2クール余りという、80年代以降の特撮TVドラマでは極めて珍しいスパンで展開された「ディケイド」。いよいよお祭りシリーズもクライマックスです。
数年前、「ディケイド」と類似したコンセプトの「ウルトラマンメビウス」が円谷プロダクション制作により放映され、人気を博しましたが(私も一生懸命ファンサイトを運営しました)、やはりこういったコンセプトのコンテンツは人気が高いようで、「ディケイド」も劇場版が大ヒットを記録するなど、色々と話題を事欠かない作品になりました。
いきなりまとめ的なことを書いてしまいましたが、サービスたっぷりの割にちょっとした寂しさが漂っているのが、今回の特徴であり、それ故に「終わってしまう」感覚が湧き上がって来たわけです。
そのサービスの面というのが、ワタル、カズマ、アスムといった、各世界の主役達が一挙に登場して来たというもの。そしてオリジナルの設定を大胆に流用・改変したユウキこと芳賀優里亜さん、謎の男でありながら剣崎一真という「完全にオリジナルと同一のキャラ」として登場した椿隆之さんの友情出演にあります。
芳賀さんは「555」のレギュラーと「キバ」のセミレギュラーとして登場していますが、今回は「キバ」の鈴木深央(パールシェルファンガイア)を元にした役柄での出演になります。また、椿さんは言わずと知れた「剣(ブレイド)」の主演ですね。
詳細に見て行くと、やはり前半で會川さんが脚本を降りてしまった影響があるのか、作品としての整合性を疑ってしまうような面もありますが、全体的にライダーの世界同士が対立するという退廃的な感覚に彩られた、ラストの導入部らしい一編になっています。それでは、見所をまとめてみましたので、ご覧下さい。
まずは、再び夏海がライダー対戦の夢を見るシーンから。夏海は例のドレス姿で。しかも鳴滝が背後に立っています。
「ディケイドは全ての世界を破壊する」
「違います!士君は破壊者なんかじゃありません。むしろその逆です。ライダー達を守っているんです!」
「君は何も分かっていない。彼の通った後に残るのは、ライダーの屍だけだ」
「違います!士君はそんな人じゃありません!」
もし第1話を見る事が出来る方は、夏海を見比べて見て下さい。この2クール余りの期間で、著しい成長振りを感じる事が出来ます。特に凛とした表情が素晴らしくなっており、しかも同じドレスでも着こなしの違いが感じられる程です。
「士」というディエンドの声を聞いた瞬間、夏海は目を覚まします。
この世界での士の格好は、何とモーニング。いわゆる「正装」です。ユウスケは結婚式かとツッコミを入れますが、士は葬式かもと言うあたり、士のネガティヴな心情が反映されているようです。
一応、この格好は今回のクライマックスで意味を成すことになります。
「これが俺達の最後の旅になる。何故かそんな気がする」
と士。夏海は、
「もしも士君の身に何か起こるんだとしたら、その時は私が守らないと...」
と心の中で呟いていました。基本的に、士に対する想いはモノローグですね。そんな士達が目撃したのは、ライダー達の激戦でした。
イクサ VS レンゲル、サガ VS ギャレン、ワタル(キバ) VS カズマ(ブレイド)、そして、ファンガイア VS アンデッドまで。ライダー同士のみならず、キバの世界とブレイドの世界が対戦しているという構図。
「ここは、ライダー大戦の世界...」
全編通して不明瞭なのですが、ここはブレイドの世界でもキバの世界でも響鬼の世界でもないようです。BOARDが存在し、カズマが働いていることから、ブレイドの世界にも見えますが、実際は複数の世界が融合することによって生じた世界のようなのです。従って、士の言う「ライダー大戦の世界」という表現も強ち外れてはいません。
ライダーの世界同士の戦いは続きます。ブレイドがイクサを破り、キバとソーンファンガイアがレンゲルを破るという地獄絵図。イクサはキバの世界に登場しませんでしたから、一体誰なのかは全くもって不明。レンゲルはブレイドの世界では黒葉ムツキが変身していましたが、ここでは誰なのか不明です。私が思うに、ムツキもサクヤもジョーカー復活の際に大変な目に会ってしまいましたから、このレンゲルは新しいBOARDのエースではないかと思います。
やや劣勢になったと感じたのか、ブレイド陣営は退散していきます。
「一体どうしてこんなことに...」
「さぁな、だが一つだけはっきりしてることはある。世界の融合が進み、キバとブレイドの世界が一つになったということだ」
士は状況をよく把握しているようです。後に出てきますが、「だいたい正しい」のです。
そして、イクサの残骸を前に茫然とするワタル。何だか物凄い光景で、いくら平成ライダーと言えども、ここまで凄惨な光景をサラリと見せてしまったことはないでしょう。いわゆる「サブのライダー」の扱いがあまり良くない「ディケイド」においても、これは強烈です。
ワタルの登場により、ライダー大戦の切迫した雰囲気は、一気に高揚していきます。
何故ライダー同士が戦っているのかというユウスケの問いに、
「ブレイド達を倒さなければ、キバの世界が消えてしまう」
と答えるワタル。彼は、
「一つの世界にキバとブレイドは共存できない。どちらかの世界しか生き残れないんだ」
とし、自分達の世界を守る為の戦いを余儀なくされている現状を士達に説明します。
「その為だけにファンガイアと手を組んだってわけか」
という士。このセリフが今回最も微妙なズレを生じている部分で、違和感があります。
というのも、「キバの世界」は人間とファンガイアの共存を目指し、ワタルはその為に散った父の遺志を知らぬうちに継承、ファンガイアの王となる決心をしたのでした。つまり、「ファンガイアと手を組む」ということ表現自体が既に誤りであり、その指摘にうつむくワタルにも、かつての展開からの連続性が感じられません。
そこに、ファンガイアの女王・ユウキ(ソーンファンガイア)が登場。
「キバ」に深央として登場した際も、大人になった芳賀さんに驚きましたが、今回は更に美しくなった感じがします。冷たい表情も実に冴えていますね。
「私はファンガイアの女王として、ワタルと共に、人間とファンガイアが共存出来る世界を作ろうとしている」
とユウキ。ワタルが、
「それはうまく行きかけていたんだ。でも...」
と文脈を整え、
「ブレイド達がやって来て全てをぶち壊した!おまけに我々キバの世界を消し去ろうと戦いを挑んできた。そうなれば迎え撃つしかない」
とユウキがここに至った経緯を述べます。
まぁ要するに、士達がキバの世界を去った後、ファンガイアの王であるワタルの前に、ファンガイアの女王を名乗るユウキまでもが現れたと。ここは私の想像ですが、ワタルは腹黒い感のあるユウキの存在を不本意に思いつつも、協力して人間とファンガイアの共存を目指していたということでしょう。「手を組んだ」というネガティヴなニュアンスは、こういう隠された物語を想像させます。
ユウスケは、ワタルに一緒に戦って欲しいと頼まれますが、ユウスケは断固としてライダー同士の戦いを拒みます。しかし、そんな態度はユウキとワタルの感情を逆撫でし、「中立は許されない」という半ば脅迫的な言葉を浴びせられるのでした。
「貴様、ブレイド側に付くつもりか!」
士にファンガイアを差し向けるユウキ。しかし、士は一瞬でディケイドに変身し、後ろ蹴りで瞬殺してしまいます。
「俺は全ての破壊者だ。俺に触れる者は全て破壊する。覚えておけ」
おおっ、この開き直ったカッコ良さがいいですね。自分が世界を回って得てきたものを否定された感に陥り、士も相当機嫌を悪くしたのでしょう。
光写真館に戻った一同。栄次郎はこれまで士が撮ってきたライダーの写真を綴じ、アルバムを作っていたことを告げ、そのアルバムを取り出してきました。ワタルとカズマをしっかり覚えていた栄次郎は、そのページをめくって見せます。
「これまで色んな世界を旅して、するべきことはしてきたつもりでしたけど...」
と夏海。ユウスケは、
「それで問題が解決したわけじゃ、なかったんだな」
というガッカリ感にとらわれています。士は、
「むしろ、世界の危機は、増すばかりだな」
という、とてもシニカルなコメントを。これには思わずユウスケも、
「他人事みたいに言うなよ」
とツッコんでしまいます。この会話の中、夏海はライダー大戦の光景を何度も夢に見ていると告白。それを聞いたユウスケは、ライダー大戦をやめさせること、それが士のすべきことだというのですが、いつものように士は、
「勝手に決めるな。だがまぁ、裏で誰が動いているか、見当はつくがな」
と冷静なのでした。ここで、何と光写真館に鳴滝が現れます。
当面の敵を倒す為には仕方ないという鳴滝によれば、アポロガイストが世界を一つにし、一つになった世界に大ショッカーが君臨しようとしているとのこと。
それを止める為、鳴滝は大ショッカーをディケイドに倒して欲しいというのです。
「頼む...世界を救ってくれ」
鳴滝が何の為に士の邪魔をしてきたのかは、劇場版にその一端を見ることが出来るのですが、実は「大ショッカーをディケイドに倒して欲しい」という言葉は、逆に劇場版と結構な距離を生じてしまっている感があるのです。鳴滝というキャラクターは結構使いあぐねられている感じがあり、その感じが思いっ切り画面に出ているような気がします。
状況を知ったユウスケは、ワタルを説得しに行くと言い出します。ユウスケは士にカズマの説得を委ねようとしますが、勿論士は拒否。ところが、久々の笑いのツボが炸裂して、士は無理矢理納得させられるのでした。
笑いのツボ、忘れられてなかったんですな(笑)。
さて、士はBOARDにカズマを訪ねて来ます。どうやらカズマはBOARDの社長クラスになっているらしく、かつて四条ハジメが采配を振るっていた頃の雰囲気を醸し出しています。そこにユウスケがワタルを連れて来ます。
敵同士が顔をあわせ、いよいよ士とユウスケの説得が始まります。勿論、ライダー同士の戦いをやめさせる為です。
士「奴らの狙いは、ライダー同士を戦わせ、消耗したとこで消し去ることだ」
ワタル「何故そう言い切れるんですか?」
士「俺の言うことはだいたい正しい」
この士の言うことはだいたい正しいように思われますが、劇場版ではここでの発言を学習していないという問題が...(笑)。
士は、
「自分の世界だけに固執していれば、世界全体を救うことは出来ない。今は自分の世界のことを考えるな」
と続けます。ところがカズマは、
「それは自分の世界がないから言えることだ」
と答え、ワタルも、
「そうです。あなたには守るべき世界がない。まして、自分が何者かさえも分かっていない」
と続けます。
「お前に俺達の気持ちは分からないよ」
というカズマ。
これ、実に皮肉なことにカズマとワタルの意見が士批判という点で合致してしまっているんですね。こんな所に、本来はライダー同士の戦いなど望んでいない彼らの心情が伺えるのです。
軽いショックを受ける士が印象的。
そこにキバーラがやって来て、アポロガイストとファンガイアの女王が結婚式を挙げるとの情報をもたらします。強い組織と結託しなければ生き残れないというワタル。ここでユウキが大ショッカー近付いたということがようやく判明し、例の士の「手を組んだ」発言に意味合いが付加されてきます。物語構造としてはダメダメですが、何となく見る分にはちゃんと繋がるわけです。でもやっぱりダメか...?
士は、
「つくづく分かった。旅をして、仲間が出来たつもりでいたが、ただの勘違いだった...仲間なんか作るもんじゃない」
と言って一人で片を付けに行くことに。
「ワタル、カズマ...お前らこれでいいのか?」
というユウスケでしたが、彼らの反応は芳しくありません。
事態はさらに悪化しており、今度は響鬼の世界も融合していました。
サガに敗れる天鬼と轟鬼!
アスムが「アキラさん!」と言っていることから、こちらは本人達である可能性が非常に高い。つまり、レンゲルやイクサとは比較にならない衝撃度になっています。「響鬼の世界」では、トドロキとアキラは「ご本人登場」でしたから、更なる衝撃に襲われます。
そこに突如現れる謎の男(見た目と喋り方により、一発で剣崎一真と分かるのがいい)。
「お前達は何か勘違いをしているようだ。本当の敵は大ショッカーではない」
「誰ですか?それ、どういう意味ですか?」
と夏海が問い返すも、すぐに姿を消してしまう男。言葉の言い回しのニュアンスは、かなり鳴滝に近いものがありますが、この言葉に隠された意味とは?
そして、サガに苦戦する響鬼の元に、海東が現れます。
「師匠!」
「まだまだ修行が足りないな、少年君」
師匠と呼ぶあたりがいいですね。カズマにも士を「チーズ」とか呼んで欲しかった...?
海東に鼓舞された響鬼は、サガを粉砕することに成功します。しかし、これはこれでライダー大戦の抱える「ライダーがライダーを倒す」という行為に他なりません。海東はこのあたりには無頓着なのかも知れません。
「信じられません。ライダーとライダーの世界が融合を始めただなんて...」
とアスム。海東は、
「君達は、生き残りを賭けたライダー同士の戦いに巻き込まれたのさ」
と告げます。
「彼等は別のライダーを倒さないと、自分の世界が消えてしまうと思っている」
という海東の言葉を受け、アスムは、
「そんなことの為にアキラさんや、トドロキさんは...」
と二人の死を嘆きます。
「泣いているのかい?」
「すいません。二人共、大切な仲間でしたから」
「仲間、か。そのお宝は、まだ持ってないな」
ここでにわかに海東の嫌いな(そして士もかつては嫌いだった)「仲間」という存在がクローズアップされてきます。この展開はなかなか良いのですが、「仲間」という少々青臭い響きが、クライマックス感を少しばかりスポイルしている気がしないでもありません。
一方で、カズマもかつて士に言われた「仲間」という言葉を思い出していました。ここで一気に「仲間」という言葉が波及して行くのか...と思いきや、ブレイドで打ち止め。シーンはアポロガイストとユウキの結婚式に移ります。
アポロガイストの真の目的は、ファンガイアの力を手に入れること。ユウキとの結婚を果たして、ファンガイアの力を手に入れたアポロガイストは、結婚式に参列したファンガイアと思しき者達のライフエナジーを全て吸い取ってしまいます。哀れ一介のファンガイア達は、アポロガイストの中で永遠に生きることを強要されるのでした。
「乾ききった命の砂漠に、ライフエナジーが染みわたって行くのだ!燃える!命の炎が、もう一度燃えていく!この日が、復活の記念日となるのだ!」
仰々しい台詞は相変わらずですが、結構威厳を感じさせるのですから、さすがは川原和久さんですね。ただ、小物っぽさも充満していて(これも実際は川原さんの狙いっぽいですが)、ラスボス的な雰囲気はあまり感じさせませんが。
「その記念日を命日にしてやるよ」
という台詞と共に士が出現。
逆にユウキは、
「貴様の命日にしてやる」
と宣言してソーンファンガイアに変身します。
ユウキのクールな表情が非常にいいですね。芳賀さんの魅力の一面を強く感じます。
ソーン(thorn)とは棘のことで、連想ゲームのように「棘」→「棘皮動物」→「ナマコ」となり、士の嫌いなナマコのファンガイアということになります。ビジュアルからナマコのファンガイアという感じは受けませんが、一応公式設定としてそういうことになっているようです。
そこにギャレンの銃撃が!カズマとギャレンの乱入です。
「士!お前は俺に大切なことを教えてくれた。俺達は、励まし合い、助け合い、一緒に進化していく仲間だ!」
「その言葉、覚えていてくれたんだな」
「ああ。お前はいつもだいたい正しい」
いいやり取りですね。何がいいって、以前の話をしっかり踏襲しているところです。...脚本が同じ米村さんだからか(笑)。
カズマと共に変身する士。
そこにアンデッド達も混じり、アンデッドも最初から大ショッカーと組んでいたことが判明します。つまり、ライダー大戦はアポロガイストに仕組まれたもの...という印象をこの時点で持たせているのです。
「我々の敵は、未来永劫、ライダーだけなのだ!」
とアポロガイスト。この昭和テイストな宣言にしびれます。
所変わり、今度はアスムの元に剣崎一真を名乗る男が現れ、
「この世界を本当に救いたいか?」
と告げます。何だか「ブレイド」当時より凄味を増したような気がします。断然現在の方がカッコいいですよね。
さて、ソーンファンガイアとその軍勢に苦戦する士の前に、
「士に手出しする奴は、僕が倒す。覚えておきたまえ」
と海東が登場。
「海東、今度は何を企んでる?」
「仲間なら当然のことさ。仲間ならね」
ライダー大戦に、見出すべき宝がなかったのか、海東は「仲間」を「お宝」だと認定し、それを入手すべく士(=「仲間」=「お宝」)に近付いてきたというわけです。
早速「FINAL ATTACK RIDE」でソーンファンガイア以外を一掃するディエンド。
そして形勢逆転。コンプリートフォームになったディケイドは、「RYUKI KAMEN RIDE SURVIVE」で仮面ライダー龍騎サバイブを召喚し、「FINAL ATTAKC RIDE」でソーンファンガイアを粉砕します。
やややっつけ的なコンプリートフォーム登場であり、ソーンファンガイアも実に呆気ない最期でしたが、まぁファイナルはこんな感じでテンポを上げて来ますから、違和感はありません。
そこに、ワタルやユウスケ、夏海がやって来ます。アポロガイストは、
「世界よ動け!一つになるのだ!」
と叫び、様々な世界の融合を促進します。
すると突如、ブレイドとギャレンが消滅!
ブレイドの世界自体が、融合によって消滅してしまったのです。
一真は、
「遂に、始まったか」
とその様子を伺っています。本来ブレイドである一真がこの時消滅しないということは、彼はブレイドでありながら「ディケイド」における「ブレイドの世界」のブレイドではない...という、実にややこしい存在なのです。
いわば、「ブレイドの世界」とは別個に存在する「本来の平成ライダー個々の世界」からやって来た存在と言えるでしょう。
それにしても、突如のブレイド陣営消滅は、かなり衝撃的です。「ブレイド」という作品自体を「ディケイド」の中で消し去るという暴挙ですから、バランスを取る為に本物の剣崎一真が登場したと考えられるでしょう。
幕引きは、
「これが、永遠の命を持った、スーパーアポロガイストの力なのだ!」
というアポロガイストのアップで。
いよいよ次回がラスト。劇場版の存在がある故に、ちゃんとまとめてくれるのか若干心配ではありますが、期待して待っておこうと思います。
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