ヒュウガとリョウマの、炎のたてがみ兄弟が登場するという事で、満足度MAXな一編。
冷静に見ると、先輩ゲスト編にしては「大いなる力」の発露がおざなりだとか、鎧の知識のおかげで「宝探し」の楽しさが殆どスポイルされてしまっているとか、色々とあるのですが、鎧の登場から「ゴーカイジャー」というシリーズ自体の方向性が、少しずつ変わっているのは周知のとおりなので、ここは素直に新しい展開に対する興味に従おうではありませんか。
前置きはこのくらいにして、続きの方で色々と。
今回は、ゴーカイジャーが大いなる力を手に入れるというよりは、ゴーカイシルバーがそれを手に入れるという感覚。それ自体は、これまでもメンバーが個人的に先輩ゲストと関わる構図と同じです。問題は、鎧にとって「大いなる力」がお宝ではなく、地球を守る力そのものだという事。「スーパー戦隊になっていく海賊」ではなく、「スーパー戦隊そのものになりたい男」の話なので、ある意味「ゴーカイジャー」っぽくないお話ではあります。
そこにバスコを絡める事で、マーベラスを引っ張り出し、「ゴーカイジャー」の体裁を保っている辺りは見事な手法です。また、主要な縦糸をレンジャーキー争奪戦に絞っているので、精神性はともかく、見た目は完全に「ゴーカイジャー」のエピソードになっています。
そして、「ゴーカイジャー」が構成的に優れているといつも感じる点である、「ショートカットの巧さ」が今回も炸裂しています。
一つは、鎧がナビィのお宝ナビゲートに対して、的確な答えを持っているという事。彼のスーパー戦隊に関する知識は膨大なものであり、瞬時に「閉ざされた森の戦士」がギンガマンである事を導き出します。これにより、マーベラス達が暗中模索するといった描写を一気にすっ飛ばし、「お宝」の近傍までたどり着くことが出来ました。前述のとおり、「お宝探し」の面白さをスポイルしているとは思いますが、一応、森の結界で右往左往しているので、体裁自体は保っている事になります。
ちなみに、この件でもう一つ、私が巧いと思ったのは、鎧の持つドキュメントが、いわゆるTV番組を紹介する類の書籍ではなく、ギンガマンの出来事を絵本化したものだったという事です。劇中人物にとってのスーパー戦隊は、実在した人物であり出来事。我々の世界でも、実在のスポーツヒーロー等は、伝記等で書籍化され広く読まれているので、こうした処置はリアルです。
もう一つのショートカットは、バスコの存在。普通に行けば、ギンガの森の結界を突破しようと思えば、色々と手を尽くす必要があったのではないかと思います。そこを、バスコがヒュウガと戦い、結界が割れるというシーンによって一気にすっ飛ばし、更にはヒュウガとゴーカイジャーの出会いさえもお膳立て。バスコはどうやって入ったんだという疑問はあるものの、彼はマーベラスの知らない手法を色々と隠しているようなので、とりあえずは良いでしょう。
これまでも、先輩ゲストに出逢う為のプロセスは、偶然を用いた様々なショートカットによって、巧みに描写されて来ましたが、今回は特に目立っていたのではないでしょうか。それは当然、「ギンガマン」のキーパーソンがダブルで登場するという、強力なイベント編故の処理だったものと思いますが。やっぱり、ヒュウガとリョウマを沢山見たいですもんね(笑)。
さて、何度も述べているとおり、先輩ゲストは「ギンガマン」より黒騎士・ヒュウガとギンガレッド・リョウマの二人。「ギンガマン」はこの兄弟の数奇な運命を描いた作品だと言っても過言ではなく(勿論、その他にも魅力的な要素は満載ですが)、この二人が「ギンガマン」という作品そのものなのだと、改めて思わされました。
リョウマ役の前原一輝さんは俳優業を引退なさっているとの事で、今回のオファーを受けての登場は、正に奇跡的。しかも、ヒュウガ=小川輝晃さんとの共演という、ファンにとってはこれ以上ないプレゼントでした(今回の共演の話、小川さんの後押しがあったとか)。にしても、前原さんは少しお痩せになったようですが、当時と変わらない爽やかさ。俳優業を退いておられるのに、あのカッコ良さは一体何なんだと、驚愕しましたよ。フィールドが変わっても、常に自分を磨いてらっしゃるんでしょうね。特徴ある衣装をまとっていても、全く違和感がありませんでした。
そして、小川さんもカッコいい! アクション俳優としての地位も確立なさっている小川さんですが、この方も常にヒーローで居られるよう、己を律しておられるんですね。素晴らしいです。
小川さんと言えば、「カクレンジャー」のニンジャレッド・サスケでもあるわけですが、レッドと追加戦士という、ある意味両極端な役柄を経験されているので、ヒーローとしてのオーラが一味違うんですよね。今回、ヒュウガがメインとなっていますが、鎧にヒーローの在り方を示すというくだりに、この上ない説得力が備わっている気がします。
ヒュウガのやりたかった事、それは、自らゴーカイシルバーになる事ではなく(わざわざ妄想変身シーンを作り、しかもそれがカッコ良すぎるという処は笑えるのですが)、鎧の資格を試す事。いわば、これまでの先輩ゲストが直接的あるいは間接的に行って来た事と同種の行動です。
ギンガマンの敵が宇宙海賊であった事を踏まえ、もっとその辺りをネタとして突っ込んで来るのかな、と思っていたのですが、意外にもその辺りはどうでもいい感じになっており、ある意味マニアックになりすぎない良心的な制作姿勢だった事が伺えます。リョウマの笑顔に象徴されるように、ギンガマンとは優しさの戦士であり、闇雲に敵意を剥き出しにするような行動は似合わないので、この展開は正解だと思います。
また、ヒュウガは元々、「ギンガマン」においても相当な実力者でしたから、本当はヤル気満々な鎧が迷ってしまうという展開も非常に良い。ゴーカイシルバー登場編から今回までを辿ってみると、鎧は常に純粋で真っ直ぐであり、自分がゴーカイシルバーである事に微塵の迷いも見せませんでした。ここで一旦迷いを導く事で、鎧の成長を描く事にもなったし、ヒュウガの目前でレンジャーキーが実体化した黒騎士を倒すというプロセスを経て、一種のイニシエーションのような雰囲気も創り出されていました。いわば、この時点でゴーカイシルバーは一旦の完成を見た事になるのではないでしょうか。
ここで、豪快チェンジ等についてまとめておきます。豪快チェンジ自体は、マーベラス達五人がギンガマンにチェンジしたのみ。変身時の、アースがグルグルと回る印象的なエフェクトや、主題歌のインストも流れ、雰囲気は抜群でした。どちらかと言えば、ゴーカイシルバー VS 黒騎士にフォーカスされていた上、ギンガマンの大いなる力もフィーチュアされなかったので、あまり扱いが良かったとは言えませんでしたが、あの短い尺の中で、ギンガマンの魅力あるアクションを的確に再現していましたね。
豪快チェンジはギンガマンだけでしたが、バスコが繰り出すレンジャーキーは、黒騎士を筆頭に、ウルザードファイヤーとマジマザーの夫婦、そしてデカマスターが登場。非レギュラー戦士系でも個性派の最強クラスが揃い、その出で立ちは壮観でした。それぞれの特徴あるアクションが、コンパクトに凝縮されているのも良かったですね。
それにしても、バスコのレンジャーキー実体化能力も驚きの能力ですが、「大いなる力」を無理やり奪い取る術があるとは...。もはや何でもありな感があるものの、これによってマーベラスが焦りを感じる事になり、更なるドライブがかかる事は必至のようです。しかし、これ以上ドライブをかけて一体何処に向かうのか、不安ではありますが、楽しみですねぇ。
この、無理やり奪い取る能力ですが、あたかも「大いなる力」が物体であるかのように扱われています。レンジャーキーがスーパー戦隊の基本的な力の凝縮されたものだとすれば、「大いなる力」の具体化はより高度な、光の粒子といったような表現になっていました。これまで、「大いなる力」を直接手渡した描写はありませんでしたが、今回のように具体化される事によって、ある種曖昧だった「大いなる力」に別種の説得力が生まれており、今後の展開の可能性を広げたのではないかと思います。
その他のネタとしては、マーベラスが一旦敗北したように見えつつも、余裕の笑顔で立ち上がる姿が、異様にカッコ良かったのと、それを見た鎧が、ゴーカイシルバーへの迷いを捨てたのが良かったですね。マーベラスもまた、鎧の憧れるスーパー戦隊のレッドである事を証明したかのような、印象的なシーンに仕上がっていました。
さてさて、ここからは「ギンガマン」の思い出を少々。
今回は、思い入れたっぷりに書いているように思われたかもしれませんが、実は私、「ギンガマン」挫折組です(笑)。
当初は、その鮮烈で新機軸満載の内容に引きこまれ、ギンガイオーの超デカイ超合金を買ったりして、結構ハマっていました。ブルブラックあたりのエピソードも結構好きで観ていたのですが、人間、下らない事で冷めてしまうもので、どう見ても前時代的なロボットにしか見えないギガライノス、ギガフェニックスを色々な理屈を付けつつ「星獣」と言ってしまったあたりから、ドロップアウトしてしまいました。当時、私は玩具コレクターに片足の親指を突っ込んでいるような状態だったので、スケールがまるで違うギガシリーズにすっかり失望してしまい(と言いつつ、ブルタウラスも買ってないですけど)、番組自体も飛び飛びで観るようになってしまいました。
というわけで、こんな私があれこれ偉そうに語る資格はないのですが、最終編には感動していたりと、いつもの調子で一応は話の流れを把握していますので、ご容赦下さい。
次回は、チーフが登場!先輩ゲスト編が連続するとは思っていなかったので、ちょっと驚きです。
オオミツ
初めまして。いつも楽しく読ませて頂いています。
そうですか、ギンガマン挫折組ですか〈笑)。かく言う私も、
けっこう飛び飛びだった気がします。
ギンガットの出身星が「砂の星」だったのは、当時笑いましたねぇ。
星全部トイレですかって感じで…。
ちなみに鎧が持っていたあの絵本って、劇中でギンガマンが世話になっていた
絵本作家の青山晴彦(高杢禎彦)が描いたものなんですよね。
ああいうマニアックさがちらりと垣間見えるあたり、制作者の遊び心と
余裕が感じられました。
SirMilesからオオミツさんへの返信
ありがとうございます。
あの絵本の素性は、後から教えていただきました。いかにギンガマンを観ていないかがバレてしまいましたね(笑)。