いやはや、風邪で体調を崩してしまい、記事のアップが遅れに遅れてしまいました。
さて、世間の評価的にどうなんでしょう?...と、思わず気になってしまったお話でしたが。
これまでの、「9つの世界を巡る旅」が、あまりにもお祭り騒ぎ的な熱量で迫って来ていた為か、何となく祭りの後といった寂しさのあるエピソードです。勿論、その雰囲気をわざと強調して、「ディケイド」の異様な盛り上がりを一旦冷却するような意図も垣間見られますが、それにしても、良くも悪くも平成ライダーらしさが横溢しています。
断っておきますが、私は別に井上敏樹さんが嫌い(いわゆる「アンチ井上」)なわけではないので、念の為。
私の主観として、あまり好きでない要素の例を挙げてみると...。
- 「TGクラブ」という、全然リアルとは思えない高校生の姿。
- 「TGクラブ」のメンバーの描き分けが希薄なので、一回見ただけでは誰が何と言う名前なのか分かり難い。
- 海東が「TGクラブ」のお宝に反応するという、短絡的な様子。
- 士が偶然莫大な遺産を手に入れてしまうという、妙な展開(後編で「仕組まれていたこと」という結論が出るならば、これはこれでアリですが)。
- ユウスケの扱いが、伝統的な「不遇なサブキャラ」レベルになっている。
特に「TGクラブ」に見られる「ごっこ遊び」的な要素は、私の最も苦手とするところです。しかも、夏海というキャラクターの、どことなく飄々とした感じがスポイルされてしまったのも残念。高校生時代が判明することで、キャラクターが深まったとの考えも可能ですが、むしろミステリアスな雰囲気が損なわれたダメージの方が大きい気もします。ただ、士が「ガキ」という感想を漏らしたところには、バランス感覚を感じることが出来ます。
一方で、平成ライダーの良い部分を踏襲した箇所も見受けられます。
- どことなく全体的にボンヤリとした雰囲気になっており、本当に夏海の世界なのかという疑問符にしている。
- 過去と現在のシーンの往来が印象的かつスムーズ。
- 各キャラクターが「虚像としての活きの良さ」を体現している。
- 突如、夏海を2人登場させることで、ミステリアスな興味を引いている。
特に、「虚像としての活きの良さ」は特筆モノ。この「虚像としての活きの良さ」という表現は、ステロタイプなキャラクターに対する私なりの皮肉ですが、この「ネガ世界」においては、虚像っぽさこそが勘所として機能しているので、あえて肯定的な部分に挙げてみました。
なお、「ディケイド」ならではのサービスもちゃんと盛り込まれており、紅音也がオリジナルキャストで登場し、ダークキバに変身するのが最も重要なポイントとなります。ただし、この音也はオリジナルの音也とは別人のようですが。
また、「先生」がオルタナティブだったり(オルタナティブ・ゼロならもっと完璧)、龍騎 VS リュウガをやってみたりと、ニヤリとさせられるシーンも多々あり、この辺りはしっかりと「ディケイド」の押さえるべきポイントを押さえていると思います。
実際、2度以上視聴すると結構面白い話で、夏海の高校時代の描写は十分なファンサービスになっているし、クライマックスのライダー大乱戦も非常に見応えがあります。ただ、響鬼編の後だったのがイタかった...。
では、やや複雑な思いを織り交ぜながら解説してみましたので(笑)、ご覧下さい。
元の世界に戻って来た士達。第1話であらゆる怪物によってもたらされた被害が、一切ない状態になっており、夏海は嬉しそうにしています。
ラストシーンで別の夏海が登場することにより、この世界が、元々の「夏海の世界」とは別であることが分かるわけですが、この冒頭の様子では、士達が9つの世界を巡ったことで、「夏海の世界」が救われたような印象になっているのが面白いところです。
ただ、漠然とした「納得できない感覚」もしっかり漂わせており、士は、
「まぁ、こんなものか」
との感想を漏らします。
更に士はモノローグで、
「俺は一体何の為に...結局俺は何も見つけることは出来なかった」
と、やや暗めの表情を浮かべます。
この間も夏海ははしゃぎ気味。珍しく士に写真を撮って欲しいと頼むのでした。被写体にユウスケも加わり、写真を撮りまくる士。
独断と偏見で私が選ぶベストショットは、これです。
そこにバイオリンの音色が...。
出ました!紅音也!
主役級ライダーのオリジナル・キャスト登場としては、第1話の紅渡以来。両方とも「キバ」なのが興味深いところです。言動その他、オリジナルの音也そのものですが、この音也はオリジナル・キバの音也ではない様子。つまり、初めて名前も含めて「本人ではない本人」の登場となったわけです。ただし、第4話に登場した糸矢も「本人ではない本人」と言えるので、厳密には「初めて」ではないですが。また、響鬼に関しても、同様の趣向に見えないこともないので、扱いは難しいところです。
音也は、
「有難く思え。千年に一度の天才・紅音也様の演奏だ。3000万円の価値がある」
と彼らしい自己紹介をし、
「俺からの心ばかりのお祝いだ。ご苦労だった。お前達のおかげでこの世界は無事修復された」
と士を祝福します。
士「何者だ?あんたは」
音也「紅音也。えら~い人だ。近い将来全国の教科書にこの俺の名前が載ることになるだろう」
士「ならば教えてほしいな。旅が終わり、俺が得たものとは何だ?」
音也「お前の、生きるべき世界」
「生きるべき」という言葉がポイント。「士の世界」ではなく、「士の為に設えられた世界」というニュアンスが絶妙です。この言葉は重要な意味を持っていると思います。
その時、夏海に電話が。
電話によると、夏海の友達が久々に集合することになったらしく、夏海は懐かしさに頬を緩めます。電話の主は、下のキャプ画で左から、坂田健児、青柳和良、佐藤博彦。
千夏なる人物が帰って来ることになっており、それをきっかけに集まることが決まったようです。
夏海によれば、高校時代、青柳達と共にあるクラブを結成しており、今回集まるのはそのメンバーだといいます。
そのクラブの名は「TGクラブ」。「退学クラブ」の略です。退学志望の有志が集まって、人生について考えるようなクラブを作った、というのが夏海の解説ですが、士の感想は、
「アオいな...っていうか、イタイな...」
というものでした。これは、視聴者の感想でもあるかと。一応、真正面からTGクラブを歓迎しているわけではなく、やや斜に構えて捉えているところは好感が持てます。真正面からTGクラブに共感するようなシチュエーションを加えてしまうと、恐らく大多数の視聴者は引いてしまうのではないでしょうか?
TGクラブの思い出の写真を綴じたアルバム。夏海が大切にしまっていたものです。
士の感想はここでも、
「ガキか...」
というもの。まぁ確かにそのような感想を持っても仕方がない感じはしますね。わざと狙っている感もあります。こういう、ややシニカルな感覚はいいのですが、問題は夏海というメインキャラクターがこれに関わっているということであり、夏海の高校時代の描写は歓迎出来ても、夏海を「ガキ」にしてしまったのは少々難があると言わざるを得ません。今回の最大の問題はここにあると私は思います。このことにより、夏海の高校時代にまつわる話がやや浮ついたものになってしまい、現実感がスポイルされたことで、青柳達が「ネガライダー」に変身した際の衝撃度が薄くなってしまっています。一応、少なくとも夏海の思い出の中のTGクラブは現実ですからね。
ここで、士の撮った写真が栄次郎の手で現像されて登場。今回の士の写真は、ピントがちゃんと合っています。「ピントが合う」という現象は、「ピントが合わない=士の世界ではない」という、常に描かれてきた図式を巧く利用したシチュエーションになっており、少し後のユウスケのセリフでちゃんと言及されます。
「でも私は、いつもの士君の写真の方が好きだけどねぇ」
と栄次郎。士は、
「完璧だ!いや、究極だ!」
と露骨に喜びを露わにします。
TGクラブの会合に出かける夏海。士とユウスケも途中まで一緒に歩いていますが、さすがに士はTGクラブの会合には興味なしの様子。なお、夏海はTGクラブに物凄いお宝があるといいます。「お宝」と言えば海東。しっかり物影で反応していました。
夏海は楽しそうに会合へと出かけていきます。
士「嬉しそうだな、夏みかん」
ユウスケ「うん、あんな夏海ちゃん、初めて見たね」
このシーンの士の優しげな笑顔と言い回しが鮮烈。いつもは必要以上に夏海を目の敵(?)にしている士ですが、ここに本心が垣間見えた気がします。
ここで前述のピントの話に。ユウスケは、
「ちょっと思ったんだけどさ、この世界は、士が居るべき世界だったんじゃないか?...だから、写真もちゃんと撮れてるんじゃ...」
と鋭い考察をします。そこに突如鳴滝が出現。
「今日は、お祝いを言わせてもらうよ。おめでとう」
「どういう意味だ」
「旅を終え、君は君の世界を得た。これからの君には、幸福な人生が待っている。嬉しいよ、私も」
いつもは士に敵対し、何とかして士を抹殺あるいは制止しようとする鳴滝が、士に一切危害を加えることなく、また労いに似た言葉を投げかけるのですから、この世界に「何かがある」ことに、我々は気付かされるわけです。
あらゆる人物が「お祝い」をしてくれるということで、士は、お祝いにユウスケのおごりで飯でも、とユウスケを誘います。この士の横暴さとユウスケの立場の弱さは、これまでのエピソードよりも拍車がかかっており、ステロタイプに描く傾向のある井上さんの特徴になっているかと。
食事は豪勢なレストランで。しかも、士が1万人目の客となり、豪華なコースが完全無料に!
しかも、1万人目の客には、先代オーナーの遺言に従い、「宝影グループ」の全財産が譲渡されることになっていたらしい。
「お受けなさいますか?」
「いいだろう。だいたい分かった」
写真のピントが合い、夏海が嬉しそうにはしゃぎ、そしてこんな相続話が。こんな「福音」が次々と士に降りかかって来るという状況は、やはり「何かあるのでは」と思わせるに充分です。
一方、TGクラブの会合は始まっていました。千夏はまだ来ておらず、夏海に連絡してきた3人と夏海とで、思い出話に花を咲かせます。やがて話題は「秘密基地」に。
高校時代、この「秘密基地」で青柳によって、
「反社会的行為を共にする仲間として、何か秘密を共有する。これこそ、TGクラブに求められる心意気ってヤツだと思わないか?」
という提案がなされ、一人一品何かを取って来ることに。しかし、メンバーが持ってきたのは、庭石やティッシュなど差し障りのないものばかり。全然「反社会的」でないところが微笑ましく、TGクラブの「ガキ」っぷりを増幅しています。ただ、「このシーン要らないだろう」と思ったのは、私だけではないはず(笑)。
やがて、その「秘密基地」に田中先生が現れます。
夏海が顧問になって欲しいと頼んだらしく、夏海の妙なズレっぷりが、またもや強調されてしまいます。最初は厳しい表情を浮かべていた田中先生ですが、突如表情が変わり、
「いやいや、先生は喜んで顧問になるぞ。というよりは、君たちの仲間に入れて欲しい。最近、人生退屈でな...大いに、悩んでいたところなんだ」
とこれまたステロタイプな道化。そろそろこの辺でかなりお腹一杯な印象ですが...。
この田中先生、今回の会合にも参加します。夏海との再会を懐かしむカットはなかなか微笑ましくて良いです。
ここまで、割とユルい展開をしてきましたが、突如一変するのがこの後のシーン。坂田が手に取ったアルバムの中の一枚は、青柳と佐藤が林の中でくつろいでいる写真ですが、その写真がやがて、オーガとダークカブトに襲われる場面へと変わっていきます。
坂田の脳裏に浮かぶのは、オーガ、ダークカブト、リュウガの3人に、青柳達が殺されているというシーン。「敵ライダー」として鮮烈な存在感を見せた3者が一同に会すカットは、なかなかインパクトがあります。しかし、まだ物語に本格的なドライヴはかかってきません。
坂田は、密かに写真を握りつぶし、誰もそれには気付きません。
さて、多額の資産を譲渡された士は、豪勢な生活を送っていました。
お見合いの話を持って来られ、
「面白そうだ。この際だ、全員まとめて会ってやる」
と興味を示します。
ここでまた場面転換。
TGクラブの面々は、かつて「秘密基地」だった場所にやって来ます。「秘密基地」は長い間放ったらかしになっており、すでに崩れていました。
そして、ようやく千夏の話が登場。現在やら過去やらが錯綜している為、少々書くのに疲れてきました(笑)。
千夏は生徒会長でありながらTGクラブ入りを志望した女の子。
「何か疲れちゃったんだ、真面目に生きるの...。自分自身から、一歩踏み出したいっていうか」
夏海が、千夏の加入に真っ先に賛成します。TGクラブは、どこかに何かを埋めたらしく、千夏が合流したら掘り起こすことになっているといいます。これが、夏海の言う「お宝」なのでしょうか。
千夏役は、井端珠里さん。声優としての活躍も目立ちますが、特撮ファンとしては、「ゲキレンジャー」へのセミレギュラー出演が印象的ですね。子役時代にポケモンの歌を歌っていたり、「ケロロ軍曹」の最初の「ケロッ!とマーチ」を歌っていたりと、コアなアニメファンへの周知度も高い筈。
さて、林の中で物音がして、千夏が来たと思った夏海が近付いて行きます。夏海の姿が見えなくなると、TGクラブのメンバーは突如高速移動を始めます。ここでようやくこの世界の本質が見えてくることになり、物語にもドライヴがかかって来ます。
物音の主は、ボロボロの格好をした男女。高速移動する田中に追いかけられ、必至に逃走しています。先回りした田中は、
「こんな所にまだ人間が残っていたとはな」
と言い、オルタナティブに変身!
変身パターンはちゃんとオリジナルを踏襲していて嬉しいところ。でも、先生ならカードデッキを放り投げて変身して欲しかった(笑)。
その頃、士のお見合いが催され、3人の女性が並んでいました。どの女性がいいかを尋ねられた士は、
「女性を選ぶのは失礼というものだ。つまり、全員だ」
と答え、ユウスケがすぐさま、
「士、そんなふしだらな」
とツッコミを入れます。すると、気分を害したか、元々あまり興味がなかったのか、士は、
「なら、お前が選べ」
とユウスケに場を押しつけます。間が持たなくなったユウスケが、
「ご趣味は?」
と尋ねると、3人の女性の顔が怪物に!
お見合いを抜け出してきた士は、音也と出会います。
「どうだ?この世界の住み心地は」
「そうだな。ま、悪くない」
「いい子だ。お前は近いうちにこの世界の宝を受け継ぐことになるかも知れん」
「宝?何の事だ」
「その前に、試させてもらうぜ。お前の腕」
音也はダークキバに変身!
さらに、TGクラブの面々が現れ、佐藤がリュウガ、青柳がダークカブト、坂田がオーガに変身!
「熱烈歓迎ってとこだな」
と士。華麗に回し蹴りを繰り出しつつ、ディケイドに変身します。
音也の言う「お宝」に誘われ、海東も参戦します。
「どうやら、この世界にもお宝があるらしいね。詳しく聞かせてもらいたいな」
ディケイド、ディエンド、ダークキバ、オーガ、リュウガによる大乱戦が開始されます。絢爛豪華なアクションは、前半のフラストレーションを解消して余りあります。
まず、ディケイドは「KAMEN RIDE RYUKI」で龍騎に変身し、リュウガと対戦。
そこにダークキバも乱入し、
「鉄仮面フォームか、硬そうなのは顔だけだな」
と龍騎の胴を狙い、怯ませます。音也がすかさず、
「Exactly」
と言い、パンチの応酬に余裕で、
「まあまあだな」
と言うのがカッコいい!
ダークキバの重厚かつ美麗なカッコ良さを、改めて認識させられる瞬間でした。あらゆる「ネガライダー」の中でも、突出したカッコ良さであることに、さしたる異論はないでしょう。今回、ボス級として登場したのも納得です。音也のセリフ回しも非常にマッチしています。
なお、オリジナルでは音也がダークキバに変身する度に命を縮めるという設定でしたが、今回は完全にオミットされているものと思われます。
ディケイドは勝機を探るべく、「FINAL ATTACK RIDE」を放つも、途中で力を失ってしまいます。
そして、地面に散らばったカードが真っ黒に...。
ダークキバは、
「じゃあな、坊や」
と去ってしまいました。彼にとって、この一戦はあくまで「力試し」だったようです。
そして、千夏を探して林の中をさまよう夏海は...。
夏海が通り過ぎた場所に、もう一人の薄汚い格好をした夏海が姿を現すというところで終了。
後半の怒涛の展開は、次回を期待させるに充分でした。さて、噂の「歩く完全ライダー図鑑」は、どのような登場を果たすのか!?
コメント