最終話の本放送からは随分と時間が経ってしまいましたが...。やっと記事にする事が出来ます。
「ギンガ」は劇場版を併せてもわずか13話に過ぎず(続編の「ギンガS」は除く)、その本数は「ウルトラマンG」や「パワード」といったビデオ作品と同等。しかし、それまでのウルトラの構造を意図的に廃した事で、その物語は「G」や「パワード」の質感に比べ、随分異なります。うん、なんだか、こじんまりしてるね、という...。
それが悪いとは思いません。むしろ、ウルトラで平成ライダーのような「私闘」が実現可能である事が示されましたし、怪獣を敵味方なくニュートラルな存在に出来るのは、ウルトラのブランドだけだという証明も得られたのですから。「列伝」というオムニバスコンテンツの中に、新作を成立させる手法も同時に確立出来たのではないでしょうか。
そんなわけで、最終回です。ダークルギエルを半ば無理矢理引っ張り出す強引な構成には少々驚きますが、概ね大団円に相応しい完成度だったと思います。
前回で白井校長から離脱して虚空に消えたダークルギエルでしたが、白井校長の存在を再び利用し復活を果たす事になります。その前に、これまでダークルギエルに利用されてきた人々を含め、多くの卒業生が小学校に集まって来るくだりがあります。
平成ウルトラに顕著な、ゲストを最終回に集結させるという手法が、ここでも踏襲されたわけですが、前例に倣い、ちゃんと勝利へのきっかけを形成する事になります。その前哨として、「更正」した面々が夢を語るのですが、まぁこれは、感動を呼ぶ程のものではないです(笑)。ダークライブする前に「犯罪」を犯していたような連中ですが、書類送検されただけなんですかね。そんなわけないでしょう...と言いたいが、ここはグッと我慢。このくだりは、まだヒカル達が到達出来ない「夢」を、一度挫折した大人が一足先に実現してくれるかも知れないという、「別の到達点」を示しているので。
実際、一様にその目に悪意が宿っていた大人達が、爽やかな表情で様々な展望を語る(後に黒木や桑原も「学校を残した形」での建設計画を晴れやかな顔で検討する)シーンは、「ギンガ」の落とし処としては打倒でしたし、それがヒカル達高校生の頑張りによってもたらされたという流れは、確かな感動をもたらしてくれます。
今回は、他にも平成ウルトラっぽさが色々と出ています。
平成ウルトラの顕著な傾向として、「応援! → 奇蹟!」という明確な筋道があります。中には全くその道を通らない作品もありますが、「ティガ」は、物理的なエネルギー(謂わば「光」)を、抽象的な応援という行為の具体化として取り入れ、しかもそれをシリーズの途中で描写する事により、「応援! → 奇蹟!」を正当化した最初の作品だと思います。ただ、まだエクスキューズに説得力があったとはいえ、最終回での子供達の一斉ゼペリオン光線は少々やり過ぎだと、現在の感覚では思えるし、その後、「ガイア」や「ネクサス」、「メビウス」で極めて近いニュアンスのエンディングを迎える事により、既にルーチン化して陳腐化してしまったようにも思えるのです。
それぞれ、「ガイア」ではアルケミー・スターズの総頭脳戦だったり、「ネクサス」では隠蔽から解放された人々による恐怖の克服だったり、「メビウス」は共に戦った仲間との完全融合だったりと、物語に即した納得出来るエクスキューズは用意されているのですが、やはりウルトラマンに起きるのはそのプロセスが発端となった「奇蹟」である事は間違いない処。燃える展開なんですよ、実際。しかし、「単体ならば」という但し書き付きです。同シリーズで繰り返されるとなかなか厳しいものがあるのではないでしょうか。
今回も、ほぼ同じプロセスだと言って良いと思います。立つ事すらままならない小学校の卒業生達が、自らの中に残された希望を絞り出すようにして歌う、降星小学校の校歌。それがダークルギエルを怯ませ、タロウ復活の力となる、そのプロセス。やはり、物語に沿ったエクスキューズを用いた同構造でしょう。
ただ、「メビウス」からは随分と時間が経っているので、あまり気にならなかったというのも正直な処。また、「ギンガ」の作風が「校歌でほのぼのする」という感覚にマッチしていたのも大きいです。前回、ダークルギエルが白井校長に校歌のパネルを破壊させるというくだりがありましたが、校歌自体に言霊的なパワーがあるのを、ダークルギエルは予見していたのではないかと思わせます。
「ギンガ」では、「夢」という言葉を繰り返し口に出す事で、その実現可能性を上げていくかのような描写が散見されましたが、正にこれも言霊的な考え方であり、ホツマという言霊の塊のようなキャラクターはその象徴でした。スパークドールズという動かざる人形は、正に「依代」、「形代」ですが、タロウだけは言霊を操る事の出来る、既に魂の宿った形代であり、ウルトラ念力という「神通力」を発揮する唯一のキャラクターだったわけです。こうして見ると、「ギンガ」は実に陰陽道的というか、呪術的な感性に彩られている独特のウルトラマンですよね。
その視点で捉えると、ダークルギエルは呪詛の塊と言えるでしょう。実際、ダークライブした人間は呪いの言葉を吐き続けていましたから。
面白いのは、ギンガはその対極にありながら、「言祝ぐ」事をしない無口なウルトラマンである事です。
ここは、喋る役割をヒカルが負っていたというのが、肝なんだと思います。ギンガは一度ダークルギエルに敗れていますが、それは言祝ぐに当たっての力が不足していたのではないでしょうか。故に、自ら形代となって、パワーを秘めたヒカルに託したのでしょう。
ヒカルは夢に迷いを持たない、夢という言葉を臆面なく口に出せるとあって、劇中でのその言霊の力は相当なものだと考えられます。呪詛は過去の行為に対するネガティヴな感情を外部に向けて発信するものですが、言祝ぎは明るい未来を願って発信するポジティヴなもの。ここでタロウやギンガが讃える「未来」とガッチリシンクロしてきます。
ダークルギエルには、人々から時間を奪って未来の到来を阻止するという、SF的な時空感を付加されていますが、本質的には物言わぬ人形に変える事により、言霊の力を奪い取っていると解釈出来ます。ヒカルはそんなダークルギエルを「許せない」としており、それは文面上は呪詛ですが、ヒカルの内面から発せられた呪詛ではなく、ダークルギエルへの呪詛返しだと解釈しても問題ないでしょう。
今回の「奇蹟」の質感が良好だったのには、タロウ復活とギンガ復活という二段構えがあったからだというのもあります。タロウは、言霊を自在に操れるとはいえども、言い方はあまり良くないですが、過去のウルトラマン。しかしながら、降星小学校の校歌という「言霊の極致」を受け入れるだけの器は有しており、それ故に大勢の人々の力を得て本来の姿を取り戻し、ダークルギエルに立ち向かう事が可能になりました。タロウが担ったのは、過去から未来へパワーを繋ぐ事。それを受け取る者こそが、ヒカルなのでした。
それにしても、タロウの活躍は反則に近い格好良さでしたね。往年の変身バンクを再現して見せたり、超高速パンチを叩き込んだり、そのままダークルギエルに勝てるだろうというツッコミが成立する程の強烈な印象でした。勿論、タロウがダークルギエルを倒してしまっては意味が無いので、やや唐突なギンガへのパワー照射を経て、消滅に至るわけですが、タロウが活躍している間は「ウルトラマンタロウ」の主題歌が流れるという、にわかには信じ難いサービスっ振りで、その破格の扱いたるや相当なものです。主題歌が、歌入りで流れている辺り、言霊のパワーを象徴しているようで興味深いですね。
ギンガ VS ダークルギエル戦は、月面での描写を交えた豪華なもので、あらゆる工夫を盛り込んで超然たるバトルを組み立てており、非常に完成度が高いものとなっていました。月面は照明を落とした撮影ですが、やはりホリゾントがグレーなのとそうでないのとでは、臨場感が全く違う事に気付きます(笑)。月面は最小限のセットに抑えられている事が、メイキングからも分かりますが、合成カット挿入の巧さもあってセットの狭さを全く感じさせない辺りが素晴らしいです。
エンディングは、スパークドールズが宇宙に還っていくという描写により、別れを美しく爽やかなものに仕上げていました。
平成ウルトラにかなり共通しているのは、ウルトラマンの再現可能性が絶たれるというパターンで、「ティガ」でスパークレンスが石化したり、ウルトラマンダイナが別の宇宙(≒死のイメージ)に旅立ったり、「マックス」で遠い未来が描かれたりといったものが挙げられます。今回は、スパークドールズ自体が失われた時間を取り戻すという終幕なので、ギンガ自身も形代ではなくなった事から、少なくともこれまでの方法による再現は不可能になりました。この辺りは「ギンガS」でどのような道が示されるか、非常に楽しみです。
結局、ホツマの正体は分からずじまいといった部分が指摘される等、シリーズ単体の完結としては、少々物足りない部分もありますが、苦しい台所事情と短い製作期間で、曲がりなりにも新作を世に送り出せた事は素直に賞賛したいです。しかも、続編シリーズの制作が決定されたという事は、「ギンガ」がちゃんとメインの視聴者層にアピール出来たという事の証明であり、ファンとしては喜ばしい事に他なりません。
これからも、「ギンガ」の動向を見守っていこうと思います。そして、出来る限りリアルタイムで記事を書ければと(笑)。
Michael
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