今回からは「仮面ライダー剣」の世界。
で、「剣」と書くとあまりにも普通名詞なので、とりあえず今後「ブレイド」と表記させて頂きます。
正直なところを告白しますと、私はブレイドには疎く、物語の大体の骨子は理解しているつもりですが、詳細まではちゃんと見ておらず、飛び飛びのかすかな記憶しか持ち合わせておりません。
従って、ここはどこのパロディだとか、そういったマニアックな視点ではブレイドの世界を語れない可能性が高いです。
先んじて、お詫び申し上げておきたいと思います。
さて、ブレイドの世界。
オリジナル・ブレイドの「BOARD」を中心とする世界観を、大らかにとらえてギャグ化した感が漂います。更には、アンデッド側のカテゴリーを茶化した面も。
つまり、中心になっているのは「会社」「サラリーマンとしての仮面ライダー」「極端な実力成果主義」。不況のご時世もピリッと風刺し、「明るいブレイド」を堪能することができます。
一方で、明らかにウケ狙いのヘンなBOARD社員食堂の描写などに、前回の「龍騎」までの世界に漂っていたある種のリアルさ(世界観は突拍子もない絵空事でも、日常描写は割とリアルだったと思います)がスポイルされる方向性も垣間見え、平成ライダーシリーズの悪い面(と私が勝手に思っている)が浮き彫りにされた感もあります。
とは言え、単純に楽しめる趣向でまとめられていたのも事実。鎌田の引き続いての登場や、キバーラの本性なんかも描かれ、物語自体が複雑化していても、ブレイドの世界自体をカリカチュアし尽くすことでシンプルにし、面白さを追求しているのは素直に評価したいところです。
今見ると、ブレイドのラウズカードのシステムは魅力的で、ブレイド達仮面ライダーのデザインも統一感があって美しいものだと気付きます。
機会があったら、ちゃんとオリジナル・ブレイドも見直さなければなりません。
では、今回も見所を中心に見ていきたいと思います。
冒頭は、いきなりアンデッド出現から開始。
アンデッド出現にBOARDが動きます。
ロゴはオリジナル通り。ブレイドの世界を端的に表現するにあたり、これ以上ないシンボルです。
「エースチーム」が出動するというシチュエーション。
この時点では、「エースチーム」が何を意味するか、はっきりとは分からないようになっていますが、オリジナル・ブレイドのラウズカードにおける「A」を思い出せば、仮面ライダーのチームであることを想起出来るという仕掛けです。
そして、この緊迫したシーンでいきなりギャグがかまされます。
それは、稟議に時間がかかるということ。
承認印を沢山もらって、社長である四条が最終承認しない限り、ライダーに変身出来ないという仕組みなのです。
対アンデッドという緊急性と、それに対する決定機構の面倒臭さを茶化した、組織の意志決定に関する一流の皮肉です。
この人物が、仮面ライダーブレイドに変身する剣立カズマ。つまり、ブレイドの世界の主人公にあたる人物です。
カズマはブレイドに変身し、バッファローアンデッドに「KICK」「THUNDER」のコンボである「ライトニングブラスト」を決め、オリジナル通り封印すると「MAGNET」の効果を持つプライムベスタに。
なお、変身の際に現れる光のゲート「オリハルコンエレメント」は、オリジナルでは静止状態でしたが、ディケイドにおける「オリハルコンエレメント」は、装着者に向かって動くようになっています。レンゲルと同じですね。
その頃、士のカメラは、壊れてシャッターが切れなくなってしまいます。
この世界も自分の世界でないと呟く士に、笑いのツボが炸裂。
何だか今回の「笑いのツボ」は、何の脈絡もなく使われたような...。
とりあえず、この後に続くドタバタ振りを象徴しているようではあります。
「笑いのツボ」炸裂直後、彼等の元に、士を「チーフ」と呼ぶBOARDの女子社員が現れます。
BOARDの車に乗せられて連れて行かれる士。彼は、ブレイドの世界においてはBOARD社員食堂のチーフという職業に。
髪型もやや乱し気味にキメています。服装だけでなく、ヘアスタイルも変わるようですね。
BOARDのロビーには、社員ランクを示すポールが飾られています。
剣立カズマは、スペードのA。
菱形サクヤは、ダイヤのA。
黒葉ムツキは、クラブのK。
オリジナルの「剣崎一真」が、剣立カズマになったわけですが、あまり名前は変わっていません。
オリジナルの「橘朔也」は、菱形サクヤに。ダイヤだから菱形という、なかなか挑戦的なネーミング(笑)。
オリジナルの「上城睦月」は、黒葉ムツキになりました。クローバーだから「黒葉(くろば)」という、殆どギャグなネーミングが最高です。
士を呼びにきた3人の女子社員は、アイ、マイ、ミー(I、My、Me)という名前で、スペードの8。
士は最低ランクであるスペードの2です。当然士は納得しません。
ちなみにアイ役は、柊瑠美さん。
私が最もNHKの朝ドラを真面目に見ていた時期に、「すずらん」(1999年)という作品がありましたが、その主人公の幼少期をこの柊瑠美さんが演じてました。当時と全然変わってなくてビックリ。
なお、「千と千尋の神隠し」の千尋の声も演じてましたね。
士は、何故ハートのランクがないのか疑問に思いますが、その理由を少なくともアイマイミーの3人は知らないようです。
職場である社員食堂に案内される士。
ランク付けは徹底されていて、社員食道における待遇も、ランクで変わります。
「A(エース)ランチ」は、高級レストランのコース料理に匹敵するもの。
「KQJランチ」は、Aランチよりやや落ちるものの、かなり豪華。
「それ以下ランチ」は、格安定食のレベルです。
しかも、それぞれ部屋が分かれており、上のランクのエリアへの立入は禁止されているという徹底振りです。
旅客機におけるクラスを思い浮かべると分かり易いかと思います。
「立入禁止か...何か、最低の会社だな」
と士。後の言動でも分かりますが、士はしがらみから自由でいたいと望む人間なのです。
さて、今日は給料日だったらしく、エース級の給料をもらって浮かれるカズマの姿が。
「ホントにあの人がブレイドですか?」
「現代によみがえった不死身の生命体・アンデッドを封印する会社・BOARD!...のエース社員らしいよ」
「う~ん、じゃあ仕事でライダーやってるんだ」
夏海とユウスケは、士を追ってBOARDまで来ていました。
既にカズマがブレイドであるという情報を入手しています。いつもながら、夏海のリサーチ能力は卓抜しているようです(笑)。
士は、
「まぁ、名づけるなら、仮面ライダー・サラリーマンだな」
とおどけて見せます。ユウスケは、
「名づけなくていいから」
とツッコミ。士とユウスケは「最高のチーム」であると、龍騎の世界では描かれたわけですが、ボケとツッコミのコンビをも確立しつつあるようです。
そこにアンデッド出現の報が。
士は、
「俺はエースだから、エースランチを食べてから行く」
と、ベンチに寝転がって動こうとしません。士らしい行動が実に可笑しい。
出動したBOARDは、対アンデッドの作戦を展開。
ムツキが状況分析をしつつ、サクヤがアンデッドと格闘。遅れて到着したカズマは、サクヤが建物から追い出したアンデッドを、外で迎え撃つという作戦です。
ノートPCを抱えているのが黒葉ムツキ。
オリジナル・ブレイドでは、ライダー同志は基本的に対立しまくってましたから、このように「社員による連携プレー」を見せるという事こそ、ブレイド世界におけるリ・イマジネーションの真骨頂ということかも知れません。こういった「スパイ大作戦」的な連携を、シリーズ中でいつかやって欲しいですね。
この人物が菱形サクヤ。仮面ライダーギャレンに変身します。
サクヤの冷静沈着な行動によって、作戦は順調に推移するかに思われましたが、ムツキがアンデッドに襲われてしまいます。
ムツキを放っておけないカズマは、アンデッド封印を優先せず、ムツキを助けようとします。
「アンデッドより人の命です!」
とカズマ。しかし、
「貴様!会社の規則を破るのか!」
とサクヤはカズマを非難します。
オリジナルの朔也は、苦悩と葛藤を常に抱えつつも、正義感の強い先輩といった印象でしたが、この世界のサクヤは、BOARDに忠実で融通の利かない人物になっています。ブレイドの先輩であることは同様の趣向です。
一方、ムツキは、オリジナルの睦月から、「少年」「内向的」というイメージを借りて再構築したキャラクターと言えるでしょう。
危機に陥ったブレイドとギャレンを眺める士。
「しょうがねぇ。俺が料理してやるか。コックだけにな」
とディケイドに変身。厨房でのユニフォームのまま、高所に立つという、ヒーロー物自体をカリカチュアライズした感覚がたまりません。士のギャグもわざと滑らせている感じです。
「新しい調理法だ」
と呟き、「KAMEN RIDE RYUKI」で龍騎に変身!
スローモーションを配したアクションが効果的で、色々なバリエーションを生み出そうとする意欲がはっきり伝わってきます。
「焼き加減は、レア?ミディアム?それとも、ウェルダン?」
と余裕を見せつつアンデッドを翻弄するディケイドですが、何となく「仮面ライダーG」におけるゴロウに似てます。狙ったのか?
「ATTACK RIDE STRIKE VENT」で、龍騎のSTRIKE VENTを再現。アンデッドを完全に焼き殺してしまっているところを見ると、ディケイドはアンデッドを封印することなく消滅させることが出来るようです。
となると、前回鎌田が生きていたのは、アンデッドだからということではなく、単純に人間より遥かに強い生命力を持つが故に、アビスの姿で爆発しても生きていたということなのでしょうか。
ここからは、士、カズマ、サクヤの問答。これが実に面白い会話なので、ほぼそのまま採録してみます。
カズマ「お前何なんだ?!」
サクヤ「誰だ?」
カズマ「何とか言え!」
士「ただのコックだ。お前らが飯を食う、社員食堂のな」
サクヤ「貴様、派遣のライダーか?ランクは?」
士「エースに決まってるだろ...いや、さらに上級の、スーパーロイヤルエースだ」
カズマ「いや、スペードの2です。最低ランクですよ」
士「夜明け前の闇は最も深いというだろ」
サクヤ「さっきはいい仕事をした。ランクを上げてやるよう、社長に進言してやる」
士「あいにくだが、サラリーマンになる気はねぇよ」
この中で特に注目すべきは「派遣のライダー」というターム。
オリジナル・ブレイドの時代(と言っても、5年程前ですが)では、「派遣」という言葉にあまり鋭さはなく、今だからこそ響く言葉だと言えるでしょう。
それと、エースランクの人材は、社長に直接進言できるポジションだということが分かります。
さて一方、栄次郎とキバーラは妙に仲良くなっており、石橋さんの怪しすぎる怪演が堪能出来ます。実に嬉しい。
しかし、キバーラがCGではなくプロップの操演に変更されており、翼が動いていない等、何となく動きが不自然に。この点は少々残念です。
光写真館に帰って来た士は、栄次郎にカメラの修理を依頼します。ちゃんとシャッターの不具合の件がここに繋がっていることに感心。
しかも、修理代の先払いを要求する栄次郎、アイマイミーの3人が光写真館にやって来て、「でも、社長がボーナスはずむって」と報告、金が出来たと修理代の支払を約束する士、とちゃんと数珠繋ぎで繋がってくるところが偉い。
流れのスムーズさが気持ちいいシーンでした。
また一方で、ユウスケと夏海は、BOARDの社長・四条に世界の崩壊を食い止める為に協力して欲しいと進言していました。
士が気まぐれに行動する中、ユウスケと夏海はそれなりに使命感を持って行動しており、その対比が鮮やかです。
しかし、四条は真っ先に予算の話を出し、タダでは協力出来ないと話を断るのです。
そこに士、カズマ、サクヤ、ムツキが登場。
世界的不況で予算が削減されつつある中、カズマはムツキを助けるという「身勝手な行動」をした咎で、7に降格を言い渡されます。
士は先の戦闘における戦果を評価され、Kに昇格。ムツキは、カズマの代わりにAに昇格しました。
世界的不況、徹底成果主義...。
社会人の身としては痛いところを突いてきますが、逆にそれを笑い飛ばすかのような作劇法につられて、一緒に笑ってしまうというのが、ブレイドの世界の楽しみ方でしょう。
それにしても、先の戦闘におけるムツキには、特にいい所はなかったにも関わらず、Aに昇格したということは、BOARDはエース級の人材に乏しいのかも知れませんなぁ。
降格したカズマは、社員食堂に配属され、士の部下に。
ここからは、調子に乗る士と不器用なカズマによってドタバタが繰り広げられます。
まず、士はカズマを皿洗いからやらせます。
その間にも士は、
「チーフ、味見お願いします」
「何だこの小洒落た味は。ソースとケチャップをぶちまけろ。隠し味に醤油一滴だ」
と調理のアドバイス。胸ポケットからスプーンをシャキンと取り出す仕草や、かなり適当な味付けアドバイスは、やり過ぎ(笑)。
カズマは、皿を割ったり色々と失敗ばかり。そんなカズマに、士は玉ねぎの皮むきを命じます。士の態度は殆どイジメに近い。
サクヤ「見苦しいなぁカズマ。元エースとしてのプライドはないのか」
ムツキ「もう会社辞めたらどうですか、先輩」
士「そいつらの言う通りだ。やる気がないなら、とっとと去れ」
カズマ「ああ。言われなくても...」
冷たいサクヤと掌を返したような態度をとるムツキの言葉に、カズマは出て行こうとします。
士は...多分何も考えずに言ってるな(笑)。
そこに人の痛みが分かる男・ユウスケが登場。
「それじゃ只の負け犬だぞ。それでもいいのか」
カズマは、
「負け犬...」
と呟き、とりあえず出ていくのを思いとどまります。士はすかさず、
「カズマ、料理を運べ」
と指示。ユウスケが現れると、士も少し優しくなるのです。カズマは、
「ああ。分かったよ」
と言ってAランチの配膳へ。
ところが、配膳でカズマは大失敗(本当にあり得ないくらいメチャクチャに)し、とうとうランク2へと格下げになってしまいます。
四条にブレイバックルを返上するよう命ぜられるカズマ。
しかし、ブレイバックルを持ったまま、カズマは四条の元から逃走します。
エースから一気に最低ランクに降格したカズマ。それは、リストラの戯画です。
上級としてのプライドを持ったまま、降格した人間が見せる、焦りと憤りが大袈裟ながらもよく表現されていると思います。
ブレイバックルは、いわばプライドをシンボライズしたものであり、プライドがアイデンティティとなってしまった人間の、脆さや危うさといった面を描いています。
そしてここで真打登場!
「私が行こう。ライダーとアンデッドが手を組み、世界の統率者となるのだ。フフフ...」
そう、鎌田です。ここでも期待通り怪しげな笑みを浮かべてくれました。
その頃、キバーラと鳴滝は合流していました。
「ディケイドは社員食堂で足止めよ」
「今度こそ、私の実験の邪魔はさせん!」
夏海がそこを通りかかり、その会話を聞いています。
「キバーラ、あなた何か知ってるんでしょ?」
「あたしは謎の女よ」
キバーラにサラリとかわされてしまう夏海。キバーラがスパイであることは、ここで完全に露呈したわけです。
夏海はキバーラに疑惑を向け、栄次郎はキバーラと仲良く...。もしかしたら爺さんと孫の間で何かひと波乱あるかも。
にしても、社員食堂で足止めなのは、単なる偶然ですから、鳴滝も随分危うい基盤の上で仕事してますなぁ。
さて、鎌田より先にカズマに追いついていた(というより待ち伏せていた)士は、
「俺の出世を妨げるヤツはただではおかない」
と言ってカズマを制止しますが、手先は器用でも人間関係に関しては不器用な、士らしいセリフです。
しかしそこに鎌田が現れ、ブレイバックルを渡せと迫ります。
ここで鎌田はパラドキサアンデッドに変身!
アンデッドらしいボンテージ系デザインと、カマキリの意匠が見事に反映されています。他のアンデッドと並べても違和感は全くありません。
カズマは変身しようとしますが、パラドキサアンデッドの一撃を食らって倒れてしまいます。
それを見た士は、「探す手間が省けた」とディケイドに変身。
さらにそこへサクヤとムツキも現れ、カズマにブレイバックル返上を要求してきます。勿論、カズマは聞き入れずブレイドに変身。サクヤとムツキもギャレンとレンゲルに変身し、ここに一大乱戦が開始されます。
エースの命令に背いたという理由で、ブレイドを倒そうとするサクヤとムツキ。その間、士は現れたもう一体のアンデッドを倒します。
この大乱戦の様子は、正にオリジナル・ブレイドの雰囲気。といっても、こんな単純な対立構造ではありませんでしたが。
思えば、オリジナル・ブレイドは、アギトにて萌芽したライダー同士の対立が、龍騎、555と続いた後にまた展開されたシリーズなので、少々食傷気味だったのも事実。私などは、ライダー同士が一致団結する「響鬼」に救われた感すら覚えたものです。
ここで、大乱戦を打ち破る大爆発が起こります。
現れたのは、「伝説のライダー」とされるカリス。
オリジナル・ブレイドでもカリスは特別な存在でしたから、嬉しい配置です。
なお、パラドキサアンデッドを封印したラウズカードには、ワイルドカリスへのEVOLUTION効果がありましたが、その辺りは何か関係してくるのでしょうか?
カリスは、カズマからギャレンバックルを無理やりはぎ取り、カズマの変身を解いてしまいます。
「世話の焼ける部下だぜ」
と士。
「貴様か!この世界を破滅させるライダーとやらは」
とカリス。龍騎の世界ではこのシチュエーションは省略されていましたが、今回は何と主役ライダーであるカズマの敵役にあたるカリスが、その役割を担うという意外な展開に。
これは、いわばカリスが鳴滝と接触しているということを示すわけで、カリスの正体があの人物であるということを、暗に示しているのですが...。
「俺ほどハートフルなライダーはいないぜ。ハートのライダーさん」
「ほざけ!」
士の軽口も炸裂し、ディケイド VS カリスの戦いが始まる...といったところで今回はお開き。
ストーリー的には、カズマがエースから最低ランクに降格したという動きしかなく、周囲の人物はそれなりに好き勝手に動いているという印象。
その割に充実度が高い感じがするのは、それぞれのキャラクターを生かしたギャグの充実と、世界観を大いに笑い飛ばした姿勢故かと思われます。
士はこれまでの職業の中で最も活き活きとしていますし、ユウスケの役割も更に確立されてきています。
さて、後半はどうなるか。期待は高まります。
匿名
「カズマからブレイバックルを」が正しいのでは?