Mission 2「13年前の約束」

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 2話目という事で、順当な設定編に。しかしながら、設定編にありがちな冗長さが全く感じられないのは凄い。やっぱり相当飛ばしてます。

 見所も多すぎて書ききれないくらい。特に、特撮面は素晴らしく、前回に引き続いてオープンセットによるカットが沢山あり、巨大感、実在感の演出が半端ではありません。前回絶賛した「バンクでない変形」は、見事省略されていましたが(笑)、一旦ビル群に隠れて変形後が出てくるという、あの処理ならOKだと思います。

 GT-02、RH-03の活躍シーンもふんだんにあり、しかも、「新メカ」ではなく、元々運用しているといった感覚なのが新鮮です。勿体つけるような演出ではなく、災害救助活動等に「運用」される様子は、同様の救助シーンを生んだ「ゴーゴーファイブ」でも、そしてレスキューポリスシリーズでも成立していない、「現場を描く事で生じるヒロイックな面」を強調しており、非常にリアリティのあるシーンとなっていました。

 この辺りについては山ほど書きたい事があるのですが、少々抑えつつ、冷静に綴ります(笑)。

 まず、よく肝に銘じておきたいのは、まだ2話目なので、ここで浮かれてしまってはいけないという事。

 スーパー戦隊シリーズの制作手法として、特撮は初期話数でなるべく使い回せるバンクショットを用意しておき、その後は手間のかかる追加シーン以外、なるべく特撮に割く制作費を抑制するというものが伝統的に採用されています。それは、贅沢な特撮カットを実現する一方、パターンに陥りがちでやや変化に乏しい特撮シーンを生み出すというデメリットもあります。これは、商品サイクルが短くなった現在でも同様で、極端に言えば、単にバンク撮影がそのサイクルに合わせた制作スケジュールで動いているに過ぎません。

 それを踏まえ、「ゴーバスターズ」の初回及び今回を見てみると、どうもバンクショットになりそうなものが少ない。という事は、つまりあと数話でこのクォリティも尻すぼみとなってしまい、この迫力を後々まで楽しむ事は困難...という事になってしまいます。浮かれてはいけないというのは、そういう事です。

 しかし、それでは「ゴーバスターズ」が目指す「変革」は達成出来ません。では、このままクォリティを落とさずに突っ走るにはどうすれば良いか、という事になります。

 一つは、潤沢過ぎる制作費をつぎ込む事ですが、これは現実的ではないので冗談の範疇に留めておくべきでしょう。もう一つは、工夫です。

 よーく見てみると、「ゴーバスターズ」の特撮には、随所に工夫が見られます。

 まず、ハイライトを「巨大戦」とし、あくまでメインをロボットスーツによるアクションとしている事。これは、オープンセットによる撮影という高いハードルこそあるものの、使い回しの効く精巧な建造物のミニチュア等を効果的に配置する事で、一定以上のクォリティで見せる事が出来ます。アオリ気味のカットが多いのも特徴的で、映り込むミニチュアが少なくて良いという点、ある程度容易に巨大感が出せるという点において、効率と画の完成度を両立出来る手法です。低予算の特撮映画等では、割と重宝される手法なので、かなり気を付けないとチープに移ってしまう可能性があり、その意味では諸刃の剣なのですが、現時点では、さすがのクォリティを保っていると思います。

 続いて、発進シーンのように、ミニチュアの動きや精度が求められるシーンは、バンクとして活用出来るようにしている事。発進シーン自体の完成度は非常に高く、そしてリアリティに溢れており、バンク使用されても何の問題もありません(この辺りは「バトルフィーバー」のバトルシャーク発進シーンや、「サンバルカン」のジャガーバルカン発進シーンが、シリーズ初期にして既に証明しています)。「ゴーバスターズ」ではダメ押し的に、前回と今回とで、CB-01がビークル形態とメガゾード形態というパターン違いの発進シーンを披露しており、何パターンかのシーンをバンクしておく事で、バンク使用によるマンネリ感を払拭しようとしているように見受けられます。この手法は「バイオマン」のバイオロボが嚆矢で、母艦であるバイオドラゴンに搭載されず、そのまま発進するシーンがありましたね。

 もう一つは、流用可能なCGパターンを作成している事。特にバスタービークルの変形シーンには、CGが効果的に使われており、別撮影した背景等と合成する事により、「バンクでない変形シーン」が、都度撮影するより低コストで実現出来そうです。従来も、CGによる変形シーンや活躍シーンを演出に加えられた巨大戦は沢山ありましたが、突如背景含めたイメージシーンにカットチェンジする手法が大半でした。「ゴーバスターズ」では、恐らく前後のシーンに配慮した背景描画等に腐心していく方針なのではないでしょうか。それにより、CGパターン自体の陳腐化を回避し、巨大戦におけるタイムラインの自然さが担保されるものと思います。

 まだまだ特撮に関して話を進めていきますが、今回最大の関心事は、GT-02とRH-03の災害救助シーン。

 スーパー戦隊シリーズの、いわゆる「ゾロメカ」には、色々なモチーフがあり、トレーラーやヘリコプターといった乗り物に関しては、初期より登場していますが、それらはむしろ「こんな形のメカがロボットに合体するんだ」という驚きを演出する方に主眼が置かれ、いわば「合体シーンがハイライト」の扱い。それはコンテンツビルダであるバンダイにとっては当然の要求なわけで、DXトイの主眼は合体後のアクションではなく、その合体ギミックにウェイトを置いているのです。

 したがって、その「ゾロメカ」が活躍するシーンは、殆どが前述のバンク撮影時に限られてしまい、その傾向は前作の「ゴーカイジャー」において、ガレオン以外単なる合体用メカという、究極の状態で映像化されてしまいました。

 この「ゾロメカ」活躍シーンは、私が思うに「ゴーバスターズ」であっても、今後常態的には描かれないのではないかと思います。バンクでは相当厳しいですし、逆にシチュエーションが登場する度に撮影するのは、非常に困難なのではないかと思えます。

 この部分ばかりは、本当に「浮かれてはいけない」のではないでしょうか。勿論、この予想を裏切ってくれる事を願ってますが、それ程、開始早々の瓦礫撤去シーンと、後半の車両非難シーンは素晴らしかったです。例え初期編のみであるとしても、これだけの特撮を見られたのは幸せ以外の何物でもないですね。

 さて、今回は設定編らしく、主役三人の過去にスポットが当てられました。

 エネトロンや、人体にも投与(?)出来るコンピューターウイルス(メタウィルス)のワクチンという、高度な「ウソ」が、劇中の様々な約束事を解決する辺りは、「ガンダム」の「ミノフスキー粒子」に匹敵する鮮やかさ。このような「根幹を成すウソ」のリアリティこそが、作品世界を左右すると言っても過言ではなく、小林脚本は、この辺りを活かす文芸に秀でているように思います。

 面白いのは、敵も味方もメタウィルスありきであるという点で、このテイストは仮面ライダー的です。前回、「ゴーバスターズ」がメタルヒーローをも内包していると述べましたが、東映ヒーローの方法論の集大成としても成立しているように思えます。逆に、「仮面ライダーフォーゼ」が、仮面ライダーである事の記号以外を放棄した物語作りを提案しているのとは、対照的と言えるのではないでしょうか。

 それら高度な情報を散りばめつつ、ヒロムの戦う動機付けが、まだ物心付いているかどうかも分からないほど幼かったヨーコに向けた「約束」だったという、メンタル重視な方向性だった事にホッとさせられたり。しかも、ヒロムの待遇に不満を爆発させる寸前にあったヨーコが、その「約束」を覚えていて、ヒロムの「約束」を礎とする決意を聞き、少し頬を緩ませるといったシーンが用意され、「使命」、「指令」、「サイバー」という硬い世界観の中で、個々人のメンタル面がさり気なく重視されている辺りに、スーパー戦隊シリーズならではの安心感を覚えたりしました。

 また、三人のウイークポイントが、大変コミカルに描かれていたのも良いアクセントだったと思います。「こんな事態なのに」という、コミカルサスペンスの常套句がよく活かされていて、清々しい感すらあります。ただ、ウイークポイント発露の原因が、ワクチンにある事が説明されてはいましたが、この部分の映像的な説得力は、やや弱かったように思います。あと、ヨーコのエネルギー切れの描写もやや分かり難かったのではないかと。ヒロムのフリーズやリュウジの発熱が割と分かりやすい特徴なので、ヨーコの描写は今後に期待したいと思います。

 そのヨーコですが、常に強気ながら、やはり少女の面を多く残しているという点で、秀逸でした。機微の分かり難いシチュエーションにありながら、しっかりとその辺りを丁寧な演出で彩っているのは、さすがですね。リュウジも、その年齢の高さをイジられるというシーンを用意する等して、年長者としての存在感をアピールし、ヒロムとヨーコから一歩引いた、「戦隊における理想的なサブリーダー」像を確立していたのは特筆モノでした。この辺りは、見事にスーパー戦隊的であるし、作品のSFとしての完成度と親しみ易さの両立に大きく寄与していたのではないでしょうか。

 一方、ヒロムは礼儀正しく、内に熱いものを秘めた男といった趣で、これも実にスーパー戦隊的でレッド的。しかしながら、ヨーコに対してデリカシーの欠如した言葉を投げかけたり、愛想がなかったりと、新しい要素も盛り込まれていて、キャラクターの完成度の高さには舌を巻きます。ヨーコとの確執もライトな描写に終始していて、この辺りは平成仮面ライダーとの深度の違いが如実です。このライトな感覚こそが、スーパー戦隊シリーズの良さだと、私は思います。

 次回は、ヒロムとヨーコのコンビがどうなるか、楽しみなエピソード。特撮面も引き続き注目していこうと思います。