Mission 44「聖夜・使命果たすとき」

  • 投稿日:
  • by
  • カテゴリ:

 バトル、またバトルで押しまくる怒濤の年末編。

 クリスマスに始まったメサイアとの因縁、今ここに終結を迎えました(?)。全体の構成や盛り上げ方、テンションの高い芝居や画面構成、どれをとっても「最終回」の趣。Mission 30における雰囲気を、よりポジティヴな感情を礎として再現して見せたような、そんな感覚でまとめられていました。Mission 30を等身大重視、今回を巨大戦重視といった具合の差別化もなされていますね。

 私個人としては、いくら因縁のクリスマス編だからといって、まさかここまで「決着感」を露わにするとは思ってもみなかったので、ちょっと唖然としてしまったわけですが、全編に漂う凄まじいハイテンション振りには、すっかり引き込まれてしまいました。

 ヴァグラス側の事情で言うと、エンターは当然無事で、逆にエスケイプはメサイアの一部となって消滅してしまいました。ただし、これがエスケイプの退場となると実にあっさりしているので、やはり再登場の機会が用意されているのではないかと思います。というのも、ヴァグラスは戦隊シリーズでも非常に珍しい超少数精鋭型の敵組織なので、最終話までエンター一人で引っ張るのは、ちょっと無理があるのではないかと思うからですが...果たしてどうなるか?

 制作側の意図としては、最終的な巨敵をエンターとし、あらゆる要素をエンターに集約していくのではないかと思いますが、その意図自体は悪くないものの、どうも最終回ノリのエピソードを連発(といっても2回ですが)した所為で、「倒しても倒しても復活する敵」というイメージより、「どうせ生きてるんだろ」というネガティヴな感想が先行し(笑)、結果として螺旋状に盛り下がっていってしまっているのは否めません。今回のエスケイプもそうですが、基本的に「ゴーバスターズ」一本一本のクライマックスが巨大戦に置かれている為、「幹部 VS ヒーローの生死を賭けた肉弾戦による対決」という構図が成立しにくく、しかもエンターやエスケイプがアバターである為に、データソースを絶たない限りは消滅出来ないという設定が影響して、何とも「決着」自体が掴み処の無いものになってしまっているような感じがします。

 今回のエスケイプに関するモヤモヤっとした感覚もそれが由来であるし、ラストに何事もなかったかのように再登場するエンターを見ての「あ、まだ続くのね」みたいな感覚も、同じ由来でしょう。

 少々乱暴な言い方をすれば、ラストにおけるエンターの登場は、折角の「完結感」を台無しにしてしまっているように思えます(完結したら困るのですが・笑)。全力を出し切るようなテンションの高い芝居を繰り広げ、それが非常に完成度の高い名場面を多数輩出したにも関わらず、メサイアを打倒して「やり切った」という感情が薄いのは、ここに原因があります。せめて、メサイアの残骸から一部のデータが漏出して、エンターの腕だけ再生しつつあるとか、エンターの苦悶の表情を形作るとか、そういった「全体への配慮」が欲しかった処です。

 さて、今回の「最終回ノリ」はあらゆる処に表出しています。

 まず、丁度クリスマスイヴの前日という放映タイミングに恵まれたのもあり、クリスマス商戦を意識しまくった「お得感」が満載。

 今回、等身大戦は特に対象となっていませんが、巨大戦では、アピール全開です。まず、巨大メカ関係は全て登場。全合体バリエーションが登場したわけではありませんが、劇場版に登場したフロッグを登場させる等、例年に倣った豪華な画面作りが鮮烈でした。エースをニック単独で操縦させて、ライオーを「本来のパイロット」であるヒロムに担当させたのも、役割シフトの手法として巧い処。ただ、ニックのエースの操縦があまりに遜色なくて、ヒロム要らないじゃんと思ってしまうのはご愛敬といった感じでしょうか。一応、必殺技を繰り出すにはヒロムの力が必要なので、その辺りで差別化...するわけないですね。もう話数も残り少ないし、そこまで重要なトピックでもないですから...。

 続いて、最終決戦パターンに準ずるサービスシーンが散見された事。

 これは長らく戦隊シリーズを見てきたファンにはお馴染みですが、最終回では素面キャストか変身後のスーツを着て名乗りを上げるというパターンが確立されています。ある時期(「ダイレンジャー」辺り)から、それがエスカレートして、素面のキャストが素面のまま名乗りを披露するという方向性にシフトしました。記念の意味合いから、よりクライマックス感を煽るものとして重視される傾向にあるのは明確で、実際にその効果は抜群です。

 ところが、「ゴーバスターズ」では、変身シーンにバンクをなるべく使用しないという製作姿勢があった為、ほぼ毎回に亘って素面キャストがスーツを着ており、また名乗りポーズに関しても極限まで装飾的な動きを削ぎ落とした「リアル志向」となっている為、この手法に殆ど新味がなくなってしまったのが致命的。それでも今回、巨大戦の最中にコクピット内で「素面名乗り」を行うという、巨大戦が主軸の「ゴーバスターズ」ならではの趣向で新鮮味を出してきましたが、このタイミングでこれをやってしまい、しかも旧主題歌が抜群のタイミングで流れるとあって、最終回で使うべきカードをここで完全に消費してしまったわけで、どうなのかと心配になりました。

 名乗りの簡潔さは、そのまま「ゴーバスターズ」のケレン味の少なさを象徴しています。年明けからの最終編に向けたエピソードで、ケレン味を担う切り札のない中、どのように盛り上げていくのか、心配なような楽しみなような、複雑な心境です。

 そのケレン味関連では、今回、珍しく「気合いが敵を打ち破る」というパターンが登場。いわば、「絶叫すると思わぬ力が発揮される」という、ファンタジー戦隊の典型なわけですが、リアル志向の「ゴーバスターズ」に果たしてマッチしていたかというと、それは明確に「否」でしょう。しかしながら、巧いなと思ったのは、ヒロム達が絶叫と共に自らのエネルギーをデータ化して、大量に注ぎ込むという描写が見られた事で、これにより、テクノロジーとの均衡がギリギリ保たれていました。

 この、エネルギーがデータ化して注ぎ込まれるという描写は、毎回の必殺技の際に見られたものの発展系である為、全く違和感がない。しかも、そのエネルギーはヒロム達のフィジカルな面から創出されるものなので、精神力を極限まで高めて集中させる事で、それを一段上にアップさせる事に関しても違和感がない。いわゆるファンタジー系にありがちな、気合いで奇跡を起こすといった類とは、明確に差別化しておきつつ、サイエンティフィックに(?)気合いを活かすという選択がなされていて、非常に面白いと思いました。見た目は完全に「絶叫すると思わぬ力が発揮される」でありながら、SF志向を担保してみせた名シーンです。

 また、近年の戦隊に顕著な、レッドのドラマへ収斂していくという傾向も、今回は色濃かったように思います。こう書いていると、ホントにもう最終回でいいじゃんという感じなのですが、「その先」をどう見せていくかに期待すべきなのでしょう。

 ところで、周辺のドラマは、かなりあっさりしていました。

 クリスマスパーティに関するトピックは、単にリュウジとナミエが、13年前に同じクリスマスパーティで会ったというだけで、別段特筆すべきテーマ性といったものはありませんでした。一応、13年前に託された「命を繋げる事」に絡めて言及されはしましたが、それほど印象に残らないものだったと思います。クリスマスパーティに関しては、サンタコスプレのリカさんに全てを持って行かれました(笑)。演出面で、もう少しリカさんの使い処を熟慮すべきだったのではないでしょうか(爆)。

 一方で、メサイアをシャットダウンした際の、黒木の達成感を表す動作は鮮烈でした。あれがあった為に、余計にクライマックス感が強くなり過ぎて(でもエンターに台無しにされて)、ホント、年明けからどうするんだろう...と思ってしまったわけです。演出面で、もう少し黒木司令官の使い処を熟慮(以下略)。

 というわけで、今年もお世話になりました。来年もよろしくお願いいたします。新年は6日からという事で、忙しい年末年始にかからずホッとしている所存です(笑)。