Mission 12「変装はお好き?」

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 ヨーコ...というより、小宮有紗さんの魅力を確認するエピソード。

 とにかく二役なのもあって、小宮さんの出演尺の長さが突出しており、しかもいわゆるコスプレ回。コスプレ回は「ゴレンジャー」から連綿と続くサービスエピソードの一つですが、次回の「普段着」も含めて、1クール消化前にやってしまう出し惜しみのなさは、特筆モノだと思います。ちなみに、定番の「偽物登場回」でもあります。

 「ゴーカイジャー VS ギャバン」でも、三人の大葉健二さんによる自然な揃い踏みに仰天しましたが、今回も「二人の小宮有紗共演」は実に自然で、人物合成の映像技術は、相当意地悪な粗探し(例えば、後ろ姿が微妙に違う人とか、会話の目線がホントにほんのちょっと外れているとか)をしない限り、ごくごく自然に見えます。

 ただ、見た目が楽しい割にストーリーはガタガタだったように思います。はっきり言ってしまうと、決して「面白いお話」ではないですねぇ...。

 ここで、通常の私ならば「偽物登場回」や「コスプレ回」の前例について語りまくるんですが、ここは「人物合成の想い出」にしておきます(笑)。

 その昔、「ウルトラ」では結構な手間をかけて「人物合成」をしていました。オプチカル合成界における神の手を持つ匠である、中野稔さんが手がけた合成は、派手なものから地味で気付き難い部分まで、多岐に亘ります。「ウルトラ」とはやや外れますが、時系列的に「ウルトラシリーズ」と呼んでも差し支えない「怪奇大作戦」に至っては、神懸かったオプチカル合成が頻出。フィルムを元にマスクを手で描いていた時代の作品ながら、現在の目で見ても、その仕上がりは独特の味も含めて素晴らしいものであると言えます。

 時代は下り、「ウルトラ」のような法外な予算をかけられなかった東映作品群では、「人物合成」が実に楽しい手法で描かれていくわけですが、中でも「直線で分割可能な背景を利用し、その直線でぶった切った別シーンを合成する」という手法は、長らく利用されてきました。「直線で分割可能な背景」とは、例えば階段の手すりとか、窓枠といったもの。固定カメラでそれらを背景とした2シーンを撮り、後から手すり等を継ぎ目として大胆に合体させてしまうわけです。戦隊シリーズでも、「ガオレンジャー」辺りのCG本格導入以前は、概ねこの手法であり、後はその合成に手間をかけているか否かといった感じでした。すなわち、別シーンの色味が手間をかけて調整されているとか、簡易的に東通ECGが使用されているとか、片方は静止画が合成されているとか、分割マスクが巧く隠されているとか、そういった差異です。

 これはこれで実に味のある(嘘っぽいとも言う...)画面が出来上がるわけですが、まぁ、リアルと言うにはほど遠いものだった事も確かです。

 合成のコストを俳優に置き換えたのが、双子キャストを使うという手法。戦隊では「ダイレンジャー」や「ゲキレンジャー」辺りが印象的です。別シリーズだと、「シャリバン」で双子キャストを大量に投入して「コピー家族」をやってしまうという荒技も。

 そして、私が最初に特撮新時代をはっきりと感じたのは、「ウルトラマンティガ」の第49話「ウルトラの星」。V6の長野博さん演ずるダイゴ隊員が、過去の世界で自分そっくりの長野という助監督に遭遇するというくだりがあります。初めは「とても上手なぶった切り合成」と思わせておいて、フッと両者が手前と奥ですれ違うという演出があり、そのあまりの自然さに驚きを与えてくれました。このシーン、マニアでない人にとっては、単に「似た人がすれ違っている」というシーンですが、特撮ファンにとっては、「よくぞ特撮TVドラマでこんなに自然な人物合成をやってくれた!」と拍手したくなるようなシーンでした。地味ですが、ある意味でファンサービスだったのかも知れませんね。この回自体ファンサービス的ですし。

 で、「ゴーカイジャー VS ギャバン」ですよ。大葉さん同士がごく自然に会話したり、肩に手を乗せたりするわけですから、もう「人物合成」にハラハラする事は無くなったと確信するに至ったわけです。

 さて、「ゴーバスターズ」に話を戻しましょう(笑)。

 今回のストーリーの難点は、アンジー・スーの持つクリスタルに関する部分に尽きます。

 まず、クリスタルを巡るアンジー・スーとヨーコの口論では、「夢」というキーワードによって、クリスタルを衆目に晒す事を、ヴァグラスの脅威より優先してしまうという底の浅さが気になります。「ゴーバスターズ」世界の構造的に、日本のみがヴァグラスのターゲットになっていて、諸外国にはその脅威が伝わらないという好意的解釈も出来ますが、基本的にはアンジーの動機はかなり弱いものとして映ると思います。

 続いて、ヨーコがアンジーとして登場するくだりで、わざわざ本物のクリスタルを身につけて出てくるという、作戦の甘さ。イヤリングという外れやすいアクセサリーを付けて戦闘を行うとか、ボンドの失敗でスリルを生む「007」でもお目にかかれないシチュエーションでございます(笑)。元々囮のつもり(しかもアトラクションと言って誤魔化す段取り)だった上、エンターにはクリスタルの真贋を解析する能力もなさそうでしたから、本物である必然性には乏しい。

 そして、クリスタルを片方奪われたにも関わらず、アンジーは「守ってくれた事に感謝」というメールを送ってきた点。明らかにヴァグラスはアンジー自体の命を狙っているわけではなかったわけで、アンジー自体、クリスタルの大切さを懇々と説いた割に、片方失ってもあっけらかんとしている雰囲気には、少々閉口してしまいました。

 つまり、アンジーのクリスタルは、ほぼドラマの中で機能していない事が分かります。ヴァグラスに奪われる事が前提、即ち、来るべきヴァグラス製バスターマシンの材料という前提であり、更にヨーコですり替えるを行うというシチュエーションを加え、そこから逆算してこのような話になったのは分かりますが、それにしても、もう少しクサい精神論を導入してもバチはあたらなかったのではないかと思えるくらい、感情移入し難い話でした。

 一方で、ビジュアルが素晴らしいものであったのは救い。特に女優・小宮有紗の魅せる二面を見られた事は、大きな収穫でしょう。

 ヨーコは、生意気で勝ち気でちょっとおバカな少女というイメージを構築しつつありますが、その中にチラリと悲壮感が漂っている雰囲気が良いキャラクターです。一方で、アンジー・スーは、可憐で、立ち振る舞いがエレガントで、しかも頑固な自我を垣間見せる眼差しを持っているというキャラクターでした。化粧っ気のない健康的なヨーコと、メイク映えするアンジーの対比も見事。同じ素材でこうも別の魅力を引き出せるものかと、驚く事必至なわけです。

 ややステロタイプな役ではありましたが、演じ分けも見事。ヨーコ時はあまり感じさせない「年頃の女性」といった雰囲気が良く、さらにヨーコ時には分かりにくい、意外な頭身の高さも。アンジーは、ヨーコよりも小宮さんの実年齢に近い雰囲気だったのではないでしょうか。

 また、チャイナドレスを身に纏っての、素面アクションも冴えていました。途中のスタンドインも違和感がなく、本人のアクションもキレがあって素晴らしかったと思います。今後もアクション頑張って欲しいですね。

 地味ながら、ヒロムとリュウジも「変装」していました。ヒロムはピエロに扮し、その似合いっぷりに驚愕(笑)。似合いっぷりならば、リュウジのウェイター姿も相当サマになっていましたね。それぞれのキャラクターに合致した配置が秀逸だったと思います。この辺りは、しっかりとスパイものの定石を踏襲していて良かったのではないでしょうか。

 ちなみに、何故かメタロイドの「変装」として、某戦場カメラマン風の男が登場して笑いを誘っていた事も、付記しておきましょう。

 今回の巨大戦は、CB-01をメガゾード対策として配置し、巨大戦と等身大戦を並行させる得意のパターン。既に安定感すら漂うシチュエーションになっています。巨大戦では珍しく、CB-01の偽物も登場。コミカルな中にも迫力があり、演出の巧さが光ります。偽物を見破る為に、ヨーコがRH-03で両方を攻撃するという、「乱暴な」手段も秀逸。ヨーコらしい直線的な行動の裏で、この程度でCB-01はダメージを受けない事を把握しているというプロフェッショナルな感覚がいいですね。

 次回は息抜き編かな?