Mission 31「宇宙刑事ギャバン、現る!」

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 「ゴーカイジャー VS ギャバン」の衝撃から半年以上が経過し、今度はギャバン単独の映画が公開され、しかも世代交代が行われるかも知れないという、さらなる衝撃を提供した東映が、今度は「ゴーバスターズ」にギャバンを登場させるという「暴挙」に出ました。

 いやぁ、素晴らしく歓迎すべき「暴挙」ではないですか(笑)。

 21世紀に入ってから、何度か宇宙刑事シリーズの新作を平成ライダーの枠で...という話があったとか、なかったとか。結局のところ、「新作」自体は実現を見ていないわけですが、「ギャバン」に関しては、前述の通り再び現在の撮影手法や技術で映像化され、今度はギャバンのデザインをマイナーチェンジした「新作」が制作されたわけです。

 このマイナーチェンジや、二代目ギャバンの登場に関しては、賛否両論あったようですが、その真価は後日公開の劇場版まで分かりません。ただ、今回の豪華な「顔見せ」によって、その一端を垣間見る事が出来たのではないでしょうか。まだ前編ですけど...。

 ともあれ、話題性は充分。プロモーションとしても高得点。かといって、「ゴーバスターズ」がダシに使われたかと言えば、そんな事もなく、特にヨーコは、先輩イエロー(シンケンイエロー)である森田涼花さんの登場もあって、魅力的なシーンを数多く排出していました。あ、もっと先輩のイエローはレギュラーで出てますけど(マジイエローさんが)。

 では、「ギャバン」の話になると、止まらなくなってしまうので、自重しつつ...。

 まず、二代目ギャバンである十文字撃について。

 些細な整合性については、リュウジの発言にもあるようにツっこむ処ではないのですが(笑)、どうも「ギャバン」がコードネーム扱いされている点に関しては、やや違和感があります。

 というのも、「ギャバン」の初回には、「母の姓を取り、一条寺烈と名乗って...」というナレーションがあり、また、バード星人である父・ボイサーは、ギャバン本人を「ギャバン」としか呼ばないといった処から、地球で育てられていた時分にもあくまでギャバンの名はギャバンであり、一条寺烈は地球における通り名というイメージがあります。

 ギャバンが「烈」であるのは、基本的にアバロン乗馬クラブの面々や、大山小次郎と対面している間「だけ」(後は事件の被害者に名乗る時くらい)で、他はあくまでギャバンとして行動しています。後のシャリバンやシャイダーが、あくまでコードネームであったのと異なり、ギャバンの場合は、ギャバンという名ありきなのです。

 ただし、ギャバンの印象が強烈だったのか、シャリバンは同郷の少女達にも「シャリバン」と名乗っているし、シャイダーに関してはコードネームの命名シーンが描かれた上に、そのネーミングの由来さえも語られているにも関わらず、沢村大という名がいわゆる「地球名」であるかのように振る舞っていました。

 今回の撃の場合はまるで逆であり、撃はあくまで撃、ギャバンはコードネームといった趣です。シェリーが「撃」と呼ぶシーンがそれを如実に示しています。かつて、ミミーがギャバンを「烈」と呼んだ事がない(明らかに「烈」と言っているシーンも、わざわざアフレコで「ギャバン」に直されている)のを考えると、興味深い点が浮かび上がります。

 それは、「襲名」。個人名であるギャバンの名を、同系統のコンバットスーツを纏う者に襲名させた、つまり、役を継承させたというものです。この辺りについては、もしかすると劇場版でチラっと触れられるのかも知れませんが、一番しっくりする解釈が「襲名」ではないでしょうか。

 「襲名」であるが故に、撃は烈とはかなり違うキャラクターとして描かれていました。

 烈は徹頭徹尾、「悪い奴ら」以外には絶対に拳を振るわないキャラクターでした。しかも、その「悪い奴ら」が「天使の顔」をしていた場合は、その正体が完全に暴かれるまで、手を出せないという男でもあったわけです。

 ところが、撃は短絡的な誤解の上で、ニックに襲いかかるような(少なくとも当該シーンでは)粗暴な男でした。この時点で、「ああ、このギャバンは烈の現代版ではないんだ」という印象が強烈に植え付けられる事になります。撃を演ずる石垣佑磨さんの雰囲気が、大葉健二さんの貌によく似ていつつも、大葉さんの人懐っこい雰囲気とはかなり異なる辺りも、その印象に拍車をかけています。

 また、大葉アクションの特徴である、体操と演舞を融合させたスピーディなアクションではなく、より格闘技寄りに振ったアクション(しかも予想以上にメチャクチャ動ける!)も、鮮烈な印象を残しました。これに関しては、どちらが優れているという次元の話ではなく、「違うもの」を見せたいという意気込みの表出だと思います。その上で、私個人の好みの話をすれば、やはり大葉アクションの方が好きですね。

 なお、次回への引きの部分で、黒木司令官に対して礼儀を見せている辺り、好感度がグッと上がった感があります。銀河連邦警察の一員である事も明確にしており、往年のファンにとっても、烈がオーバーラップして見えた瞬間ではなかったかと思います。

 さて、映像に関しては、これが「ギャバン」へのオマージュのオンパレード(笑)。

 その徹底振りは、「ゴーカイジャー VS ギャバン」におけるそれを凌駕していました。シェリーのレーザービジョンによるインコへの変身は言わずもがな、理科室の髑髏が転がってくるシーンは、オリジナルにおける、洞窟で岩が転がってくるシーンの再現、「魔空都市」の常套手段である、ドアを使った瞬間移動、遊園地のぬいぐるみの襲撃...。正に枚挙に暇がない状態。かつての魔空空間の映像表現の特徴であった、フィルタのかかった画面作りは、ハイビジョンコンテンツという事で敬遠されたのか、再現されてはいませんでしたが、小林義明監督をリスペクトしたかのような「演出」で、巧く尋常ならざる空間を表現していたと思います。

 シェリーの言動にも少しだけオマージュが込められていて、飲食店での会計の際、大きな宝石を取り出すシーンがありました。オリジナルの「ギャバン」にも、相棒のミミーが万年金欠の烈の飲食代を工面する為に、バード星の宝石を手渡したり、長官秘書のマリーンも同様の手法で現金を手に入れるシーンがあり、バード星人の金銭感覚は、30年前と何ら変化がないという事が示されました(笑)。

 烈の名誉の為に付け加えておきますが、前段のミミーが工面した飲食代は、死を覚悟した烈が、子供達と最後の晩餐(遊園地での豪遊も含む)をする為のものであり、字面ではコミカルですが、あくまで情感に訴えるシーンであった事を明記しておきます。

 クライマックスに至る戦闘では、撃の蒸着シーンに「チェイス!ギャバン」のインストゥルメンタルが流れたり、スパイラルキックやレーザーZビームを用いたり、得意の「巻き投げ」が炸裂する等、これでもかといったオマージュ連発に鳥肌。初お目見えの青いサイバリアン、先の「ゴーカイジャー VS ギャバン」よりも、TVシリーズでの使用感を強く意識したレーザーブレードのBGM、バンクシーンよりも、むしろインサートカット(前宙斬り)の再現に重きを置いたギャバン・ダイナミック等々、「そうそう、これこれ!」と言わしめるシーンの連発でした。

 蛇足ながら、「青いサイバリアン」は、実はオリジナルで果たせなかったカラーリングで、当時はブルーバックによる合成が主体だった為に、ブルーのカラーリングだと背景に溶け込んでしまうという危惧があったんですね。なので、急遽赤いカラーリングに変更されたそうです。

 一方で、「ゴーバスターズ」の主役陣の立たせ方も意外に巧かったように思います。

 何と言っても、今回最大の収穫はシェリーであり、大人になったと感じさせつつも、当時と変わらない「すぅちゃん」に、ヨーコの朴訥としたキャラクターが絡む事で、魅力が相乗的に増していました。この二人、殺人的に可愛いわー(笑)。

 特に、ヨーコのウイークポイントをカバーする「お菓子」が効果的に使用されたのが印象的でした。いわゆる古めかしい言い方で言う処の「年頃の娘」の共通項を、「甘いもの」に求めたバランス感覚の良さは特筆すべきものでしょう。物語的にあり得ませんが、例えばこれを「恋愛」とした時、もっとウェットな感覚になるでしょうし、「ヨーコとシェリーが仲良くお菓子を食べている光景を、微笑ましく見つめるヒロムと撃」というシーンは生まれなかったでしょう。

 また、マクーの残党に関する話であったが故に、ヴァグラスに関しては完全に切り離された状態で話が進むのかと思いきや、しっかりエンターの存続をアピールしたり、それが陣とJの担当する巨大戦の機会を作る等、組み立てが良い。かといって散漫になるわけでもなく、魔空空間と通常空間を並行して描く事により、ゴーバスターズサイドとギャバンサイドが並行して動いているように見せつつ、実は魔空空間でも通常空間でも、それぞれの登場人物が交流しているという、多層的な構造になっており、あくまで「ゴーバスターズ」の世界観の中で成立させているのは見事です。

 最後に、「ゴーバスターズ」と「宇宙刑事シリーズ」は、一体どのような連結構造になっているのかを考察してみましょう。

 ヒロムは宇宙刑事の存在について、「聴いた事がある」と言っていました。一方で、シェリーが宇宙人である事にヨーコが大変な驚きを見せる等、「ゴーバスターズ」の世界は、宇宙への拡がりを意識していない節があります。

 ここで、「ゴーカイジャー VS ギャバン」の存在が一つのキーになります。この映画には、ゴーバスターズが顔見せの意味で少しだけ登場しており、この件で「ギャバン」の世界との緩いリンクが確保されています。この緩いリンクの上で、ヒロムがギャバンの存在を何となく知っている事が担保されるわけです。今回、劇中で初めて「特命戦隊ゴーバスターズ」と名乗ったのも、「ゴーカイジャー VS ギャバン」での登場シーンを彷彿とさせますね。

 ただ、「ゴーバスターズ」は新西暦という時間軸を持っている物語なので、「宇宙刑事シリーズ」とは直接リンクしにくい面を持っています。従って、本作に登場したギャバンは、あくまで新西暦の上で活躍している、オリジナルとはパラレルなギャバンという事になるでしょう。

 宇宙刑事は、地球では基本的に隠密行動を取っているので、その存在が広く知れ渡っているとも言い難いわけで、「ゴーバスターズ」の過去に烈や電、大が活躍していたとしても特に支障はないと思います。

 次回は後編となりますが、どのような展開を見せてくれるか、実に楽しみですね。