正に「奇跡の歌声」。残念ながら「アスナ編」ではありませんでしたが、今シーズンのヒロインの方向性をかなり決定付けた一編だったと思います。
坂本組のハイテンポな作風は、シリアスとコミカルが交差する本編に見事マッチ。様々なフェイクを次々とほどいていく醍醐味も素晴らしいものがありました。
コカトリスマイナソー
前回から引き続き登場のコカトリスマイナソー。まずは一つ目のフェイクとして、このコカトリスマイナソーを生み出したのが、例の演歌歌手ではなかったという点を挙げることができます。
前回の時点で、あまりにもコミカルなキャラクターだったため、これは違うぞと分かるのですが、まさかマイナソーを生み出したのがフィータだったというところまでは、推測できていませんでした。
体内にフィータを人質(?)にとっているというのが新要素でしたが、それによって倒すこと自体の難度がグッと上がっているあたり、なかなか巧い仕掛け。メンバーそれぞれの「特技」を結集して解決する流れも非常に良かったですね。
姉妹のフェイク
2つ目のフェイクは、カルデナが騎士竜やマイナソーのことをよく知っているというもの。「何か企んでいるからよく知っている」という誘導があり、その内情(フィータを人質にとられていた、ワイズルーに騎士竜爆破を指示されていた)の開示によって一気に疑惑が晴れていくプロセスは、非常にダイナミックでした。
3つ目は勿論フィータ。実はワイズルーの変身だったというのは、私も見抜けませんでした。それにしても、フィータが音痴を苦手としているという性質、わざわざワイズルーが再現していたと考えると、妙に笑えてきますよね。後の「作戦」の大きなヒントになってしまったのですから、ワイズルーもやり過ぎですな。それにしても、「ワイズルーとしてのフィータ」の演技、素晴らしかったですね。
一方で、ティラミーゴに与えようとした爆弾はフェイクではありませんでした。直前で止めようとするカルデナ、アイコンタクトで無事を約束するコウのやり取りが素晴らしい雰囲気で、信頼感のみに基づく古き佳きヒロイズムが感じられましたね。
大作戦!
「スパイ大作戦」ばりの騙しが炸裂。それが4つ目のフェイクです。
「フエソウル」を使って騎士竜たちのコピーを作っておき、それを爆発させることで見事にワイズルーを騙してしまいました。これも予想外。してやられましたね。
そもそも「ゴレンジャー」も究極のところではイーグルと黒十字軍の化かし合いですし、その「ゴレンジャー」の企画も「スパイ大作戦」からのインスパイアですからね。ちなみに、坂本監督の作品には、こういった騙しのテクニックを使うエピソードが散見され、監督の考えるヒロイズムの源流を推察することができますね。70年代の特撮ヒーローは、普通に悪の組織の裏をかくことを通例としていましたし、特に東映の作品では現在もそのあたりに抵抗がないように思います。
フィータの救出大作戦は、互いの信頼がなければ不可能。フィータを傷つけない太刀筋、そしてトワのスピードを信頼していなければ為し得ません。すべてがカチッとはまっていく快感は見事でしたね。
アスナの歌!
フィータが生み出したコカトリスマイナソー対策として、フィータの嫌う「下手な歌」を用いるという作戦。そこに駆り出されたのがアスナでした。
イントロに合わせ、粛々たる雰囲気を柔らかい表情で表現するアスナの美しさから、いきなり飛び出す調子外れなボエボエ! 歌声は可愛いのに、あれだけの破壊力を出せるのが凄いです。公式サイトのレポでは、わざと下手に歌うのがかなりの困難を伴ったとあり、その苦労のほどが垣間見られます。
ここで気付くのは、アスナがコメディリリーフ担当のヒロインを目指しているのではないかということです。これはかなり珍しいことで、可憐なのにあり得ない力持ちで音痴、そしておてんばといった属性がほとんどギャグとして使用可能。近年の戦隊を振り返っても、なかなか列挙に至りません。遡りまくって、「ジェットマン」のブルースワロー=アコちゃんぐらいではないでしょうか。
まだ本領発揮ではないので、これから変化する可能性は充分ありますが、少なくともコメディを担うだけの要素は他のメンバーに比べても多分に持っているとだけは言えるでしょう。
目を逸らすバンバ
今回はメルトとバンバの知性を印象付けるエピソードでした。メルトとバンバは二人でほぼ同じ推測をしており、特にバンバは短絡的にマイナソーの元を絶つ行動にも出ません。ここには既にコウたちにシンパシィを抱いているトワの影響も少なくないでしょう。勿論、フィータの件に気付いていて、絶ちようがないという事情もありますけど。
事件解決後、コウと拳を打ち合わせるバンバは目を逸らしていましたが、まあ照れでしょうね(笑)。ただ、まだまだバンバ自信の過去については明かされていないので、もうひと悶着あってくれるといいですね。
なお、この「拳を打ち合わせる」という行為も坂本監督の作品では頻出。漢は拳で語り合うのです(笑)。
次回
次回はちょっと楽しい雰囲気でしょうか? どうやらメルト編になりそうですね。マスターブルーの登場も実に嬉しいところです。