脚本が大和屋暁先生で、しかも怪人の名前が浦沢義雄先生なので、徹底的なギャグに終始するのかと思いきや、やっぱり一筋縄ではいかない作風でしたね。しかも、次回への引きがあったという、まさかの重要回でもありました。
メインにフィーチュアされたのはつかさ。この人選も結構意外だったのですが、パトレンジャー側は遊び甲斐があるというか、設定や目的意識が単純なだけに、動かしやすいということなのでしょう。
ルパンコレクションその1
冒頭、いきなり改造ポーダマンが登場し、能力も判然としないルパンコレクションがルパンレンジャーに回収された上、巨大戦まで展開して、ルパンレンジャーの活躍をここに凝縮。残りの尺の殆どをパトレンジャーに託すという大胆な構成でした。
この一戦は、ゴーシュとデストラの共同作戦だったようで、ゴーシュの実験データを採取するための捨て戦。ただし、アクションにも特撮にも手抜かりは一切なく、素晴らしい出来映えでしたね。
ここで登場したコレクションは、アバレンジャーのダイノブレスそのものでした。公式サイトには「化石」というキーワードっぽいものはありますが、特にヒントではないように思います。
ヨシー・ウラザー
ステイタス・ダブルでありながら、ゴーシュに一つ金庫を強奪されてしまった哀れな怪人。最近の、ある種のホットワードともいうべき「司法取引」を利用して、自らの保身を企図していました。
この司法取引における一連の言動は、実は嘘でも作戦でもなんでもなく、本心だったことが明らかになります。ごく普通の流れならば、本当に哀れなヤツか、あるいは騙す気満々で警察に乗り込んできたかのいずれかなのですが、今回はルパンコレクションの能力によって善人になってしまったという、とんでもないタネが隠されていました。
コレクションを熟知したノエルは、その能力の発動を注意深く観察していたため、ヨシーに騙されずに済んだというプロットになっていましたが、善人モードのヨシーには騙す意図がなかったわけで、ノエルが危惧していたのが、コレクション回収後に本性を現すことだとすれば、とりあえず納得が行きます。
実際、本性を現したヨシーは凶悪無残な怪物でした。
ネーミングは、冒頭に書いたとおり、大和屋暁さんの師にあたる浦沢義雄さんが元ネタでしょうね。
取り調べ
今回の見所というかギャグシーンと言えば、やはり取り調べシーン。
ノリノリの咲也のアイディアによって展開される数々の取り調べは、古典的な強気の刑事と先輩のベテラン泣き落とし刑事に始まり、ロボコップの扮装を強要されたヒルトップ管理官とジムのコンビ、そして未遂に終わりましたがコロンボ等々を繰り出そうとしていました。ノエルに杉下右京をやらせようとしたり(紅茶を淹れながら「はいぃ??」と応えるノエルに爆笑)と、その暴走振りは特筆に値します。
それぞれのシーン作りは結構凝っていて、狭い取調室のセットでドタバタな様子が繰り広げられる様は、ドリフの刑事コントを彷彿とさせ、我々世代だと余計に笑いのツボに刺さるシーンでしたね(笑)。
そして、呆れたつかさによって普通の取り調べが行われるわけですが、それでもギャグは止まらず…。
姐御!
まず相手を信用することから始めたつかさは、人情派の刑事ドラマに倣っていたように見えます。その様子を、ノエルは後に賞賛していましたが、確かに刑事としての素養と質の高さを感じさせる流れになっていました。
まあ、あの眼力で見つめられたら正直になってしまいますな(笑)。
それは冗談として、司法取引が何たるかを分かり易く説いて、正当派の手法で話を引き出すつかさの手腕は、見事なものがあります。しかし、ここでつかさの熱意に惚れ、姐御と呼び始めたヨシーによって、妄想ギャグが繰り広げられることになろうとは…。
妄想の中では、高校生に扮したパトレンジャーの面々と将来の夢を語り合ったり、何故か旦那に扮した男装のつかさと新婚生活を楽しんでいたり…要するにつかさファンへのサービスが行われたわけで。ここでの雰囲気は、後に展開される場面の緊張感とはかなり乖離していて、インパクトがありました。
対立者ノエル
ノエルは終始ヨシーを危険視しており、さっさとコレクションを奪って一件落着させたいという愚痴を魁利たちに吐露。この発言と、つかさから受けた牽制(ヨシーのコレクションに手を出すなというもの)で、今回のノエルが快盗寄りのポジションでそわそわしていることが分かります。
ただ、ここで終わらないのがノエル。恐らくはつかさに降りかかる危険をも回避する意図があったはずですが、フランスの当局に手を回し、ヨシーを日本支部から移送する手続きをとるのです。
ここで、ノエルの裏工作を鋭く察知したつかさは、ノエルに詰め寄ります。階段でのノエルとつかさの会話は、その段差を活かした演出の妙味もあって、非常に緊張感のあるものでした。こういうシーンやシチュエーションは、警察と公安の裏取引などを視聴者に目撃させる「相棒」の常套句でもあり、今回が一気に(陰謀系)刑事ドラマの雰囲気に染まった瞬間でもあります。
このシーンが、本部付潜入捜査官のノエルと、エリートとは言え一兵卒のつかさの立場の違いまで表現していたと言っては、言い過ぎでしょうか。
ルパンコレクションその2
ヨシーが持っていたのは、「デカレンジャー」のSPライセンスでした。性格をひっくり返すという能力を持ち、実際にヨシーを善人にしていたというのが面白いところです。
本性を現したヨシーに、つかさはやり場のない怒りをぶつけます。実際、善人のヨシーに騙す意図がなかったのは前述のとおり。つかさの怒りは、騙されたようなそうでないような、でも結果的にはギャングラーを信用した自分の過ちに対するもので、ヨシーに実力を行使するしかなかったわけです。その心情は察するに余りありますね。
そんなつかさの心情を察してか、ノエルはつかさの一連の行動を賞賛したのかも知れません。ノエル、イイヤツだ。
つかさには、ウルトラマンAの言葉じゃないですけど、優しさを失わないで欲しいですね。
次回
今回のラスト、得体の知れないゴーシュの実験体が登場。ヨシーの金庫もセットされて巨大化し、パトレンジャーを完膚なきまでに叩きのめされるという、衝撃の幕引きとなりました。
さて次回、この事態をどう打開するかが描かれるわけですが…ノエルと圭一郎の対立劇?? またまた楽しみでなりません。