初美花の父親が登場し、少し快盗の悲壮感を和らげたコメディ仕立ての一編。しかしながら、メインキャラは魁利という面白いポジショニングが光り、魁利の人間性が、こちらも少し和らいだ感じで描出されました。
残暑厳しい中、ホッと一息つける清涼感に満ちたエピソードでしたね。
早見豪さん
ヒーローっぽい名前が印象的な初美花パパ。ちょっと太めで他人の領域にズカズカ踏み込んでくるといった、カリカチュアライズされた父親像にキレがあります。
初美花とじゃれる魁利を誤解し、ジュレで一騒動繰り広げるところまでは、迷惑な中年男性といった雰囲気があり、初美花の父親としては今一つピンと来ない感じでした。ところが話が進むにつれ、どうやらその言動は初美花への心配が暴走しただけに過ぎず、「非常に善良な市民」の像が徐々に表面化することになります。ここがいいんですよね。実にいい。
魁利が誤解を解くために奔走するという定番の展開よりも、いかに初美花が愛されているかを印象的に描き、あとはリューグへの対抗策をルパンレンジャーとノエルがテンポ良く探っていくというプロセスが重視されることになりました。とは言え、魁利の本質を瞬時に見抜く初美花パパの眼力や、初美花を手放しで褒める「イイヤツ」としての魁利など、あらゆる場面でグッと来る演出が繰り出され、読後感がとにかく良かったですね。
エピローグは、初美花と一緒に束の間の家族団らんを匂わせるシーンで締めていましたが、魁利とは何もないのかとしつこく訊くあたり、何となく魁利のことを気に入ったのではないかと思わせます。逆に、何かあって欲しいのかなぁ…と(笑)。
なお、初美花に「いつでも帰れる家がある」という救いは、意外な要素でありながらもキャラクターへ深みを与える上で効果的でしたね。快盗を構成しているのは悲壮感だけじゃないぞ、と。
リューグ・タマテバッコ
リュウグウノツカイをモチーフとする怪人ですが、その頭部造形が実に醜怪で、派手なボディデザインとの良いコントラストになっています。
人間たちに老化ガスを吸わせて悦に入るという設定は、浦島太郎における乙姫の曲解であり、楽しい設定ですね。私も小学生の頃、こんな「悪役の乙姫」を考案して話を作ったりしました(黒歴史)。
老化ガスの能力は素早く避ける能力がなければ対抗し辛く、その点でノエルはパトレンジャーよりもルパンレンジャーの方が有利だと判断しており、実際にその見立ては当たっていました。しかし、何となく、コレクション回収のためにパトレンジャーを遠ざけるべく、言い訳として用意したロジックにも見えるあたり、ノエルらしいところです。
コレクションの能力は、地面に飛び込んで姿を隠せるというもの。事前に豪とともに接触していた魁利からの情報で、地面に異物があれば飛び込めなくなるという策が奏功したものの、壁にもダイブ可能という点が予想を外れ、予期せぬ苦戦を強いられることになりました。そこに、ノエルがマジックダイヤルファイターを持参して、一気に逆転。新ガジェット登場編をも兼ねているとは、これまた予想外でしたね。
マジックダイヤルファイターについては、巨大戦でも使用され、印象的な戦い(?)を繰り広げていました。
そして、ノエルが改造したVSビークルを自ら使わないのは何故か…という疑問がつかさのモノローグで呈されました。一つ謎が増えましたね。
初美花と透真、そして魁利
今回、ストーリーのメインとなる二人は、冒頭のシーン以外あまり接点を持ちません。別々に行動しつつ、それぞれが初美花の人となりを表現するという、面白い趣向でした。
初美花は19歳の誕生日を迎え、そのために父がやって来たという話を透真に。すかさず透真がフィアンセの父親に怒鳴られたという話を返し、互いのプライベートの一部が初めて交換されたことを伺わせます。一緒にジュレに住み込みで働き、共に快盗稼業をやっていながら、互いのプライベートについてはほとんど知らないという孤独なヒロイズムが鮮やかでしたね。
一方、魁利は前述のとおり、豪の前で初美花を賞賛しています。父親を安心させるためという面もあったかと思いますが、それ故に魁利の情の深さを感じさせます。他人の利用価値を常に量っている魁利も、実は内面に深い優しさを秘めているのだと、強く印象付けられました。
パトレンジャー側が割と分かり易い人物像を打ち出しているのに対し、ルパンレンジャーの方はクールで複雑なメンタルを有しているので、なかなか突き抜けた人物像を披露し難い面があるかと思いますが、ここのところ、実に良い感じに描写されていますよね。
怒濤の鮫
今回のルパンコレクションは、ガオブルーの武器であるシャークカッター。見た目がほぼそのままでした。
公式サイトのヒントは「怒濤」というワード。ガオブルーのキャッチフレーズが「怒濤の鮫」なので、そこそこ分かり易いのではないかと思います。
次回
ちょっとした圭一郎イジりがありそうな予感。果たしてシリアスなのかコメディなのかも予想出来ませんが、それだけに楽しみです。