思慮深さがアドバンテージであり弱点でもあるメルトにまつわる一編。マスターブルーが登場したり、メルトの弱点を解決するのが仲間との信頼関係だったりと、未だ明確ではない「リュウソウジャー」のテーマを一歩見通しの良い段階に進めるエピソードだったと思います。
ドラマのギミックも一歩進んでおり、オーソドックスを志向しつつ新鮮味溢れる感覚を導入することに成功しています。
ミミックマイナソー
宝箱に偽装するモンスターでお馴染みのミミックがモチーフ。デザインも何も、本当に宝箱の小道具でしかないところが凄いですね。
序盤にて、コウ、メルト、アスナ、トワを飲み込んで体内の異空間に閉じ込めるシーンがありましたが、この時点では単なるトラップとしか認識されないのが巧いところ。実はこの「トラップ」こそがマイナソーだった…というのが意外性のある謎解きになっています。
この事実に気付くのが、内部に居るメルトと外部に居るバンバだというのも見事。この二人がこれまでも謎解きのほとんどを担当しているだけあって、面目躍如といったところですね。
また、このマイナソーの「元」が器物だったことも衝撃でした。アニミズムに根ざした「妖怪」の世界観にも踏み込んだことになり、SF志向だったウルトラに石堂淑朗さんが持ち込んだ概念を彷彿とさせます。東映作品で近いところだと、「超神ビビューン」でしょうか。
何も人間だけが感情を持っているわけではないという前提が披露された格好ですが、動物を飛び越えていきなり器物に行ってしまうあたりが、今シーズンの思い切りの良さであり欠点なのかも知れません。
思慮なしチーム
コウ、アスナ、トワの3人は、ミミックマイナソーの「リアル宝探しゲーム」に夢中。
コウは「広い世界を見たい」として空を飛ぶ能力を身につけますが、空には見えない境界が。これがメルトに「気付き」を与えます。
アスナは無限焼肉でその大食ぶりを発揮。前回のコミカルキャラといい、今回の大食いキャラといい、実は「可憐なキレンジャー」を目指しているのではないかと思わせるところがありますね。私は好きですが(笑)。
トワの強くなりたいという願望を満たすべく、彼の前にはドルイドンが次々と出現。倒しても倒しても出てくる割に、楽しそうなトワにちょっとした危うさを感じられました。
この中で、コウは「空の壁」にぶつかって早々に願望を遮られたからか、他の2人よりはいち早く冷静さを取り戻しています。このあたりはレッドらしい配慮ですね。
メルト
今回のメイン。思慮深いが故に考えすぎて行動に移せないことを、コウやアスナから批判されるというシーンを受け、メルトは実のところ以前からそれを自覚しており、自分に自信を持てないという設定で開始します。
これまでの描写からは、自信のなさは伺えない感じでしたが、それでも思慮深さについては描かれ続けて来たので、違和感はありませんでしたね。
そして、メルトは心の底ではマスターブルーの存在を切望しており、彼自身が宝箱を開けなくとも、マスターの魂はメルトの苦悩に寄り添うべく現れたというのが熱い。メルトの思慮深さこそが最大の武器である一方、それを生かすには仲間同士の信頼が必要だと説くシーンは、説得力に満ちていました。
劇中では、メルトの欲しいものが「自信」だという解になっていましたが、その「自信」を育ててやれなかったというのが、マスターブルーの心残りだったとしたら…。イイ話です。
バンバ
リュウソウブラックだけ完全に別行動だというのがいいですね。完全に融和していないチームですが、それぞれがベストを尽くすことで、自然と問題解決に繋がっていく感覚は、様式美を排した戦隊における理想像とでも形容し得る姿でした。
バンバは常にマイナソーの原因を探って対処方法を考えることを優先しており、今回もそれが強く表れています。そして何より、遂にその「元」を一刀両断するシーンが登場!
ミミックマイナソーの「元」は忘れられた骨董品だったので、容赦なく破壊して一件落着。妖怪的な世界観を標榜しつつ、その魂の存在は器物故に考慮しないところがドライで衝撃でした。単純な「供養」に話を持って行かないあたり、何となく「覚悟」のようなものが見えた気がします。
次回
正真正銘アスナ編です(笑)。コメディエンヌとして振り切るのか、はたまた正当派ヒロインとしての貌を見せてくれるのか…楽しみですね。