ファイズの世界・後編です。
ラッキークローバーとタクミの対決構造はそのまま前回と変わらず。ただし、そこに海東の思惑や鳴滝が絡んできて、結構複雑に場面転換が行われます。
しかしながら、プロットはごくシンプルである為、難解という印象は皆無。シンプルでありながらも、純粋にタクミと由里の関係を見つめるもよし、士と海東の微妙な対立関係を見るもよしの、色々な角度で見られる多面性を有していて、楽しめます。
基本的な物語の構造を整理してみると、まず、タクミと由里はこんな感じ。
- タクミはファイズであり、ウルフオルフェノク
- ウルフオルフェノクであることが露呈したことで、由里が嫌悪
- タクミは意気消沈し、ファイズギアを捨てる
- ラッキークローバーは、事実上ファイズが居なくなったことにより、自分達を排斥してきた人間達への復讐に動き出す
- 由里の危機に、タクミがウルフオルフェノクとして駆けつける
- 海東からファイズギアを受け取り、ファイズとなってディケイドと共にラッキークローバー撃破
- タクミが守ろうとした自分の夢を理解し、由里は再びタクミと手を取り合う
続いて、士と海東はこんな感じ。
- 士はタクミに興味を持って陰から見守る
- 海東はファイズギアを狙う
- タクミが捨てたファイズギアを拾った士は、海東にライドブッカーを奪われる
- 変身不能になった士は、鳴滝に差し向けられた仮面ライダーリュウガに襲われる
- ファイズギアを持つ士を追ってきた海東が、リュウガを撃破
- 海東によってライドブッカーとファイズギア交換
- 由里を守ろうとするタクミの危機に、士が駆けつける
- 「ファイズギア以上のお宝」に興味を持った海東が、ファイズギアをタクミに返却
- 士はファイズと共にラッキークローバー撃破
どうでしょう。ダブルプロットと言っても差し支えない程、別個の物語がはっきり出ています。
この2つの物語が、ところどころ接点を持って動いていくところが秀逸なんですよね。ファイズギア、そして写真という要素が、その接点になっています。
では、今回の見所を抽出してみましたので、続きをどうぞ。
前回の、ディケイド VS ディエンド戦、そして、ウルフオルフェノク VS タイガーオルフェノク戦の続きから開始。
由里は、オルフェノクだったタクミの姿に恐れ(嫌悪感)を感じます。
「嘘...タクミがオルフェノク...」
という由里の言葉に、タクミは表情を曇らせます。
この、「表情を曇らせる」という演技が出来るということが、オルフェノクの最重要要素。オリジナル・ファイズでは、地面に人間態の像が浮かぶという演出により、オルフェノクが人間由来であることを示し、よりドラマを深いものにしていました。勿論、このディケイド・ファイズ編でも同様です。
一方、ディケイドとディエンドの撃ち合いは、ディケイドがやや不利。
そこにロブスターオルフェノクが乱入します。今回、朱川が結構な頻度でフィーチュアされています。
「ラッキークローバーに入りたいと言っておいて!」
「そんなこと言ったかなぁ。僕が欲しかったのは、最初からアレだけさ!」
と、ディケイドの持つファイズドライバーを指し示すディエンド。
すかさず士は、
「ファイズのベルトをどうするつもりだ」
と問います。
「ファイズギア...かつてある企業によって開発された、貴重なお宝だよ」
と海東。
この世界の「SMART BRAIN」は、「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」なのですが、この学園の実質経営は「SMART BRAIN」社によるものなのかも。海東が「ある企業」というボカし方をしているのは、説明を省略する為だと思われます。
もっとも、今回のラストでの海東のセリフも含めて、「かつて」という言葉を繰り返しているので、「SMART BRAIN」社自体の実態は既にないのかも知れませんが。
もうちょっと推論してみると、「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」はオルフェノクを排除する人員を育成する為の学園であり、タクミは偶然にも(あるいは適正を密かに認められて)ファイズギアを手に入れたのではないでしょうか。オルフェノクが入学できないという設定からして、有り得そうな感じがします。
ならば、何故ラッキークローバーは入学出来たのか。恐らく、彼等は入学後に、一度何らかの不幸な事故等に見舞われ、オルフェノクに覚醒したのではないでしょうか。この入学後覚醒説、実はタクミにも当てはまるのではないかという気がしています。その辺はまた後ほど。
「お宝?」
「世界には、僕達の想像も超える素晴らしいお宝が眠っている。僕は、その全てをこの手に入れたいんだ」
「泥棒か」
士と海東の価値観の間には、大きな溝があります。海東はフィジカルな価値観、士はメンタルな価値観。フィジカルな価値観は、時に人間を無視して進行していく。士にはそれが理解出来ません。士も元々はそれほどメンタルな価値観を重視していなかったように見えますが、ユウスケ達と旅をし、各々の世界の仮面ライダー達に会って、その価値観を確立してきたのでしょう。
...いや、元々士はメンタルな価値観しか持っていないのかも。
ディエンドの攻撃によって変身を解除された士が見たのは、ファイズギアを手に取ろうとする、ウルフオルフェノク=タクミ。
士はタクミがオルフェノクだったことに、少しばかり驚きます。ただ、これまで描かれたように、士は個々の世界を超越した存在なので、ファイズの世界の人間ほど驚くことはありません。
タクミは、手に取ったファイズギアを操作し、オートバジンでタイガーオルフェノクをひるませます。
オートバジンの出番はないものと思ってましたから、意外でした。それにしても、当時と比べてCGのオートバジンの違和感は随分軽減されましたね。CGに見慣れてきたということもありますが、単純に映像技術の進歩でもあります。
タクミはためらう由里を連れて、オートバジンで逃走します。タクミとウルフオルフェノクの間で揺れる由里の心情描写が巧いですね。
ディエンドは、
「僕の邪魔をするな!」
と、ラッキークローバーに銃撃を加えて「ATTACK RIDE INVISIBLE」で退却。
ファイズギアをタクミに持ち去られた上、ラッキークローバーがワラワラと襲ってくるので、遂にキレたといったところ。一人称が「僕」であるところや、うまくいかない場合に機嫌を損ねる様子を見ると、海東はなかなか可愛らしいキャラクターであることが分かります。
士は、
「オルフェノクがファイズをやっていた...か」
と呟き、喧騒を後にします。
やっぱり、士にとってタクミがオルフェノクであることは、大したことではないようです。士はその世界の仮面ライダーである人物の、いい表情を追いかけたい。ただそれだけであり、その対象が人間だろうが人間でなかろうが、実は気にしていないと言っていいでしょう。このことは、クライマックスにはっきりと現出します。
場面は変わって、オートバジン上のタクミと由里。
タクミがウルフオルフェノクだったことに深いショックを受けている由里は、タクミにオートバジンを止めるように言います。
由里は、タクミが触るのも嫌がってしまうのでした。
「ずっと...オルフェノクだったの?どうして...隠してたの?」
「学園に居たかった...どうしても。ごめん」
この「学園に居たかった」の意味は後から判明します。
ここで、「学園に居たかった」を「オルフェノクになったことがバレたら、学園に居れなくなる」と読み替えることが出来そうです。やはり私は、入学後にオルフェノクになったのではないかと考えます。
オリジナル・ファイズの巧は、幼少の頃にオルフェノクに覚醒していましたから、こちらのタクミも同様だと考えることは出来ますが、「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」入学への必須条件は、オルフェノクでないことだと示されているので、入学時は普通の人間だっと考えるのが自然ではないでしょうか。
長編ならば、オルフェノクをわざと入学させたとか、そういった陰謀論で話を組み立てていくことは出来ますが(オリジナルの流星塾みたいにドロドロした・笑)、シンプルに徹するならば、近道で解釈できる説を採る方がいいと思うのです。
さて、タクミは一旦素直に由里の元から離れ、陰から様子を見ていた士は、タクミを追いかけてマシンディケイダーを飛ばします。
タクミは、とある橋の上に居ました。
「僕は、オルフェノクだ...こんなもの、もう、意味はない」
タクミは、ファイズギアを川に投げ捨ててしまいます。ファイズギアのケースはここで初めて登場。オリジナルのものと同一に見えます。こういった高級感のあるケースの登場等、いかにも「企業が開発した」雰囲気が、オリジナル・ファイズの魅力の一つでした。
なお、士はタクミがファイズギアを捨てる様子を見ており、それを拾って持ち帰っています。
川にわざわざ入って拾ったのか、それとも河岸に流れ着くのを待って拾ったのか。想像すると、何とも士らしくなくて可笑しいですね。
光写真館に、士のカメラを持って由里がやって来ます。
夏海は、由里の撮ったタクミの写真を見て、
「いい顔で笑ってます」
と言うのですが...。
由里「でも、これも嘘だった...私知らなかった。彼がファイズだってことも、オルフェノクだってことも。私の知ってるタクミの顔は、本当の顔じゃなかった」
士「本当の顔なんて、誰にも写せない」
由里「え?」
士「何百枚撮ったって、別の顔が写る。同じ顔なんて二度と撮れない。だから、俺達は写真を撮るんじゃないのか?」
由里「タクミの、顔...」
士「面白いじゃないか。撮ってみたくなったぜ。あいつの顔」
いきなり達観した発言の士。
ブレイドの世界では至極適当な人として振舞っていましたが、今回はタクミと由里のお兄さん的な態度になっています。自分を由里と同じレベルの写真家だと見做しての発言は、はっきり言っておこがましいのですが、写真というキーワードによって、士が由里にシンパシィを抱いたのは間違いないようです。
やはり、由里を写真部に所属させ、しかも珍しいインスタントカメラを構えさせたのは正解ですね。
一方、海東はタクミにファイズのベルトをよこせと迫ります。ウルフオルフェノクになって反撃するタクミ。海東の発言の「たかがオルフェノク」というニュアンスは、さり気ないですが、海東の価値判断基準をよく現していると思います。
そこにファイズギアを持った士が現れ、
「こいつにはこんな物よりも、もっと大切な物がある。ファイズギアより、ずっと大切な物が。それだけは捨てられない筈だ」
「ファイズギアよりも価値があるもの?そんな物ない」
海東はライドブッカーを士から奪ってしまいます。すると、鳴滝が現れ、士を別の世界へ。
鳴滝は、士を始末するチャンスを与えてくれたとして、海東に謝辞を述べるのですが、海東はファイズのベルトを持ったまま士が消えてしまったことで、焦りを感じています。
いつも冷静でニヤニヤしているように見えて、実は感情豊かな感じが、海東の魅力ではないでしょうか。
そこに夏海が現れ、由里が居なくなったと告げると、それを聞いたタクミは、すぐに由里を探しに行きます。
由里が居なくなったというのは、劇中の流れから行くとちょっと大袈裟で、由里はただインスタントカメラを探していただけでした。普通に学園の生徒達も周囲に沢山歩いてるし。
多分、由里がいきなり思い出して探しに出掛けたので、夏海とユウスケが過剰に心配したというところでしょう。
ただ、タクミがそれを緊急事態と解釈するのは有効な運びになっていて、そうでなければ次のシーンに繋がりません。
由里がカメラを見つけた刹那、朱川が「いい度胸ね」と現れます。
ちょっと表情が気に入ったので思わずキャプ(笑)。この眼光鋭い感じが個人的にツボでした。制作陣に気に入られたのか、朱川の出番、多いです。
実は、ファイズが居なくなったことで、ラッキークローバーは堂々と正体を現し、学園中の人間をことごとく手にかけていたのでした。
「もうファイズは居ない。今まで僕達を排除し、追放してきた人間達に、オルフェノクの力を思い知らせる」
と百瀬。あ、ラッキークローバーって「白(城金)」「赤(朱川)」「黒(玄田)」「桃(百瀬)」だったのか。今気付いた。
ところで、この百瀬のセリフでラッキークローバー入学後覚醒説がちょっと揺らぎます。
「今まで僕たちを排除し」と言っていることで、かなり前から排斥されてきたような印象を与えるからです。しかし考えてみると、「かつて」「伝説」というキーワードが示すように、オルフェノクは充分昔から存在しており、たまたまタイガーオルフェノクという高位の存在に覚醒した百瀬は、それを自覚して全オルフェノクの解放を決意したのではないでしょうか。
従って、やや強引ではあるものの、私としては入学後覚醒説を採っておこうと思います。
このあたりから、2つの場所の話が同時進行していくので、分かりやすくする為に少々整理しようと思います。
まずは、「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」関連を続けます。
百瀬は、
「運が良ければ僕達と同じオルフェノクになれる」
と言います。オルフェノクが人間を手にかけると、殺された人間はそのまま死ぬか、またはオルフェノクに覚醒します。オリジナル通りの設定です。
そこに現れるタクミ。タクミはウルフオルフェノクに変身し、ラッキークローバーに挑みます。
タクミの正体がオルフェノクだと知って、恐れる学生達。由里だけでなく、他の学生達もタクミを異物として見てしまうという展開は、なかなか見応えがあります。
海東は「ファイズギア以上の宝物」を期待して学園に来ており、屋上から様子を見つめるのですが、その有様に失望して去っていきます。
勿論、タクミにとっての「ファイズギア以上の宝物」は、由里の夢であり、士はそれに言及していたのですが、メンタル面への価値を認められない海東には、それは理解できません。
というわけで、海東が動き出します。光写真館でユウスケを気絶させた海東は、キバーラを脅して鳴滝と士の居場所を聞き出すのです。
いつも何となく動いている士と違い、海東には確固とした目的があり、その目的の為にとにかく素早く行動するという感じですね。海東が単なるイヤなヤツになっていないのは、目的にも行動にもある種の直進性があるからかも知れません。
要するに「まっすぐな人」なんですね。
海東はキバーラを捕まえて、
「お前の正体は知っている」
と言ってましたが、どういうことなのでしょうか。単に面識があるというのとはニュアンスが違うようですが。
その頃、別の世界に飛ばされた士は、
「君の為に、最高のライダーを用意した」
と言う鳴滝によって、仮面ライダーリュウガを差し向けられます。
オリジナル・龍騎でも、リュウガは劇場版とスペシャルにしか登場しない、しかも得体の知れない悪のライダーでしたから、インパクトは充分。
ライドブッカーのない士は、変身できず、リュウガの猛攻から逃げ回るしかありません。昭和ライダーは、結構変身前でも強い人が多かったですが、平成ライダーは「変身前は弱い」が定番かと。でも士、テニスは超人的(笑)。
そこに海東が登場。ディエンドに変身し、リュウガとバトルを開始します。
ディエンドの見せ場を作る為に、士からライドブッカーを奪い、更にファイズギアを追って結果的に士の元へ現れる...見事な構成です。しかも、殆ど予定調和的な匂いがしない。ディエンド VS リュウガという対戦カードも面白いですしね。
リュウガは、ドラグブラッカーでの攻撃を見せてくれます。ドラグブラッカーが普通にテレビに出てくるのは、初めてではないでしょうか。
「化け物には化け物か」
と、ディエンドは「KAMEN RIDE KIVA」で仮面ライダーキバを呼び出します。
キバを化け物呼ばわりするあたり、ワタル少年とユウスケの温かい友情物語を見た者にとっては腹立たしく映ります。勿論、それを狙っているわけですが。海東は、「仮面ライダー」そのものに価値を見出さない人物だということが、巧く示されていると言えます。
ディエンドは、「FINAL FORM RIDE KIVA」でキバをキバアローに変形させます。
「痛みは一瞬だ」
というセリフが、士の「ちょっとくすぐったいぞ」と同様、定番になるものと予想されます。
一瞬でも痛いよりは、くすぐったい方がいいですよねぇ。
キバアローでリュウガを撃破するディエンド。リュウガは結構あっさりと負けてしまいました。これまで鳴滝が呼び出したライダーは皆、別の世界へと退却していきましたから、意外。あまり個性がなく(いわば真司のコピーですから)、悪のライダーで、しかも強いという意味では、適役だったのかも。
鳴滝は、
「面白いぞディエンド!お前とディケイドは決して相容れない。やがて滅ぼし合う!」
と宣言しますが、残念ながら誰も聞いてません(笑)。
相容れないのは、既に劇中で納得のレベルまで描写出来てますね。
さて、別の世界から戻った海東は、士からファイズギアを奪い、ライドブッカーを「代金」として返します。ジャイアンみたいなヤツだ(笑)。
士は、
「そんな物より、もっと大切なものがある」
と言い残して去って行きます。海東の表情からは、若干苛立っている様子が伺われます。
この時、既に士にはラッキークローバーと戦う決意があり、ファイズギアがなくともディケイドだけで倒せると考えていたのでしょう。よって、ファイズギアをタクミに返す必要性も、あまり感じていないものと思われます。
その頃、タクミは由里のカメラを懸命に守っていました。
「このカメラは、由里ちゃんの夢だ」
ここで「他人の夢を守る男」として、オリジナル・ファイズとリンクしてきます。
かつて、タクミがオルフェノクとして内心孤独感に苛まれていた際(と勝手に想像してますが)、ふと野花を目にします。すると、隣に由里がやってきて、その写真を撮りました。
その写真こそが、タクミの持っていた例の野花の写真です。
「僕がいいと思った物、由里ちゃんもそう感じた。それだけの事が泣きたくなるぐらい、大切だった。だから、僕は守ると決めたんだ。由里ちゃんの夢を」
これは、オリジナルの巧では絶対吐けないセリフ。気弱に見えるタクミだからこそのセリフです。
ここまでストレートに表現できるキャラクターに設定したことで、オルフェノクの悲哀、淡い想いといったものが、存分に表現されているのは見事だと思いました。
そこに士が登場。百瀬は、
「裏切り者のオルフェノクを庇うつもりか。人間が」
と士をなじるのですが、士は、
「オルフェノクだ人間だなんてものは関係ない。こいつはただ、自分にとって大切な物を守ろうとしただけだ」
とサラリと応えます。かつて士は、キバ編で「俺にとって、ファンガイアも人間も変わらない。倒すべきものは倒す」と言いましたが、根底は同じ事を言ってます。ただ、今回はやや攻撃性といった感じのものが抜けてきているようにも見えます。
朱川は、
「そんなちっぽけな」
と蔑むのですが、更に士は、
「ちっぽけだから、守らなくちゃいけないんだろ!」
と強調。いつの間にか、「破壊」から「守護」へと、その志向がシフトしている士。平成ライダーの典型へと、着実に近付いている気がしますが、付かず離れずという感覚を維持してくれることを期待してます。
ここでお約束。百瀬の、
「貴様、何者だ」
に、
「通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ!」
と答える士!
士はディケイドに、タクミはウルフオルフェノクに変身し、ラッキークローバーに立ち向かいます。
さらに海東が現れ、
「僕の旅の行先は、僕だけが決める」
と言って、ファイズギアをタクミに手渡します。
そして、海東とタクミのダブル変身!
ディエンドとのダブル変身という構図が意外で面白いですね。
「どういうつもりだ!」
と士。
「まだ見せてもらってないからな。ファイズギアよりも、価値のある物を」
と海東。
ここで海東が、士の主張するメンタル面での価値に興味を持ったのだと思ったら、それは見事に騙されています。勿論、騙す方向に仕掛けているのですが。
そして、ディケイドとファイズが、ロブスターオルフェノクとドラゴンオルフェノクを秒殺!
しかし、タイガーオルフェノクがすぐに復活させます。これは、単純に3体まとめて倒した方が迫力が出るということだと、私は思います。
「ちょっとくすぐったいぞ」
のお約束と共に、「FINAL FORMRIDE」発動。ファイズは、ファイズブラスターになります。
ファイズブラスターというネーミング自体は、オリジナル・ファイズの武器からそのまま拝借。レーザー銃系統のイメージが強いファイズならではの「FINAL FORMRIDE」だと言えるでしょう。
このファイズブラスターで、ラッキークローバーをまとめて撃破!
ファイズブラスターはやはり巨大な為、CGを交えて描かれますが、今回はややマッチしていない印象があります。特に振り回して構えるあたりは。なお、変形途中のCGはなかなか綺麗でした。
戦いが終わり、ファイズドライバーを外すタクミは、ウルフオルフェノクの姿に。ファイズに変身した時は人間態でしたから、これは由里とウルフオルフェノクが手を握るという、象徴的なシーンの為に用意されたシチュエーションです。
整合性という点ではやや外していますが、エモーショナルな面を強調するには、的確な演出でしょう。
ウルフオルフェノクは、由里にカメラを手渡し、去っていこうとします。すると由里は、
「あたしの夢、守るんなら、写真集出すまで付き合いなさいよ!」
と呼びかけました。
ウルフオルフェノクを恐れて逃げてしまった学生達。由里だけは、タクミの内面だけを見つめなおすことが出来、ウルフオルフェノクの手を取ったのでした。
ついでに、由里は「写真集を出す夢」をハッキリと明確な目標に定めることが出来たわけで、それがタクミの存在あってのものだというところも巧いです。
オリジナル・ファイズにおける人間とオルフェノクは、結局根本的には分かり合えないまま終結を迎えましたが、この世界では、タクミと由里が手を携えたことで、希望的観測を持たせて終結しました。
申し訳ないけど、オリジナルより感動してしまいましたよ...。
士がそんな2人の写真を撮っていると、海東は瓦礫の中からオーガドライバーを発見。
「かつて、オルフェノクと戦う為に作られたベルトだ。中でもこの帝王のベルト、これに比べたらファイズのベルトなんて!」
「お前...」
「ファイズのベルトより、価値のある物。こういう意味だったんだな、士!」
「違う!」
士の行動を曲解したのは、今回はユウスケではなく海東でした。
恨み節を残して次の世界へ対立構造を持ち込むのではなく、勘違いでありつつも、大喜びで海東を去らせるあたり、一本取られた気分です。
また、瓦礫の中には、デルタやサイガのベルトもあり、劇場版をも包括して、一つのファイズの世界としていることを示しています。オーガがレアなのは、オリジナルを知っていると妙に納得できて最高です。
さて、エピローグ。
士の写真はタクミと由里をとらえたものでした。
今回は写真の解釈はやめておきます。二重写しの法則性など、本当はなかったのかも知れません...。
ただ、後姿というのは結構意外な構図でした。「顔を撮りたい」と言っていた士が、結局「顔」を撮らなかった真意は何なのか。
それは、サブタイトルが示すように、無数の顔を撮るより1つの宝を撮った方が、より良い写真になるということだったのかも知れません。
夏海が、
「これからも二人、同じ物を見ていくんでしょうか」
とこれまたいいセリフを!
なるほど。士が撮ったのは、2人が見ている「同じ物」だったんですね。
いつものように、次の世界を示すスクリーンが下りてきます。
オリジナル・アギトのオープニングに登場する絵を元にした画!これにはやられました。素晴らしい。
なお、スクリーンには、
「士へ。次の世界ではせいぜい邪魔をしないように。ナマコも食べられないクセに」
という海東の張り紙が。彼の機嫌の良さが垣間見えます。
というわけで、次はアギトの世界。ただし、スクリーンからアギトの世界を連想できるのは、恐らくオリジナル・アギトを見た人だけでしょう。
予告では、八代さんが再登場したりと、色々錯綜しているようですね。ファイズの世界ではあまり出番のなかったユウスケの活躍が期待できそう。楽しみです。
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