Mission 17「その名はゴーバスタービート!」

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 ヒロムに続き、リュウジがマサトの洗礼を受ける番。リュウジの「保護者」的な立場が、マサトによって軌道修正されるといったストーリーになります。

 そのドラマ性や、リュウジの目標再発見といったプロセスに関しては、特にこれといった新鮮味もなく、ごく普通な雰囲気なのですが、ゴーバスタービートの登場回とあって、特撮は物凄い事になっています。

 マサトのキャラクター性も、前回ヒロムに見せたクールな面とは異なる、茶目っ気とリーダーシップを見せており、そのキャラクター造形の完成度はすこぶる高いと言えるのではないかと思います。特に黒木に見せる「同期の顔」、そしてあまりに自由人なマサトの振る舞いに頭を痛めつつ、ゴーバスターズを導く者として信頼する黒木の様子が描かれ、マサトの登場が黒木のキャラクター性にも良い影響を与えているようです。

 いやぁ、マサトとJ、いいですね。主人公に敵対する「第三勢力」的な雰囲気で登場しつつ、すぐに強い味方だと判明するスピード感。それでいて、あくまで組織に縛られずに自由に振る舞っている様子...。追加戦士の理想型を追求した結果なのではないでしょうか。

 今回はリュウジ編にもなっているわけですが、リュウジ自体が結構な「お利口さん」であり(これはある意味、ヒロムもヨーコも当てはまる)、ウイークポイント以外の面では、その精神性を揺さぶる作劇は困難だと思っていたのですが、そうきたか、と。

 エンジニアの夢を、ゴーバスターズとしての力と引き替えにしたリュウジですが、そこに陰のようなものは感じられませんでした。その理由が、ヒロムとヨーコの保護者的な立場に立っている故だと示されたわけです。自分の戦う理由が、極端に言えば「ヒロムとヨーコを守る事」であり、それがリュウジの持つ戦力にブレーキをかけている(=思い切った行動に出られない)という描写は、公的機関における「私闘」を思わせていて、なかなかに衝撃的です。

 ここで気付かされるのは、今回言及された通り、ヒロムとヨーコも肉親の奪還という「私闘」の面を持っている事でしょう。ただし、ヒロムとヨーコの場合は「私闘」がプライベートの芯から発生しているのに対し、リュウジの場合はリュウジ自身のプライベートではなく、ゴーバスターズという三人の戦隊をプライベートに置換した上での「私闘」。つまり、リュウジはゴーバスターズというごく小さな単位に戦う意義を見出しこそすれ、リュウジ本人に戦う意義が見出せない状態にあった...という事になるわけです。

 ここで登場してくるのがマサト。

 マサトは、リュウジのかつての夢であるエンジニアの、トップを示すランドマーク的存在です。可愛い後輩であるリュウジを導く存在としての強い存在感は、非常に見応えのあるものとなっていました。マサトの知る「私闘から生まれるパワー」をリュウジに授けるべく、クールに、かつパッションに溢れる振る舞いをするマサトは実にカッコいい。しかも、外見の年齢はリュウジより1つ年下であるという仕掛けが妙に効いていて、今回のエピローグで見られるような、コミカルなやり取りも抜群に似合います。アバターである事を、その矛盾溢れる設定(黒木と同期でリュウジより年下)で表現しているのが凄いですね。良い意味での「実在感のなさ」は半端ないと思います。

 さて、今回のドラマ性の白眉は上記に示した部分「だけ」で、後はとにかく見た目の派手さを強調しており、逆に潔いのではないでしょうか。

 特に物凄いのは特撮。ゴーバスタービート登場編という事もあってか、新撮カットがこれでもかと炸裂しており、オープンセットの取り回しの良さやミニチュアの精緻さも、「ゴーバスターズ」当初より更にアップしている感じです。

 前回では、BC-04とSJ-05の登場シーンがバンクっぽい作りで、少々落胆した旨を述べたのですが、今回はその不満を完全払拭して余りある怒濤の新撮カット。何と言っても、発進シーンから描かれている充実振りが嬉しいです。

 その発進シーンは、CB-01等の発進シーンとはまた異なるリアリティ溢れるシーンに仕上がっていました。CB-01の発進シーンは、巨大な質量を持ったものが、人間の目前を発進していくという、人間の目線を意識したものになっていますが、BC-04とSJ-05の場合、そもそも人間の描写が皆無である為、「このメカニズムがどういうシークェンスを経て発進体制をとるか」といった全自動のリアリティとでも言いましょうか、そういう硬派な雰囲気を湛えています。

 注目に値するのは、アウトリガーの動作。戦闘中もいちいち動いてその存在をアピールしており、長らく戦隊では味わうことの出来なかった「メカの機能性そのもの」を存分に味わう事が出来ます。黎明期の戦隊シリーズの魅力は、正にそこにあり、「ゴレンジャー」では荒唐無稽な動物モチーフのメカが、丁寧なプロペラの描写や空力特性を感じさせるような繰演の妙によって、メカのリアリティ溢れる機能性を感じさせ、実在感を醸し出していました。続く「ジャッカー」では、デザインこそより直線的なラインへとシフトしましたが、そこには同様の感性が継承されています。

 「バトルフィーバー」からは、母艦とロボという路線になりますが、そもそも第一号のバトルシャーク自体が「空を飛ぶ戦艦」、第二号のデンジタイガーは戦車の機能を持つ巨大なフェリーのような船でしかも空を飛び、第三号のジャガーバルカンに至っては、凶悪な顔付きをした空飛ぶ要塞ですから、荒唐無稽である事は何ら変わりません。というより、「ゴレンジャー」や「ジャッカー」より荒唐無稽さがパワーアップしていると言っても過言ではありません。しかし、活躍シーンには必ず細かいギミックを丁寧に描写するカットが挿入されており、実在感を感じさせてくれました。

 今回のBC-04とSJ-05の活躍シーンは、そのオープンセットと精緻なミニチュアによる、実景のような景観の中にあって、より実在感を増していたように思います。しかも、両方ともクレーンとして機能するデザイン、飛びそうなデザインですから、その実在感たるや、折り紙付きというわけです。さらには、クレーン車ならではの活躍が存分に見られるのですから、もうお腹一杯状態に陥るのでした。そういえば、今話題の「キョーダイン」っぽい攻撃も見られましたね!

 逆に、ビートルやスタッグビートル形態になった時の、荒唐無稽さが抜群のコントラスト。冒頭でエネトロンタンクからエネトロンを吸い取る虫っぽさもさることながら、CGである事を存分に活かした縦横無尽の活躍ぶりが素晴らしいです。ビークルでは地に足の付いた実在感を、甲虫形態ではその高い機能性を感じさせる生々しい動きを。形態毎に舞台装置から演出手法まで変えてしまうという、アクロバティックな方法論が生きています。

 新ロボットであるゴーバスタービートも、その悪役のような面構えと、フリーキィな攻撃パターンが素晴らしい。合体方法には貫通方式が使用されており、アニメ的な表現が盛り込まれています。SJ-05を伴わない単体変形であるという点も、驚きを喚起していると思います。

 設定面での驚きは、BC-04の基本設計自体が13年前に既にマサトによって完成されていた事、そして、今回登場した新型メガゾードが、同じ設計を元にしながら変形機構を持たず、また姿も異なっていた事。更に、設計図がヴァグラスの手に渡っていた事を、マサトが知っていたという事実。この辺りの説明が、今後展開されるとは思えませんが、ここから読み取れる事柄は、案外重要なのではないでしょうか。

 「新型」と呼ばれるバスターマシンが、既に13年前に殆どの設計を終えていたとなると、13年後のテクノロジーを以て完成するようなメガゾードを設計した、マサトの天才振りが際立つというものでしょう。また、亜空間での組み立てに要した労働力をどうやって確保したのかという点が疑問となります(案外、マサトとJが13年かけて建造したのかもしれませんが...)。そして、同じ設計から別物が出来上がるという、「創造する者達」の不可解なテクノロジー。これらの事項が、マサトをより一層ミステリアスにすると共に、ヴァグラスの謎も深まるばかり...。エンターが様々なコスプレを披露し、人間界の風俗習慣を楽しんでいるかのように見えて楽しくなる一方で、物語が深化しているのは明らかです。

 次回は、ヒロム達とマサト達の完全共同作戦となるようで。どのような化学反応を見せてくれるか、楽しみですね。