その18「シャッキンキーン!身体、強い」

 ゲキシャークはドカリヤに乗っ取られ、ゲキトージャを襲う。そこへバット・リーとエレハン・キンポーが現れ、ゲキエレファントージャで対抗するよう示唆。ゲキエレファントージャは、ドカリヤに乗っ取られたゲキシャークを撃退した。シャッキー・チェンはリーとエレハンに失態を咎められションボリ。そこにマスター・シャーフーと美希まで現れ、臨海学校にしようと言い出す。シャッキーはもっと身体を鍛えて頑丈になってみせると、リーとエレハンに誓うが、2人からは肉体の強さだけでは敵には勝てんと一喝される。ジャンはシャッキーを不憫に思い、怒ってシャッキーと共にそこから抜け出す。ところが、すっかり自信喪失したシャッキーは、弟子を取るのは早かったと判断し、ジャンを破門してしまった。

 一方、ラゲクの稽古を受ける理央は、どうしても許せない、身を焦がす相手の存在をラゲクに問われる。

 その夜、マスター・シャーフーが何物かに狙われた。美希はシャッキーが走って逃げるのを見たと言う。リーとエレハンは未熟者ゆえの過ちとしてシャッキーを疑い、ランとレツを連れてシャッキーを探しはじめた。美希に促され、ジャンもそれを追う。

 一人途方に暮れるシャッキーをリーとエレハンが捕らえた頃、何と美希がマスター・シャーフーを襲撃。信頼するマスターであるシャッキーを追っておらず、シャーフーの身辺を見張っていたジャンは、美希を阻止した。ところが、ジャンは一蹴され美希はなおもマスター・シャーフーを襲撃。シャッキーを連行してきたリー達は、美希とシャーフーが戦う様を見て驚く。シャーフーの当て身で美希から飛び出したドカリヤは、何とジャンを乗っ取ってしまった。

 しかし、ドカリヤはジャンを自由に動かせない。ジャンは気合と共にドカリヤを追い出してしまった。「シャッキンキーン(とても頑丈)」な身体でドカリヤの乗っ取りをも跳ね返すことができたのだ。ジャンはシャッキーの教えが正しいことを、シャッキーの目前で証明してみせたのだ。思わず感涙にむせぶシャッキー。ジャンはゲキレッドとなってドカリヤに立ち向かった。ゲキレンジャーはマスターたちの前でリンシーズ相手に修行の成果を見せる。シャッキーのアドバイスによってゲキセイバーを1本に合身させたジャンは、ドカリヤを圧倒して勝利をおさめた。

 怒ったメレはドカリヤを煽り、巨大化を促した。ゲキトージャで対抗するゲキレンジャーは、ゲキシャークを獣拳武装してゲキシャークトージャを完成させる。海底に戦地を移した両者は、激しい戦いを繰り広げるが、新たなゲキワザ・大頑頑斬でゲキシャークトージャが勝利した。< /p>

 マスター・シャーフーは、シャッキーに「師匠とは完璧なものではない。弟子によって教えられ、共に育つ。それもまた、師匠よ」と諭した。シャッキーはジャンと共に「シャッキーン」のポーズを決めるのだった。

 そして理央は、白い虎の激気を有する何者かに、身を焦がす思いを抱いていた。「ヤツにだけはどうしても勝てなかった」理央は闘志を燃やす。

監督・脚本
監督
渡辺勝也
脚本
會川昇
解説

 「修行して勝つ」というパターンを、ほんの少しだけ変化球的に処理した好編。拳聖たちが一堂に会すサービスもあり、派手なエピソードとして印象を残す。途中がミステリータッチになるのも新鮮(少々バレバレな感は否めないが…)。

 今回はジャンとシャッキー・チェンの師弟愛が大きくクローズアップされているため、臨獣拳側のエピソードは少なめ。ドカリヤにしても、結局はストーリーを回していくための駒に過ぎないといった印象である。ドカリヤを倒すためのドラマ構造というわけではない点が、「変化球的」と言えるだろう。

 ただし、ドカリヤの「駒」的役割は非常に巧く処理されている。ゲキシャークを乗っ取ってピンチに陥れなければ、バット・リーやエレハン・キンポーは登場の機会を逸してしまうわけだし、美希を乗っ取らなければ、シャッキーに疑惑の念が向けられなかった。さらに、ジャンを乗っ取ろうとして失敗することで、シャッキーのモットーの有効性を証明したのだから、ストーリーの動輪はまさにドカリヤなのだ。

 臨獣拳側の他のトピックとしては、「理央が身を焦がす思いを抱く人物」の存在が示されること。終盤であまりにもサラリと流されてしまい、印象に残りにくいのが難だが、その人物は「白い虎の激気」を有する者であるらしい。この人物については色々と憶測が可能で、例えばレツの兄であるとか、ジャンの関係者であるとか、色々と候補を挙げることができる。ゲキレンジャーには、こういった「さりげない謎見せ」が意外に多く、その点は明らかに低年齢層向けではない。

 さて、今回はジャンのシャッキーに対する一途な思いが感動を呼ぶのだが、そのホロリ感は、あからさまではない演出のさじ加減が非常に巧みで、押し付けがましさがない。ジャンのような無垢なキャラクターの使用例、そして多くを語ることなく、主に行動を見せることで思いを表出するような語り口の、好例中の好例と言えはしないだろうか。高年齢層の視聴者には、こういった特撮モノのクサいセリフ等に引いてしまう者も少なくないが、今回のような、思わずホロッと来てしまう感覚には素直に拍手を贈れることだろう。勿論、シャッキーの一見凶悪な顔つきに独特のライトな声を当て、可愛らしい面を作り出した石丸博也氏の名演も忘れてはならない。その声に負けることなく、シャッキーのコミカルな動作を的確に表現したスーツアクターの存在も重要だ。

 ゲキレッドのアクションは、水飛沫が派手に飛び散る合成がプラスされることで、ファンタスティックな効果を挙げている。日本的な剣術ではなく、あくまで中国武術的な演舞の延長として展開されるゲキセイバーのアクションは、アクションチームの面目躍如であり、ストーリーの高揚感と相まって凄まじい効果をあげている。逆にその後のゲキシャークトージャ登場が霞んでしまうくらいだ。そのゲキシャークトージャは、「太陽戦隊サンバルカン」のバルシャークを彷彿させるポーズを披露。フィンではなく、頭をドリルのように使用するという意表をついた技(ただし「大頑頑斬」という技の名は、フィンによる斬撃を前提としているように思えるが…)で度肝を抜いた。 CGとスーツメーションを巧みに駆使した泳ぎのシーンも新鮮だ。ここまで流麗な泳ぎを見せた「戦隊ロボ」は空前ではないだろうか。

 そして、見逃せないシーンの最強候補は、やはり美希の大立ち回り。ドカリヤに乗っ取られていたとは言え、マスター・シャーフーと激しく立ち回るシーンには興奮必至だ。わざと狙っているのか、吹き替えが不能なほど「顔割れ」のカットが多く、伊藤かずえ氏自身が殆どの大立ち回りを演じており、果てはワイヤーアクションまでこなしてしまう。ジャンを一蹴してしまうシーンでは、実力の程を見せつけ、「ママに比べれば初心者ね」というかつてのセリフを証明して見せてくれた。