その26「モヘモヘ!お悩み相談」

 ゴウとジャン、ラン、レツは互いの戦い方を披露することで、4人での戦い方を模索していた。ゴウは3人のトライアングルの完璧さを見て、4人での連携を先延ばしにする。ジャンは「モヘモヘだ」と言い、頭を抱えて走り去ってしまった。

 スクラッチに戻ってきたゴウは、ジャンが「獣拳お悩み相談所」に行ったとミシェル・ペングより聞かされ、自分もそこへ進んで行くことにした。ランとレツも同行することとなり、ミシェルの案内でやって来た森の中の小屋。そこにはゴリー・イェンが居た。ジャンの相談は既に済み、道を見つけている最中だという。それを聞いたランとレツはジャンを探しに向かう。1人残ったゴウが「トライアングルを壊してしまうのではないか」と悩んでいることを見通していたゴリーは、そんなゴウを優しいと評した。「ゴウへの答えは、ジャンが持っている」とゴリーは言う。ゴウは自分の加わることをジャンが嫌がっていると思っており、自分が決めた道、即ち3人の盾となるべく1人で戦うという道を選んで「相談所」を後にした。

 一方、マクはブトカとワガタクに怒臨気を与えて怒臨機兵とし、街に派遣した。理央はその様子を見て、自らの怒臨気が果たしてマクを凌ぐのかどうか、内心疑問を抱く。メレはロンから、理央が怒臨機を身に付けたことを聞かされるが、それ故に何故悩んでいるのか余計に分からなくなっていた。理央はメレに「付いて来るな」と言い、何処かへ向かっていく。理央の向かった先は、何とゴリーの「相談所」であった。理央は怒臨気がマクに通用するかをゴリーに尋ねに来たのだ。理央は怒臨気を発揮してミシェルとゴリーに拳を振るう。2人の拳聖を地に伏せさせた理央は、自らの怒臨気に自信を抱く。しかし、ゴリーは自らが答えを決めてしまうのが理央の欠点だと言い放ち、神にも匹敵するマクの力には及ばないとした。

 その頃、ジャンを探すランとレツは、怒臨機兵となったブトカとワガタクを目撃。直ちに迎え撃つ。ところが、怒臨気を纏ったブトカとワガタクは強力だ。ランとレツが正にとどめを刺されんとしたその時、ゴウが到着した。自分1人で戦っている間にジャンを探せと2人に告げるゴウ。そこへジャンが現れ、ゴウを無理やり引っ張って3人の間に並ばせた。「ハレハレだ」というジャンが示したのは、4人の並び方。ジャンがゴリーに相談した「悩み」は、4人でどう並ぶかだったのだ。「俺たちは4人でゲキレンジャーなんだ」というジャンに、思わず笑みをこぼすゴウたち。今ここに、ゲキレンジャーは4人編成となったのだ。

 過激気と紫激気の華麗な連携は、瞬く間にブトカとワガタクを追い詰める。そして、スーパー激激砲と厳厳拳の「過激気、紫激気、激気合一」は怒臨機兵を粉砕した。怒るマクは更なる怒臨気を注ぎ込み、ブトカとワガタクを巨大化させる。ゲキファイアーで立ち向かうジャン達3人と、ゲキウルフを呼び出して戦うゴウ。さすがに怒臨機兵2体の攻撃を受けては、ゲキファイアーも苦戦を強いられる。ゴウは紫激気でゲキタイガーとゲキジャガーを呼び出し、ゲキトージャウルフを一人で完成させた。ゲキファイアーとゲキトージャウルフ、怒涛の同時攻撃は、見事ブトカとワガタクを打ち破った。

 ゴリーの漏らした「神」という言葉から、理央は獣拳の聖地に神が住むという伝説を思い出した。獣拳の聖地・獣源郷。そこに理央の求める力がある...!

監督・脚本
監督
竹本昇
脚本
會川昇
解説

 新戦士登場後、恒例の結束編。新戦士が加入することでチームワークが乱れ、何らかの改心等を経て結束するというパターンが常であるが、本エピソードでは逆転的な構成で面白味を増している。

 例えば、ジャン達3人の結束の固さを見て、それに加わることを躊躇するゴウや、純粋に4人でゲキレンジャーとしたいジャンの真意が分からず、ゴウとジャンの間でイラついているランとレツが挙げられる。

 トライアングルの崩壊を恐れるゴウのキャラクターは、「自分勝手に見えて、実は周囲を心配している」という方向性を持ち、自分に悩みがあるということを見抜かれたくない照れも加わって、魅力的な像を完成させている。「新戦士はとっつきにくいイヤなヤツ」という伝統のトータルイメージをウマく利用しつつ、奥に秘めた強い優しさを表現する演出の的確さが心地よい。

 ジャンに関しては、饒舌でない故の誤解・齟齬がウマく取り入れられている。「モヘモヘ」というジャン語が、今回のキーワードになるのだが、ジャンは単純に4人のうまい並び方が思いつかない気持ち悪さを表現したに過ぎない。ゴウは「モヘモヘ」を、自分が加わることを迷惑がっているのだととらえ、ランとレツは激激砲の発射を咎めたことに関するジャンのイラツキ程度にしか思っていない(ランの「ジャンに悩みなんてあったの?」という発言がそれを象徴している)。実はこの時点で、ジャンは図らずも4人の結束の可能性を殆ど潰してしまっているのだ。

 結果的には、ジャンの純粋さの前に他の3人が素直になり、結束が果たされることになる。つまりこれは、ジャンによるゲキレンジャーの再構築だったのである。強固なトライアングルに新しい風を導くには、一度バラバラに破壊するしかなかったのだ。ゴリーは、それを全て見通した上で、ジャンに4色の人形を与えたのだと考えてよいだろう。

 さて、そのゴリーの元へ、理央もやって来る。またもや激獣拳と臨獣拳の等価性が表現されたわけだが、理央は臨獣拳のプライドを捨てて拳聖に相談しに来たのだろうか。それは否である。理央にとっては拳魔も拳聖も等価であり、強さを得る為ならば、臨獣拳の師であろうと激獣拳の師(?)であろうと教えを請い、あわよくば倒そうと考えている。ちなみに、どうもここ最近の理央の心中からは、臨獣殿に関する興味が失われているようで、リンリンシーを差し向けることもなければ、メレすらも半ば邪魔者扱いしている。そこにロンが加わることで、益々混迷を極めている。ゲキレンジャーが結束を固めるプロセスを見せていくのに対し、臨獣殿は個人の繋がりをどんどん崩壊させていく。この流れの対比には思わず圧倒される。

 メインの流れはゴリーを中心にしているため、他の箇所はなるべく個性を発揮しないように配慮されている。ブトカとワガタクを再登場させたのもしかり、ランとレツに損な役回りをさせたのもしかりだ。ただし、ブトカとワガタクは怒臨機兵となり、ランとレツは必死で戦う様を見せる。このような部分がしっかり描写されているからこそ、ゴウが加わった後の逆転劇が爽快なカタルシスを生むのだ。

 ラストには、さらなる展開への引きも用意された。それは獣源郷と呼ばれる聖地の存在だ。「聖地」と呼ばれる場所に、悪の獣拳である臨獣拳が近付くというところに、ゲキレンジャーというシリーズの醍醐味があるのは言うまでもない。過激気と紫激気のタッグの前にあっては、さすがの怒臨気も無力であるかのように描かれたが、マクの実力は神にも匹敵するという。怒臨気に留まらない、凄まじい実力をマクは持っているということだろうか。理央の次なるステージにも大いに期待したい。