Episode 30 監視者 -ウォッチャー-

 ビーストが出現し、ナイトレイダーは直ちにスクランブル。憐もウルトラマンに変身しビースト・リザリアスに立ち向かう。その様子をじっと監視する何者かが存在した。ウルトラマンはリザリアスを粉砕、TLTの部隊がその痕跡を隠蔽しようと活動するものの、その一片は気付かれることなく異空間へと消えた。

 石堀は姫矢のデータ消去について、そしてTLT-Jにスパイが潜入しているという噂に関して和倉に詰め寄っていた。その二人の会話を影で聞く詩織…。

 その頃、孤門は憐の勤める遊園地を訪れていた。憐はあっけらかんとプロメテの子である自分について語った。そして、瑞生も現れた。瑞生は憐の監視者に気付いており、怪しい人物を追跡。肉薄するものの、逃亡を許してしまう。憐は遊園地に来た頃から監視されていたと言う。その夜は、ハリスの計らいで孤門や瑞生を含めて夕食会に。

 孤門と瑞生は、監視者の落としたメモリーチップを解析。そこには憐のデータと思しき情報が確認できた。そして、「ラファエルはまだか?」の一文が。一体何を意味するのか? 瑞生は憐の元を訪れ、「ラファエル」について訪ねるが…。

解説

 TLTに関する謎が、少しずつながら見えはじめてきた感のある今回。ところが、実はタームが羅列されただけで全く解決には至っていない。しかしながら、何か謎めいたタームが提示される度に、快感に似たものを味わえるというのは、ネクサス中毒とも言えそうな現象だ。

 今回、吉良沢の独白シーンで、それらのタームが「プロメテの子」「TLT北米本部」「来訪者」「レーテ」「憐」とテロップのようにシーンに直接表示されることにより、分かりやすく斬新な効果をもたらしている。この手法はアニメ的であると言えるが、ネクサスには不思議とマッチしている。姫矢編のときに試みられていたら違和感があったかも知れないが、ファンタジックな味わいを内包する憐編では、うまく機能した名シーンだ。

 ところで、本エピソードでは冒頭にウルトラマンの戦闘が描かれる逆転構成となっていた。前回のスピード感溢れる一話完結の王道構成に酔ったファンは、揺り戻しをかけられるのかと不安に感じたと思うが、それは杞憂であった。冒頭のウルトラマンの戦闘は、頭上から一気にアップに持っていくような挑戦的なアングルなどが見られる、非常にスピーディでカタルシスのあるシーンに仕上がり、その後の憐と孤門、そして瑞生の交流では、平和な雰囲気を随所に漂わせつつも、適度にTLT内部の闇を描くことで硬質なタッチを失わないようにしている。また、監視者を追い詰める瑞生の体術のキレに驚嘆したファンも多くいることだろう。ウルトラマンのカッコ良さを存分に見せつつ、ドラマのスピード感を加速させていった構成は見事というほかない。

 最後に、今回新たに現れた名詞について考えてみたい。まずは「レーテ」。吉良沢は「忘却の海」という修飾を施していたが、「レーテ」はギリシャ神話で冥界に流れている川の名称である。この川の水を飲むことによって、死者が生前の記憶を失って冥界の住人となるという。「記憶を消す」という行為は、ネクサスの重要なテーマの一つである。もう一つが「ラファエル」。これは聖書などに登場する大天使の名前であり、癒しと悪魔祓いのシンボライズとして描かれる。劇中「ラファエルはまだか?」とされていることから、何者かがその出現を待っているようであるが、果たして…?