第36話 イジゲンセカイ

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ストーリー

 UDFは、前線基地であるベース・タイタンに、新しい防衛システムの導入を検討していた。ディメンション・フォースと呼ばれる、サブジェクト・ファントムの原理を適用した異次元バリアだ。それを可能にしたのは四谷博士。四谷はDASH隊員たちを見下し、豪華料理をオーダー。開発実験を覗くなとクギを刺した。カイトは四谷を怪しむ。ショーンは対抗意識を燃やしていたが…。

 四谷は何か企んでいた。突然動力が低下するベース・タイタン。同時にカイトの前にピグモンが現れ、「レッドキングが来る」と言った。その予告どおりエリアJS201にレッドキングが出現。直ちに迎撃を開始するDASHだが、レッドキングは例の爆発性岩石を腹中に収めているためミサイル攻撃できない。その時、ベース・タイタンの再度の動力低下と同時にレッドキングは消失した。

 異次元に存在するサブジェクト・ファントムに封印されていた生体エネルギーを、何者かが呼び寄せることによって、レッドキングが出現したのだとピグモンは言う。ピグモンも同様だった。レッドキングの出現と消失に際し、ベース・タイタンの動力が低下したことから、四谷が疑われた。案の定、四谷は実験室から逃亡し、ディメンション・フォースも破壊されていた。司令室に現れた四谷は、ウルトラマンマックスを異次元に送り込む兵器を完成させるために、ベース・タイタンの膨大なエネルギーを充填する必要があったと高笑い。立ち向かったピグモンに発射された光線により、ピグモンはエリーと一体化してしまった! ヒジカタ隊長は何かを思い出し、ふと司令室の照明を切った。みるみる小さくなる四谷は、何とシャマー星人だったのだ! そしてカイトは、ピグモンと名乗るエリーに仰天する。

 カイトにベタベタとくっ付くエリー=ピグモンの様子を見、機嫌の悪いミズキとコバ。その時、レッドキングが再び出現した。直ちに出動するDASHだったが、連れて行って欲しいとすがりつくエリー=ピグモン…。

 カイトはウルトラマンマックスに変身。その隙にミズキはシャマー星人を捜索した。シャマー星人はディメンション・フォースの光線を浴びせようとするが外れる。再度発射しようと試みるが、今度はエリー=ピグモンが盾となった。生体エネルギーを持つピグモンは異次元に消失し、エリーは元に戻る。

 ショーンは、新開発のブラック・ディメンションを投下し、暗闇の中にシャマー星人を追い詰めた。シャマー星人はビルの屋上から落下! マックスはマックスギャラクシーでレッドキングを撃破した。シャマー星人は野良猫の餌食に!?

 ショーンはシャマー星人の光線銃を解析したが、それは特殊なエネルギーの単なる入れ物に過ぎなかった。元に戻ったエリーには、ピグモンだったときの記憶が全て残っていた。

解説

 第18話「アカルイセカイ」に続き、マックスシリーズ中屈指のコミカルキャラクターであるシャマー星人が再登場するエピソード。脚本は第18話と同じ福田卓郎氏。監督は今回、金子氏が務めた。

 「アカルイセカイ」も、相当に笑えるコメディであったが、このときの主な笑いの元はシャマー星人と隊長の掛け合いの可笑しさにあったと言ってよい。しかし今回は、俄然笑える要素が増加。シャマー星人のキャラクター以上に、エリーのキャラクターを生かした仕掛けに好感が持てる。

 また、第5話~第6話のサブジェクト・ファントムに言及しているが、これはピグモンとレッドキングを再登場させるためのエクスキューズ。ところが、再登場となったピグモンがコミカルな部分に大きく関わってくるのだから、単なる怪獣再登場の話題に堕さない物語作りはなかなか丁寧だ。

 細かいところをツっこむと、今回は色々と出てくる。例えば、異次元に存在するサブジェクト・ファントムから、生体エネルギーを持つ怪獣を召喚するという背景は分かるが、ピグモンが封印していたレッドキング自体は、第6話で宇宙空間の塵となってしまっている。また生体エネルギーを持つ物体を異次元に送り込む筈のシャマー星人の兵器が、ビルを消し去ってしまったシーンも、言われなければ気付かないかも知れないが、「アレッ?」と思ってしまう。

 前者には、実際には別個体のレッドキングが封印されていたという少し強引な説明がなされていた。後者には、ビルの中に多数の人が存在するから、ビルに生体エネルギーが充満していたのだとか、強引な説明を付けることも出来る。だが、マックスにおけるバラエティ豊かな1話完結路線が、個々のエピソードの横のつながりを薄めた結果、レッドキングの復活における違和感を生んだのも確かなことである。逆に言えば、そこにこだわるかこだわらないかが、マックスを楽しめるか否かにダイレクトに繋がってしまうのかも知れない。

 さて、細かいところは抜きにすると、楽しい場面は満載だ。まずは「四谷博士」。シャマー星人の変身体としての登場だが、「アカルイセカイ」と姿が異なるのがウマい。シャマー星人としてのアイデンティティが名刺の渡し方や笑い方に求められ、怪しい言動でバレてしまうという、防衛チームのあり方を全く否定したところに生じる笑いがイイ。

 そして、何と言ってもピグモンがエリーと一体化してしまう一連のシーンが素晴らしい。今回の白眉は、シャマー星人の奇行でもなければ、レッドキング相手の激しい攻防戦でもなく、このくだりと言って良い。エリーが人間らしい言動を取る場面はこれまでも散見されたものの、あくまで「アンドロイド」というベースを崩すことはなかった。今回はピグモンというキャラクターを生かし、非常にエリーらしくない、しかしある意味エリーらしい、まさに痛快なエリー像が登場した。「痛快な」という表現をしたが、たとえ一時的なことであっても、そのキャラクターが持つ呪縛を打ち破って飛躍することは、見る者にとっては痛快そのものであろう。エリーであるときとピグモンであるときの演技の切り替えも非常に上手いし、ミズキやコバが妬くのも少々安直ではあるが面白い効果を与えている。

 白眉はエリーとピグモンに譲りはしたが、レッドキングとマックスのバトルも相当に面白く迫力に満ちたものとなっていた。レッドキングが市街地に現れるのは、ウルトラマン80・第46話「恐れていたレッドキングの復活宣言」に次いで2度目。さらに80登場時は、郊外のイメージが強い為、本格的な市街戦はまさに初ということになろう。爆発性岩石を吐くという設定は、第5話~第6話を正当に継承、ウルトラマンの巨大化ポーズで飛んでしまうなど、コミカルかつダイナミックな格闘戦が面白い。

 総じて本作は、コミカルな部分と迫力ある部分がテンポ良く織り交ぜられた、マックスらしいエピソードだったと言えよう。

オマケ

 コバの「今日は墜落しなかったぜ」が秀逸。ウルトラには、墜落の憂き目に遭い易いキャラクターが必ずおり、特にウルトラマンタロウのZAT隊員は全員がほぼ毎回「脱出!!」してしまう印象が強い。ウルトラマンティガではダイゴ隊員とシンジョウ隊員が「墜落コンビ」とファンの間で呼ばれるなど、比較的墜落キャラは固定してしまう。コバのセリフは、そんなウルトラのサガを茶化してしまっているのだが、このコミカルなエピソードの、あの場面で言わせたのは正解。非常に楽しいシーンになっていた。

 金子監督恒例?の英語字幕も登場。「God bless me. Thank you.」とは、クシャミに対する慣用句を一人芝居したものである。「But of course, I'm a genius!(やっぱりボクは天才だ)」というのもショーンらしくていいセリフだ。