Mission 3「GT-02アニマル、出撃!」

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 「ゴーバスターズ」、早くも三話目という事で、それとなくムードも安定してきたように思います。

 サブタイトルから、リュウジ編かと思いきや、実際はヒロムとヨーコの間にある溝を埋めるストーリー。しかし、同時にGT-02を中心としたエネトロン輸送ミッションにフォーカスする事で、リュウジ活躍編としてもまとめられており、バランスの良さが美点となっています。

 私は毎回、「特撮が!特撮が!」と連呼していますが、今回も夕暮れからナイトシーンに至る流れを巨大戦で描いており、時間の流れを美しく描写。また、巨大戦移行へのカウントダウンとは完全に趣向を変え、とある病院のエネトロンが尽きるというタイムリミットを用意する事で、三話目にして早くもマンネリ回避の布石を打っていました。やりますなぁ...。

 続きの方では、「三話目の工夫」が垣間見えましたので、その辺りを。

 大した事ではないですが、垣間見えた「三話目の工夫」は、今後の展開に影響を及ぼすものと言えるでしょう。それは、「場所の限定」です。

 いきなり遠い話に飛んで申し訳ないのですが、アメリカ制作のTVドラマに、「新スタートレック」というコンテンツがありました。日本ではローカル枠や深夜放送、CS放送に限られていたので(というより、海外ドラマ自体、近年はこういう扱い)、一般的な浸透度は低いかも知れませんが、これが実に素晴らしいシリーズで、劇場映画もかくやといった壮大かつリアルな映像表現に目を奪われます。しかしながら、一方で宇宙船内、しかも殆どバーの中だけで話が進むようなエピソードがあったり、戦闘描写が、艦長の指示やオペレーターの報告、カメラが揺れて俳優が揺れる演技をするだけで表現されたりと、明らかに「お金がかかっていない」エピソードがあったりするわけです。

 これが何を意味するかというと、特殊効果にお金をかけたいエピソードとそうでないエピソードをきっちりと切り分け、シリーズ構成上に組み込んで、効率的に予算を回していくという方針であった事を意味します。

 これを踏まえて、今回を視聴すると、あらゆるシーンが病院という場所で起こっている事が分かります。今回のストーリーはそこから逆算しており、ヴァグラスが人間を苦しめた上で支配するという、もうひとつの目的を提示し、病院という閉鎖空間をその実験場とする展開となっています。つまりは、限定空間にする事で派手な特撮を盛り込む余地を少なくしておき、それを活かすストーリー作りをしていたわけです。

 三話目にして、この手法が試行された事により、特撮面での見せ場は前回までと比べてやや減りましたが、ドラマ面や等身大戦の見せ場は逆に増えており、また、戦隊シリーズならではのギャグ描写やライトな感覚、少々ほのぼのタッチな面なんかも微増していて、長年の戦隊ファンを安心させる完成度だったと思います。今後も「経費削減」エピソードはそれなりの本数で制作されると考えられますが、今回のように優れたバランスであるならば、全く問題なくテンションを維持出来るのではないでしょうか。

 また、前述の通り、ヴァグラスがエネトロン奪取のみに目的を限定しなくなった事で、ハードになり過ぎない、古き良き東映ヒーローの香りを漂わせる事が可能になりました。今回のように、病院を乗っ取って人々を操るといった、「地道で小規模」な作戦も展開可能となり、しかも、それがほぼエンターの独断、即ち愉快犯的である点も魅力です。いわゆる悪の組織が、大仰な目的意識を持って「地道で小規模」な暗躍をする事(例えば世界征服を企むショッカーが幼稚園バスを襲うといった、使い古されたツッコミ)に関しては、これまでも様々なエクスキューズでカバーしようと試みられましたが、私が知る限り、最も効果的だったのは「シャイダー」のフーマの設定(フーマは地球に「還りたい」が故に、地球人を蹂躙せずに支配しようとしている)。「ゴーバスターズ」では、エネトロン奪取という大命題と、実際に行動できる唯一の人物たるエンターの愉快犯的性格をある程度分離させる事により、バラエティ豊かな暗躍が期待出来そうです。

 等身大戦では、ヒロムとヨーコがかなりのシーンで素面アクションを披露。実践格闘技の動きを導入したアクションは、その見せ方の巧さによって、実践的でありながら、しっかり派手さを演出しており、その完成度には唸らされました。近年のハリウッド系映画のアクションも、ジョン・ウー的なワイヤーアクションのド派手な演出よりも、「シャーロック・ホームズ」やダニエル・クレイグ版「007」のように、「実際に可能(でありそう)な超絶アクション」が好まれる傾向にあるようで、「ゴーバスターズ」のこの方向性は非常に面白いのではないでしょうか。

 アクションの途中で、今回のテーマである「ヒロムの中で止まっている時間を進める」という展開が挿入されたのも、意外にテンポが良かったと思います。しかも、そのアクションというのが、病院の廊下をひたすら引きずられる(ヨーコの美脚を堪能出来る・笑)というもので、いわば中断の余地がないものだったにも関わらずです。実に巧いのは、途中で持ちこたえる場面を作り、そこで次の攻撃に転ずる「タメ」を用意する傍ら、ヒロムとヨーコの関係に一つの決着を付けて、メンタルとフィジカル双方で形勢逆転の因子を作り出すという、脚本と演出の意図の合致。このシーンこそが、今回の等身大戦の白眉でしょう。

 巨大戦は、冒頭にて述べたとおり、夕暮れ時のライティングの素晴らしさやナイトシーンの光量の的確さが秀逸。GT-02は、CGとスーツによる活躍でしたが、正に適材適所。この辺りは、積み上げられてきた技術を惜しげもなく投入している様子が伝わってきます。全体的にやっている事はハード路線なのですが、ゴリラの発射する弾丸がバナナ型(しかも、皮が滑る!)だったり、「ゴレンジャー」から継承されている特撮のコミカルな部分が息づいていて、嬉しいシーンでしたね。

 私、メガゾードはGT-02で片付けてしまうのかと思っていましたが、GT-02はエネトロンを輸送する事に専念、ギリギリでCB-01が駆けつけて撃破という流れでした。あくまで格闘戦はCB-01の独壇場という、設定の徹底が実に素晴らしいと思います。

 次回はピザカッターのメタロイドだとか...(笑)。今回の注射針といい、日用品モチーフの怪人は大好物なので、嬉しい限りです。