動は文字通りスーパー戦隊らしからぬ言動です。
しかしここには、「ゴーカイジャー的には、正しい」というテーゼが巧みに持ち込まれているのです。
つまり、鎧はジョーとの対比によって、スーパー戦隊的である事が、「ゴーカイジャー」という世界の中で正しいとは限らないという現実を突き付けられたんですね。
私は、よくやったなぁと思いました。スーパー戦隊の長い歴史を俯瞰する側面を持つ「ゴーカイジャー」が、こういう命題を掲げて、平然としていられるわけがないからです。
ところが、緩衝材はいとも簡単に登場してきました。今回の薄味な感覚は、この緩衝材にあると言っても良いのですが...。その緩衝材とは、ズバリ将太その人です。この将太、完全にプライベートな事情が偶然ザンギャックの作戦と重なってしまうという、伝統、そして定番のシチュエーションに置かれた人物であり、正に「スーパー戦隊シリーズの典型的な子役ゲスト」です。
何故将太が緩衝材なのか。それは、将太が「スーパー戦隊シリーズの典型的な子役ゲスト」の体裁で動くことにより、関わる者(ここではジョーと鎧)がスーパー戦隊にならざるを得ないからです。スーパー戦隊にあらざるポリシーを抱きつつ、スーパー戦隊として振る舞う事を要求されたゴーカイジャー。それが今回の肝です。
結果的には、ジョーは子どもの安全を第一に考えるという事ではなく、子どもの果たすべき約束を守る為に戦いを挑むという事を選択し、ポリシーとリクエストのバランスをとったわけですが、それが何となく上原正三先生の描くヒーロー像と重なっていて、古参のファンには懐かしくもあり、かつ「ゴーカイジャー」にしては、新味がないという感覚を生み出していると思います。今回が、「違和感を伴う突出した魅力」に乏しく、やや口当たりが良すぎるのは、そういった面があるからです。
ただし、これによって、ジョーのキャラクターが掘り下げられたという点を、見逃してはなりません。
ジョーは自分の世界に生きる男という雰囲気が強いキャラクターですが、今回は「約束」というキーワードを軸に、義理堅い男としての側面を強化してきました。本来ならば、少年のプライベートな約束等どうでもいい筈なのですが、これに付き合う(というより、戦いを通してサポートする)事で、ジョーの「子どもの味方」という面まで描き出し、ヒーローとしての資質を高めたのは特筆に値します。
いわばジョーは、ポリシーこそ海賊流ですが、表面的にはスーパー戦隊の典型を演じてみせたわけですね。鎧の登場以降、いかにスーパー戦隊たり得るかという命題を掲げつつある「ゴーカイジャー」ですが、今回は一つの指針を少しだけ垣間見せたのではないでしょうか。興味深い事に、鎧のポリシーを否定してみせるというアクロバティックな方法で。
さて、ここらで豪快チェンジをまとめてみましょう。
まずは鎧がドラゴンレンジャーに。ところが、鎧が「恐竜戦隊」と言っているにもかかわらず、ジョーはアバレブルーにチェンジ。この、同一モチーフへのチェンジというギャグは、長い歴史だからこそですね。逆に言えば、車や忍者、恐竜に動物といった同一モチーフにも関わらず、それぞれ個性的なシリーズを創り上げてきた労力とアイディア力には頭が下がります。ちなみに、ドラゴンレンジャーの獣奏剣が登場したのは、ちょっと嬉しかったですね。
六人揃ってからは、ゴセイジャー+ゴセイナイト、ダイレンジャー、オーレンジャーへと立て続けにチェンジ。ゴセイジャーは天装術がバッチリ描写されつつも、ゴセイレッドの剣術アクションがオリジナルと明らかに異なる等、なかなか芸コマな感じが光ります。ダイレンジャーは、まさかの大輪剣が炸裂。これにはビックリしました。かなり特殊な武器なので、印象に残ります。オーレンジャーでは、六人バージョンの超力ダイナマイトアタックが登場。鎧が「本邦初公開」と呼んでいたのは、オリジナルでは五人での必殺技だったから。こういう遊び心もいい感じですね〜。
また、今回はゴーミン相手のアクションの一部が素面になっており、武器を用いての素面アクションが非常に充実していました。素面アクションの完成度がどんどん上がっています。
小ネタとしては、鎧の作った「スーパー戦隊大百科」が異様な完成度を誇っていそうで、閲覧したいという気持ちが抑えきれませんでした(笑)。最近は「超全集」もDVDとセットになってしまったし、決定版と呼べるものがないんですよね。昔は放映中の刊行で中途半端ながらも、ケイブンシャの大百科がバイブルでした。「バイオマン」辺りが黄金期で、同時期の「シャイダー」共々、書き下ろしパロディコミックやデザイン画フル掲載、キャストインタビュー、スタッフインタビュー、果てはスーツアクター諸氏にスポットを当ててみせる等、完全に子供向けを逸脱していましたよ。引越しのドサクサ等で散逸してしまいましたが、いい本でしたねぇ...。
次回は、初の女性単独先輩ゲスト編。「ゴーゴーファイブ」は残念ながら挫折したシリーズだったのですが...マツリさんは凄く好みでしたから、楽しみです(笑)。
ふゃんねこ
このエピソード単体で観るとごく普通の戦隊らしいエピソードだったように思うのですが、ここの所イベント編が連続してたので若干物足りない感じに思えてしまいました・・・
来週はシンケン第十二幕以来、久しぶりの柴田さんの登場ですね。
シンケンの時とは違って、ゴーゴーファイブとしての姿が観れるので楽しみです。