シンプルな設計図防衛を軸に、リュウジの過去に関する要素を散りばめ、さらに「裏切り」を持ち込んだ良作。
しかし、アラもやけに多い。
自称「下っ端エンジニア」が、ハードディスクに重要情報を簡単にコピーできるセキュリティの甘さや、ハードディスクの扱いが非常に乱暴ながら、中のデータに支障がなさそうな描写(もしかしたらSSDかも)、結果的にカズヤはエンターにデータを渡しており、その背信行為に全く咎がない...等々。
ドリルゾードが地下に転送されて来たり、密室に迫るドリルロイドがスリリングだったり、等身大戦を片付けない限り巨大戦の決着が付けられない構成だったりと、ゴーバスターズに迫るタイムリミットの妙味は素晴らしかったのですが、どうも上記に挙げたアラの部分でドラマ部分に感情移入出来ない感が残りました。
続きの方、今回も辛口になりそうです。
辛口の前に、まずは、今回の秀逸な面から。
リュウジが年齢にある種のコンプレックスを抱いている事は、初回より度々スパイス的に描写されてきましたが、精神的な面もさることながら、幼少期より訓練されてきた他の二人と異なり、丁度思春期辺りから訓練を受ける事になった彼は、戦力的な面(というより、戦闘技術の面)で劣っていると感じている事が明確になりました。
従来も、年長者に設定されるメンバーは、頭脳派ではあるものの、バトルにおける中心になる事が少なかったり、その逆があったり、そもそもレッドが最年長である事も多く、その戦力的な面での扱いは一定しません。しかしながら、「ゴレンジャー」における最年長キャラである新命明=アオレンジャーが、類い稀なる戦闘テクニックの持ち主であったように、必ずしも優劣において「劣」とされるキャラクターではなかったように思います。
その意味で、リュウジのポジションは非常に興味深いと思います。発想の元としては、ある競技において、個々のメンバーがその競技を開始する年齢の差により、チーム内に優劣が生じるといった事なのだと思いますが、妙にリアルな感触がありますし、年長の努力家という面が浮き彫りにされる事で、天才としてのヒロムに尊敬や信頼感といった感情を芽生えさせる意図もあるように思います。
また、エンターの描写も秀逸でした。
エンターには、愉快犯的な側面があり、それが前面に押し出されているようですが、今回はそれをさらに推進していました。ビジュアル的に、白いゴーグルだけでエンターと識別させる演出能力の高さ。全く違和感のない変装の中で、その白いゴーグルがちらりと見える事で、強烈な違和感を抱かせる辺り、キレが非常に良かったと思います。リュウジ譚を除けば、エンター編とでも云うべき程に、見せ場がありました。以前の格納庫の一件もそうでしたが、今回も設計図を管理する機密室の一歩手前まで易々と侵入しており、従来の敵幹部のような派手なビジュアルによる奇抜さがない代わりに、恐ろしく不気味な手練のエージェントとしての存在感がすこぶる大きく、ヴァグラスの特殊性を際立たせています。
私個人としては、素面の俳優が悪の幹部を演ずる事には大賛成であり、近年のスーツ幹部には、やや食傷気味だったのですが、エンターは理想的な悪役だと思っています。やはり表情の見える素面の幹部は不気味で恐ろしいものであり、逆に表情の見えないボスや怪人の威圧的な恐ろしさを底上げするのではないでしょうか。
話は脱線しますが、「ゴレンジャー」では当初、黒十字軍の全てのキャラクターが「仮面」を被っていました。やがて、ボスの黒十字総統のみが顔出しへと変化(安藤三男さんの狂気を感じさせる表情が実に恐ろしい)。黒十字総統は途中で八名信夫さん(「仮面ライダーフォーゼ」に弦太朗の祖父役で出演!!)に代わり、多分に親分肌の「棟梁」といった感じに変化しますが、それは番組の雰囲気に合致していたように思います。
その後、「ジャッカー」では実質的な首領である鉄の爪が、石橋雅史さんの顔出しを伴うキャラクターとなり、「バトルフィーバー」に至っては、その石橋雅史さん(当初は潮建志さん)演ずるヘッダー指揮官が邪宗の僧侶といった出で立ちで登場し、途中よりスーパー戦隊初の女幹部であるサロメが、マキ上田さんのキャスティングにて登場します。その衣装は、マキ上田さんが女子プロレス出身である事を意識したかのようなデザインで、実にシンプルかつスマート。後期になると、エゴスのエンブレムをあしらったカチューシャ以外は一般的なトップス+ボトムスになる(カチューシャすらないエピソードもある)等、正義側の派手な出で立ちとのコントラストを狙っている感がありました。「バトルフィーバー」が大人の雰囲気なのは、こういった処に依る部分が大きいと思います。
続く「デンジマン」では、ベーダー一族全員が顔出し出演。それぞれのデザインもスマートでカッコ良く、その傾向は「サンバルカン」にも継承されます。「サンバルカン」では、ボスのヘルサターン以外全員女性で、しかも顔出しという構成。後の「シャイダー」のギャル軍団の原形とも云うべきゼロガールズや、前作から続投するヘドリアン女王、途中参加の賀川雪絵さん演ずる孤高の女戦士・アマゾンキラー(その慇懃な言動があまりにもカッコいい)といった、スーパー戦隊最高の女系組織でした。
その後、悪の幹部はデザイン性がより追求されるようになり、ほぼ全員が素面キャストだった「バイオマン」を最後に、次第に顔出し出演が減っていくわけですが、私の独断と偏見によれば、顔出し幹部のピークはその後四度訪れています。まずは「ライブマン」。武装頭脳軍ボルトは基本的に素面キャラで占められており、主人公側との対比をドラマの中心に据えていた為。続いて「ジェットマン」。バイラムは、ロボットキャラのグレイ以外は全員素面。しかも、人間に変装する機会が多く、皆美形。次に「ダイレンジャー」。ゴーマ幹部はレギュラーであろうとゲストであろうと素面キャラクター。最後に「ゲキレンジャー」。正義側の「師匠」が全員スーツキャラであるのに対し、悪側レギュラー(師匠を除く)は全員素面キャラという、異例中の異例な構成でした。
脱線の方が長くなってしまいましたが(笑)、今回の巨大戦も素晴らしい構成でした。
GT-02のCG、オープン撮影、スタジオ撮影を取り混ぜた豪勢な画面作りもさることながら、主にオープン撮影されたRH-03の実在感があまりにも素晴らしい。ゴーバスターオーでしか対処できない地中の敵というシチュエーションにより、CB-01エースを防衛戦に停滞させるというのもいいですね。ここで無理矢理スーパー戦隊の基本フォーマットを意識してみると、エースが1号ロボで、ゴーバスターオーがパワーアップ合体なんですよね。ゴーバスターオーが、1号ロボとしてはややまとまりがなく、スーパー合体然としているのは、シリーズ構成の意図に忠実なのかも知れません。やりますね〜。
リュウジの過去描写や、カズヤに関する演出・演技もすこぶる高い水準だったと思います。カズヤの「常に何かを我慢している」ような表情、言葉の端々に浮かぶ棘、リュウジだけには容赦を願いたいと思っているような小癪な雰囲気...等々、素晴らしい点は枚挙に暇がない程でした。それだけに、冒頭に示した構成の甘さが...。
今回の「データを奪われる」という結末が、例えば「ヴァグラスの新メガゾードがバスターマシンに転用される(寝返る)」ような展開への伏線である事は、ある程度想像出来ますが、そうであるにしても、カズヤの行動とその後の処遇があまりにも大甘でしょう。
カズヤの行動は断罪に値し、わざわざ昭和の東映特撮テレビドラマを引き合いに出すのもあざといとは思いますが、昭和ならば確実に「死ぬキャラクター」です。あのライダーマンでさえ、一度はデストロンに加担したとあって、少なくとも「V3」では青空に散る「末路」を辿っています。家族を人質に取られて脅迫され、仕方なく加担した場合は容赦されますが、いわゆる「魔が差した」状況であれば、ほぼ間違いなく死を与えられます。それは昭和ライダーの平山プロデューサーが仰る処の「みそぎ」であり、断罪なのです。
現在に至っては、そういった「断罪による死」という展開が時代性にそぐわないわけですが、それでも人気ドラマ「相棒」で繰り返されているように、「魔が差した」者に対しては厳しい法の裁きが待っていて然るべきであり、子供向け番組としても、道徳的にマズいのはいかがなものかと思います。小林脚本にしては、やけにツメが甘いのが疑問ですね。元々年長者の苦悩を背負っているリュウジのエピソードとしては、重すぎてしまうと判断されて現場で改変されてしまったのか、はたまた制作ブレーンの判断なのかは分かりませんが、せめてリュウジが漏洩の事実を隠蔽してカズヤを赦すくだりがあったり、ヒロムと対立する等のシーンがあれば、また違った説得力があったのではないかと思います。
あとは、やっぱりセキュリティの甘さですね。エンターに侵入されるのはともかく、責任者でもない一般エンジニアが、容易にトップシークレットの複製を持ち歩けるというのがダメダメです。ハードディスク(玄人志向というブランドのHDDケースに酷似してましたが・笑)のぞんざいな扱いは許容出来るとしても、コピーして簡単に持ち出せるようであれば、あの部屋がクローズドな空間である必要が全くないわけで...。クローズドと云えば、あの携帯による偽装通話のくだりも、分かり易すぎて引いてしまいました。
2クール辺りの新ガジェットなり新メンバー登場なりで、恐らく最初のクライマックスが到来しますが、それまでの段取りがやや悪いような。キャラクターの描写は非常に良いので、ドラマ面でのクォリティ底上げに期待したい処です。
天地人
まずは、14日に亡くなられた城茂こと荒木しげるさんのご冥福をお祈り申し上げます。
(戦隊には直接の関係はありませんが、近日公開される映画で共演するという事でご容赦を)
荒木さんが主演された仮面ライダーストロンガーという作品ですが、自分にとって大好きな作品の一つであり、時に悪の大幹部であるタイタンとシャドウの意地の張り合いと、終盤の怒涛のデルザー編が良かったですね。
ウルトラ、戦隊、ライダーと歴史あるシリーズですが、こうして段々亡くなられていく方も増えていくんだろうと思うと、いかにゴーカイジャーという作品が奇跡的な番組だったのか、しみじみ思いますね。
と、書いていたら録画したアキバレンジャーに伴が(おいっ)
本編に戻って
う~ん、最初の立ち上がりが良かっただけに先週と今週の粗が目立ってしまいますね。
結果的にコピーを奪われるも、最後の最後に改心してリュウジを助けようとして命を落とすとか、期待してたんですが・・・
実はヴァグラスに共鳴しており、最後にエンターと共に逃亡しようとして使い捨てにされてるとかでも良かったんですけど、とにかく自分もこれで終わらせていいの?って感じましたね。
それ以外の点(セキュリティは置いといて)は自分も満足で、良かったです。
ちょろ
こんにちは。
今回も特命は失敗のようでGBのミッション成功率は案外低いのですね(笑)。
エンジニアさんの処罰はきちんと出さないと子供向けだけに尚更でしょう、はい。
転送先が地中にも可能とは、ヤマトからスタートレックあたりの常識?をぶっ飛ばす何という荒技。地中からの連続攻撃というまるでウルトラ的画が見れたので、つっこみはまあ(笑)。
演技ではエンター様は毎度高水準ですが、今回はリュウジの喜怒哀楽ないまぜの表情が素晴らしかったと。
ラストのゴリサキの後ろで、次回名誉挽回しそうな仲村嬢が司令の肩をもむ図に笑ってしまいました。
竜門 剛
巨大戦にうつるまえにドリルロイドを見ていないため、地中からという発想が浮かばなかったという演出に感心しきりでした。
変装(コスプレ?)エンターも、気づけ!怪しすぎるだろ、色々と!などとツッコんでしまいましたが、これからもやってほしいネタです。
ラストも、何のお咎めもなしというのは、確かにありえませんよね。好意的に見れば、ドラマとは別のところで、なにかしらの処分があると、考えられるのでは?
ゴーバスターズとは関係ありませんが、トランスフォーマーの新作が始まりましたね。劇場版を基本にしているためか、ビーストウォーズやアニメイテッドよりもシリアスな展開になりそうで、恒例のアドリブは少なくなりそうです。
最初から「アレ」的なアフレコを期待している自分が怖い(笑)。
バド
いつも興味深く見させて頂いております。
今回の話ですが、我が家の子供たちには理解出来るギリギリの
ラインだったようで、データのコピーや携帯電話の件も親が説明
しないとピンと来ない感でした。
子供たち(10歳・4歳)にとっては今のところ十分なリアリティが
維持されていて、それはゴーカイジャーの時には無かった反応でした。
私は子供と見るならこのくらいで十分かなあと思ってはいます。
逆に最後の場面は、両者重すぎる罪を理解し尽くして、罪を償い
もう一度エンジニアに、と旧来の友人ならではの表現だったのかな
と感じました。彼が何事も無く職場復帰している事は、あり得ないの
かなと。
カズヤは生き残りましたが、札束を浴びせられ、惨めな気持ちで
旧友の前に現れた姿は、ありがちに殺されるよりある意味哀れに
感じました。
私事ですが、私は所謂被災地に住んでいて「それでも生きる」
場面にはちょこちょこ見かけますが、それに通じる所があり
最後しんみりしてしまいました。
ゆーじ
先週は御迷惑をおかけしました。
さて今回は、確かにカズヤへのお咎め無しが気になってしまいますが、後々のエピソードでフォローされることを願います。
個人的には、設計図は紙のデータとしてどこかに残っていると思っています。設計図のようなものは、電子データにすると扱いやすいですが、今回のようなことで簡単に盗まれてしまうので、意外とアナログな感じで扱うのが一番安全ですから。まぁ、そこまでリアリティを追求するのは、子供向けの番組としては、いきすぎだと思いますけどね。
とにかく今回のエピソードが後で、どのようにつながってくるかを楽しみに待つことにしましょう。
P.S. やっぱり、エンディングの「ドンさんガタキリバ」が忘れられない。
M'sRoad
刑務所に収監されたカズヤにリュウジが面会しに行って、
その時に交わした会話の中からヴァグラス攻略の重要な
ヒントが見つかる、みたいなフォローを後でやってくれると
良いんですが。
シンケンジャーの時は結構エグい話があったけど、
今年は綻びが目立ちますね。
公式ブログにGT-02のラジコンの写真が載っていて
思わず欲しくなってしまいました。