オリジナル・電王のメインライターである、小林靖子さんの手による「電王編」。小林さんは現在「シンケンジャー」も手掛けられていますから、今週は(来週も)1時間ぶっ通しで小林靖子タイムだったわけです。
オリジナルの脚本家が、どのように「リ・イマジネーション」による再構築を行ってくれるのか、その興味は尽きませんでしたが、いざ本編が始まってみると...。
こっ、これは~!
「ディケイド」における「電王の世界」じゃなくて、オリジナル・電王の世界にディケイドが迷い込んだ世界では!?
ビックリです。絶句しました。
良太郎のパラレルキャラクターである「リョウタロウ」なんてのも一切出てこないし、電王に変身(?)するのは、オリジナルキャストのモモタロス達だし。
劇場版「超・電王&ディケイド」とのリンケージも前提にあるものと思われますが、平成ライダーシリーズ中、最も特殊で娯楽色の強い「電王」だけに、もうオリジナルのまま通してしまえといった雰囲気で作られたような感じです。
なので、他の世界に比べて、オリジナルが前提となっている部分がかなり多いのも特徴です。
ただ、オリジナルと完全に同一なのかどうかは、ややボカされている感じも。
例えば、「特異点」。オリジナル・電王では、この特異点である人間(野上良太郎)しか電王に変身できない設定。しかし、士も夏海もユウスケも変身してしまいます。しかしながら、オリジナルでも例外が散見されましたから、このあたりは実は曖昧でいいのかも知れません。
また、デネブといった他の主要キャラも出ません(少なくとも今回は)。
困ったことに、オリジナルとは違う世界だと証明する事項が殆どなく、オリジナルと同一だと推測できる要素の方がはるかに多い。というわけで、私としても「多分オリジナルの世界」といった曖昧な立場のまま、見ていくことにします。
まぁ、脚本に小林さんを起用したという事実こそが、オリジナルの電王と同一の世界だと主張しているような気もしますが...。
実は、私自身が同時期に放映されていた「ゲキレンジャー」のサイトをやっていた関係もあって、「電王」に関してはかなり疎かになっており、最近のシリーズであるにも関わらず、今一つ記憶が薄いことを白状しておかなければなりません。一応基本的なことは押さえているつもりなんですけどね。
そんな私でも、全編笑いっぱなしの快作!
タイムパラドックス周辺の「訳の分からなさ」加減もオリジナル通りだとすれば、後編ではオリジナル通り全てが氷解していくでしょう。というわけで、とにかく「訳の分からなさ」も含めて笑い飛ばすが吉!「ディケイド」で「電王復活祭」をやってしまったという感覚で見れば、これほど楽しいエピソードもないでしょう。
勿論、電王ファンでも、良太郎が出ないことを除けば充分楽しめることと思います。
今回は、あまりにもフォトジェニックなシーンが多すぎた為、キャプの枚数もいつもの1.5倍ほどに。
そんな電王編の見所を、特に夏海を中心に(笑)お送りいたします。
なお、キャプが多いのと、本編があまりに謎めいているので、今回は解説らしい解説が出来ていません。その辺り、ご了承のほど。
まずはいつものように光写真館から。
今回はまず看板だけを映し、後から全景を映すことでちょっとした驚きを与えています。
光写真館から出てきた士は、「分かり難い」と夏海達に形容される「時の旅人」に。ある程度物語が進むと、この格好はやめてしまいますが、まぁ仕方ないですよね(笑)。
なお、この服装はオリジナル・電王に登場する「桜井」(19歳の「侑斗」ではない)とほぼ同じ格好になっています。
そして、士の手には「時を超える列車」デンライナーのチケットが。このチケットとライダーパス、この時点で士が持っていますが、後で夏海やユウスケがイマジンに憑依された際、電王への変身時に使用されています。恐らく、オリジナルとは若干異なり(リュウタロスは自分のチケットを持ってましたが)イマジン達も個別で所有していたものと思われます。
電車と言えば駅だという単純明快な説を述べる士。その言葉と共に光写真館の全景が映し出されます。今回の光写真館は、レトロな駅のような外観でした。
私はロケーションに詳しくありませんが、恐らくご存知の方が見れば、すぐにどこかが分かると思われる、特徴的な建造物ですね。
この遠景時に、黄金に光る物体(夏海は「人魂」と形容)が士の方へ向かっていく様が描かれ、シーンの連続性が心地良いものとなっています。
この「人魂」はモモタロスです。今回、劇中では「イマジン」としか呼ばれず、固有名詞は出てきません。が、誰が見てもモモタロス(というより、誰が聞いても関さんの声はモモタロス・笑)。
そのモモタロス、何と士に憑依します。足元に砂が落ちる演出が嬉しいですね。「ディケイド」全般に見られる、オリジナルの特徴的な演出を拾うという主義はここでも健在です。
M士(モモタロスの憑依した士のこと。以下、夏海やユウスケに関しても同様の表記とします)、傍を歩いていた警官に因縁をつけ始めます。警官にはモールイマジンが憑依していて、その実体を現します。
オリジナルにあった、契約とか時間の概念といったものは、基本的に解体されたか、あるいはあまり詳しくは描かないことになっているようで、このモールイマジンはあちこちに無差別的に現れ、モモタロスはそれらを見つけ出しては腹いせ的に叩いているようです。いわば、モグラ叩き(笑)。
M士は電王に変身!
「俺、参上!」
何と、この電王の世界では、オリジナルキャスト(声)が仮面ライダーを演じるということになります。肉体は士ですけど。オリジナル・電王で各フォームの声をイマジン役が務めるという手法、それがここで再び生かされることになりました。
しかも、士はディケイドでありながら「KAMEN RIDE」ではない電王そのものに変身してしまったわけで、何とも錯綜しつつ可笑しいシチュエーションになっています。もうこの時点で「クライマックス」。全編こんな感じで突っ走っていきます。
「必殺・俺の必殺技!」
の決め台詞も登場し、オリジナル・電王そのままの電王に。やはりこれまでの各ライダーの世界とはかなり趣が異なります。
さて、M士の言動にウンザリした夏海は、「笑いのツボ」でモモタロスを士から追い出します。
久々の「笑いのツボ」が士にとって実益となった初のケース。今回は士もユウスケも夏海も、偏ることなく魅力を発揮しており、その充実度は凄いことになっています。
人に乗り移らないと実体を保てないというモモタロスは、再び士に憑依すべく空間を平泳ぎ(この平泳ぎ描写は後のシーンでも印象的に使われています)してくるのですが、士の策略により、今度はユウスケに憑依。
このヘアスタイルと表情があまりにも秀逸。憑依によってキャラが変わるという特質をコミカルに描く手法は、オリジナルを更に悪ノリ的に踏襲しており、爆笑度が高いものになっています。
夏海は、変わってしまったユウスケにショックを受けます。
この泣き顔を初めとし、今回の夏海はヘン顔も含めて多彩な表情を見せます。夏海ファンにはたまらない一編になったのではないでしょうか。
士は、Mユウスケに「お茶でもしないか」と言い出します。勿論、その場所は「光写真館」。「ケーキ」という言葉に表情を変えたモモタロスは、
「プリンだ!」
と具体的な菓子を所望。やっぱりオリジナルのモモタロスと同一人物としか思えません。
というわけで、光写真館でプリンを食べるMユウスケ。その量も凄いことになっています。憑依している間、消化器官はモモタロスのものになるのでしょうか?
イマジンは、オリジナル通り、人のイメージを元に実体化することになっています。ところが、数日前の異変により、モモタロスは実体化できなくなってしまったようなのです。
それで、人から人に乗り移って行動していたのです。
「俺は俺を無くしちまった」
とモモタロス。このあたりはよく分からないところなのですが、ウラタロスやキンタロス、リュウタロスといった面々は後にデンライナー内で「いつもの姿」になっていましたから、この現象の影響を受けているのは、実はモモタロスだけなのかも知れません。
非常にイライラしているモモタロスは、「モグラ野郎」つまりモールイマジンをぶっ潰すと宣言します。モモタロスはモールイマジンが「異変の原因」だと思っているようですが、モールイマジンが大量に出てくるのは「異変の結果」だと思われます。
「ヒトダマの話じゃ、数日前に何かがあった。俺がこの世界でするべきことは、過去へ行くことかも知れない」
と士。ユウスケを心配する夏海をよそに、士はデンライナーのみを追っています。
士と夏海が歩いていると、夏海をスカウトしようとする男が接近。「モデルやってるの?」とか「事務所入ってないの?」とか、いかにもな感じですが、夏海役の森さんのことを考えると、何とも可笑しいですね。
夏海がスカウトの男にイライラしていると、何と士にウラタロスが憑依。U士はスカウトの男をはね退け、夏海をナンパします。
おお、やっぱりオリジナルのウラタロスそのまんまですね。遊佐さんのノリもそのままです。
そして、今度はキンタロスが憑依。
この後は、次々と入れ替わってイマジン同士が会話するという事態に。このカット割が巧く、オリジナル・電王でのノウハウが完璧に継承されています。
「目的が変わっとるやないか。アホ!」
「ふ~ん?」
「俺らが用あるのは、ディケイドや。この男やろが。何でお前はすぐ色気出すんや」
「だけどこの彼女、ディケイドと関係あるみたいだし。何で異変が起きたのか、話を聞いてみない?」
すると、今度はリュウタロスが憑依。
「ディケイドやっつけようよ。僕がやるけどいいよね。答えは訊いてない!」
てらそまさんも鈴村さんも、そのまんま。
「電王」は人気コンテンツになった為、テレビシリーズが終了してもコンスタントに新作が作られ続けているので、声優陣のテンション(というか演技プラン)が持続しているということもあるでしょう。ホント、オリジナルそのまんまです。
リュウタロスが言うには、イマジンの間で「ディケイドの所為でおかしなことが起こっている」ということになっており、その異変は、ビルが次々と消えていくなど、目に見える状態で発生しています。
夏海はとりあえずR士に笑いのツボを炸裂させ、逃亡しますが...。
ここで場面転換。Mユウスケの方に移ります。
Mユウスケの前に、海東が現れます。
「電王に興味があってね。きっと、デンライナーにファイナルフォームライドしてくれると思うんだ」
という海東。海東の持つカードには、電王とデンライナーが描かれており、今回海東が狙う「お宝」は、「FINAL FORM RIDE」の結果としてのデンライナーになるものと思われます。
それまでディエンドはキバやブレイドの「FINAL FORM RIDE」を駆使して戦っていますが、どうやらそれらは海東自身がその様子を目撃する等といった「きっかけ」が必要なのかも知れません。「FINAL FORM RIDE」のデンライナーが何故「お宝」なのかは、今一つ判然としませんが...。
「デンライナーをくれ」
とおどける海東。このセリフは先週の予告の時も印象的に使われていました。
「ふざけんな!誰がやるか!」
と手をはねのけるMユウスケ。
海東はディエンドに変身し、力ずくで奪おうとします。対するMユウスケも電王に変身!
冒頭に書いたように、電王に変身出来るのは、オリジナルでは「特異点」と呼ばれる時流の影響を受けない特殊な者(つまりは良太郎)でしたが、この世界ではモモタロスさえ憑依していれば変身出来るようです。
ただ、士や夏海、ユウスケは別の世界から来た人間なので、ある意味「特異点」的な資質を持った者だとも考えられます。
一方、R士は華麗なステップを踏みながら夏海を追いかけていました。逃げて逃げて、やっと一息ついた夏海でしたが、すぐ背後にはU士が。
U士は、ディケイドと関係ある夏海に色々と質問を浴びせるのですが、怒った夏海はU士の襟を掴んで士に呼びかけます。ウラタロス達は完全に士の意識を支配していたつもりでしたが、士は遂に頭にきてイマジン達を追い出します。これも「特異点」のみが為せるワザです。
R「あ~あ、ほら早くやらないから」
K「俺らを追い出すとは、なかなかやな」
U「さすがはディケイドってとこ?」
このほのぼのとした雰囲気は「電王」ならではのものでしょう。他の平成ライダーシリーズにはない、「電王」独特の魅力です。
「話し合いは後だ。まずはお前ら、殴らせろ!」
と士。イマジン達も「元々ディケイドと戦うつもり」であり、士の売ったケンカを買うのですが、実体がないイマジン達は、実体を手に入れるべく一計を案じます。
そこでイマジン達が出した結論は、何と夏海に乗り移ること!
U夏海!
K夏海!
R夏海!
やり過ぎです(笑)。嬉しいです(笑)。
そして、今回最大のサプライズ・イベントは、夏海の変身!
電王プラットフォームが何となく女性体型だったような。
「お前、倒すけどいいよね。答えは訊いてない」
何と夏海は仮面ライダー電王・ガンフォームに変身してしまいました。
しかも、「答えは訊いてない」ポーズをとっている時に、夏海が無理矢理その身体を操られているというイメージ映像を入れるという徹底振り。
この「シンクロ空間」の演出により、夏海が無理矢理アクションさせられ、挙句はキンタロスに同調して四股を踏むという羞恥プレイが...(笑)。
もう最高です(何が)。許してください。
士もディケイドに変身。
「ナツミカンは返品してもらう」
と気の利いたセリフで牽制します。が、残念ながら、今回のディケイドは電王に喰われちゃってます。
一方、ディエンドは「KAMEN RIDE SASWORD」でサソードを呼び出し、電王と戦わせます。
何でサソードなのかピンと来ませんでしたが、一応、ソードフォームとサソードということで、剣繋がり。
また一方では、ディケイドがアギトに「KAMEN RIDE」。リュウタロスがフォームチェンジに「ズルい」という感想を抱いた為(!)、キンタロスが交代してアックスフォームに。
「俺の強さにお前が泣いた!俺の強さは泣けるでぇ!」
と、お決まりのセリフがまたまた登場。もう詰め込みまくりですね。許してください(笑)。
アギトのパンチはアックスフォームの頑丈さに阻まれます。そこで士は、アギト・フレイムフォームで対抗。確かにフレイムはパワータイプですから、この対抗手段は的を射ています。
さて、この辺りから急激に物語が錯綜していき、正に何がなんだかわからない状態になっていきます。
しかしながら、そのあまりの急展開に呆然とすることが、今回視聴する上での我々の役目。次回でしっかり憑き物を落としてくれることでしょう。
まず、突如現るは、美術品を強盗する一団。劇場版「超・電王&ディケイド」に登場するシルバラに率いられ、ゲルニュート(鬼一族)達が美術品強奪を働きます。ゲルニュートがミラーモンスターであることは、とりあえず無視しておいて良いです。龍騎のアメリカ展開等の絡みで諸事情あるらしい。要するに劇中での意味はありません。
このシルバラ、柳沢慎吾さんなのですが、残念ながら今回セリフはありません。パトランプと警察無線も勿論ありません(笑)。
さらに、そこへアリゲーターイマジンも現れて警官に憑依。
シルバラは劇場版へのリンク要素の一つ、アリゲーターイマジンは「ディケイド」オリジナルのイマジンです。今回は完全に顔見世程度。
一方、その喧騒の中でも士と夏海の戦い(!)は継続中。士はフレイムフォームでもやや苦戦気味。
今度はストームフォームへとチェンジし、同時にウラタロスに交代してロッドフォームにチェンジした電王と対決。
「僕に釣られてみる?」
と、これまた決め台詞をバッチリ披露してくれます。
ここまで、各方面の場面を入れ替わり立ち代わりで描写してきましたが、その間、ずっと秒針の音が響いています。また、各シーンには必ず時計が映り込むという仕掛もありました。
最初は、単なる雰囲気作りだったのかなぁと思っていましたが、突如街中の時計が高速で回り出し、異変が加速。全ては、ここに至るべく、象徴的に織り込まれたものでした。
大異変により、例のオーロラに街が包まれ、光写真館が消失します。光写真館に戻れなくなるということは、別の世界への移動手段がなくなるということを意味します。
その頃、ディエンドは更に「KAMEN RIDE SAGA」でサガを呼び出し、電王を襲わせていました。
「崩壊する...電王の世界が。ディケイド。やはりお前は破滅を呼ぶ!」
と鳴滝。鳴滝の言いたいことは何となく理解出来ますが、異変の正体が何なのかはさっぱり分からないようになっています。
オーロラの中で、夏海は例のライダー大戦の時の姿になり、夏海の脳裏にライダー大戦の様子がフラッシュバックします。
「あの時と同じ...」
アギトと電王ロッドフォームの必殺キックが激突!この様子をライダー大戦に重ねたのか。
「間に合いませんでした」
と脱力する夏海。
何が「間に合わなかった」のか。各々の世界の崩壊を止めることが、ライダー大戦の防止に結びつくという意味なのか。
しかも、電王世界が崩壊したように見えつつも、ディエンドとモモタロスの戦いは普通に街のどこかで続いているわけで、まだ崩壊の一端は見えてきません。
これが何を意味するのか。
あまりに本編の仕掛けが多すぎる為、何を推測しても空振りになりそうですが、恐らく、士と夏海の「場」と海東とユウスケの「場」では時間が異なっているのではないでしょうか。
さて、この土壇場に、満を持して登場するは、「電王」を象徴するデンライナーです。
何と、世界を崩壊させて荒野にしてしまった為、デンライナーはバンクシーン(ですよね)を使って、そこへそのまま到着出来たのです。巧いっ!
早速デンライナーに乗車する士と夏海。デンライナーの中は、オリジナル・キャスト花盛り!
お出迎えは、勿論ナオミ。
コハナも。
そして、
「そう、デンライナー。時を走る列車です」
とオーナーも!
「どうやら大変なことが起きているようです。ディケイドの世界にも、我々電王の世界にも。早く、何とかしなくては」
さすがは時間を超越した存在であるオーナー。電王世界のことはおろか、ディケイド世界の異変すらキャッチしている様子。
こうもデンライナーがオリジナルに忠実だと、完全に士達が「ゲスト」になってしまい、タイトルが「仮面ライダー電王」かと錯覚してしまいます。さすが、サブタイトルが「超・電王ビギニング」だけのことはあります。
そう、この時点での士と夏海は、デンライナーの長い旅に居合わせた乗客に過ぎません。わざとそうしているように見えます。
一方、ディエンドの「FINAL ATTACK RIDE」が電王に炸裂する!
というところで幕。
ヘンなポーズ(これも平泳ぎ)で落ちて行く電王がラストカットですが、本当に電王が特殊なライダーだと思い知らされるカットです。
さて、ガンガン飛ばしてきた前編ですが、果たして後編で収拾は付くのか...?
非常に楽しみです。
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