Mission 16「亜空間から来た男」

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 これぞ新戦士登場編といった感じでした。謎、強さ、反目。これらの定番要素を全て兼ね備えており、しかもそれらが陣マサトという人物のポリシーを土台としています。

 しかも、サブタイトルで陣マサト本人が「亜空間から生還した男」と印象付けられ、実際にそれをベースとして話が進行していくわけですが、終盤でマサトの驚愕の正体が明らかとなり、実際に物理的に「亜空間から来た男」は、実はビート・J・スタッグの方だったという展開感が素晴らしかったと思います。

 そして、マサト自体はトリックスター的な言動を得意とし、ヒロム達を翻弄しつつ、ゴーバスターズの戦力を憂慮しているという、追加戦士の中でも特異なキャラクターとして成立。まずは今回、その言動の洗礼を受けたのがヒロムとなったわけです。

 それにしても、私が漠然と「こんな戦隊があったら面白い」と考えていたアイディア(?)が、最近次々と実現されていて、「ようやく時代が私に追いついたか」的な優越感に浸っておるわけでございます(笑)。

 今回の判明事項を整理してみると...。

 まず、亜空間へ転送されても生存している者が居る事(それがマサト)。これで、「生身の人間では転送に耐えられず息絶えている」という定説が覆された事になります。

 そして、亜空間では、転送された者達が互いに遭遇するか否か、不確定であるという事。マサトの、ヒロムの父や他の人員に会っていないというセリフから窺えます。

 人間自体が亜空間から脱出する術は、まだ誰も把握していないという事も判明。故に、マサトはアバターとして登場したわけです。

 最大のトピックは、エンターもアバターであるとマサトが言った事でしょう。いつも亜空間内でメサイアと会話しているエンターが本体で、現実空間に出現するエンターがアバターであるか、あるいはメサイアと会話しているエンター自体もアバターなのかは判然としないものの、どこかにエンターの基となる「本人」が存在している可能性が高まりました。

 その他、黒木司令官とマサトが同期で、黒木を「黒リン」と呼んでいたりとか、ビート・J・スタッグが「マーカーシステム」なる機構を持っていて、マサトのアバターやバスターマシンを自在に転送してくる事が可能であるとか、色々と細かい情報があって盛り沢山です。

 逆に、このような展開の常として、新たな疑問点も発生してきます。

 マサトのアバターは13年前の容姿がモデルですが、亜空間内の「本人」も13年前の容姿のままなのか、それとも黒木と同様に年を重ねているのか。亜空間内では、人間が肉体的に年をとらないという話も可能性として否定は出来ません。

 また、今回登場したバスターマシンが、エンターにより盗まれてしまった設計図を元に組み立てられたものだとすれば、メサイアやエンターが言う処の「創造する者達」に、マサトがアクセス出来る事になります。マサトは他の人間に亜空間内で直接会っていないと言っているので、ビート・J・スタッグに暗躍させていたのかも知れませんが、実は「創造する者達」というのは、転送された研究員なのではないか...という憶測が成立します。この辺り、ヒキの強い謎として、これから物語を牽引していくのではないでしょうか。

 ところで、ビジュアル面も盛り沢山でした。等身大アクションでは、ヒロムとマサトの素面アクションを展開。あしらう側とあしらわれる側、挑発する側とされる側、それぞれのポジションがアクションにもしっかりと現れていて、完成度が非常に高かったですね。しかし、割と早い段階でレッドバスターに変身してしまいましたが、あの場合、マサトをヴァグラスであると疑っていた様子はないので、変身して対抗するってのはどうかと(笑)。

 勿論、変身後のアクションも、キャラクター性を表現する緻密で大胆な殺陣に彩られていました。いわゆるヒーロー同士の対立構造というものは、見ていてあまり気持ちの良いものではありませんが、今回はマサトの意図が分かり易い上に、ヒロムの怒りにも感情移入出来るという、非常に巧いシーンの組み立てがベースにある為、素直に「アクションの鑑賞」へと入っていけます。

 クライマックスにおけるアクションも、実践格闘技的なエッセンスを強く注入しているヒロム達三人と、ダーティファイトとアクロバティックなアクションをミックスした、やや「ゴーカイジャー」寄りなアクションを見せるビート&スタッグのチームが、良いコントラストを出していたと思います。

 巨大戦もエースのアクションのみならず、二機の新バスターマシンの活躍を徹底的に描いており、シリーズ序盤におけるメカ戦の充実度を再喚起するものでした。ただし、一つの売りであった実景をバックにした変形シーン等が、いかにもバンクっぽい処理になっていたりと、今ひとつ特撮の統一感に欠ける感じがします。私自身はバンクシーン否定派ではないですが、「ゴーバスターズ」が序盤で提示した「バンクっぽくない特撮カット」の醍醐味が、徐々にではありますが失われている気もしてしまうわけです。予算の関係といったものではなく、恐らく「戦隊らしい画面作り」という方向性に、図らずも引っ張られているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

 さて、冒頭で述べた、「ようやく時代が私に追いついたか」的な優越感についてですが(笑)、これまでハッキリと自分がアイディアを先取りしていたと感じているトピックが、今回これで三つになりました。一つは「エレメントを持つ戦隊」。「地水火風」といった感じのものです。これは、「マジレンジャー」で実現しました。もう一つは「漢字がモチーフの戦隊」。これは漢字をゴーグルの上部に配するというデザインを考えましたが、「シンケンジャー」にてもっと大胆な形で実現しました。そして、最後に「アバターが活躍する戦隊」。これは、海底人が自分たちのアバターを地上に送り込み、変身後だけ地上活動用強化スーツを着た本人と入れ替わるというアイディアでしたが、今回、アバターであるビートバスター=陣マサトの登場によって、「アバター」の面は実現した事になります。

 最近は全く考えなくなりましたが、他にもアイディアは色々ありましたよ。竹内文書を元にした戦隊(赤人、青人、黄人など、戦隊モチーフにピッタリ)とか、月を象徴するピンクの追加戦士が、地球を象徴するレッドが力を失っている間だけリーダーとして加わるとか。あと、コンピュータにニューロンを移植された人間が戦隊になるという、「ゴーバスターズ」に近いものもありましたね。

 まぁ、アイディアと言っても、所詮はオタクの発想レベル。ちゃんと絶妙なタイミングでしっかりとした企画として通す力は、やはり凄いです。作り手側にならなくて、良かったと思います(笑)。