その1「ニキニキ!激獣拳」

 アジアの奥地でパンダと戯れる野生児・漢堂ジャンは、真咲美希の乗るセスナが墜落するのを目撃し、その墜落地点に向かう。そこでジャンが見たのは、「拳魔の腕輪」を回収しようとする美希が、大勢のリンシーを打ち倒す姿だった。虎の子と名乗るジャンに驚く美希を襲ったのは、マキリカ。マキリカに不覚を取った美希は腕輪を奪われてしまい、ジャンはマキリカによって切り倒された大木の下敷きに。

 拳魔の腕輪をマキリカより受け取った、臨獣殿を統べる男・理央は、臨獣殿で三拳魔の声を聞く。「弱き者共に絶望を」理央は野望を燃やす。

 ジャンが気付くと、そこはスポーツメーカー・スクラッチ本社のベッドの上だった。大木の下敷きになっても無傷だったジャンを、美希は連れ帰ったのだ。ジャンはジムでゲキイエロー=宇崎ランとゲキブルー=深見レツのトレーニングを見て興奮。そこへマスター・シャーフーが現れ、激獣拳と臨獣拳の存在を説く。そしてマスター・シャーフーは、ジャンにゲキチェンジャーを与えた。

 臨獣殿の襲撃が始まった。マキリカは獣人態となって暴れまわる。ランとレツは変身して戦い始めた。ジャンはそれを見て真似しようとするが、うまく行かない。しかし、少女を手にかけようとするマキリカに怒ったジャンは、激気を燃やしてゲキレッドに変身。マキリカをパンチ一発で吹き飛ばしてしまった。ジャンによって一敗地にまみれたマキリカは巨大化して応戦する。そこに巨大なマスター・シャーフーが現れ、マキリカを制止した。

監督・脚本
監督
中澤祥次郎
脚本
横手美智子
解説

 遂に始まった新戦隊ゲキレンジャー。メカニカルな要素と伝奇的アイテムでまとめられた前作・ボウケンジャーとは逆に、スピリチュアルな世界観とハイテク感漂うアイテム群で構成されているのが面白い。

 本作は激気や臨気を初めとして、専門的タームが多いのだが、第1話として非常によくまとめられている感が強い。メインターゲットである年少者が、ギリギリついて来れるさじ加減を実に良く心得ている。

 拳法をはっきりとモチーフにしたのは、「五星戦隊ダイレンジャー」以来。ダイレンジャーでは中国武術を前面に押し出して流麗な殺陣を魅せたが、ゲキレンジャーでは中国武術的な香りを漂わせつつ、より実戦的な殺陣を魅せる。当時よりワイヤーワークが進歩したことで、よりファンタスティックな要素が増えていることも指摘しておきたい。なお、ダイレンジャーは、戦隊史上最も名乗りポーズが難しいとされてきたが、ゲキレンジャーもそれに匹敵するほど難しく、また流麗である。

 冒頭、美希役・伊藤かずえ氏の立ち回りを見ることができるのは、年長ファンにとって非常に嬉しいポイント。美希の落ち着いたキャラクターは、激気のようなファンタジー寄りの要素を、うまく現実世界に着地させる役割を果たしている。スクラッチという会社の存在も同様だ。

 ジャンが野生児なのに、割と日本語が堪能であるという点は、「仮面ライダーアマゾン」を知る者にとっては違和感があるものの、日本語が染み付いた時点で樹海に放り出されたと考えれば納得がいく。

 リンシーのモチーフは、見ての通りキョンシーだが、使い古された題材が、今新鮮に感じられる。

 マキリカの声を演ずる土田大氏は、忍者戦隊カクレンジャーのニンジャブルー・サイゾウ役。いきなり戦隊OBの声の出演に、ニヤリとしたファンも多いだろう。