Mission 18「地底3000メートルの共同作戦」

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 ここまで来ると、もう戦隊である必要がないといった趣でさえある、メカアクション編。

 しかしながら、ヨーコとJの等身大戦での共同戦線を用意してくるのはさすがで、戦隊の面目をギリギリで確保しています。

 とにかく、バスターマシンの活躍を、その特徴を活かす活躍を、という方針で描ききられる特撮一大絵巻は、大充実の一言。クレーン車という、あまり用いられないモチーフながら、それを戦闘場面で活用した前回と、今回のようにあくまで作戦行動の一環として運用するリアリティ溢れる今回は、戦隊に不足していた「実働のリアリティ」を示す例として、大いに輝きを放っています。

 ただ、今回はエンター不在という事もあってか、埋蔵エネトロン(!)を転送時間ゼロで狙う「だけ」の作戦である上に、メタロイドも殆どマーカーになる「だけ」の存在。折角の杉田智和さんの好演なのに、残念な感があります。相手の巧妙な作戦に対して作戦で対抗するという「駆け引き」の部分が希薄であり、逆に、いかにして地上と地下から二面攻撃を仕掛けてくる敵に対処するか...というギリギリの攻防戦となっていて、新たな「ゴーバスターズ」の魅力を創出していました。

 サブタイトルにある「共同作戦」については、実際の戦線で描かれると共に、ヨーコとJ(その背後に居るマサト)、ヒロムとマサトの信頼関係の構築にまで切り込んでおり、ドラマ的な盛り上がりもなかなか。ただ、これらは完全に内輪の話の枠内で動いている為、特撮の圧倒的なスケール感に比べて、かなり矮小化されたようなイメージが...。これは仕方ないですけどね。

 というわけで、今回の魅力と欠点は冒頭のみで語り尽くしてしまった感もあるのですが、それでは寂しいので、今回の特撮の魅力に関して、もう少し掘り下げようと思います。

 まず、「地下」というシチュエーション。

 CGで地面に大胆な穴を描画する辺りは、往年の東映特撮のブラッシュアップ版。そこに「RH-03のローターが干渉する」という理屈が入る処は正に「ゴーバスターズ」流。かつて多用された、マット画を直接実写カットに合成してしまうという、リアリティよりも雰囲気重視の勢いのある画面作り。その「味」は、現在もリアリティを加味しながら継承されていると思います。

 地底世界を描く試みは、戦隊でも幾度か見られました。特に「ダイナマン」や「マスクマン」は、敵組織が地底由来のものとあって、頻繁に画面に登場しています。しかしながら、巨大戦が地底世界で描かれる事はほぼ皆無に近く、今回の描写は戦隊においては非常に珍しいものとなりました。他のシリーズで印象に残るものを挙げると、「ウルトラマンA」のアリブンタ&ギロン人登場回が、素晴らしく幻想的な地底世界を描き出していて秀逸です。同回はゾフィーのゲスト出演、南夕子の私服の登場というトピックもあって、人気の高いエピソードですね。

 今回の地下の描写は、その「ウルトラマンA」における描写に、雰囲気がよく似ていたように思います。地下の巨大空洞を断面的にとらえる舞台設計等に、その共通点を見出す事が出来ます。CB-01が、やや窮屈そうに戦闘を繰り広げる辺りも、地下の限定空間というシチュエーションを描くのにうってつけの演出だったのではないでしょうか。舞台装置と演出が、見事に融和して一つのシチュエーションを作り出していました。

 続いて、BC-04のクレーン車としての描写。

 「ゴーバスターズ」では、各メカの実在感を徹底する為、ミニチュアの完成度をワンレベル上に設定している節があり、BC-04もかなりの実在感を伴っています。これまでに登場したアウトリガー(という、いかにも地味な機構)のリアルな描写にも驚嘆しましたが、今回はクレーン車のアイデンティティそのものである「クレーンの機構」にスポットが当てられ、よりその機能性について詳しく描写されました。

 クレーンの機構を描写する際、重要となるワイヤーの描写が、正に完璧だったと思います。フックを下ろす際の微妙な「たわみ」や「軋み」といった、絶妙のアクチュアリティ。これは戦隊におけるメカ描写の大いなる進歩ではないかと思います。古くは、「ゴレンジャー」の頃から救助用クレーンアームといった機能が描写され続けてきたわけですが、これほどデフォルメのない実在感を見せたのは、初めてだったように思います。今回の白眉は、このワイヤーの描写に決定!

 なお、ビートバスターによる「操作」もなかなかリアルに映っておりました。BC-04が、ステアリングホイール(いわゆるハンドル)による「運転」である処も、よりクレーン車とコクピットの親和性を高めています。逆に、SJ-05はジェット戦闘機とステアリングホイールというミスマッチが面白いわけですが。

 次に、地上での攻防戦。

 いくらBC-04が優れた戦術機械であるとはいえ、吊り下げ作業を重視している間は、地上の敵に対抗しようがない。そういう状況を作り上げるストーリーテリングが見事。ややもすると、ゴーバスタービートがパワーバランスを激変させてしまうような存在となる可能性があるわけで、既存のバスターマシンの活躍シーンを描く事自体が困難になる恐れもある中、このように巧く分散の手法を用いる事で、GT-02にも活躍の場をふんだんに用意する辺り、巧いと思います。「それぞれが持ち場を死守する」といった、戦略上のスリルも巧く加味されていて、満足度が高いです。

 そして、地下で対応出来なくなったヒロムが、メガゾードを吊り上げさせて地中から地上へと引きずり出すという展開によって、一気にBC-04のターンへと収斂していく様も見事でした。何しろ、BC-04は当クールのマーチャンダイジングの要ですからね。しっかりと活躍を見せていかなければなりません。あくまで主役はレッドバスターの駆るエース。でも当代メインメカはビートといった具合に、巧く見せる構成の妙味を心得ていて、本当に凄いと思います。

 これだけ各メカの活躍を見せておけば、次回の「合体」は安泰でしょう。後は、もう少しヴァグラス関連の描写が増えてくれれば...。「ゴーバスターズ」に圧倒的に不足しているのは、「敵組織の魅力」でしょう。エンター自体の魅力は突出して素晴らしいのですが、それだけに頼ってしまっているのも確かで...。幹部アバターが、女性型含んであと二人くらい登場して、色々と内紛やら何やらを見せてくれると、グッとドラマに深みが出るのではないかと。現在は一般ゲストも殆どないまま、特命部の中だけでチマチマやってる印象が強いので。

 2クール目のドライヴ感に期待したいですねー。