何となく、またサブタイトルとはちょっと内容が違う感じなのですが、オーソドックスな筋運びがいい好編。
今回は、結構手放しで褒めたいのですが、いかがでしょうか。というのも、「オーソドックスな筋運び」が本当にオーソドックスで、ある種の懐かしさを伴っているからです。
そう、今回のお話は、往年の東映特撮ドラマのパターンを全面採用し、それを現代の技術でブラッシュアップした、正に「リメイク」の醍醐味を持つお話なのです。最近、昭和ライダーをよく見返したりするんですが、もうそのものズバリの話が沢山。そんな事もあって、今回のお話はダイレクトに私の琴線に触れたわけです(笑)。
今回は、二つの「懐かし要素」をミックスしていると思います。
一つは、子供を人質に取られた科学者が悪に協力する王道パターン。東映特撮ドラマを見渡すと、あらゆるシリーズにこのパターンが頻出します。そして、大抵それらの目論見は失敗に終わるわけですが、概ね完成寸前にヒーローが人質を救出した上で乱入するか、あるいは科学者自身が人質となっている人物を伴って脱出します。どちらも、ヒーローが必死の捜索を続けている様子と、研究が完成した際に起こる恐ろしい事象とが丹念に描写され、サスペンスを醸し出すといった構造です。
そんな中、「ギャバン」では、研究自体が完成した後で科学者が救出されるという変化球が(しかも研究の成果はその後も継続的に利用され続ける!)、「シャイダー」では、脅された研究者自体がアマチュアで、主人公であるシャイダーの方が、実は研究者として優れた実績を持っているという変則的な展開が、それぞれありました。特に「シャイダー」における展開は衝撃的で、前任者二人にはない、シャイダー=沢村大のインテリなイメージを加速させました。
今回は、メサイアに対して生体プログラムを適用する事で、メサイアを進化させるという、現在の潮流に沿った「研究」を持ち出していますが、いま一つ内容が分かりにくいのが残念。かつての、植物を進化させるとか、動物を凶暴化させるといった、ビジュアル的にも認識が容易な研究に比べ、イメージしにくい「効果」だったのは否めないでしょう。ただ、時代性を反映させ、ハードな雰囲気を与える事には成功しており、「ゴーバスターズ」という作品の潮流をよく理解した内容だったとは思います。
要素のもう一つは、親が研究に没頭していて、子供を顧みないという、これまた王道パターン。「父ちゃんなんて大嫌いだ!」というアレです(笑)。このパターンは、この子供がヒーローと出会う事で、父親である研究者に訪れた危機を匂わせる、あるいは事件解決の糸口を提供するという展開が殆ど。最後に親子で和解するのも超王道パターン。
このパターンに関しては、もう展開が殆ど同じなので、特筆すべき変化球パターンはないと思うのですが、個人的には「仮面ライダークウガ」で科警研の榎田が、母親としての役割に不足を感じて悩むという、「逆パターン」が印象に残ります。
今回は、娘という珍しいキャラクターを配置し、反発の仕方も「父親に興味がなく、単にお小遣いを貰う人」という割り切りとなり、こちらも現代的。リュウジをオジサン呼ばわりする等、ギャグ性も盛り込んで、なかなか魅力的なキャラクターに仕上げています。というか、戦隊ヒーローをオジサンと呼んだのは、彼女だけ!? とりあえず、私は他に心当たりがありません。
で、王道パターンだと、大抵は事件の中で自然に親の必死さを理解して、和解に至るわけですが、今回の場合、きっかけをリュウジが作っている辺りが特殊です。リュウジの「子供に興味の無い親なんて居ない」というセリフは、近年では珍しくクサいメッセージ性を伴っていると言えますが、「居ない」と言い切ってしまう辺り、残念ながら「真理」とは乖離しているわけで、これはあくまでリュウジの理想論を熱く主張した形として解釈した方が良いと思います。リュウジの肉親に関する掘り下げがあれば、もっと説得力があったと思うのですが、どちらかというと、ここは子供目線というより、父親目線での発言に見えるわけで、やはり彼は「ゴーバスターズ」における「保護者」の立場なのでしょう。
これら二つの要素は、巧くミックスされていて、尚且つ独立性も高い。何故独立しているかというと、娘であるミサキが勝手に歩き回っていたから。通常、人質は同じ場所でジッと助けを待っている事が多く、扱いとしては非常にスタティックな存在ですが、ミサキは自由に迷宮内を動き回れる存在なので、リュウジとダイナミックに関わる事が出来ます。故に、人質で有りながら、ヒーローに「解決のきっかけを与える存在」にも成り得たわけです。
ここに、今回の特色が出ています。迷宮という「籠の中」は、「ジッとしている」という人質の境遇と同種。しかし、迷宮内にはヒーローが既に飛び込んでいて、限定された空間内ならば、行動を共にしつつ自由に動き回れる。一挙両得の舞台装置を提供し、さらにはその舞台装置を作ったのが、メタロイドであるという、「怪人から生み出される事件」のセオリーにも則っている。実に素晴らしいではないですか。
そして、クライマックスをメタロイドに集約するのではなく、あくまでリュウジをエンターとの対決に収斂させたのも良いと思います。メタロイドを倒して万事解決とするよりも、物語が多層的になるし、アクションの見せ場が多くなります。
今回は、そのアクション描写も突出したクォリティでした。素面アクションをふんだんに盛り込み、変身シーンで流れを分断しない秀逸なカット割りに工夫が見られます。素面アクションのテクニックは、やはり中盤ともなると著しい上達が見られ、画面の安定度もすこぶる高まっていると感じます。
一方で、エンターのアクションも凄い事になっています。エンター役の陣内さんの動きの方も、さらにシャープになっており、実戦格闘技のエッセンスを伴って挑戦してくるブルーバスターに、同じく説得力のあるアクションで反撃し、これを退ける辺り、素晴らしすぎて瞬きが止まりました。新たに登場したエスケイプのアクションが秀逸なだけに、エンターの印象が薄まる心配を抱いていましたが、完全に杞憂だったようです。
なお私は、サブタイトルにある「暴走コンビ」から、熱暴走したリュウジと、言動がすこぶる凶悪な女子高生のコンビが何かを打開する筋書きを想像してしまいましたが、そんな筋書きにならなかったのは、却って良かったのではないでしょうか(笑)。
今回の巨大戦にも言及しておきましょう。陣の不在で、前回登場したスタッグカスタムが登場するのかと思いきや、エンターの作戦が失敗した事で陣が再登場。しかも、冒頭の亜空間シミュレーションが活かされるという、なかなかの構成でした。ちょっとシチュエーション的に分かりにくい部分もありましたが、巨大戦が消化試合にならない工夫には、いつもながら唸らされます。
必殺技のデモリションスラストの迫力も充分。いつもの疑似亜空間内の狭い感覚よりも、空間を横に広く使った動きを加える事で、よりスケール感をアップさせていました。
次回から、OPやEDがリニューアルされるとの事。3クール目突入により、新たな展開にも大いに期待出来そうです。
ちょろ
こんにちは。
今回は・・こちらのコメント常連のみなさんが「キタコレ!」と言えるかお年頃か気になりますか(笑)。
暴走コンビとは当てが外れましたが、おじさんとコギャルはいいペアでした。ヨーコと樹液の凸凹コンビともどもコメディ篇で再登板願いたいものです。
見所ぎゅうぎゅう詰めなのが贅沢な不満で、主題の「あいつ→父親→お父さん」をぎりぎり描き切ったようで。言及された昭和ライダー時代の間延びを懐かしく思いました。
天地人
感想を書こうと思ったら、黒木指令こと榊英雄さんが、書店で女子高生のスカートの中を盗撮していた男を見つけ、現行犯逮捕に貢献したというニュースが(って、書くのが遅い?)
「まさか走って逃げるとは思わなかったので、つい、どうしても本能というか追いかけてしまった」
「遭遇した以上は、職業柄というか、どなたでも捕まえたと思う」
という事ですが、中々出来るじゃないですよね。
今週の感想ですが、これ書いていたら飛んでしまいました(汗)
また、後で書き込みさせていただきます。
M'sRoad
オーズのバッタヤミーから感じていたんですが、毛利氏の脚本は
すごくいい事言ってるんだけど、言葉の選び方に?な時があって、
「子供に『興味』のない親なんていない」は う~ん・・・
他は楽しめたんですよ。偽の壁の中に手が入っていくとことか。
竜門 剛
確かに王道中の王道なお話でしたね。私もバリバリの昭和人間なので問題ナシです。
アクションもどんどん進化していて、王道にもひと工夫あるのがすばらしい。
ただ、巨大戦において、疑似亜空間への対抗策をあっさり出してしまったのはどうなのかなぁ、と少し思いました。
天地人
ゴーバスターのおじさんは~♪せ~いぎ~のひ~とだ~よ(略)
という事で、あの若さでおじさんにされてしまいましたリュウジが(涙)
壁に手を突っ込むリュウジ
ミサキ「おじさまっ!」
リュウジ「はーい、おじさんはここ(壁の裏側)ですよぉ。すーぐ戻ってくるからねー。」
・・・なんか違うような気もするけど、まあいいか(笑)
ミサキの父親である工藤博士は、いつのまに画商(byゲキレンジャー)から科学者に転職したのか不明ですが、まさに王道パターンでしたね。
自分としては、メタロイドが別の擬似空間を作って閉じ込めるのかと思ってましたが、なかなか楽しめた話でした。