年末で一区切り付けるという意図か、怒濤の展開を見せる好編。ここに来て、ようやく断片化していたメサイアカード編の意味が集約されてきた感じを受けます。
そもそも、「ゴーバスターズ」の事件の発端である「13年前」の出来事は、クリスマス期の出来事であり、クリスマス編をそこに絡めてくるのはある意味当然なのですが、それでも今回の絡め方は絶妙です。単に時期が来たから敵が大攻勢を仕掛けてくるといった安易なものではなく、段取りも周到。クリスマス会のエピソードは、メインに据えて「どこかで見た」話に仕上げるような事をせず、あくまで前編である今回にとってはスパイスに留めているのも良い感じです。
クリスマスの「絡め方」をヒロムのメンタル面とした辺りも新味に満ちており、クライマックスに向けて人間の感情の奥深さをテーマとして集約させていくカタルシスは、非常に見応えがあったと思います。
今回は前述の事項以外にも沢山の美点を持っていると思いますが、中でも突出していたのは、ヒロムの戦い方の合理性と、ヒロムの戦いにおける感情の二面が、共に影響し合う事なく並行して描かれた事でしょう。
それは、相手の技を見切る為に攻撃を受け続けるという「合理性」と、怒りを利用されない為に、親のプレゼントとされるオルゴールによって、怒りではない戦いの源泉を喚起するという「感情」の二面。
ここでの「合理性」と「感情」は、あたかも怒りを抑制したが為に、本来の戦闘力を発揮出来ないでいるかのように描写され、両者が濃厚な関係性を持っているかのように演出されており、正に視聴者もエンターも特命部も騙されたわけですが、実際はご覧の通り、ヒロムの作戦の表層がそう見えているに過ぎませんでした。
「ゴーバスターズ」では、当初メンタル面をあまり作戦自体に持ち込まないよう、クールな作劇に配慮されていたように思いますが、メサイアカード編では「作戦」の印象が後退した為に、メンタル面がややクローズアップされる傾向にありました。今回において、その両面が高いレベルで両立され、しかも互いに影響していると見せかけて、実は冷静な計算の上で並行に動いていたという「答え」が用意されたわけで、その辺り実に見事だと思います。
中でも、メンタル面のテーマである「怒りの抑制」は、敵の戦略的特徴に対抗する手段としての、タクティクス面での「答え」として成立しつつ、ヒロムの戦いの意味の再確認を成立させ、しかもクリスマスに絡めるといった、アクロバティックな論法を展開。ニックがオルゴールを回し続ける役目に飽きて歌い始めるといった、コミカルなシーンですら、ヒロムの秘めたる決意の熱さを裏付けるようで、戦隊シリーズに数あるクリスマス編でも、超一級の完成度だったと思います。少なくとも前編である今回は。
他にも、エンターとエスケイプの関係性に進展が見られた処が良い。
両者はメサイアカード編においては主従関係のような状態となり、いわば通常の戦隊シリーズにおける幹部の序列を体現していたわけですが、ここで驚きの展開を見せたわけです。
エンターがメサイアを利用する立場を見せているかのように振る舞っているのに対し、エスケイプはあくまでメサイアの信望者。この両者のポリシーの違いは、これまでも、それとなくセリフ等で表現されて来ましたが、それでもエスケイプがエンターに明確に逆らうという展開はありませんでした。
今回、私はいつものようにエスケイプがエンターに利用される構図を予想していて、メサイアのメガゾードはエンターの指揮で動くものと思っていました。ところが、本編ではエスケイプがエンターを抹殺するという暴挙に。まぁ、ここでエンターが退場するという事はまず有り得ませんが、握りつぶすという強烈なビジュアルショックによって、エスケイプの「叛乱」が大きく印象付けられた事は間違いないでしょう。
ただ、このくだりでは、エスケイプの言う「断片からの復活は、もはやパパ(=メサイア)ではない」という意見が如実に反映された...とは言い難く(現にエンター内部にもカードがある為、潰してしまっては元も子もない)、単にエンターの行動ポリシーがあまりにも気に入らなかったと言う感じです。勿論、残りのメサイアカードを全てメガゾードに取り込んで、より「元のパパ」に近い状態に持って行くという決意の表れだとも取れるわけですが、既に多くのメサイアカードが失われている今、エスケイプの行動にポジティヴな面があるかと言えば、それは否でしょう。
とりあえず、ここは年末の一区切りにおける、大きな展開感を出す為の仕掛けくらいに思っておいた方がいいと思います。
あと、エンターとエスケイプに関しては、黒いサンタクロースという、実にオーソドックスかつ王道で効果的なコスプレも高ポイントでした。あまりに似合っているエンターに、実にキュートなエスケイプ。もっともっと二人のコスプレを見たかったと思うのは、私だけでしょうか。殺伐としたエピソードに、コミカルな味わいを与えてくれる名シーンだったと思います。
今回のメタロイドは、男女タイプ二体の合成という事で、デザインにも新味がありました。私としては、あしゅら男爵のように男女の声で同時に喋る不気味さを表現して欲しかった処ですが(笑)、硬質なデザインに不気味さを求めても妙なので、今回の演出はまぁこれで正解だったのかな、と思います。折角二枚のカードを内包するメタロイドでしたが、後編に引っ張ることなく終わってしまったのには、ちょっとビックリしましたね。また、一体のメタロイドに対し、わざわざメガゾードが二体出てくる辺りも斬新でした。
メガゾード二体、メサイアのメガゾード一体とくれば、巨大戦も大充実です。
その意味は、クリスマスですから当然、年末商戦(笑)!
出てくる必要があんまり感じられないライオーがいきなり出て来て、陣が操縦したり、バスターマシンの単体を充実の新撮カットで大活躍させたり、気合い入りまくりで笑ってしまいました。特にメカの魅力は突出して描かれていたように思います。合体バリエーションをこれでもかと見せて尺を稼ぎつつ、年末商戦アピールをするというあざとい年度もありましたが、それに比べると今回はかなり劇中のシチュエーションを大事にしていて、巧いバランスで成立していたのではないでしょうか。
等身大戦では、ヒロムの、ある意味地味なフィジカル&メンタルの防戦の後、しっかりパワードカスタムからのライオブラスターを使用。大逆転のカタルシスをメインアイテムに集約してくるという、実に素晴らしい構成でした。
今のところ、例年のクリスマスパーティに関する事項が置き去りになっていますが、後編でどう落とし込んで来るか楽しみです。前編の出来がすこぶる良かったので、大いに期待したい処ですね。
竜門 剛
すべてのきっかけが13年前のクリスマス・・・という設定を半ば忘れかけていたのですが(殴)、年内のクライマックスにふさわしいお話でした。
ケンロイドについては、「カタナロイド」のほうがデザイン的にふさわしいのでは?などと細かいツッコみをしてみたり。洋式の剣と盾では、普通すぎてあのデザインにならないですよねぇ。
後はやっぱりエンターとエスケイプの黒いサンタ!エスケイプが実に可愛らしかったですね!ウエディングドレスの時とは正反対。
パーティの件ですが、リュウジと保母さんの関係が、次回への伏線ですよね?
M'sRoad
私も保母さん、気になりますねぇ(照れ)
ネットサーフィンをしていると「亜空間突入をクリスマスの予定にしていたが路線変更で前倒ししたのではないか」という指摘が目について、う~ん、
関係者じゃないから気にすることはないんだけど、気になる(汗)
マスクの中ではヘッドギアみたいなものを付けてるんですね。ディテールが
どんどん細かくなってます。もうこの際、破綻や矛盾は置いといてビジュアルの猛ラッシュで最後まで突っ走るのも悪くないように思いました。
あと、ライオーはヒロム以外が操縦するパターンが以外に多いですね。
M'sRoad
追記です。以外に以外って・・・(汗)
ニックとの掛け合いを見たいのでエースが現役なのは嬉しい限りですが
レッドが新ロボを入手すると、上位互換みたいな扱いになって1号ロボの
出番が減るパターンが多いので、ライオーを皆で使い回すという作風も
有りだなと思いました。
天地人
リュウジ「(保母さんを見て)あの人どっかで・・・そうだシンケンジャーでレポーターやってた人だ」
ヒロム「何言ってんですか、あの人はボウケンジャーで野良猫だったじゃないですか」
・・・本題に戻って
今回はホント、怒涛の展開でしたが、エスケイプの黒いサンタに全て持っていかれましたね(笑)