魁利と圭一郎の珍道中を面白可笑しく描くのか…と思いきや、あまりに鋭い切り込みで魁利の暗部を抉るという、形容し難い一編。
コミカルなギャングラー怪人とその対処法といい、ウソが超下手な国際警察の滑稽な様子といい、お膳立て自体は完全にコメディなのですが、そこにちょっと重いドラマを仕込むことで、ひと味もふた味も違うものになりました。
気付けばもう30話で、ライダーの方も新番組に切り替わりましたが、遂に快盗と警察の関係性に大きく影響するような話が登場したわけで、かなりのインパクトでしたね。
カンクス・ブチルメルカプタン
今回のギャングラー怪人は、あちこちに現れては何もせずに姿を消すという、不可解な行動をとるカンクス。ゴーシュには嫌われており、一筋縄ではいかないヤツだということは冒頭から分かっていますが、まさか恐るべき悪臭を放つ可燃性ガスの使い手だったとは…。
今回はルパンコレクションによってその悪臭を消しているという設定が目新しく、これまで基本的に元々の能力とコレクションの能力は互いに作用すること自体少なかったのですが、まさかの「引き算」的な効果が披露されることになりました。
故に、コレクションを回収した途端、封じ込められていた凄まじい悪臭が現出することになり、ルパンもパトも右往左往。果ては呆れたドグラニオに遣わされたゴーシュによって、倒されもしていないのに巨大化(しかもゴーシュは悪臭に耐えかねて隠れて作業)するという展開で、完全にコメディの語法にて運んでいきます。
巨大化後、バラ撒いた可燃性ガスに一斉に点火するという暴挙に出て、瞬時に悪役らしさを現すに至り、ようやく今回のテーマを一気に体現するクライマックスへと推移することになりました。
潜入捜査官・圭一郎
先日の闇オークションの件から話が繋がっており、盗品を餌に強盗を繰り返す一団が日本の警察によって炙り出され、その盗品が新しいトリガーマシンということもあり、国際警察に白羽の矢が立ったようです。
冒頭、ノエルを誤魔化すための小芝居が、なんとも笑えましたね。中でもヒルトップ管理官の超絶下手な芝居の芝居をするアイクぬわら氏の巧さたるや絶品です(笑)。
ノエルは当然の如く疑いを持ち、圭一郎との動向を魁利に依頼。これで魁利と圭一郎のカップリングが実現することになりました。
ところで、国際警察がノエルを避けた意図は何でしょう? ルパンコレクションが絡んでいる故に、それが快盗の手に渡るのを阻止しようとしたというのが妥当なところでしょうか。ノエルは警察側にとっても有益な人物ではありますが、ことコレクション収集に関しては快盗側の立場であることを崩していないので、警戒したというわけですね。
さて、圭一郎の潜入捜査は、連絡があるまでは基本的に自由時間だったという側面もあり、ノエルに送り込まれた魁利と一緒に食事等を楽しんだりしていました。そこでの交流が、互いの思惑を超えてかなり楽しそうに描写されていたので、後のシーンが本当に切なくなるんですよね。
何故、この二人が対立しなければならないのか、何故、魁利は正体を明かせない立場にあるのか。そういった葛藤が観る者をグイグイ引き込んでいきます。
圭一郎に兄の面影を見る魁利
今回は正にこの一文に尽きます。
- 困っている市民を放っておけない圭一郎は、子供に懐いてもらえないにもかかわらず手を差し伸べ、見かねた魁利が圭一郎をイジって子供を和ませる。
- 子供が無くしてしまった髪飾り。圭一郎は懸命に実物を探すが、魁利は同じものを買って見付けたことにしようとする。
- 圭一郎の方が早く髪飾りを見付けて現れ、最短距離を意図した魁利は後れを取った格好になる。
- 魁利は幼少期、自分よりも困っている人を優先する兄に複雑な思いを抱いた経験があり、その思い出が蘇ってくる。
- 圭一郎との道中が楽しかったのか、魁利は人助けを優先する圭一郎に対し、かつて同様に兄に対して抱いた感情を図らずも抱いてしまう。
この一連の流れでは、実直であろうとする圭一郎と、結果を重視する魁利のスタンスの違いが如実に現れており、そこがテーマなのかと思った次第ですが、実は、圭一郎の実直さは魁利の兄・勝利によく似ているという側面が明かされ、敵対者が兄の面影を持つという要素が魁利に加わることとなり、より一層魁利の苦悩は深くなるのです。これには本当に驚きましたね。
トリガーマシン取引の現場では、実践的な体術を駆使した圭一郎の華麗な立ち回りを見ることができ、テンションもアップ。さらに追跡してきた魁利も現れ、トリガーマシンの奪い合いに発展し、画面を俄然派手になっていくわけですが、ここでも魁利の苦悩をさらに深める展開が待っていました。
カンクスによる火災を一気に鎮火できるのは、二人が奪い合っているトリガーマシンスプラッシュしかないという話になり、その時点で魁利が手に持つそれを、圭一郎は「奪い返さない」選択をするのです。奪い返してトリガーマシンで現場に向かうより、ルパンレッドがダイヤルファイターで持って行った方が早く現場に到着すると踏んだわけです。
この圭一郎の行動が兄に重なり、見事に魁利の心に突き刺さってしまいました。最優先すべきは他者であるというポリシーは、自分を犠牲にしても兄を取り戻したい魁利のポリシーでもあります。そういう「共通点」があるからこそ、余計に兄と重なってしまったのではないでしょうか。ここでの魁利の苦しみは、察するに余りあります。
一件落着後も、ジュレでは一見空疎な魁利を見ることができます。「面倒臭ぇ」という一語は、精一杯強がっているようにも見えて、益々痛々しい雰囲気でしたね。伊藤さんの少年っぽさが余計にそれを増幅しています。
これから、これらの要素がどう物語に作用してくるか、楽しみは尽きませんね。
ローズサーベル!
今回のルパンコレクションは、ダイナピンクの武器であるローズサーベル。エンブレム含め、見た目で即分かりました。
ちなみに、公式サイトのヒントは「爆発」とありましたので、ダイナマンで間違いないですね(笑)。
次回
今回は実に重い話でしたが、次回は警察メンバーのコスプレ回っぽい雰囲気も漂っていて、ちょっとしたコメディ回かも知れません。しかし、今回のように何があるか分からないので油断は禁物です!