「ジュウレンジャー」を嚆矢に、連綿と受け継がれている追加戦士の登場。
追加戦士の歴史も随分長いので、あの手この手で変化を付けるのに苦慮している歴史を見る事が出来るわけですが、今回も、これまでとはまた違ったアプローチあり、尚且つ、これまでの王道を行く追加戦士の様相もありで、実に楽しませて頂きました。
今回の注意点は、劇場版が前提となっている点。
昨今は、劇場版がストーリー上、割と重要なポジションを占める場合が多く、劇場版とTV版が双方のプロモーションを密にしている印象があります。一応、劇場版を見ずとも、効果的なセリフの配置等で状況が把握出来るようになっており、例えば「11の大いなる力を手に入れた」というセリフや、巨大戦でのゴセイジャーの力によって、「TV版でそんな話あったっけ」と思わせる事で、劇場版への誘導を図りつつ、端的に劇場版での「結果」を把握出来るようになっているわけです。
この辺りの、時期的な要求との折り合いの付け方は、正に職人芸といった処。やっぱり、マーチャンダイジングやメディアミックスとの折り合いの付け方が巧いと、面白いシリーズになりますね。
続きの方では、今回のレビューというより、追加戦士の歴史について語っちゃったり。
伊狩鎧。マーベラス以下、海賊戦隊は全員地球人ではありませんが、追加戦士を地球人にするというアイディアが面白い。「伊狩」とはいわゆる「錨」であり、海賊戦隊を地球に係留しておくという意味合いともとれます。
そういった視点でこの鎧(ガイ)というキャラクターを見てみると、これから先、ゴーカイジャーが宇宙一のお宝を手に入れる為には、地球に留まってスーパー戦隊の大いなる力を集めなければならず、さらにその為には、鎧の力が必要...という事になるのかも知れません。
この鎧という人物、スーパー戦隊シリーズのマニアという設定であり、時折特撮ドラマやアニメに登場する「ヒーローになりたい男」の典型像を、極めて陽性に振り切った者として登場しました。実は、歴代追加戦士にはこのパターンが既に見られ、近年で最も目立ったのは、「シンケンジャー」のシンケンゴールド・梅盛源太でしょう。彼は「侍になりたい男」でした。
そういった「ヒーローになりたい男」達は、そのまま視聴者の延長にあるキャラクターであると言っても過言ではなく、感情移入をしやすいキャラクターになる可能性が高いのですが、鎧に関しては、更にその方向性を押し進めて来た感がありますね。何しろ、スーパー戦隊のファンを極限まで先鋭化し、スーパー戦隊の列に並べてしまったのですから。
当然と言えば当然ですが、これまでは、「ヒーローになりたい男」が憧れるのは、現在進行形のコンテンツに登場するヒーローであり、今回のようにシリーズ全体を俯瞰してシリーズ全体に憧れている人物というのは、初めてなわけです。ホントに当たり前の事ですけど(笑)。これぞ、「ゴーカイジャー」ならではであり、鎧の特殊性ですよね。しかも、マニアらしく「敵の罠に気付く」という展開が笑えます。スーパー戦隊シリーズのDVDを極限まで見尽くしているような雰囲気が凄い。
鎧役の、池田純矢さんもよくハマっています。鎧というキャラクターには、宮内洋さんよろしく大袈裟な動作を求められると思うのですが、実に動きのキレがいい。その上、見栄の切り方も巧い。今回は、その見栄がある程度ギャグとして扱われているのですが、そういうコミカルな役柄にも合致していて、いいですね。しかも、テンションの高い時の声質が割とハイトーンなので、他のゴーカイジャーのメンバーと差別化されていて、彼が異質なメンバーである事が強調されています。
この鎧に引きずられて、本編も結構コミカル。特に目立ったのは、「爽やかな海賊戦隊」のイメージシーン。超爽やか系の、予告で子ども達に呼びかけるタイプ(笑)のマーベラス、爽やか過ぎる笑顔が眩しいジョー、こどもショーのお姉さんキャラになってしまったルカ、そして、アイムはあんまり変わらないというオチ(笑)。これは素晴らしいです。あ、忘れられたハカセを忘れてた(笑)。
こういうお遊びシーンのキレが鋭いと、作品全体のテンションも高まり、いい結果を生む事の好例と言えるでしょう。
さて、ここからは追加戦士についてつらつらと。
追加戦士の萌芽は、「ジャッカー電撃隊」のビッグワンでしょう。ただ、ビッグワンは「デカレンジャー」のデカマスターに近いキャラクターであり、デカマスターが追加戦士としてあまり語られないのと同様、多分に司令官の別の姿という要素を含みます。極端な言い方をすれば、「チェンジマン」の伊吹長官がユイ・イブキに変身するのと、あまり違いはないのです。
その後、「バイオマン」に登場するドクターマンの息子・蔭山秀一が、その売り出し感を含めて限りなく追加戦士に近いポジションだったり、同じ「バイオマン」に、マグネ戦士というヒーロー然とした「6番目の男」も登場します。このマグネ戦士、当時人気上昇中のJACのスター候補・黒崎輝さんが演じてましたので、かなり追加戦士に近い存在です。
「マスクマン」では、一話限りではあるものの、X1マスクが登場。レギュラー戦士のプロトタイプという設定に加え、デザインワークにおけるプロトタイプでもあるこのキャラクターは、正に追加戦士のプロトタイプと言えるでしょう。
厳密な意味での「追加戦士」は、「ライブマン」後半でのブラックバイソン&グリーンサイが初と言えるかも知れません。ただし、この二人は近年の「追加戦士」の定義には当てはまりません。その定義は漠然としていますが、私の独自の定義としては、レギュラー戦士とは互換性のない変身アイテム(カラーリング差異も含む)を持つ、レギュラー戦士にはない独自の装備を持つ、2クールの初盤を過ぎた辺りに登場する、レギュラー戦士のパワーアップに関与する、多くの話でレギュラー戦士とは別行動をとる(「基地」が違う)といった処でしょうか。
その定義で言う追加戦士の嚆矢は、勿論「ジュウレンジャー」のドラゴンレンジャー・ブライです。リアルタイムで視聴していた身としては、これは物凄い衝撃でした。最初に戦隊ヒーローの意匠を纏った者が、敵として現れる衝撃。追加ロボを引き連れてくるという衝撃。更には、仲間になっても常に共闘は出来ないという衝撃。そして、最終話を待たずして死を迎えるという衝撃。裏話としては、あまりにブライの人気が高かった為に、登場話数が延長されたというのも衝撃でした。
要するに、裏表にわたり、それこそ番組の内容から楽屋話、はたまたマーチャンダイジングに至るまで何もかもが衝撃だった為に、追加戦士という存在が当たり前になってしまった...それが、ドラゴンレンジャー・ブライの果たした功績です。
色々な書籍等を読むと、追加戦士は「スーパー戦隊シリーズを作った男」の一人である、村上克司御大にとってはあまり好ましいものではなかったようで、まだ村上御大の影響力がかなり強かった「ジュウレンジャー」におけるブライの扱いは、主人公・ゲキの導き手としての、ゲストの域を出ていなかったんですね。
ところが、ドラゴンレンジャー・ブライのインパクトが強過ぎた為に、ドラゴンレンジャーが6人目のジュウレンジャーとして扱われるようになり、一方で、アメリカにて開始されたパワーレンジャーが、ドラゴンレンジャーを中盤からのレギュラー戦士にしてしまった為、続く「ダイレンジャー」では、子どもが変身するキバレンジャーという奇抜さを導入して追加戦士の雰囲気を薄めつつも、追加レギュラー戦士的な扱いを試行しています。
次の「カクレンジャー」では、何と追加戦士自体を、追加ロボとミックスして曖昧化したニンジャマンが登場。この辺りから、追加戦士はカオス化していき、ニンジャマンのタイプであるガンマジンやズバーン、ゴセイナイト、逆に増員という面を追求したガオシルバーやデカブレイク、ゲキバイオレット、ゲキチョッパー、シンケンゴールド、徹底的に主人公の敵(ライバル)としての存在感を発揮するアバレキラーやタイムファイアーなど、ある程度の分類は可能なものの、一括りに出来なくなっています。
「ゴーカイジャー」で追加戦士として扱われるか否かも非常に曖昧であり、先の定義に当てはめるなら、当然人間体がないとダメだという事になりますが、ズバーンやゴセイナイト、シグナルマンは追加戦士のレンジャーキーにラインナップされていたり、逆に同種のガンマジンやニンジャマン、データスやダイゴヨウといった面々は外されていたりします。レンジャーキーの形に会わないデータスやダイゴヨウは分かるとしても、ニンジャマンは一緒にカクレンジャーを名乗った事もあるだけに、ちょっと可哀想(笑)。まぁ、サムライマンへのチェンジという面が「戦士」という呼称にそぐわないとして見送られた可能性はありますが。
そんなこんなで、「追加戦士」と一言発するにしても、色々な側面が有り過ぎて、一言では語れないのですが、あえて纏めてしまうとすれば、彼等はストーリーに大きな変化をもたらす存在であり、その為に、登場がインパクトのあるものとして処理されます。例えば、敵として出現するとか、主人公とポリシーが違うとか、凄まじい能力を持っているとか...。大体は、レギュラー化すると共に、そのチートっぷりも含めて既存のフィールドに習合していく傾向にありますが、逆に追加戦士の個性自体が埋没しなかった作品は、一般的に傑作である事が多い気がします。
と、ここまでを踏まえ、鎧はどうでしょうか。私はなかなかインパクトのある登場だったし、ハイテンションで迷いのないキャラクターは勢いがあると思います。迷いのなさという点では、ゴーカイジャー全員がそういうキャラクターなので、親和性も高いと思われます。あと、演者の池田さんも、予告を見るとバック転や回し蹴りを華麗にキメていたので、アクションのポテンシャルがすこぶる高いものと思われます。こういう「動けるキャスト」は久々なので、素面アクションにも期待が高まりますね。
今回の豪快チェンジについて軽くまとめておきましょう。前回バスコから奪取した「追加戦士のレンジャーキー」を早速使用。追加戦士らしいバラバラ過ぎる意匠が並び立つ様は、圧巻でした。マーベラスはタイムファイアーに。ジョーはマジシャイン、ルカはスカートの付いたメガシルバー、ハカセはいかにも強そうなドラゴンレンジャー、そしてアイムはアバレキラー(こらもスカート付)にチェンジしました。
他のネタとしては、ナビィが久々に「飛んでくるくる凄いヤツ」と「ダイレンジャー」のEDテーマの一節をセリフに取り入れていたり、ゴーカイシルバーの名乗り口上が、「ゴレンジャー」(と一部「ダイレンジャー」)を意識していたり。
その名乗り口上を採録して、今回はお開きとします。
「真っ赤な太陽背に受けて、青き心に正義は宿る。黄色い歓声浴びまくり、プニプニほっぺをピンクに染める。緑の若葉のニューヒーロー、天にギンギン輝く、その名もゴーカイシルバー!」
※セリフに関するご指摘ありがとうございました。
ふゃんねこ
お久しぶりです。
ブログはずっと拝見させていただいてたんですが、観れていない話が結構あったので書き込めないでいました。
現状、私が全話観た戦隊はマジレンジャーとシンケンジャーしかなく(他の戦隊は古いのから新しいのまで数話づつのつまみ食い状態です)、この2作が戦隊観の基本になってるので、明るくて陽気なゴーカイシルバーを見るとどうしても梅盛源太を思い出してしまいます。
少し話は変わるのですが、先日「ゴセイジャーVSシンケンジャー エピックon銀幕」を観ました。
その際に思ったんですが、アラタって独特の雰囲気がありますね。
護星本編はほとんど観ていないんですが、底抜けに優しいというか、天使らしいというか、人間ではない雰囲気が凄い出てると感じました。