今回より「仮面ライダー555」の世界。555は「ファイズ」と読みます。以下、一部を除いて表記を「ファイズ」に統一。
ちなみに、「仮面ライダー555」は「仮面ライダーX」の仮タイトルである「仮面ライダーGO5号(ゴーゴーゴー)」からインスパイアされたものだと、私は思っていますが、実際のところどうなのでしょう。
さて、オリジナル・ファイズの「SMART BRAIN」は大企業であり、「SMART BRAIN」のロゴは明確なコーポレート・アイデンティティとして描写されました。そのトータルイメージの構築美は、平成ライダー随一です。
その「SMART BRAIN」はオリジナルにおいて物語の根幹に関わる重要な要素でしたが、今回のファイズの世界では「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」とされ、大胆にも高校になってしまいました。
つまりは、「SMART BRAIN」自体を記号化したのです。
この記号化による弊害は、本編を見て分かるように、特にありません。むしろ「SMART BRAIN」をファイズ世界の記号としたことで、オルフェノクと人間の関係が、単なる怪物とそうでない者の対立構造に整理され、物語の見通しが良くなっています。
その一方で、オルフェノクの本質や行動理念といったものは、オリジナルと変わらず、また、ファイズとウルフオルフェノク自体もオリジナルと同じ設定で動いています。
以上のようなことから、このファイズ世界は基本構造こそ「学園モノへの転化」という方面に動いていますが、最も「リ・イマジネーション」の色が希薄であるとも言えます。
それほどオリジナルの物語は完成度が高かったということなのか、それともファイズの都会的な雰囲気に引き摺られて大胆に改変できなかったのか。海東=ディエンドを前面フィーチュアするという要請も、大胆な再構築を阻害したのかも知れませんね。
いずれにせよ、再構築の部分の多くは、ファイズの諸要素を記号化するという程度に留められています。逆に、それ故に安心して見られるという面もあり、その点では絶妙と言えるでしょう。
ファイズの世界の主な登場人物は、次の通り。
- 尾上タクミ ... オリジナルでは乾巧
- 友田由里 ... オリジナルでは園田真理
- 朱川(ロブスターオルフェノク) ... オリジナルでは影山冴子
- 城金(センチピードオルフェノク) ... オリジナルでは琢磨逸郎
- 玄田(ドラゴンオルフェノク) ... オリジナルでは北崎
- 百瀬(タイガーオルフェノク) ... 新キャラ
ラッキークローバーもファイズを象徴する要素でしたので、出して正解。生徒会とか安直な設定にせず、圧倒的な実力を持っている学園のアイドル的存在という雰囲気がいいです。それぞれの性格も、何となくオリジナルを踏襲しています。
由里から真理の要素を殆ど取り去って、ただの写真部員にしたのも正解。写真ということで士と簡単に接点を持たせられますし、「夢」というキーワードも持ち出しやすくなっています。
そして、何と言っても仮面ライダーファイズそのものの再現度。冒頭の夜間のアクションシーンには感涙必至です。
特徴的な手首のスナップこそありませんでしたが、巧とタクミの違いを端的に表現したと見るべきでしょう。
では、今回も見所を押さえつつ、ストーリーを解説いたします。
「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」が舞台。
「SMART BRAIN」のロゴはそのまま使用されています。青い蝶はオリジナルにおけるスマートレディのイメージですね。ファイズは、「SMART BRAIN」のロゴが殆どのガジェットにプリントされていて、その世界観の統一感が秀逸でした。
ある夜(というより、士がこの世界にやって来た日の夜)、この学園に海東大樹が忍び込みます。事件の発端を士一行が目撃しない構成です。よって、士(今回、ユウスケや夏海は殆ど関わらない)は、海東の行動に反応する形で事件に関わっていきます。
学校の警備員の前に現れる一人の少女。
「私、この学校には入れなかったの」
「入れな...どうして?」
「だって、オルフェノクだから」
少女は無邪気な笑みを浮かべつつ、バタフライオルフェノクに変身し、警備員を襲撃!
オリジナルでも、オルフェノク達の人間態の殆どは、わざと美形な感じで揃えていました。今回もチョイ役ながら系統を守っているのではないでしょうか。
そこに、仮面ライダーファイズが登場。バタフライオルフェノクと一戦交えます。ファイズの魅力の一つである、フォトンストリームもバッチリ光り、最初のファイズ活躍シーンを夜に据えたのは大正解。
海東は、
「ファイズのベルト...」
と呟き、興味を示します。多分、ここで興味を示したのではなく、初めから狙ってファイズの世界に来たのだと思われますが。
ファイズは、「EXCEED CHARGE」によるスパークルカットでバタフライオルフェノクを撃破。
Φの文字が浮かぶところや、オルフェノク消滅の際の特徴的な青白い炎も完全再現。これは嬉しいですね。デザインや音声、エフェクトに至るまで、その都会的な雰囲気はやっぱり平成ライダー随一です。
バタフライオルフェノクを倒したファイズは、オートバジンに乗ってそそくさと退散しますが、海東がそれを走って追いかけます。
当然、追いつけはしないのですが、ファイズが去った後に、野草の写真が落ちていました。
一応これ、地味に今回のキーアイテムとなります。
ここでオープニングになりますが、今回より映像が、海東とディエンドをフィーチュアしたものに変更されました。
特に海東は本人の映像に役のクレジットが被るようになっており、新キャラの定着への腐心振りが伺えます。
ファイズの世界の光写真館。
最近の傾向を反映したのか、「おいしいコーヒーサービスもあります」の文字が可笑しい。これ、劇中設定では、勝手に各々の世界に合わせて変化することになっているので、余計に笑えます。
そして、光写真館の朝に異変が。
何と、海東が勝手に入ってきて、素晴らしい朝食を作っていたのです。しかも、士の好物ばかり揃えるというこだわり(士の好物の中に、茶碗蒸しがあることが判明)。
海東は、士とはずっと昔からの知り合いだと言いますが、当然士にはそんな記憶はありません。
「そもそも、世界を旅するのは僕の仕事なんだ。士、君にはまだ早い」
「何だと?」
「僕の後を追っかけて来るのは、やめてくれないか?」
「誰が」
「君は僕の足元にも及ばない。邪魔だけはしないでくれよ。...今日は、士がご迷惑をかけてるお詫びに、朝食をサーブさせて頂きました」
海東は柔らかい物腰で落ち着いた雰囲気。士よりも饒舌ですが、その実、腹の内が読み難いキャラクターという感じになっています。
士は終始不機嫌ですが、ユウスケや夏海は大喜びで朝食に飛びついていきます。
さて、士が外に出ると、学ラン姿に。さすがの夏海とユウスケも、その姿には笑いを堪えきれない様子。「何を着ても似合う」と強がる士ですが、本人は結構イヤがっているようです。
士のポケットには学生証が。この世界で士に与えられた役割は、「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」の高校生でした。
オルフェノクは死んだ人間が蘇って怪物化したもので、社会に紛れこんで人々を襲っており、社会問題になっているという設定。その設定は、夏海の口からサラリと語られます。怪しげな携帯サイトから情報を得るというのが巧い。
オリジナルのオルフェノクと性質は全く同じですが、特に「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」が関与している様子はないので、自然発生的に現れて社会問題化しているといった感じでしょう。設定の簡略化は「ディケイド」の命ですから、この程度の語り口で充分だと思います。
オルフェノクの話題が出たところで、
「オルフェノク。これ、おみおつけ...関係ないな」
という栄次郎のぶっ飛んだギャグが炸裂。これは石橋さんじゃないと許されません(笑)。
そこから味噌汁の美味さに話題が移り、海東の味噌汁に嫉妬する栄次郎の睨みが。
実に楽しいです。栄次郎役が石橋さんで正解。この味はこの方でないと出せません!
それにしても、今回のユウスケと夏海は実に呑気ですな。
士が「SMART BRAIN HIGH SCHOOL」に登校すると、写真部の友田由里と尾上タクミは、一緒に花の写真を撮っていました。
ところが由里は、ラッキークローバーなる学園のアイドル的存在4人組に、自分達の写真を撮っていたと因縁をつけられます。
「私達に憧れて、どうしても写真が欲しかったって、言えばいいでしょ」
「誰もかれもが、あなた達に憧れてると思ったら、大間違いよ!」
気丈な由里と、やや気弱なタクミ。
真理由来の由里が気丈なのは納得。しかし、巧とタクミはまるで印象が違います。
「タクミ」という名前が出た時点で、既に彼がファイズだと大方の視聴者にはバレるのですが、敢えて「無愛想な巻き込まれ型」の巧とは違う、「気弱だが積極的に戦うタイプ」のタクミをしつらえることで、ちょっとした意外性を狙っているようです。
由里のインスタントカメラは、ラッキークローバーの一員でチンピラ風の玄田に放り投げられますが、現れた士が華麗にキャッチ。
今回の特徴に、士の超人性の強調という要素がありますが、まずここでジャブをかました格好です。
士は、ラッキークローバー1人1人の下手な写真を撮って、彼等を煽ります。
士の写真の腕は、相手を挑発するという手段に使用できることが判明したわけです(笑)。
ラッキークローバーのリーダー格・百瀬がそのポラロイド写真を投げると、何と鉄骨に突き刺さります。キャッツカードみたいですな(古い?)。
この百瀬の妙な能力の高さの理由は、後で判明します。まぁ、ぶっちゃけオルフェノクだからということです。
ちなみに、百瀬役の三浦涼介さんは、「超星艦隊セイザーX」のビートルセイザー/ケイン役が特撮ファンには有名。ケインはとても可愛らしい言動の役だったので、今回のクールな悪役とのギャップを楽しめます。
一触即発という雰囲気の中、海東がやって来て、士を無理やり連れていきます。
ラッキークローバーは、士がファイズではないかと疑うのですが、勿論見当違い。この見当違いが、後で士とラッキークローバーのバトルを生みます。
なお、ラッキークローバーはこの4人。
左から、朱川(ロブスターオルフェノク)、玄田(ドラゴンオルフェノク)、百瀬(タイガーオルフェノク)、城金(センチピードオルフェノク)。
オリジナルのラッキークローバーから、ジェイのクロコダイルオルフェノクがオミットされ、代わりに新キャラのタイガーオルフェノクが配置されました。確かにオリジナルにおいて、ジェイ以外の3人の印象が強かったので、この措置は正解でしょう。
白い制服を着て、他の学生と差別化しているあたり、なかなかセンスがいいですね。ちなみに、良く見ると、士の制服はこの学園のものと全然関係ないものだったりします。転校生という雰囲気を狙ったか。
士を引っ張ってきた海東は、ファイズの正体を知りたいと言います。それに対し、士は海東の邪魔をすることに決め、ファイズの正体を自分が暴くと宣言。
ここで、士の行動目的が決まりました。
海東のキャラが気に入らないので、邪魔をするという至極単純な理由。この浅はかさこそが士の魅力です。
ブレイド編でも大いに気まぐれな行動様式を発揮し、それはユウスケによって崇高な目的へと昇華されていきましたが、今回は、海東の行動に反応することで、ファイズの世界に影響するものと思われます。
場面は変わって、由里が所属する写真部。
士のカメラを気に入り、タクミに向けてシャッターを切る由里。何故かタクミは写真を嫌がります。
ラッキークローバーも写真を嫌がっていたので、もしかしてと思わせるシーン。...というのは後から気付くことで、ラッキークローバーがこの時点でオルフェノクであるかどうかは判然としない為、この仕掛けは今一つ効果がありません。そもそも仕掛けなのかどうかも、よく分からないですが。
なお、極端に熱いお茶が士に出されたことから、タクミがオリジナルの巧のように猫舌ではないのかも、と思わせています。この小ネタはあくまでオリジナルを知っている人向けのサービスであり、物語には殆ど関係ありません。
由里は、ラッキークローバーのことを「オルフェノク並に大っ嫌い」と言います。ここでタクミはちょっと複雑な表情をします。後の展開への伏線です。
士「オルフェノクに恨みでもあるのか?」
由里「別に。誰だって嫌いでしょ?人間の振りしてる怪物よ。もし周りにいたらと思うと、最悪」
タクミ「この学校はファイズが守ってるから、大丈夫だけどね」
由里「ファイズなんているわけないじゃない」
被害に遭ったわけでもなく、単純にオルフェノクを嫌っているというところは、かなりリアルな感触だと思います。こういう皮膚感覚って、ドラマの上ではとても重要ですからね。
ファイズを都市伝説化するのは、オリジナル・ブレイドの「仮面ライダーという都市伝説」からインスパイアされたものかも知れません。オリジナル・ファイズには、とりあえずそういった要素はありませんでした。
なお、由里の夢は、インスタントカメラ独特の色合いを生かした写真集を出すこと。
オリジナル・ファイズのテーマの一つに、夢のない青年が、仲間の夢を守って戦うというものがありましたが、その辺りの要素を巧く引っ張ってきています。
さて、ここでまた場面は変わり、士は、テニスでラッキークローバーを挑発します。
「悪いが、俺には苦手なものはない。写真を撮ること以外は...」
何故ここでテニス?という疑問もなくはないですが、適当に学園内で勝負を挑めるのは、やっぱりスポーツといったところでしょう。
某テニス漫画を意識したのか、多少マンガチックになっても許されるスポーツということで、テニスを選択したのかも知れません。というより、昔から東映ヒーロー物では、スポーツと言えばテニスという感じでしたからね(笑)。
まんまと挑発に乗る玄田と城金。しかし、士は凄まじい腕前で玄田と城金を翻弄します。
玄田と城金の腕前はそれこそ人間離れしていますが、士はそれ以上です。何だこれは(笑)。
それにしても、士役の井上さん、結構テニスのフォームがいいですね。玄田も良い。しかし、良く見ると城金は(笑)。演じた永岡さんは、ブログでテニス初体験だったと弁明されてました。実に微笑ましい。
この対決により、士は玄田と城金のどちらかがファイズだと確信し、逆に、玄田と城金は士がファイズだと確信します。
目的を果たしたつもりになって、喜ぶ士。
一方、ラッキークローバー側も士がファイズだと勘違いし、玄田はドラゴンオルフェノク龍人態に、城金はセンチピードオルフェノクに変身。
士はディケイドに変身します。
結局、両者くたびれもうけだったわけですが、元々ラッキークローバーが嫌い(というだけの理由!)な士、そして正体を見られた玄田と城金は、戦闘状態に突入。
ディケイドは、「KAMEN RIDE BLADE」でブレイドに変身。
「ATTACK RIDE METAL(オリジナルではスペードの7)」「ATTACK RIDE MACH(オリジナルではスペードの9)」も披露。ブレイドが何気に便利なライダーだったと、改めて思い知らされる瞬間です。アストロンとピオリムみたいですねぇ(?)。
「何だ!?そのベルトは!」
という城金の反応も秀逸。ファイズが「ベルトを巡る物語」だったことを意識した、いいセリフです。
「FINAL ATTACK RIDE」でドラゴンオルフェノク龍人態を倒すブレイド。先の「ATTACK RIDE」がラウズカードのコピーという雰囲気だった為、「KICK」と「THUNDER」を使わないライトニングブラストは、残念ながら今一つ説得力がありません。
ドラゴンオルフェノク龍人態が倒されると、百瀬が登場してタイガーオルフェノクに変身。ドラゴンオルフェノクを復活させます。ドラゴンオルフェノクは魔神態に。二形態を有するというオリジナルの設定を、巧く使用しています。
タイガーオルフェノクは、オリジナルの「オルフェノクの王」であるアークオルフェノクの要素を継承しているようです。今回の為の新デザインなのですが、モノトーンを基調とするオルフェノクの要素をちゃんと踏まえてデザインされており、高級感すら漂います。
なお、ラッキークローバー達に関しては、ちゃんと地面に人間態の顔が映って会話する描写もあり、オリジナルの特殊な視覚的表現をちゃんと消化しています。
士がタイガーオルフェノクの猛攻を受けて変身を解かれ、顔を上げると、既にラッキークローバー達は立ち去っていました。
ただ、「正体を見た者を生かしてはおけない」と言っていたクセに、士を殺そうとしなかったのは少々不自然。ファイズの世界にとって異質な者だと判断し、自分達の目的や行動に影響ないと考えたものと思われますが、実際のところどうなのでしょうか。
一方、その間物陰からは、鳴滝が士を狙っていました。ところが、鳴滝の前に海東が出現。
「あなたも、僕の邪魔をするつもりじゃないでしょうね」
「君の恐ろしさはよく知っている。やめておこう」
海東と鳴滝に面識があることを、このシーンだけで的確に示し、しかも海東は鳴滝が容易に手出しできない程の人物であることが示されます。鳴滝は海東を明らかに警戒しています。
また、海東が鳴滝を邪魔したのは偶然ではないと考えるのが自然。したがって、この時は士を守ったことになるかと思います。海東は基本的に「平成ライダー的なイヤなヤツ」の系譜に属しますが、実はそうでもないということでしょうか。
まぁ、ファイズを探す為に士を利用していると考えるのも、また自然なので、性急な判断は致しかねますが。
その海東、今度は「ファイズの落し物」である例の写真を見せるため、百瀬に会いに来ます。
「ラッキークローバーに、入りたい」
という海東のセリフ。確かオリジナルでは草加が同様のことを言っていたような。勿論、何か企んだ上でのセリフでしたから、海東とて例外ではないのです。
写真がポラロイド写真だったことから、ラッキークローバーは由里がファイズだと誤解して襲います。
ここでちょっと補足。
ポラロイド、いわゆるインスタントカメラのフィルムは、現在基本的に市販流通する程生産されておらず、非常に珍しいものになっています。従って、そんな珍しいものを持っているのは、周辺では由里だけ、という推理なのです。
一昔前だと、こんな推理は成立しなかったでしょうね。ただ、これが珍しいカメラだと、知っているお子様は果たしてどれだけいたのだろうか...。実は士の二眼レフの方が更に珍しかったり。
ラッキークローバーの襲撃を受ける由里を助ける為、タクミはファイズに変身!
「STANDING BY」「COMPLETE」の音声は、やっぱり突出してクールです。ディケイドライバー系のDJ風ボイスも非常にカッコいいのですが、ファイズのボイスの魅力は、そのクールさにあると思います。
タクミと由里が登校していないと知り、士は2人を探しに出かけます。この直観力が士の真骨頂。作劇上、士は予定調和の塊なのですが、それをカッコ良さに昇華しているので、違和感がないのです。
士が到着した時、ファイズはセンチピードオルフェノクとロブスターオルフェノクによって苦戦を強いられ、ベルトが外れて変身解除の憂き目に。
ベルトがガジェット扱いになっている所は、ブレイドとそっくりなのだと、改めて気付かされます。
センチピードオルフェノクは、
「ファイズのベルト...伝説のものと思っていたが」
と呟きます。伝説のベルトという感覚は、劇場版555あたりがイメージソースか?
この世界における、ファイズのベルトの由来といった部分には、多分言及されないのではないかと予想。タクミは伝説化された幻のベルトを持つ「選ばれし者」といった雰囲気で突っ走るのではないでしょうか。
一方、士の方は変身しようとした瞬間をドラゴンオルフェノクに襲われ、ディケイドライバーを落としてしまいます。
タクミ、そして士に訪れる危機!
そこに海東が、
「おめでとうございます。これで僕も、ラッキークローバーの一員ですね」
と、オリジナルの村上社長=ローズオルフェノクを彷彿させる、慇懃無礼な態度で登場。絶対意識してると思います。省略されたキャラクターの要素を海東に集約し、オリジナル・ファイズの雰囲気を再現しようとしていると見て、間違いありません。
センチピードオルフェノクは、
「そういうことだな」
と返答。ところが、
「しかし、ラッキークローバーに、5人は多すぎる」
と海東。
「何のつもり?!」
とロブスターオルフェノク。
カッコいいヒールとはこういうものだという、お手本のような演出です。はっきり言ってシビれましたよ、海東。
ここで海東は、仮面ライダーディエンドに変身!
この変身の際の「KAMEN RIDE DIEND」のボイスは、「DIEND」の部分が派手になっていて、クラブイベントにおけるスペシャルフィーチュアを思わせます。つまり、ディケイドより格上扱いということ。
変身エフェクトも、分身イメージが激しく飛び交うという長いものになっています。次からは省略されてしまいそうな予感も(笑)。
「士、見ていたまえ。これが僕の戦い方だ」
上から目線なセリフが秀逸。にしても、凄いデザインですね。ディケイドも最初見たときビックリしましたが、ディエンドはそれを上回るインパクト。これがまた、動いているとカッコいいんですから、特撮ヒーローのデザインとは不思議なものです。
ディエンドは、ライダーカードの特殊能力を使わずとも、素早く動き回って銃撃するという、強力さを見せます。新キャラの初登場はいつもこんな感じに強いので、この強さに関しての評価は保留(笑)。
そしてここからがディエンド真骨頂。それは他の仮面ライダーを召喚するというもの。同じ「KAMEN RIDE」でも、ディエンドの場合はそれに変身するのではなく、召喚してしまうのです。これによって、陽が当たらないライダーの皆さんにも出番が回ってくることになります。
なお、これで前回現れた轟鬼が、ディエンドの「KAMEN RIDE」によるものだと断定することは出来ません。轟鬼はオーロラをくぐって出てきましたし、今回の召喚の様子とはかなり異なる印象。あの轟鬼は、もしかすると鳴滝が召喚したものだったのかも。
さて、レイと歌舞鬼が召喚され、戦況はディエンドの絶対的優位で進んでいきます。
両方共劇場版単発ライダーであり、歌舞鬼は「響鬼」に、レイは「キバ」に登場したライダーです。実にマニアック。
士もディケイドに変身して参戦したところで、士役・井上正大さんの挿入歌「Ride the wind」が!
結構ハードなロック系チューンで、バトルシーンに相応しい楽曲になっています。戦闘の効果音等が派手なので、あまり歌声が聞こえなかったのは残念。
ファイズのベルトを渡せとセンチピードに迫るディエンド。「FINAL ATTACK RIDE」でセンチピードを容赦なく撃破します。
これもまた、長いエフェクト。物凄く派手なので、いかにも「凄そう!」というビジュアルです。
ディケイドが10枚のカードをぶち抜いてキックを放つのに対し、ディエンドは無数のカードをリボルバーのようにして放つというビジュアルになっており、その強力さがよく表現されています。レイと歌舞鬼が吸い込まれて元のカードに戻るあたりの描写も面白い。
一方、すぐ傍では、百瀬がタクミと由里の前に現れ、
「ファイズ!仲間のオルフェノク達の恨み!」
と呟きつつ、タイガーオルフェノクとなって襲いかかります。タクミを跳ね飛ばして由里を狙うタイガーオルフェノク。ひょっとして、まだ由里をファイズだと誤解しているのでしょうか?ちょっとこのヘンはよく分からない展開になってますね。もしかして由里にご執心?
タクミは由里を助ける為、ウルフオルフェノクに変身!
悲鳴を上げる由里。
オリジナル通り、タクミはウルフオルフェノクだったのです。尾上は「オオカミ」からのネーミングだったというわけ。
オリジナルでは、由里に該当する真理が、ウルフオルフェノクに対するトラウマを植え付けられていたという展開が用意されていましたが、由里にはそこまで深いドラマはなく、単にオルフェノクを心底毛嫌いしているという程度に留めてあります。
その分ドロドロした部分がなく、学園モノ的な爽やかさを持った展開が期待できるかも知れませんね。
ディケイドは、ファイズのベルトを拾い上げますが、ディエンドが、
「やぁ、それをこっちに頼む。士」
と要求。ディケイドは、
「言っただろ?俺はお前の邪魔をすると」
と答え、ディケイドとディエンドの撃ち合いに発展したところで終了。
イヤ~な対立ではなく、何となく意地の張り合いから発展したケンカのようで、妙な緊張感のなさが面白いです。私は「ディケイド」の根底に流れる、ある種のユルさも魅力の一つだと考えています。
期待以上にオリジナル・ファイズをトレースしているファイズ編。
ファイズ以外のSMART BRAIN系ライダーや、木場とかの主役級オルフェノクにあたる人物が一切出てきませんが、ディエンドやラッキークローバーといった、記号的に目立つキャラクターを配しているのを考えれば、敢えてオミットすることで物語のエッジを立てたのは正解だと思います。
次回は後編ですが、今までの中で最も結末が予想しにくい感じ。タイガーオルフェノクをライダー達が協力して倒す結末なのは確かでしょうけど、タクミと由里の間がどのように解決されていくのか、そしてそれがどうファイズの世界の救済(破壊?)に繋がっていくのか。興味は尽きませんね。
えど
はじめまして、いつも楽しく読ませていただいてます。
>何故ここでテニス?という疑問もなくはないですが
確かオリジナル555の第13話で、乾巧が草加雅人を探しに雅人が通う学校に行き、巧が雅人にテニスで挑んで惨敗するシーンがあったように記憶しています。そのオマージュではないか?と個人的には感じました。