Episode 11 人形 -マリオネット-

 ストライクチェスターへのフォーメーション訓練で、孤門は完璧なシークェンスをこなした。しかし凪は単純なミスを犯す。凪は「溝呂木」と呼ばれる男との思い出に心を乱されていた。その頃、リコの危機をパルスブレイガーに受信した文字から察した孤門は基地を飛び出す。

 リコの検査結果は、沙耶を驚愕させた。そのリコは病室を抜け出し、自宅へと戻っていた。暗い部屋に光が差すと、そこにはリコの家族が待っていた。しかしそれは、幻…? リコは暗い部屋に一人残されファウストの影に怯えるのだった。そして、沙耶が調査した斉田家は既に謎の失踪を遂げていた!

 一方、孤門に送られた「大切ナモノヲ失ウ」というメッセージは直接パルスブレイガーに送られており、石堀はそれと同種の電波が基地の近くから送られていることを突き止める。凪はそのポイントで溝呂木と再会する…!

 リコの自宅へ向かう孤門の前にファウストが立ちふさがる。「リコはもうじき消える」と言うファウスト。孤門を助けた姫矢はウルトラマンに変身し、メタフィールドを展開。ファウストに苦戦するものの、撃退に成功する。その頃孤門はリコの自宅にたどり着くが、リコの描く「家族の肖像」とは程遠い凄惨な絵画があふれる部屋に愕然とする。

 傷つき彷徨うリコはある記憶を取り戻す。リコの家族はビーストに殺され、リコ自身はナイトレイダーの隊員に撃たれて死んだ!?

解説

 今回は、一つのターニングポイントとなる話である上に、非常に重苦しい雰囲気に包まれた怪作となった。ファウスト(または溝呂木?)に翻弄されるリコの悲運には、驚愕せざるを得ない。この悲劇度はある意味「帰マン」の郷秀樹や「レオ」のおゝとりゲンを超えている。さらに「自分の見ているものが果たして真実か」というテーマが、TLT側とは別の角度から孤門とリコに対して突きつけられているのだ。

 当初より「あの男」として語られてきた溝呂木がついにその姿を現わす。その出で立ちが姫矢と似ているのが面白い。リコに語りかける声が場面によってファウストと溝呂木で使い分けられているのも芸が細かく、溝呂木がリコの運命に大きく関わっているらしいことを印象付ける。一方で、凪と溝呂木の関係が単なる同僚以上のものだったことを思わせる回想シーンが挿入され、孤門、リコ、凪、ひいてはナイトレイダー全体に関わるキャラクターであることは明白だ。

 このように、実に多くの情報と多くの謎を提供した本エピソードだが、映像的に重大なトピックが存在する。それは、中途半端に巨大化したファウストとウルトラマンである。孤門との対比で大体5メートル弱といったところだろうか。孤門の前に立ちはだかるファウストの大きさ加減が実に衝撃的だった。人間に近い目線を持ちながら、威圧するに充分な巨大な体躯。これまでのウルトラシリーズでは一部の例外を除き、ミクロ/等身大/通常の40メートル級という明確な描写しかなかったので、非常に新鮮だった。そのままメタフィールド内の戦闘に突入していくスピード感も抜群。

 ラスト、凄惨な絵に愕然とする孤門と、忌まわしい記憶を呼び覚まして絶叫するリコは、これまでのウルトラの範疇を軽く飛び越えてしまっている。それでもウルトラとしての雰囲気を保っているのは、ウルトラQから存在した数々の実験精神の上に成立しているからだろうか。