正真正銘、オリジナル・電王の世界だったようです。
数ある世界の中でも、電王だけは特別扱いということだったのか、結局は「リョウタロウ」ではなく、オリジナルの良太郎(ただし、佐藤健さんではなく、溝口琢矢君)が登場し、この世界がオリジナルの電王と完全に地続きであることが示されたわけです。
イマジンの契約が一切描写されない、特異点ではない(別の世界から来た為、ある意味、特異点に成り得るが)士やユウスケ、夏海が電王に変身できるなど、オリジナルとの差異は見受けられるものの、オリジナル・電王自体が何でもありな世界へとその世界観を拡大した印象がある為、些細な差異はさほど気にならなくなってしまい、パワーで押してくる作風の魅力が、遺憾なく発揮されたエピソードに仕上がっています。
逆に、これが「ディケイド」なのかという声も、当然のように上がるものと考えられます。
確かに、この「電王編」は、「仮面ライダーディケイド」の中の一つの世界だと言えますが、それよりも、「仮面ライダー電王」の世界に、救世主のごとくディケイドが現れたと紹介したほうが、よりしっくりと来るでしょう。
この「特別扱い」は、劇場版「超・電王」とのタイアップを前提とする故、当然の措置でしょう。しかしながら、他の「世界」から浮いてしまうのも自明であり、非常に危険な賭けだったと推測出来ます。
ただ、熱烈なファンでも熱心なアンチでもない私の、独断と偏見で言わせて頂くならば、「電王」も「ディケイド」も「何でもありな世界」なのだから、互いがオリジナルのままリンクしても、別段おかしくないのではないかということです。究極的な発言をすれば、面白ければ良いとも言ってしまえるし、もっと理屈で解釈するならば、電王の世界には色々な時間軸が平然と存在するという前提があるので、元々オリジナル世界のパラレルワールドである、他の「ライダーの世界」と何ら変わる事はないのです。要するに、「電王の世界」は元々パラレルワールドが沢山存在していてもおかしくはない世界なので、たまたまオリジナルに酷似した世界に、光写真館が繋がったとしても、全く問題はないと私は考えます。
一方で、「リ・イマジネーション」という観点では、やや「ディケイド」の本線からは外れています。
何しろ、オリジナルの電王そのものの世界ですから、「リ・イマジネーション」の余地は狭いわけです。しかし、私は「FINAL FORM RIDE」がモモタロスになった時点で、ある程度の「リ・イマジネーション」が達成されたと思っています。
電王の世界には「FINAL FORM RIDE」など存在しないし、電王の手が引っ込んだり、腰から下が回転したり、頭が体内で入れ替わるなど、有り得ません。電王の世界でこの荒唐無稽な「変形」をやってしまえることが、「リ・イマジネーション」なのだと、私は考えます。クウガを完全にギャグ化してしまったのには、少々開いた口が塞がらない感じは覚えましたが...。
というわけで、やや複雑な心境も混じる電王編ですが、全編に笑いの要素が溢れており、改めて「電王」のパワーを感じさせるエピソードでした。
電王に食われまいと奮闘するディケイドも、なかなかの魅力。その魅力を伝えるのは大変な作業ですが、頑張ってみましたのでご覧ください。
最初のシーンは、勿論電王が平泳ぎポーズで落下するシーン。
このユーモラスな演出により、ディエンドの必殺技が本気でなかったことを匂わせているのは巧いところ。
「どうかな?僕のものになってくれる気になった?」
「誰がなるか!」
「分かった。今日はご機嫌が悪いようだし、一旦引き揚げよう」
「何!?」
「でも、君はもう自分の実体を無くしてるってこと、よく考えた方がいい。今の君は何者でもない」
「うるせぇぇっ!」
どうやら海東に深い考えはなく、本当に電王の「FINAL FORM RIDE」がレアモノであり、どうにかしてデンライナーに変形させたいようなのです。ヘンな話、今回の電王の世界にて海東を深い思慮の元で動かすメリットは、あまりないということです。
「くそっ!どうやったら戻るんだよ!俺は...俺はどこだぁぁっ!」
とモモタロス。散々海東に翻弄され、怒りの極致に達しています。
一方、デンライナーでは、コハナが士と夏海に電王世界のことを説明していました。
ナオミが例のキワモノコーヒーを淹れ、士がイヤ~な顔をするのが可笑しい。デンライナー内の描写は、オリジナル・電王のそれをよく継承していて、質の高いギャグを形成しています。それにしても、相変わらず皆テンションが高いですねぇ。
しかも、デンライナーは光写真館と連結してしまっているという、凄い状態に!
前回、歴史の改変による歪みに巻き込まれて、光写真館は消滅してしまいましたが、さすがは超然たる栄次郎の写真館。デンライナーの客車に移動するという荒技(?)で難を逃れていたのです。
やはりこの「何でもアリ」な感覚は、「電王」の真骨頂ですね。
コハナによると、「イマジンのボスみたいなの」、要するにアリゲーターイマジンが現れて、仲間を過去に送り込んでいるといいます。また、人の記憶を過去に繋がる道とし、イマジン達は過去へ飛ぶという説明が、オリジナル・電王に疎い者でも理解できるようコハナの口から語られます。
アリゲーターイマジンは、オリジナル・電王におけるカイのような存在ですが、アリゲーターイマジンは文字通りイマジンですから、イマジン自身の、イマジンによる叛乱ということになります。
そして、歴史の改変は、今も進行しています。
「実は、私達の仲間にも影響が出てて...」
とコハナ。これはモモタロスのことです。
「どうやら、デンライナーにも異常が起き始めているようです。世界の消滅を防ぐためにも、早くイマジン達を止めないと!」
オーナーは勿体つけて高らかに現象と対策を唱えますが、全員光写真館車両に移動して折り、オーナーの居る車両には誰も居ないというオチ付き(笑)。
コハナから、イマジンが人間に乗り移った際の「目印」が砂であることを聞いた夏海は、警官から砂が落ちる様子を思い出します。
前回、オニ一族が美術品を強奪している場面で、ちょっとだけ登場したアレです。
士は、
「俺がこの世界ですることがだいたい分かってきた。まずはそのイマジンを叩く!」
と、いつもの調子で納得しつつ行動を開始します。
モモタロスならば、イマジンを臭いで見つけられるというコハナの補足説明が加わり、ここで初めて、士と夏海の中で、例の「ユウスケに乗り移ったイマジン」と「モモタロス」が繋がることになります。我々視聴者はモモタロスであることを始めから知っていますが、劇中では、ここで初めてモモタロスという名前が登場したわけです。
更に、
「本当は、電王に変身する男の子がいるんですけど、今、別のルートで時間の歪みを調べてて...」
とコハナが付け加えるは、良太郎の存在。オリジナルのイメージは重要なので、佐藤版・良太郎の代わりに、常に溝口版・良太郎を出すわけにはいかないというのは十分理解出来ます。従って、別の場所で活躍しているという説明を為して、存在感をアピールするのは非常に妥当な措置だと言えます。このパターンは、かつての昭和仮面ライダーにてよく使われた手ですね。「本郷猛はヨーロッパのショッカーを追って...」といった、例の口上です。
ここで「良太郎」の存在がほぼはっきりしたことにより、モモタロスが自分のアイデンティティである「実体」を無くしてヤケになっている理由に説明がつきます。モモタロスは良太郎のイメージによって実体を与えられたイマジンですから、良太郎との深い絆の証であるその「姿」こそが、モモタロスの存在証明なのです。従って、オリジナルの良太郎その人の存在は、非常に重要なのです。
さて、士は、
「何たって、バカは目立つ」
といって、その言葉通りすぐにMユウスケを見つけ出します。
そのMユウスケは、電王に変身してモールイマジンを撃破し、その際に負った腕の傷を洗い流した後でした。
「そろそろ返してくんねぇかな、あいつの身体」
「まだ要るんだよ。終わったら返してやる」
「お前、ホントのバカだな」
「何だと!?」
「あんなザコ倒して、何とかなると思ってるのか」
モモタロスの「単純さ」は、士の中で「バカ」に転換されており、それが全編に亘って可笑しさを生み出しています。ただ、士の雑言の中に、少しの優しさが含まれているのは、見逃してはいけないポイントになっています。
ふと、モモタロスは「大物イマジン」の臭いを嗅ぎつけます。それは勿論、アリゲーターイマジン。
イマジンは例の警官から、自転車をこぐ子供に乗り換え、更に子供の記憶を使って「2008年12月30日」に飛んでしまいます。
士と電王は、すぐさま駆けつけたデンライナーに飛び乗ります。電王を見張っていた海東もデンライナーに乗り込み、3人は「2008年12月30日」へと移動します。
ここで、何とマシンデンバードに「二人乗り」!
こういう小ネタの見せ方が実に巧い。
一方、アリゲーターイマジンは、
「今日で完全に世界を消してやろう!」
と呟きつつ、意気揚々と建造物を破壊していきます。現在の建造物もそれに連動して消えていきます。
この時、同じ建造物の看板に季節感を持たせることで、時間の経過や往来を効果的に見せているのにも感心。オリジナル・電王におけるシャープな演出を確かに感じ取ることが出来ます。
アリゲーターイマジンと対峙するディケイド&電王ですが、アリゲーターイマジンの戦闘力は凄まじく、「KAMEN RIDE KIVA」でキバに変身するも、決定的な戦力にはなりません。
電王も大ピンチに陥ります。
「ここまでかよ...元の姿に戻れないままで...」
戦意を喪失し、実体を取り戻すことすら諦念の中に消えゆこうとするモモタロス。それを制止するのは士です。
「何してんだ!子供だって、欲しいモンの為なら、もうちょっと粘るぜ!」
「お、お前!」
「実体を取り戻したいんなら、自分でイメージしろよ!簡単な話だ!」
「そんなこと出来るわけが!」
「出来る!最初は人のイメージでも、お前の中に本当のお前が居るはずだ!」
ここで例の「決め台詞BGM」が流れ、この会話がターニングポイントとなることを如実に示すのです。
良太郎との深い絆によって自分という存在を築き上げたモモタロス。そのモモタロスが自らの姿を思い出すということは、良太郎との強固な繋がりを思い出すということでもあります。なかなか感動的な話ではないですか。
さて、ディエンドがライオトルーパーを呼び出し、アリゲーターイマジンを攻撃させることにより、戦況が混沌化し、士とモモタロスに息を付く余地が与えられます。
海東は今回、とにかく引っ掻き回すという役回りを負っているのですが、それによって状況を変化させ、話を運び易くする役割も担っています。キャラクターの利用の巧さは、小林脚本の特徴でもあります。
「電王はそろそろ僕がもらうよ。実体何か取り戻す必要はない。こいつは僕のお宝に変わる」
と海東。モモタロスにとって、この時点で「実体」が何よりも重要なのは、何度も指摘したとおりですが、海東との価値観の相違を、ちゃんと今回も盛り込んでいるあたりは良い配慮だと思います。
「てめぇ!」
とキレるモモタロスに、更に海東は、
「もうわがままはやめるんだ。ただのイマジンから、最高のお宝に変わるなんて、素晴らしいじゃないか」
と畳み掛けます。
「ただのイマジン?」
「そう。実体がなければ存在しているかさえ怪しい。ただのイマジンだ」
「この野郎!」
海東の言うことも実はもっともで、イマジンは人のイメージによって実体化するまで、揺らぎの中に存在していると言っても良い印象です。モモタロスが非常にうろたえていたのも、それが何となく分かっていたからです。
しかし、士は、
「海東、こいつはただのイマジンじゃない。こいつは...」
と反論。しかも、
「こいつは、バカだ」
と、わざわざオチを付ける徹底振り。当然モモタロスは、
「何だとこの野郎!」
と怒ります。しかし、
「けど案外優しい一面もある。とり憑いたヤツの身体に、気を遣うぐらいにはな」
と続ける士。そう、モモタロスは憑依していて傷ついたユウスケの腕を洗い流したのでした。あのシーンがこんなところで活かされるとは。有機的な場面の絡み具合も秀逸ですね。
「実体なんかなくても、こいつはちゃんと存在している。何しろ、俺が知ってるんだからな。モモタロス」
その瞬間、士の持つカードのパワーが復活。「FINAL FORM RIDE」のデンライナーがモモタロスに変わります。
そして、
「モモタロス、ちょっとくすぐったいぞ」
ユウスケが電王の中から跳ね飛ばされ、電王はモモタロスに「変形」!
何ともエキセントリックな「FINAL FORM RIDE」。この「FINAL FORM RIDE」はトイでも展開されていますが、この電王はオチ扱いではないかと思われる程、特殊で異様です。何しろ、ディケイドの武器になるのではなく、モモタロスというキャラクターになってしまうのですから。
実体を取り戻したモモタロスは、
「俺、参上!」
の口上も雄々しい、超巨大モモタロスに!
...と見せかけて等身大...(笑)。ややあざとい感もありますが、ギャグの間の取り方の巧さには、ホントに感心します。
「おい、どうやら取り戻したらしいな」
「ああ。ちょっとは恩に着るってとこか。お前、名前は」
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えなくていい」
「ヘッ。なら訊かねえよ」
「覚えなくていい」などというパターン破りがこれまた笑えます。しかも今回は、敵に対する常套句ではなく、味方に対するセリフにアレンジされています。いつもは「覚えとけ」と言いつつ、すぐに倒してしまって意味を為さなくなるのを考えると、二重の可笑しさがありますね。
「いいかワニ野郎。俺は最初から最後までクライマックスなんだ。途中で泣き事は聞かねぇぜ!」
アリゲーターイマジンに突進するモモタロス。
そして、目が覚めたユウスケはクウガに変身!
キバ編以来、久々のクウガ登場です。
士の、
「行くぞ」
という呼びかけに、
「ああ。状況はだいたい分かった!」
と士の真似をして答えるユウスケ。殆ど掛け合い漫才のノリです。テンポは非常に優秀。
そして。
マイティキック誤爆...。
士「バカ!こいつは敵じゃない」
ユウスケ「え?ウソぉ」
モモチロス「何やってんだよこの野郎...俺は主役だぞ!」
アリゲーターイマジン「貴っ様ら...ふざけるなぁ!」
緊張感を醸し出していたアリゲーターイマジンの威容を、完全に打ち砕く空気に、圧倒されまくりなのでした。
士は、クウガを「FINAL FORM RIDE」させ、クウガゴウラムに。
更に、「FINAL ATTACK RIDE」でクウガゴウラムと「デンガッシャー ソードモード」を接続。
ユウスケ、尻に鋭い痛みを感じる(笑)!
そして、そのまま「俺の必殺技」!
哀れなり、クウガゴウラム。散々振り回されて、打撃武器に使われてしまいました...。
このクウガの扱い、当初私は何となく座りの悪い感覚を覚えましたが、これは五代雄介でなく小野寺ユウスケであるからこそ可能な、ユウスケならではの魅力だと考えて見直してみると、これはこれでアリだと思えるようになりました。振り返れば、これまでもユウスケはややギャグ寄りに描写されており、士のパートナーとして、そのようなキャラクターに仕上げられるのは当然と言えば当然なのです。
とりあえず、ここに来て肯定派にかなり傾いたことは、事実として報告しておきます。
デンライナーに戻ってきたモモタロスは、熱烈歓迎を受けます。
この賑やかさも「電王」ならではですね。
士は、その様子を見て微笑み、シャッターを切ります。
時間の歪みが戻ったと喜ぶ夏海でしたが、栄次郎は、
「いや、そうでないかも知れませんよ」
と言います。
その栄次郎の言葉通り、デンライナーに、
良太郎と、
幸太郎が戻って来て、
時間の歪みの原因が分かったと報告します。しかも、まだ街ではオニの一族がウロウロしているらしい。
ちなみに、この良太郎はオリジナル・電王における良太郎本人であり、時間の歪みの影響で子供の姿になっているという設定。幸太郎は良太郎の孫です。劇場版をご覧ください(笑)。
異変はなおも続いており、モモタロス達も消えてしまいました。
「どうやら、時間の歪みの本当の原因は別にあるようですねぇ。また、旅に出なければいけませんねぇ。時間の旅に...」
とオーナーの言葉で締めれば、本当に「仮面ライダー電王」になってしまいますが、とりあえずこの後に光写真館のシーンが用意されています。
士自身の言葉により、その続きは電王の世界の物語であると明言されます。しかし...。
なお、士の写真は、デンライナーの面々のスナップに、オーナーが写りまくっているという、ある意味恐ろしいものでした(笑)。
「何ですか?これ...」
「実体があるとかないとか関係ないんだ。存在することには。全く、お前はイメージ貧困だな」
「意味が分かりません」
オーナーの正体不明振りが爆発していますね。イメージが貧困であろうと豊潤であろうと、正体不明なのには変わりありません。
「そろそろ私達も、次の世界に行く時かな」
という栄次郎の宣言により、いつものバックスクリーン下ろしに。
次はカブトの世界です。
この絵は、天道総司が「天の道を往き、総てを司る男」と初めて宣言するシーンをイメージしているようです。
普通の「ディケイド」ならば、ここで終わるのですが、劇場版「超・電王」へのリンクとして、ジークを登場させます。
「降臨!ここがどこか、分からぬままに...」
...とまぁ、おおはしゃぎのまま、今回は終了。
「気になる続きは劇場版を見てね」というCMまで入る徹底振りには苦笑しましたが、「ディケイド」本編との劇場版のバランスをとりつつ、双方をまとめ上げた手腕には感服します。
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