キバ編後編です。
士がこの世界を救う為にやらなければならなかったこと、それはワタルをファンガイアの王にすることでした。
しかも、ユウスケがいなければ達成できなかったかも知れないわけで、ちゃんとユウスケの存在が活きているのは見事。
この前後編、いちおうオリジナル・キバの主要な要素がギュッと圧縮されていました。
ファンガイアの王たる父の存在という要素は、太牙の父・キングから。
静かな父性愛という要素は、渡の父・音也から。
ワタル少年がファンガイアと人間のハーフであるという設定は、渡その人と同じ。ただし、父母を入れ替えてます。
また、オリジナル・キバ終盤における渡の行動が、常にネガティヴな方向であったのに対し(ラストはギャグテイストで明るく纏めてましたが)、ワタルの場合は王座に就くことで人間とファンガイアの調和をもたらすという、希望的エンディングを想起させるものになりました。
「ディケイド」が標榜する「リ・イマジネーション」の現れですね。
ちなみに、クウガ編、キバ編を経て、「ディケイド」のパターンが何となく確立した感じがします。これから先、変わっていくかも知れませんが、現時点では、
- 光写真館にて、栄次郎が何らかのきっかけで背景紙を下ろす
- 光写真館を出ると、違う世界になっている
- 外に出た士の姿が、その世界に適する職業のものになる
- 早々に、その世界の主役ライダーと出会う
- 一度、「悪魔」と称されて主役ライダーと戦う
- 鳴滝他が呼び出した異世界のライバルライダーと、ディケイドが一戦交える
- 士が、夏海やユウスケと行動を共にするうち、この世界で何をすべきかを見つける
- 士が、その世界の破滅を司る者(ボスキャラ)と対決する
- その時、士は「通りすがりの仮面ライダーだ。憶えておけ!」とボスキャラに言う(憶える間もなく倒されるけれど)
- その時、士と和解したその世界の主役ライダーも参戦する
- その時、「ちょっとくすぐったいぞ」がある
- 士がその世界で撮った1枚の写真を、栄次郎が気に入る
- 光写真館にて、栄次郎が何らかのきっかけで背景紙を下ろす
という感じです。
それで、今回のお話ですが。
ワタルには、ファンガイアの血が抑制できない瞬間があり、それは、人間を好きになった時だと言います。
現に、ユウスケに心を許した際、彼のライフエナジーを吸引してしまいました。
それ故、ワタルはファンガイアの王になどなれないと拒否していたのです。
王座に就いてワタルからキバの鎧を奪ったビートルファンガイアは、ファンガイアの掟を反故にし、ファンガイアと人間の共存世界を破壊すべく行動を開始。
ユウスケはボロボロになりながらも、ワタルに王になるよう説得します。
そして、ついに王になる決心をしたワタルは、士と共にビートルファンガイアに立ち向かい、これを倒すのですが...。
最後はちょっと切ないお話に。
では、見所を中心に紹介していきます。
何だか今回はいいセリフが多かった為、セリフ採録が多くなってますがご勘弁を。
まずは、ビートルファンガイア VS ワタル。
ガルル達はビートルファンガイアを見て、ワタルに力を貸すことをためらってしまいます。
ガルルの言っていた「あのお方」とは、やはりビートルファンガイアでした。
かつて、ビートルファンガイアが王になろうとしたことを、ぼんやりと分からせる秀逸な演出ですね。
ビートルファンガイアは、ワタルからキバットバットIII世(つまりキバの鎧)を奪います。
ビートルファンガイアは王となり、掟を無効とし、ファンガイアと人間の共存など不可能だと主張。
これについては、その真相が士の口から語られます。
そこにユウスケが現れ、
「王は、ワタルだ!」
と言ってクウガに変身しますが、ガルル達ファンガイアに囲まれて集団で攻撃されてしまいます。
一方、ディケイド VS カイザ戦も。
「君の力はこの程度...ということでいいのかな?」
というカイザ。
555ファンは草加雅人その人そのものの再来に喝采を送った筈!
印象的なセリフを引っ張りだしてくるサービス精神と研究姿勢。マニアックなサービスとは言え、素晴らしいです。
やや形勢不利となった士は「ATTACK RIDE ILLUSION」で分身し、逆転。
状況を見て、カイザは、
「今日はこんなところかな」
と再び別の世界へ。
いいですねぇ。「こんなところかな」と来ましたか。
自信過剰でプライドが高い彼のキャラクターが、良く現れています。ストーリーには直接関わらないのに、妙なこだわりを感じます。
鳴滝は士に、
「このキバの世界も調和が取れていた。お前が来るまでは」
と言い、破壊を求める新たなキバの誕生に恍惚の表情を浮かべます。
鳴滝の意図はまだまだよく分かりませんが、ディケイドが現れない場合を考えてみると、それぞれが「怪物」に支配される世界になっていくことは間違いないわけで、それを考慮すると、鳴滝は、それぞれの世界を怪物の跋扈する世界に変えていきたいという思惑を持っているのかも知れません。
その後、ユウスケは満身創痍でワタルを迎えに来ます。城(=キャッスルドラン)に戻って欲しいからです。
「城以外ならどこでもいい。連れてけ!連れてってよ!」
「連れてってやるよ。お前が本当に生きたいとこなら。それはどこだ?」
「分からない」
「分かっている...筈だ」
「どうして僕を助ける?僕はもう、王にはなれない」
「俺は、お前が王子だから助けてきた訳じゃない。一人じゃ戦えないって、知ってるからだ。お前には、友達が必要なんだよ」
ワタルの頭をなでるユウスケ。
この「優しいお兄さんな感覚」は、まさにクウガのイメージそのもので、しかも人の弱さを身を以て知っているという要素を加えた、非常に奥深い人物像になっています。
ワタルはユウスケの手を撥ね退け、突如ライフエナジーを吸い始めてしまいます。
我に返ったワタルは凄まじい後悔の念に捕らわれるのですが、ユウスケは自分がキバットを取り戻してくると言って走り去りました。
この「ライフエナジーを吸う」という行為が、ワタルを王座から遠ざける要因になっているのですが、実はビートファンガイアにもそれが当てはまるという、重層構造になっているのです。
光写真館にて、士に事の顛末を話すワタル。
「僕はずっと怖かった。人と親しくなって、友達になりたいと思うと、心のどこかで、その人の命が、ライフエナジーが欲しくてたまらなくなるんだ。だから、僕は王になっちゃいけないと思った。人とファンガイアが仲良くなんて掟は嘘だ。不可能だ。僕が、醜いこの僕が証拠だ」
「だからずっと一人で生きていくのか?誰も好きにならず、心も開かず」
「ああそうだ。僕は誰も傷つけたくない」
「でもお前はユウスケのことを襲った。それは、ユウスケのことが好きになったからじゃないのか?」
「今度僕の中のファンガイアが目覚めたら、完全な怪物になってしまう」
「心配するな。そん時は俺が倒す。俺は破壊者だ。悪魔だからな」
士は、鳴滝の言葉を少々気にしている様子。
あまり表に見せないものの、実は意外に動揺しているのかも知れません。
キャッスルドランに姿を現す謎の男。
もう既にその正体は明らかなんですけど、一応この時点では、まだ「謎の男」です。
場面が転換され、王となったビートルファンガイアに、「人間とファンガイアの対立が混沌を生む」と進言するドッガ達。
しかし、反抗的な言動をとるファンガイア達を、ビートルファンガイアは吸収。パワーアップを果たします。
その後、キャッスルドランに士が現れてディケイドに変身。スワローテイルファンガイアをかなり簡単に倒してしまいます。
そして今度はビートルファンガイアと対峙。
「ファンガイアは人を襲い、人はファンガイアを恐れる。そこには殺し合いしかない」
と主張するビートルファンガイア。
士はそんなビートルファンガイアに立ち向かうものの、その力は強力。
スワローテイルファンガイア戦を直前に持って来て、しかも容易に倒しているので、ビートルファンガイアの強さが際立つ仕掛け。巧い処理です。
「お前も信じてはいないだろう。ファンガイアと人間の共存など」
「俺にとって、ファンガイアも人間も変わらない。倒すべきものは倒す!それだけだ!」
この士のセリフ、これまた秀逸。
何と言っても、「ファンガイアも人間も変わらない。同じ命だ」とか言わないところがいい。「倒すべきものは倒す」ですから、説教臭さもありません。
士は、あくまで「破壊者」として振る舞っているのです。
ビートルファンガイアは、
「愚かな...」
とドガバキフォームに。
ちゃんと出してきますね。
しかも、ガルル達を取り込むシーンがきちんと描かれていた為、ビジュアルのパワーアップとシチュエーションとしてのパワーアップが両面で効いています。この処理も凄く巧い。
当然、士は圧倒されます。
その戦いの中、ユウスケとワタルが登場。
ユウスケはワタルに「逃げろ」と言うのですが、ワタルはその場から動きません。
ワタルに与えられた最後のチャンスはユウスケのライフエナジーを吸いつくすこと。
ワタルはジリジリとユウスケに近付いていきますが...。
ワタルは、
「この人を、解放して!」
と言います。
「ワタル!もういい!」
「まだ、約束を果たしてもらってない。僕の行きたいところに、連れてってくれると言ったでしょ?」
「ワタル...」
「やっと分かった。僕の行きたいところが。僕は、まだあなたの友達ですか?」
「当たり前だろ?」
このユウスケの表情がいい。
友達というキーワードは、ともすれば画面を湿っぽくしてしまうのですが、ワタルとユウスケには年齢差がある為、爽やかなイメージに仕上げられています。素晴らしいです。無駄がない。
「バカな!人間とファンガイアの友情だと?」
とビートルファンガイア。
そこですかさず士が、
「ワタルは、信じるものの為に戦える。それが王だ。王の資格だ!」
と付け加えます。
ビートルファンガイアがかつて王座を放棄したのは、自分の弱さ(つまり、ファンガイアとしての本能を制御できない弱さ)に負けたのだと、非難気味に言い添える士。
ビートルファンガイア自身に語らせるのではなく、士の口から語らせることで、逆にビートルファンガイアの心情を印象付けるという手法が光ります。
「僕は、王に、なりたい!」
ワタルの覚悟を聞いて、士がキバットを撃ち、キバットを我に返らせます。
ワタルはキバに変身、士と共にビートルファンガイアに立ち向かいます。
戦いの中、
「お前は望んでいたんじゃないのか。ワタルが、お前が失った夢を叶えることを!」
と指摘する士。
この時点で、ビートルファンガイアがワタルの父親であることを、視聴者にはっきり伝えています。
この瞬間から、ワタルは無自覚に父親を倒す運命へと牽引されていきます。
「貴様、何者だ!」
「通りすがりの、仮面ライダーだ!覚えておけ!」
これは是非パターン化して欲しいですね。
ビートルファンガイアは外に出て、キャッスルドランを使って攻撃を開始しようとします。
「倒します!僕は王です!」
とワタル。
ここで、ちょっと振り返ってみます。
ワタルの口調が変わったのにお気づきでしょうか。
ユウスケとの「友達」に関する会話の最中、それまでの、子供らしからぬ高慢な口調から、年上を敬う口調に変化しています。
このクライマックスシーンでも、「倒す!僕は王だ!」という力強い宣言でも良かったのですが、丁寧な口調は、ワタルがファンガイアとしての本能を抑制する理性を身につけたという状況を印象付けるのに、かなりの効果をもたらしています。
さて、ワタルの宣言を聞いた士は、キバの「FINAL FORMRIDE」を発動。
「ちょっとくすぐったいぞ」
これも定番化して欲しいです。今回はキバに背を向けるよう指示する「間」が絶妙。
何と、キバは巨大な弓矢に変形!
これは大胆ですね。しかしながら、キバットを前面にフィーチュアしたデザイン、ヘルズゲートの開放など、ちゃんとキャラクターの特徴を押さえているのには感心します。
そして矢が炸裂した後は、クウガ編での必殺技と同様に、2大ライダーの同時必殺キック!
駆けつけたユウスケは、
「良くやったな、王さま」
とワタルを称え、ワタルは、
「あなたたちのおかげです」
と答えるのでした。
ここでワタルは初めて笑顔になります。
ユウスケは「ワタルの笑顔」の為に戦ったわけです。巧い。
事件の後、士は例の廃屋へ。そこには、ビートルファンガイアが。そして、その姿は「謎の男」に変わります。
既に謎の男=ビートルファンガイアであることは、状況的に明らかでしたが、最後の最後で視覚的に示したことになります。
「ワタルは、いい王になれるんだろうか」
「なるさ。あんたの息子だ」
「分かっていたのか」
「あんたの息子に、自分と同じ過ちを繰り返させない為に」
士はレクイエムを弾きはじめます。
砕け散るビートルファンガイア...。最後のピチカットまで弾かないところで息絶えるのがミソ。
そこにワタルがやって来て、「僕、ここで生まれたんです」と士に打ち明けます。
「ここから始めます。人間とファンガイアが本当に共存できる世界を」
ワタルは知らない内に自分の父親を倒してしまったのですが、王というキーワードがある以上、王権を得る為のイニシエーションだと解釈できます。
親を超えていく。この非常に重いテーマを、爽やかに、しかもちょっとしんみり描いたキバ編は、オリジナル・キバとは違う、見事なリ・イマジネーションでした。
光写真館に戻った一同。
士は「破壊者」という言葉にこだわるのですが、夏海はもっとポジティヴに士の存在を受け止めている様子。なかなかいい雰囲気です。
今回は夏海のキャプを忘れていました。ファンの方々、すみません...。
今回士が撮った「傑作」写真はこれ。
栄次郎は「なかなかいい写真だ」と言います。
その世界のライダーと、それにまつわる、既に他界した人物とを映し撮るのが定番なのでしょうか。
そして次は、龍騎の世界!
ユウスケ、そしてキバーラも一緒に旅をすることになりました。
赤座伴番
こんにちは(^∀^)
いつも楽しく見てます。今回初めてのコメントですー。
画像付きでわかりやすいので助かります!
龍騎編のも頑張って書いてください!!