SirMilesのマニアックな日々

快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー #32「決闘を申し込む」

 5つの金庫を持つゴーシュの実験体を倒すべく、快盗と警察の共闘を画策するノエルの物語。

 全体的にシリアスムードで、コミカルなシーンもほとんど見られないという、今シーズンとしては割と珍しい作風で、ここ最近の両チームの歩み寄りムードまで破壊するような、圭一郎の激しいイデオロギーの発露が鮮烈でした。

 ただ、「決闘」に関しては少々ノれなかった面も。ノエルの策略家たる部分が皆無で、個人のポリシーを真っ正直にアピールしただけとなり、ちょっと彼らしくないなぁ…というのが私の感想でした。

実験体

 前回から引き続いて登場しているギャングラーの怪人。モルモット、フランケンシュタインの怪物といった具合に、「実験」をモチーフとしています。しかも特定の名前がなく、いかにも「創り出された」感が漂う、不気味なヤツです。

 故に、これといった目的意識もなく、ゴーシュの実験データを採取するためだけの存在。こういったド直球の「怪物」は、その「対処」を面白く描くにはうってつけの題材ですね。実際、今回はその攻略戦にのみ帰結するストーリーテリングが、シンプルで効果的でした。勿論、ラストにおいて、圭一郎は心中にノエルや快盗に対する引っかかりを抱えることになるわけですが、それはあくまでエピローグでの話であり、「結」の後に次回以降への仕掛けを見せたに過ぎません。

 5つの金庫には贅沢にもルパンコレクションがそれぞれ収納されており、しかも5つのロックが連動する仕組みで、1つずつでは開けられないという設定になっています。

 それぞれのコレクションが戦闘を有利に進められる能力を有しており、分かり易く「コレクション=戦力」として把握されているため、この実験体の殲滅に至るプロセスには、必ずコレクションの回収というフェーズが入るわけです。回収という快盗の領分、殲滅という警察の領分、双方が作用して初めて落着するというわけですね。

 裏を返せば、両チームを共闘させるには、ここまで理詰めで行かなければならないということでもあります。なんとなくシンパシィで共闘してしまうとか、そういった「感情論」の排除を前提に、ところどころ双方のメンタリティの融解を入れ込むことで重厚なドラマを築いてきたわけで、32話にして両チームの関係がほとんど進展しないのも納得と言えます。

余裕のないノエル

 今回の白眉であり、かつちょっとした瑕疵とも言えるのが、余裕のないノエルの存在。

 「快盗」を名乗るのは最大4人。同時に開けなければならない金庫は5つ。数のアンマッチに、魁利はグッドストライカーでの分身を提案するものの、実験体がコレクション弱体化能力のあるアイテムを持っているため却下。そして初美花がコグレさんを何度も推薦し却下されるくだり、これが今回の数少ないギャグでした。

 結局、ノエルは圭一郎に協力を申し出るという提案をしますが、絶対に協力してくれないことが予想されるため、快盗のクビ(ノエル含めて4人で自首)を賭けて決闘を申し込むという手段に出ます。

 この短絡的な発想が今回のノエルの余裕のなさを端的に表しています。何故これほどまでに余裕がなかったのか。

 実験体の恐るべき(コレクションの)パワーを見せつけられて焦ったという見方もありですが、何となく、5つのコレクションを一気に回収できるチャンスを見逃せないという焦りの方が妥当なように思います。圭一郎との決闘の際、コレクションのコンプリートによって果たされる自分の(そして快盗の)目的を、いつになく熱い口調で語っていたからです。決闘はルパンエックスで臨んでいましたしね。

 そして、魁利の立場とも圭一郎の立場とも違う、独自の道を選択したとも言っていました。実はそこには、両チームの間で巧く立ち回ることに限界を覚えているノエルが居て、正直なポジションを圭一郎にまず吐露した…という解釈も成り立つのでは。あくまで妄想に過ぎませんが、面白いです。

圭一郎の主張

 今回、圭一郎の口からも、安易な共闘路線を排除する発言がありました。咲也やつかさは、快盗の働きがギャングラー殲滅にも一役買っているという認識を持っていますが、全否定こそしないものの、快盗の行動(つまりは警察に対する妨害行為)によってギャングラーの被害が拡大するケースが後を絶たないという発言です。

 我々視聴者ですら忘れかけていた(要するに描写を避けられていた)要素ですね。快盗はあくまでアウトローに立脚しており、市民の安全な生活を守る警察の行動とは相容れないのです。実にインパクトがありました。歩み寄りを突き放したわけですから。

 そんな圭一郎ですから、当然ノエルの要請など聞き入れるはずもない。しかし、熱血漢である圭一郎は、「ノエルの全力」には応えざるを得ない。その流れは巧いと思いましたね。ただ、冒頭にも書いたとおり、圭一郎には「ノエルの策略」に嵌まって欲しかった…とも思います。

 そして「決闘」そのものは、圭一郎が勝ちを譲って決着したかのように描写されました。圭一郎のポリシーは強固そのものですが、情を捨てきれない漢という感覚が強調されたわけです。ここで、圭一郎の下に、魁利とノエルが位置するような関係性が成立してしまいました。

 巨大戦等の描写ではあくまで対等でしたが、メンタリティでは差がついてしまったような気がしますね。

携帯電話コレクション

 実験体の持つ5つのコレクションは、すべて携帯電話型の変身アイテムでした。

 ゴーカイジャーのモバイレーツ、シンケンジャーのショドウフォン、ゴーオンジャーのゴーフォン、ボウケンジャーのアクセルラー、マジレンジャーのマージフォンの5つ。こうして眺めると、携帯電話型の変身アイテムって多いですね!

 一気に5つを回収というのは、カタルシスもありますが、やっぱり勿体ない気も…。

次回

 次回は定番の子供化! それ自体を物語の核に据えた「トッキュウジャー」を挙げるまでもなく、戦隊では結構例がありますよね。予告でもつかさの行動がフィーチュアされてましたが、そういった点でも楽しみです(笑)。

 

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