第2話「クウガの世界」

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 前回のラストで士と夏海(というより光写真館の面々)が移動してきた「クウガの世界」。

 今回はこの世界で話が進んでいきます。


 「ディケイド宇宙観」での仮面ライダークウガは、五代雄介ではなく小野寺ユウスケ。また、クウガの理解者である一条薫刑事にあたる人物として、八代藍が設定されています。

 前回、八代藍を「八代薫」と書いてしまい、一条薫と名前が共通している旨に言及しましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします。


 で、肝心の本編ですが、これが実に面白い。

 仮面ライダークウガの作品世界をトレースしつつ、「ディケイド」の観点で成立するよう再構築されており、当時に比べて発達した映像表現も加わって、これぞ新しいクウガ。

 ここでのクウガの世界は、「ディケイド」では9つある世界の内の一つである為、かなり端折っている感は否めませんが、元々「クウガ」自体がシンプルな構造の上に、複雑な時間進行の足枷や登場人物の機微を交えて重厚に展開した物語なので、この程度の描写でも違和感はなく、むしろ「よくやった」と言いたくなるわけです。


 逆に、「クウガ」は平成ライダー第一弾である上に、オダギリジョーさんという稀代の「素材」を得た作品であった故、コアなファンは他のシリーズに増してコアであり、今回の再構築には非難の声も上がろうかと思います。

 しかし、オダギリジョーさん関連の「大人の事情」なんてものがあったと仮定するにしても、私は既に華のありすぎるオリジナルキャストを登場させて主役であるディケイドを食ってしまうより、いい選択だったと思っています。

 「誰かの笑顔を守る為」に「泣きながら拳を振るって」いた五代雄介とは違い、「自分の為」に「やや軽い気持ちで拳を振るって」いる小野寺ユウスケ。180度違う性格設定にすることで、全く別個の「クウガ」を創造しているのですから、オリジナルの「仮面ライダークウガ」を侵犯するようなことはないでしょう。

 一条さんの役どころを、女性に、しかもちょっと年上な感じに設定したところも巧いところで(一条刑事は五代雄介と一応同学年という設定)、無鉄砲に見えるクウガを心配しているという感覚が増幅されており、端折られるからこそ生きる措置だと評価できるでしょう。


 では、今回のストーリーにおける要点を整理してみます。

 まずは今回の「笑いのツボ」。

士と夏海


 気を取り直して...。


 士は「クウガの世界」では巡査に。

士

 「クウガ」と言えば警察、という連想は安易ですけど、本質を見事に突いています。

 士を警察関係者にすることで、警察と絡みやすくするという意図ですね。

 ただ、士は巡査という地位を利用するというより、巡査のコスプレをして横柄な態度をとる青年といった描写になってます。これが可笑しくて実にいいのです。



 なお、光写真館はそれぞれの世界にあわせて外観を変えていく模様。

光写真館

 というより、ユウスケが「喫茶店では?」と尋ねていることから、各々の世界の「扉」にあたる建造物が、自動的に「光写真館」になると言った方が適当です。

 「喫茶店」という言葉を聴いて「ポレポレ」を思い出した人も多いはず。さすがにポレポレの外観ではありませんでしたけど。



 この世界では、オリジナル通り「未確認生命体(グロンギ)」が規則性に則って殺戮を行っており、オリジナル通り「未確認生命体第4号」と呼ばれている仮面ライダークウガが、警察に協力しつつ「未確認生命体」に対抗しているという構図が繰り広げられてします。

 冒頭からグロンギの怪人相手に大立ち回りを見せてくれるクウガ。シンプルなスタイルが美しいですね。

 ファイティングスタイルは、オリジナルで見られた「ちょっと戦いに不慣れな感じ」とはかなり異なりますが、クウガの紋章を光らせながらグロンギ怪人が爆発するなど、オリジナルに忠実な絵作りに好感が持てます。


 この冒頭のアクションはマイティフォームで行われ、数シーンを挟んだ後、倉庫での戦闘が繰り広げられます。


 倉庫戦では、ドラゴンフォーム登場。

仮面ライダークウガ

 士の「なるほど、よく出来ている」というクウガ評が挿入されますが、これはクウガを知らない人向けの説明ですね。

 さらに、オリジナル通りパートナーの刑事の銃を受け取ってペガサスフォームに。

仮面ライダークウガ

 空中の敵をペガサスフォームで落とすという、セオリーどおりの展開が気持ちいい。


 戦闘後、「自分の変身がどうだったか」を藍に尋ねるユウスケ。藍が戦果を一応評価した為、ちゃっかり飯の要求の図。

ユウスケと藍

 藍はユウスケの身体を心配しており、飯の要求には取り合わないのですが、やり取り自体がコミカルなので、あまり重々しさを感じさせません。

 今「クウガ」が制作されたら、このくらいのライトテイストじゃないと受け入れられないかも、ね...。



 ここで、留意事項として「女性警官のみがグロンギに狙われている」ことを気に留めておく必要があります。



 直後、また女性警官に犠牲者が出て、士はディケイドとしてグロンギの怪人を倒しに来るのですが、この時に怪人からゲゲル(殺人ゲーム)の法則を聞き出していたことが、後から分かります。

 ディケイドの「ファイナルアタックライド」である「ディメンションキック」なる必殺キックも披露。

 ある意味地味なクウガの必殺技に対して、ド派手な必殺技を披露することで、インパクトを与えています。


 ユウスケがディケイドを「未確認生命体10号」と呼ぶくだりは、「10」を強調した一種のお遊びかと。

 それにしても、グロンギに「ン」種族が出ようかという折に、まだ9号までしか出現していないとは(笑)。



 その後、ユウスケと藍は喫茶店と勘違いして(というより、元々喫茶店だった筈の)光写真館に来訪。

 士の「未確認生命体第4号というバケモノ」という発言に怒ったユウスケは、外に出て行きます。

 夏海が追いかけてきて、「藍がユウスケを本当に心配している」とユウスケに告げるシーン。

ユウスケと夏海

 ここでは、トライチェイサーのエンジンがなかなかかからず、ユウスケがスターターをキックする度にカメラがパンするという妙な演出が見られます。



 翌日、士は横柄な態度で未確認生命体対策本部会議に乱入。

 ここで犠牲となった女性警官の、生年月日の末尾の数字が「37564(ミナゴロシ)」になるという法則性を説いて、刑事達を納得させます。

士と藍

 そんなことで納得するの?というのが正直なところですが、オリジナル「クウガ」のゲゲルにしても、ちょっと笑ってしまうような法則性があるにはあったので、これはまぁ許容範囲かと。



 で、その「37564(ミナゴロシ)」は実はフェイク。

 警察の目をその法則に向けさせ、実際にゲゲルが行われる場所に藍1人だけを置くことが、士の目的でした。

 本当の「法則」は、灯溶山にある古代遺跡を中心とし、そこから等距離の場所で女性を流血なしで絶命させるというもの。

 士はグロンギ語を流暢に操って、グロンギの怪人達を挑発。

士

 グロンギ語を流暢に操れる人間は、オリジナル「クウガ」には皆無でしたから、非常に新鮮な驚きがあります。


 士は、怪人達の目の前で藍の顔面を殴りつけて鼻血を出させることで、「血を流さない殺人」を失敗させ、ゲゲルを失敗に終わらせるのでした。

藍

 確かに「鼻血」は最も軽い「流血を伴う怪我」かも知れませんが、女性の顔面を容赦なく殴りつける主人公ってのが、何とも凄いですな。


 士はディケイドに変身し、グロンギの怪人の内、1体をさっさと片付けてしまいます。

仮面ライダーディケイド

 グロンギ怪人を易々と翻弄するディケイドの強さは、「クウガの世界」を破壊するに相応しいものでしょう。


 そして、何故かユウスケは「ディケイド」の名とその存在意義(仮面ライダーを倒しに来る存在)を知っており、ディケイドに襲い掛かります。

仮面ライダーディケイドと仮面ライダークウガ

 仮面ライダー同士が戦う構図は、平成ライダーでは食傷気味な程存在しますが、今回のこの対立構造は、ユウスケが自分を守る為に仕掛けたものですから、あまり嫌味がありません。


 夏海は2人が戦うのを見て、自分の夢の続きを思い出します。

 そこには、黒いアルティメットフォームが!まさかこんなところで出てくるとは思いませんでした。

仮面ライダークウガ

 夏海の夢は、この「黒い凄まじき戦士」とディケイドの衝突で、周囲が崩壊していく様を捉えています。


 夏海は2人の戦いを止めようとしますが、ユウスケは戦いをやめようとはせず、士も戦ってみれば何かが分かるかもしれないと言い、それを受けようとします。

 戦闘中、タイタンフォームも披露。

仮面ライダークウガ

 タイタンソードは、直前に地味な(笑)マイティキックで倒した、グロンギ怪人の所有物から作り出しています。

 1話の中で、ちゃんと4フォーム披露するあたり、サービス精神は旺盛ですね。嬉しいところです。


 ここで鳴滝なる謎の人物登場!

鳴滝

 この人物、9つのライダー世界の存在を知っており、ディケイドによって各世界を巡回されるのを嫌がっているようです。

 ディケイドの旅が「世界を救う旅」ならば、鳴滝が求めているのは「世界が滅ぶこと」であるように見受けられますが、果たして?


 で、鳴滝が呼び出したのは、地獄~ヤサグレ~兄弟!

仮面ライダーパンチホッパー

仮面ライダーキックホッパー

 何と、オリジナルキャストの徳山さんと内山さんが声を当てています!

 出せる人は出すという姿勢が、図らずも露呈(笑)。


 それにしても、徳山さんは戦隊にも出演中なわけで、声だけとはいえ、仮面ライダーと戦隊に同時出演を果たしたわけです。

 これは、「秘密戦隊ゴレンジャー」と「仮面ライダーストロンガー」で宮内洋さんが同時期出演したのと同じ現象なわけです。


 で、ここでキックホッパーとパンチホッパーが出現したということは、いわゆる脇役ライダーは、この鳴滝によってあっちこっちの世界に出現する設定が出来たということ。

 つまり、9つの世界の主役ライダーはそれぞれの世界に出てきますが、他のライダーは世界観に関係なく、色んなところに出現できるということになり、画面のバラエティさが広がる可能性があるわけです。


 なかなかイイじゃないですか。ディケイドの制作方針。

 人気の高いヤサグレ兄弟登場に、まずは乾杯ですね。


 ...でもこれって、S.H.Figuartsの販促だったりして(笑)。

 画面見て欲しくなりましたとも、ええ。