大丈夫かと思うくらい、ハードなエピソード。
司令官・黒木の冷徹なまでの使命感と、それを探るように無茶な行動に出るヒロム。そんなヒロムの行動をすぐには理解出来ない「先輩」のリュウジとヨーコ。二重三重に重ねられた思惑が重厚なドラマを紡ぎあげています。
「無茶な行動」をとるヒロムのドラマを盛り上げる為、アクションも超ハードになっており、その意味で見せ場の多いヒロムですが、実際はヒロム編というより黒木編になっているのがポイント。この黒木の言動をどう捉えるかによって、本編の雰囲気が変わってくると思います。
どちらにしても、エンディングで一生懸命踊っている黒木を見ると、そんな事どうでも良くなったりするんですけどね(笑)。
今回は、ある特徴が顕著なのですが...。その辺りを続きの方で。
ある特徴、それは、事件・事象そのものがドラマとして進行するという特徴です。これまでのシリーズもそうではないかと思われる向きがあるでしょうが、そこには概ね「日本的ヒーローの美徳」が盛り込まれていた事に注目しなければなりません。
あまりに慣れ親しみすぎて気付き難いのですが、ウルトラシリーズでは「帰ってきたウルトラマン」から、仮面ライダーシリーズでは「仮面ライダー」の2クール目(一文字編)から、そしてスーパー戦隊シリーズでは「バトルフィーバー」から、「日本的ヒーローの美徳」が顕著になります。それは、「身近な者が虐げられる事に怒る」という展開。敵の作戦の規模がどうであれ、そこには「守る者と守られる者」の顕著な関係があり、その上、その両者には前提となる束の間あるいは深い交流があります。
その構造は、多分に時代劇的であり、多分に刑事ドラマ的でしょう。つまり、日本のドラマ構造の典型を前提に持つ事で、日本人の精神性にアピールしていた事になるわけです。
逆に、ウルトラにおける「マン」〜「セブン」は、被害者は多くの場合「名も無き多くの人々」であり、ドラマはレギュラー陣の葛藤や怪獣・宇宙人対策の面白さを主軸としていました。ライダーの1クール目は、ショッカーの理不尽かつ奇っ怪な「犯罪」に孤独な戦いを挑む一人の青年の話。「ゴレンジャー」はイーグル VS 黒十字軍の全面戦争をライトな作風で描いており、民間人が巻き込まれる印象はかなり薄い。「ジャッカー」ともなると、そらにその傾向が強まります。俯瞰すると、どれも海外ドラマをかなり意識した企画に端を発しているコンテンツです。
「ゴーバスターズ」、特に今回は「日本的ヒーローの美徳」が薄い傾向にあると思います。基本テーマとして、エネトロン奪取に対する抵抗がありつつ、今回語られたように、亜空間に転送されてしまった人々の救出というテーマも内包するわけですが、前者は正に「日本的」である必要のないテーマ。辛うじて後者に「日本的」な動機付けが感じられますが、表層ではそれを(ブレーンである黒木が)否定し、ヒーローが内に秘めて戦う動機としているのが巧い。
この構造を示した事で、「日本的ヒーローの典型を排した上で、日本的ヒーローのメンタリズムを保持する」という、アクロバティックな感覚で新風を吹き込む事に成功していると言えるでしょう。
難しいのは、この「変化」を視聴者側が受け入れられるか否かですね。特に、黒木の冷徹なまでのクールさに、従来の司令官像と比べた際の違和感を禁じ得ない向きは多いのではないかと思います。
本編ラストでは、黒木の姿勢に反感を覚え、思わず熱い拳を振るおうとするリュウジ、それを止めて黒木の本気に安堵したヒロム、立ち去る黒木に敬礼する三人...というシーンを繋いで、特命戦隊の鉄則を描いて見せ、より一層のクールさを描くと共に、そこに葛藤の余地を挟ませない安定感を醸しだしていました。しかし、ここにはそれだけではないものがあったと思います。
これは、黒木役・榊英雄さんの力量によるものでもありますが、「生存者はいない」、「ゴーバスターズは囮」という、およそ子供向けヒーロー番組らしからぬ言動の裏に、ヒロム達に対する全幅の信頼があるように見受けられます。それを示すかのように、厳しい言を放つ黒木の眼光は、鋭いながらも憂いがありました。
さらに、ストーリー展開そのものからも、信頼感は読み取れます。何しろ、ゴーバスターズは切り札であり、代替不可。それを囮に使うという事は、即ち勝算がなければならない事であるのは自明です。黒木が、本当に生存者が皆無だと考えているかどうかは不明ですが、少なくとも、ヴァグラスの本拠を特定する事が、メサイアのシャットダウンだけでなく、生存者救出に繋がらないとは言えないわけで、黒木が完全なる冷血漢であるという事は、ここで否定しておいて良いでしょう。ヒロム達への「親心」に似た感情も、以前のエピソードで描かれている事を付記しておきたい処です。
さて、戦隊らしからぬ感覚は、転送誤差3キロメートルを利用した作戦という、子供には少々難解な展開にも見られます。ここから、「ゴーバスターズ」はやはり相当に海外ドラマを意識しているのではないかと思われます。アメリカ産のTVSFドラマは、基本的に大人(ファミリー)がターゲットになりつつ、ガジェットやキャラクターの魅力で子供向けのマーチャンダイジングが可能といった二重構造になっています。「ゴーバスターズ」も、ストーリーの部分では、メインターゲットを高学年以上に設定し、日用品や身近なものをモチーフとしたメタロイド、メガゾードといった「親しみ易さ」と、各種メカのカッコ良さで、低年齢層にアピールしているようです。
この方向性が、このまま継続されると凄い事になりそうな予感がしますね。中途半端でない力強さが感じられるので、是非成功させて欲しい処です。
今回はあまり特撮に言及していませんが、勿論凄味を感じさせるシーンが幾つもありました。アクチュアリティ溢れるオープン撮影の醍醐味と、セット撮影による精緻な描写がしっかりと使い分けられていたと思います。そして、何と言ってもヒロムの「肉を斬らせて骨を断つ」戦法のシーンが凄い。斬りつけられるCB-01の胸部、コクピットに達する巨大なカッターがヒロムに迫り、暗いコクピットに陽光が射す。さながら劇場大作のようなこのシーンの凄さには、思わず息を飲みました。通常回でロボットがダメージを受けても、大抵は表面弾着に続いて、コクピット内弾着という流れが殆どだったスーパー戦隊シリーズにあって、遂にここまでやったかという印象でした。
また、このCB-01のダメージ表現が、黒木の言う処の「バスターマシンの戦力アップ」への布石にもなっていて、段取りの良さも光っていますね。
私の個人的な予想では、この高いクォリティを備えた海外ドラマ風の雰囲気に、従来のスーパー戦隊シリーズの雰囲気を少しずつ導入していくのではないかと思っています。そうあると面白いだろうと思う一方、それをいい意味で裏切って欲しいと思う面もあり...。色々な意味で楽しみなシリーズです。
天地人
ホント、今回も面白かったですね。
ただ、気になるのが、ここまでハード(?)な展開に、メインターゲットの子供達がついて行けるんだろうかって事でしょうか。
中盤のテコ入れに、三人の能力を全て兼ねそろえた行動隊長が出てくるとか、オペレーターの仲村ミホがアンドロ仮面に変身したり、敵の新幹部としてバラモン密教の僧が出てくるなんて無しですよ(おいっ)
でも、新仮面ライダーみたいに歴代戦隊が出てきたら嬉しいかも(って、まんまゴー〇イジャーですね)
敵の陽動作戦に対し、それを見破り逆に発信機(?)をセットして敵の本拠地を探ろうとする司令官とか、個人的にこの展開がいいので、後はぜひ女性キャラを増やして欲しいです。
それでは、次週もお楽しみに
YM
「心を鬼にして」と言う言葉を連想した黒木司令。SirMilesさんの考察でより一層腑に落ちた感じがしました。
海外作品の影響、と言う部分はエネルギー争奪戦と言う設定が一番分かりやすいかな、と思います。この設定を最初に聞いた時に海外で制作された初代アニメ版『トランスフォーマー』みたいだな、と感じたので。
従来のスーパー戦隊らしい雰囲気の導入ですか。分かりやすい所ですと、陽性のキャラクターの追加戦士を導入、とかでしょうか。『侍戦隊シンケンジャー』のゴールド(源ちゃん)みたいな。
ちょろ
こんにちは。
まず亜空間と転送について簡単でも設定出したのは正解かと。
研究所のみなさんの安否も含め、亜空間が説明不足だと現実感ないので。
司令官の冷徹もそこに至るドラマを今後楽しみにしたいと。
今回は、私的に敵見方の騙し合いが気に入りました。
巨大戦も4話でそんな非常手段をという感じで、出し惜しみしないですね。
天地人さんの懸念について、陽性の補強があるとはおもうのですが、
バランス壊さぬようにどう見せてくれるのか期待しています。
オオミツ
正直なところ、不安な部分の方が多い印象です。
確かに映像の見応えは抜群だし、ハードな設定や人間関係も凄いんですが、
果たしてこれが「スーパー戦隊」となり得ているのかどうかが。
ゴーカイジャーを節目としての「新しい戦隊を!」という制作者の意気込みは
充分分かるんですが、ここまでを観る限りでは「果たしてそういう気負いは
必要だったのか…」というのが正直なところです。
2~3年で卒業する現役児童にとっては、歴史なんてどうでもいいものです。
今この時を生きている現役児童を、どうか「マンネリ脱却」という試行錯誤の
犠牲にしないで欲しい。切に願わずにはいられません。
竜門 剛
黒木指令の冷徹さは、過去のミリタリー系戦隊の司令官を彷彿とさせますが、ここまでのものはなかったように思います。
ただ、冷たいだけではない・・・という王道的展開になるとは思うのですが、確かに子供向けというジャンルとしてはギリギリかもしれません。
でも、小耳に挟んだところでは、今のところストーリーよりも特撮の格好良さに子供たちも夢中になっているようです。
コメディー要素に関しては、エンターとヨーコのやりとりに期待。
いちこ
4歳の我が子にはイマイチな様子です。
ゴーカイジャーから戦隊デビューしましたが、子供にとってはストーリーはどうでもよいみたいですね。
ただ、名乗りのシーンが地味なのが、受けない理由みたいです。
(マネしたりしません)
いにゅ
管理人様、今年も週明けの更新を楽しみにしております。
ウチの5歳児は毎週楽しみにしているようですよ。
特にメタロイドが日常品モチーフなのと、ゴーバスターズとエンターとのやり取りがツボのようで。
同じようにシリアスだったシンケンジャーもよく見てましたし、反対にライト路線(を失敗した?)のゴセイジャーは途中から惰性で見てる感じでした。(おもちゃもあまり欲しがりませんでした)
子供って(それぞれ好みはありますけど)案外「子供だまし」には引っかかってくれないんですよ。
ウルトラセブンなんて自分も大人になってから見て「おぉっ」と感心するところばかりですもん。