Mission 37「黒と白の花嫁」

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 ヨーコ&エスケイプのウエディングドレスを堪能出来る一編。

 というより、これはエスケイプ編と言っても過言ではないでしょう。何しろ、エスケイプの持つ敵側なりの強固なポリシーに触れたヨーコが、また一つ大人へと近づいたわけですから。この、悪のポリシーに対して感じる処があり、それがヒーローなりヒロインなりのステージアップに繋がるという展開は、ある意味タブーの一つであって、今回のように回想まで付けて強調するのは、非常に珍しいのではないでしょうか。

 ただ、そのような「掟破り」が前面にフィーチュアされているにしても、ヨーコの「初恋の相手」である先生の、異様なまでにカリカチュアライズされた爽やかさや、ヨーコの行動にやきもきを隠さない「三人の保護者」の、やり過ぎ感満載のギャグシーンが巧くテーマをぼかしており、とりあえず「戦隊」のメインターゲットにとっては、それほど引っかかりのようなものは感じられない作風だったのではないかと思います。

 それにしても、ウサダはともかく、リュウジや司令官のエキセントリックな言動は、いくらなんでもちょっとやり過ぎ(笑)。

 リュウジが、ヨーコに対して父親的な感情を持って接しているのは、何度か劇中で示された事項ですが、あくまで年長者としての「暖かい目線」にとどめた理性的な描写だったように思います。しかし、今回は明らかにヨーコの「保護者」のポジションであり、しかも「頑固親父」、「娘の恋人に嫉妬する、子離れ出来ない父親像」が投影されており、些か違和感を禁じ得ない処です。

 勿論、これは今回の展開にスパイスとして機能する「ギャグ」なわけで、それは重々承知しています。が、リュウジは戦隊ヒーローであり、ヨーコは戦隊ヒロイン。今回は、その枠組みをちょっと逸脱しているような気がするわけです。面白かったんですけどね(笑)。

 リュウジに輪をかけて違和感を発揮しているのは、黒木司令官。

 冷静を通り越して冷徹とさえ形容できる人物だけに、時折見せる滑稽な表情には大きな魅力があります。実際、陣に振り回されるようなシチュエーションを中心に、これまでも何度か、その魅力的なギャグテイストを発揮しています。今回も方針的にはその一環だった筈ですが、如何せん、黒木にはヨーコに対する父性といったものがあまり感じられず(裏設定的にはあって然り...ですが)、そういった描写自体もあまり存在しなかった為、その行動にはかなり唐突な感を受けました。

 しかし、ヨーコと共にバージンロードを歩けるキャラクターは、この黒木という人を置いて他にない為、敢えてヨーコの父親役に据えるにあたり、このような唐突なキャラクター付けが成されたのでしょう。いずれにせよ、「新郎役」に毒づく黒木の可笑しさと言ったら、これまででも最強レベルではないかと思います。

 偽装結婚式のシーンは、メタロイドが現れるまで繰り返し繰り返し行われた事が示され、陣が飽き気味になっているという、予想外のギャグも挿入されており、全体的にギャグテイスト含めて完成度の高いシーンになっていたのではないでしょうか。

 ちなみに、戦隊シリーズでヒロインがウエディングドレスを着るというシチュエーションは非常に多く、偽装結婚式も多々存在するわけですが、中でも「ダイナマン」でのそれは非常に完成度が高く、ヒロインである立花レイのケレン味溢れる激しいアクションと共に、印象に残る名エピソードでした。

 さて、この結婚式に乱入してくるのは、メタロイドではなくエスケイプだったわけですが、定番パターンを微妙にズラした(要は作戦が図に当たらなかった)上で、悪のヒロインに黒いウエディングドレスを着せて対抗させるという、悪のコスプレ編としての側面を与えたのは、見事でした。全体的に線の細い感じの白いヨーコに対し、肉感的な黒いエスケイプのコントラストは抜群で、世の大きい子供達の視線は、画面に釘(以下略)。

 ここで、エスケイプのライバルキャラがリュウジからヨーコへと、微妙にシフトしているのもポイント。戦隊シリーズにおいては、悪の女幹部のライバルが、戦隊ヒロインであるとは必ずしも決まっておらず、因縁が絡む場合は意図的に男女の組み合わせになっていたりするのですが(特に「ギンガマン」でのハヤテ VS シェリンダが印象的)、「ゴーバスターズ」でもリュウジ VS エスケイプの図式がほぼ確立していたので、今回の対戦カードは驚きでした。裏を返せば、それほどイエローバスターは実力者としてポジショニングされているという事でしょう。

 なお今回、エスケイプは危険を冒して自らを強化しており、その件については、エスケイプの素面での活躍機会が減る事を意味し、何となく寂しい感じがしていたのですが、強化に際しての苦痛の表情や、「ジャスピオン」におけるギルザ(高畑淳子様)の怪演に迫る変身シーン、そしてスーツアクションのキャラクター描写の的確さ、アフレコの巧さ、といった要素を合わせると、その寂しさもどこへやら。戦闘形態自体のデザインも素晴らしい為、エスケイプのキャラクター性が全く損なわれておらず、変身自体が歓迎すべきものとして映りました。

 そして、冒頭にも記した通り、エスケイプのメサイアに対する「無償の愛」とも言うべき感情が、ヨーコに影響を与えます。

 巧いのは、このトピックがヨーコのメンタル面を成長させる事はあっても、タクティカルな面では全く影響していない処です。要するに、エスケイプの姿勢がヨーコのパワーアップとして機能するのではなく、あくまで少女から大人へといったイニシエーションの一環として、軽いタッチで触れられたという事。「掟破り」ではありましたが、深く突き刺さるようなテーマ性とまでは印象付けられませんでした。そこが巧い。

 映像面では、ライオーの変形したトライクにエースが乗り、市街地を爆走するという一大特撮シーンが全面的にフィーチュアされました。

 はっきり申しまして、今回の特撮は「変態」的に凄いです。CGで全てを済ますのではなく、殆どをわざわざミニチュアで撮っているんですから!

 撮り方自体も、もう物凄いの一言で、スケール感、スピード感、テンポ、全てが一流。特に、精密に設えられた市街地のミニチュアの中で繰り広げられる戦闘機編隊とのバトルは、往年の東映特撮のテイストに、円谷特撮の精緻さを加えて昇華したかのような雰囲気があり、未だミニチュア特撮健在を存分にアピールしていました。いつの間にか、「戦隊」がミニチュア特撮最後の砦といったポジションになってしまいましたねぇ...。それはそれで少々寂しいのですが。

 ミニチュア特撮の粋を見せた今回に対し、次回は漫画的な特撮を見せてくれそうな予感。ビジュアル的に派手なバトルが連続する中、粛々と進行するヴァグラスの謀略。良い感じに盛り上がってきたのではないでしょうか。